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24時間・365日快適な居住環境を。困難の克服こそ、ディベロッパーの仕事

[2006年07月06日]

ひとつクリアするとまた次のハードルが……課題の連続でした

エアロテックを導入したマンションの室内。各室にあるのはエアロテックの吹き出し口だけなので、天井・壁ともすっきりとデザインされ、スペースも広く使える。

エアロテックを導入したマンションの室内。各室にあるのはエアロテックの吹き出し口だけなので、天井・壁ともすっきりとデザインされ、スペースも広く使える。

吹き出し口からは、外部の花粉やホコリを排除した新鮮な空気が常に供給される。室内の温度は、各部屋ごとに好みの温度に設定できる。

吹き出し口からは、外部の花粉やホコリを排除した新鮮な空気が常に供給される。室内の温度は、各部屋ごとに好みの温度に設定できる。

商品企画部において、最初にエアロテック導入を討議したときの社内ドキュメント。部長の平生が起こしたコンセプトスケッチも添えられている。すべてはこの一編のドキュメントから始まった。

商品企画部において、最初にエアロテック導入を討議したときの社内ドキュメント。部長の平生が起こしたコンセプトスケッチも添えられている。すべてはこの一編のドキュメントから始まった。

機器の実験を行うために、社宅を改装して想定環境を作った。1年半をかけて稼動データをモニタリングし、検証が続けられた。

機器の実験を行うために、社宅を改装して想定環境を作った。1年半をかけて稼動データをモニタリングし、検証が続けられた。

「さまざまなバックデータを集積しましたが、この段階ではあくまで実験。実は、これから先にまだまだ大変なことが待っていたんですね」

「さまざまなバックデータを集積しましたが、この段階ではあくまで実験。実は、これから先にまだまだ大変なことが待っていたんですね」

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「このシステムをほんとうにマンションに導入するのでしょうか……」
 2002年秋、商品企画部長・平生が自ら描いたコンセプトスケッチを目にして、佐藤は「これは大変な開発になる」と直感した。

 そのシステムとは「エアロテック」。一般的な広さのマンションの冷暖房と換気を一組の空調換気の機器でまかなうシステムである。「エアロテック」は適切な温度に保たれた新鮮な空気が家全体をゆっくりと循環して室内機に集まるので、リビングや寝室はもちろん、廊下やトイレも急激な温度差がなくなり、四季を通じて、快適で健康的な居住環境を実現する。

 それまでの「エアロテック」は、三菱電機の「エアリゾート」という空調システムをベースに、三菱地所ホーム・三菱電機両社の技術者が戸建て住宅用に開発したものである。その住み心地の良さは戸建て業界で評判を呼んでいた。しかし、マンションは建物を形成する建築材料や構造をはじめ、1階分の階の高さ、気密性・断熱性などの点で、戸建てとは大きく異なっている。マンションへの導入は困難を極めるだろう、そう佐藤は思った。
 事実、はじめて「エアロテック」が設置されたパークハウスの誕生は、2006年4月。開発には実に約3年半の歳月を要したのである。

 快適な居住環境の実現のために建物が備えるべき基本性能は多岐に亘るが、これからは暮らしを本当に豊かにしてくれるものとして空気のクオリティが問われてくるだろう。身体に優しい温度でいつも清潔な空気。それをマンションの各住戸空間に納めなければならない。
室内機の設置場所は? それぞれの部屋へのダクトルートは? 室外機と他の機器との取り合いは? 建物に求められる断熱性のレベルは? 山積する課題を前に、三菱電機の技術メンバーとマンション版エアロテックの共同研究開発がスタートした。
 まず、最初に標準的な「パークハウス」に備わっている気密性能、断熱性能と同等となるよう自社の社宅の改装から着手。そこにエアロテックの機器を設置し季節の移り変わりによる室温の変化を、夏から冬、そして翌年の夏までおよそ一年半に亘って実測を行った。そこで得られたデータを基に、住戸の専有面積等に応じた機器の能力、方位に応じた窓開口のサッシュ性能・ガラスの種類、躯体の断熱性能、それぞれの仕様について様々な検討が重ねられた。

 戸建て住宅用に開発されたエアロテックは室内機を床に置くタイプだった。しかし、それをそのままマンションに転用したのでは、住戸内の居住スペースが狭くなってしまう。マンション版エアロテックでは、およそどの住戸にも存在するであろう廊下の天井裏に納めることが出来る大きさの室内機-天井埋込タイプ-の開発も大きなテーマだった。
「壁掛け式や天井カセット式といった従来タイプのエアコンは、それぞれのお部屋でその存在を主張しています。室内機を天井裏に設置できるのなら、お部屋に出てくるのは吹出口だけ。すっきりした居室空間が実現できるのも魅力のひとつと考えていました。」 ところが、マンションは一住戸の大きさがまちまち。小さな専有面積の家もあれば、百数十平方メートルの家もある。空調機器の能力をどれくらいにすれば、安定した快適性が得られるのか。いたずらに能力を大容量とすれば室内機も大きく、またイニシャルコストもアップ。物件への導入が見送られてしまう。見極めが大変難しい課題だった。

 それでも何とか実測データを基に検討と改良を重ね、天井埋込タイプの室内機の仕様を決定。次に既存のモデルルームをもちいて運転したときの騒音実験をはじめた。ここでもあらゆる状況を想定した運転シュミレーションを繰り返しながら、室内機はもちろん、ダクトを流れる空気の音をできるだけ抑えるよう建築側での工夫・検討を重ねていった。

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自らが気づき、課題を解決する。それがディベロッパーの使命です

佐藤の頭上に見えるのが、廊下天井に収納されたエアロテックの点検口。限られた空間への収納、点検口の収まりやデザインに悩まされた。

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当時佐藤が書いた点検口の図面。「全部を一枚の蓋にしてしまうと開閉が大変になりますから、3つの部分に分けて、デザインも可動性もいいものにするために、何枚も書きました」

当時佐藤が書いた点検口の図面。「全部を一枚の蓋にしてしまうと開閉が大変になりますから、3つの部分に分けて、デザインも可動性もいいものにするために、何枚も書きました」

「今は実物で説明できますが、当時は形のないものを施工現場や販売の人に説明しなければならなかったので、大変でしたね」

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ドアの下に設けられた隙間によって、新鮮な空気が戸内全体に循環する。ホコリなども吸塵されるので、掃除も楽。戸建てで体験した人の評判を聞いて、導入物件は販売前から注目を集めた。

ドアの下に設けられた隙間によって、新鮮な空気が戸内全体に循環する。ホコリなども吸塵されるので、掃除も楽。戸建てで体験した人の評判を聞いて、導入物件は販売前から注目を集めた。

「お客様のパークハウスに対する期待感を感じます。それにお応えできるよう、快適性は目に見えませんが、いろいろな形でご説明できるよう、今後も工夫を続けていきたいですね」

「お客様のパークハウスに対する期待感を感じます。それにお応えできるよう、快適性は目に見えませんが、いろいろな形でご説明できるよう、今後も工夫を続けていきたいですね」

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 この頃から、エアロテック導入物件が選定され、実際の建物への納まりの詳細検討が開始された。
 エアロテック系のダクト、24時間換気系のダクト、そして厨房排気系のダクトが錯綜する天井裏に、ダウンライトやさまざまな設備配管類をどう分けてレイアウトするか。検討のスケッチでは納まっていた筈なのに、実際の設計となるとなかなかすっきり解けない。
「ひとつ解決してもまた次の課題が浮上してくる、まさに産みの苦しみの連続でした」

 「主戦場は天井裏でしたが、廊下の天井の意匠性も大きな課題でした。室内機がいつも正常に作動するよう、サービスマンの定期メンテナンスやお客様ご自身の清掃が必要です。そのための点検口を機能的で目立たないデザインにすべく、スケッチを何度も描いて試行錯誤を重ねました」
 当時は何でも屋でしたね、と佐藤は笑う。
誰かがやってくれるだろうと考えていたのでは、何も解決しない。お客様の実際の使い勝手を想像しながら、自らが気づき、アイデアを練り、現場の意見と協力を得ながらさらに課題点を拾っていく。3年半はこの繰り返しの連続であった。

 プロジェクトを成功に導くには、少なくとも二通りのタイプの人間が必要である。ひとりはそのコンセプトを強力に推し進める、所謂アクセルを踏む人間。もうひとりは課題を見つけながら修正を施していく、いわばブレーキを踏む人間。佐藤は自らは「社内では」後者のタイプであったと言う。「でも実際の開発に携わった社外の方々や、施工にご協力下さったゼネコンの方々からみたら、思いっきりアクセルを踏んでいる人間に見えたと思います。」と笑う。

「当初から検討や実験、実測の段階で日に夜を継いで頑張った開発メンバーや、施工の現場で大変なご苦労をされて実際の機器を納めてくださる方々の努力や熱意を感じていました。最前線にいる人々の苦労を無駄にしないようにするためには、私達が前もって気付かなければならないこと、しなければいけない何かを常に考えるよう心がけていました」
 いわゆる「丸投げ」をしたのでは、おそらくこのプロジェクトは成功しなかったであろう。ディベロッパーが自らの課題として真剣に取り組み、細部にいたるまでを人任せにしない姿勢が、現場との密な連携を生み、難しい課題の克服を現実のものとすることができたのだ。

 空気のクオリティが快適さや健康に少なからず影響を及ぼすものであることは、いまや誰もが知っている。しかし、空気は目に見えないものであるが故に、それを住まいの商品としてどのように提供するかという難しさがあった。事実、エアロテックのような冷暖房換気システムを備えたマンションは、パークハウスをおいて他にほとんど例を見ない。
 エアロテックを導入したパークハウス第1号物件は、販売前からお客様の評判を呼び、好調な売れ行きを示した。

 「こうして完成された姿をご覧いただいても、ごく普通の居住空間があるように思われるかもしれません。それこそが私達が目指したエアロテックの姿なのです。今回心地よく暮らしていただくために、私たちを常に優しく包んでくれる、目には見えない空気のクオリティに着目して商品開発に取り組みました。一歩進んだ上質なマンションライフの実現のために努力する。それも私たちディベロッパーに課せられた使命ではないでしょうか」
 佐藤の頭の中には、さらなる絵が描かれているようだ。

天井埋込型エアロックのシステム構築


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