江戸幕府家臣の屋敷街だった本郷。その歴史は17世紀までさかのぼる (株)人文社発行「小石川谷中本郷絵図」(文久1年)より
「是が非でも私たちで手がけたいと思っていた」と語る住宅事業部・浦崎康弘
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その昔は武家地として豪奢な屋敷が並び、近代は学問の街としてその名を知られる本郷。その一角に、住宅業界で注目を集める3,900m²の土地があった。5路線4駅のどこからも徒歩10分以内という都心ならではの至便さと、幹線道路から一歩奥まった落ち着きを兼ね備えている。しかも見晴らしのよい高台で、南向きの部屋が多く設けられる東西に長い整形地。
「これほど恵まれた条件の土地は非常に稀。二度と出てこないのではと、多くの不動産関係者が感じたはずです」と、住宅事業部・浦崎康弘は当時を振り返る。浦崎は、土地取得からマンション企画など、この本郷の一連の計画に携わることとなった。
「是が非でも私たちで手がけたいと思っていました」。本郷エリアのフラッグシップにしたいという意気込みで全社をあげて取り組んだ結果、幸いにも三菱地所が取得する。「その瞬間、鼓動が早まるのを感じた」と語るほど、大きな緊張感をもたらす土地だった。こうして、本郷パークハウス ザ・プレミアフォート担当者としての浦崎の道のりが始まった。
グリッドが際立つ「格子」が普遍的な美しさを醸し出す南側の外観
北東側の外観は「格子」と「壁」を対比させて南側と変化をつけた
「格子」と「壁」の割合を変え、北東側とはまた違った装いの北西側
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この価値ある土地を、どのように活用すべきか――。浦崎は「歴史と重みのある、この街ならではの住まいにしなければ」との思いを強めていた。街にしっくりと馴染むマンション。それでいて、印象に残り、オーナーはもちろん街の人々からも長く愛されるマンション。そんな存在感のある建物がふさわしいと考えた。議論の末、15階 (*) からなる現在の本郷パークハウス ザ・プレミアフォートの原型が出来上がっていった。
* 建築基準法上は地下1階地上14階建
20世紀初頭にヨーロッパで生まれた建築様式に「インターナショナルスタイル」がある。本郷パークハウス ザ・プレミアフォートは、この建築様式に通底する「新しさや洗練を備えつつも永続的な美しさを失わないデザイン」という考え方を取り入れた。南面には床と壁からなる「格子」のラインが際立ち、建物の存在を静かに主張。東・西面は「格子」と対比させた「壁」が異なった表情を演出している。
外観は一見するとシンプルな印象だが、実はさまざまな変化に富んでいる。たとえば、すっきりした白い外観は、“味気なさ”につながることもある。そこで、風合いのあるスクラッチタイルを使い、目地も太めに仕上げた。最上階の天井は部分的に高くすることで、建物の上辺に高低差を出してアクセントに。それらはすべて、「一時的に目立つのではなく、色あせない気品をたたえたマンションを」というコンセプトに基づき、浦崎と建築家が細部の一つ一つにまで吟味を重ねた結果だ。
街に調和する静かな佇まいの中に、上質な素材によるこだわりの意匠がほどこされている。それが本郷パークハウス ザ・プレミアフォートが求めた立ち姿なのだ。
「TWFS」と従来工法の比較
「TWFS」と「免震構造」の融合が開放感あふれる空間を可能にした
あえてサッシで区切ることで広さを強調した窓面(最上階住戸のみ)
壁面のカラーガラスから差し込む光が白い床面を彩るラウンジ
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「新鮮さと恒久的な美しさの両立」というデザインや設計へのこだわりは、内部空間でも徹底された。本郷パークハウス ザ・プレミアフォートの各居室は、柱や梁のない広々とした空間と大きく開かれた窓が特長だ。
このような室内空間をつくりだす手法として、壁を厚くして建物の強度を保つ「TWFS(厚肉床壁構造)」があるが、壁が分厚くなり躯体が重くなるという弱点のため、これまで高層建築には採用しづらかった。しかし浦崎達は、耐震構造の建物に比べて柱や梁を小さくできる「免震構造」を併用することで、「TWFS」に挑戦する。
実は、この「TWFS」と「免震構造」の融合は、三菱地所はもとより、住宅業界でも、まだほとんど事例がない。それゆえ、強度計算や検証に多大な時間を要した。「安心・安全は当たり前ですから、検証が長引いても手を抜くことはあり得ない。コストや時間の調整に苦心しました」と浦崎は振り返る。
そうした取り組みの結果、柱や梁のない豊かな開放感をもたらす大きな窓や、2mの奥行きを持つバルコニーなどが実現した。恵まれた空間の居心地を素直に堪能できるよう、「奇をてらった装飾はあえて避け、品よくまとめました」。共用施設についても、「本当に必要なものだけを備えました」と浦崎が話すように、ゲストルームとラウンジ、そして “もうひとつの自宅”としてくつろげるようにとの願いを込めたライブラリースペースに絞っている。
一方、各居室へつながる「アプローチコリドー」のデザインには、意外性を持たせた。ハニカムパネルを用いた壁面に、上下から差し込む照明の光がアクセントを与えている。「外観がすっきりとしているので、廊下は素材や加工を工夫して質感を変え、モダンな空間に。退屈しないよう変化をつけたんです」と浦崎がこだわりを語った。
竣工後のある日。本郷パークハウス ザ・プレミアフォートへ続く道に足を踏み入れた浦崎は、目の前に現れた建物の全景を見て、「本当にいいものができたな」という充足感をしみじみと覚えたという。完成した住まいは浦崎が目指したとおり、この地に昔からあったかのように佇んでいた。
素材や加工を工夫して、外観と対照的なイメージに仕上げたコリドー
本郷の街の美しい風景として溶け込み、時を重ねていくパークハウス
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本郷パークハウス ザ・プレミアフォートがたくさんのオーナーを迎え、新しい時を刻み始めた頃、浦崎は別のマンションの業務にあたっていた。そんな中、飛び込んできたのが、2009年度グッドデザイン賞受賞の知らせだった。
「それはもう、うれしかったです。担当者として大変名誉なことだと思います」と、浦崎は顔をほころばせる。「歴史ある落ち着いたこの街に馴染み、長く親しまれるマンション」を目標とし、構造から細部のデザインにまで徹底的にこだわり続けた浦崎にとっては、本郷パークハウス ザ・プレミアフォートの端正な佇まいや、「TWFS+免震構造」によるすっきりとしたインテリアなどが高く評価されたことは、とりわけ大きな喜びだったろう。「とはいえ、ことさら特別な取り組みをした、というわけではありません。めぐり合えた土地と街、そしてそこに集う人々にふさわしいこと、やるべきことを積み重ねた結果といえるのかもしれません」と話す。
建築家が求める作品性と、三菱地所が企業として担うべき公共性、そして会社としてシビアに求めなければならない事業性――。このバランスは、物件担当者を常に悩ませる。「この調整のために、設計チームやゼネコン、建築家などの各担当者とは、何度もディスカッションや交渉を重ねました」という浦崎の努力が、幸福な形で実ったのが本郷パークハウス ザ・プレミアフォートだった。「住まう方だけでなく、街の皆さんにとっても誇りとなるようなパークハウスをこれからも生み出していきたい」そう語る浦崎の目は、まだ見ぬ次のパークハウスに向かっていた。
※社名・所属部署・肩書・名称などは取材当時(掲載年月)のものです