1993年(平成5年)8月、「パークハウス多摩川」全体竣工

一世紀を超える丸の内開発のDNAがつくり上げた未来を見据えた理想のマンション。

パート2
いまに続く、徹底した品質へのこだわりと価値の創造

緑を活かすために全面地下駐車場を採用

3カ所ある車寄せには、ケヤキがシンボリックに植えられている。

3カ所ある車寄せには、ケヤキがシンボリックに植えられている。

敷地の地下に広がる駐車場。

敷地の地下に広がる駐車場。外光を取り込む工夫がなされ、地下ではあるが明るい雰囲気。

マンションの敷地内とは思えない南街区の和風庭園。

マンションの敷地内とは思えない南街区の和風庭園。この下にも地下駐車場が広がっている。

東京で最善のマンションをつくりたい――。そんな思いが結実した「パークハウス多摩川」。関係者たちが追求した「あるべき姿」は、具体的な構造物、間取り、設備とともに、当時の最高水準のマンションとして出現した。

「パークハウス多摩川」を訪れると、その広さを超えてあまりあるゆとりと清々しさを感じる。それは、広い敷地の中に自動車の姿をほとんど見ないためだ。

三菱自動車工業の広大な工場跡地を利用した開発は、市街地住宅総合設計制度の適用により容積率の緩和を受ける一方、建物の高層化によって、70%を超える空地を確保。駐車場も地下に配し、電線埋設による無電柱化も図ることで、緑豊かなオープンスペースを実現している。

特に地下駐車場は、敷地全体に設置された。一般的にマンションの地下駐車場は、建物の下を掘って設置される。しかし「パークハウス多摩川」では、建物の下だけではなく、敷地のほぼ全面に地下駐車場を設置し、575戸に対し、120%となる約700台分の駐車スペースを確保した。

敷地全面を地下駐車場にする取り組みは、広尾ガーデンヒルズでも採用された。広尾の場合は、都心であるがゆえに、住環境を高品位に保つとともに、そのスペースを有効活用するという側面が強かった。 では、スペース的には十分な余裕がある「パークハウス多摩川」で全面地下駐車場を採用した理由はどこにあったのだろうか。設計担当者はこう語る。

「とにかく緑地をたくさん確保して、心地よい住環境をつくりたかったのです。遊歩道も整備して居住者がのんびりと散策をしながら、豊かな自然を楽しめる工夫が必要だと思っていました。それに対するひとつの回答が自動車を敷地内から見えないようにすることだったのです」

スペース的には十分な余裕があるにもかかわらず、暮らしのクオリティを重視して、あえて敷地全面に地下駐車場をつくる。これもやはり「プロジェクトを推進した現場の担当者たちの思いが実現したこと」と平生が続ける。

「通常、地下に駐車場をつくる場合は、場所としては建物の地下だけです。コストを抑えるため、できるだけ地面を掘り返す面積を小さくし、3層の機械式の駐車機を入れて、同じスペースでも3倍の自動車を停めることができるようにします。しかし多摩川では、敷地のほとんどを駐車場スペースに使い、しかも約700台分の駐車場はほぼ1層構造にしています。自動車を運転する人にとっては、その方が使い勝手がよいからです。全面地下駐車場を実現するためには、敷地全体を3mくらい掘り下げ、その上に人工地盤をつくらなければなりません。そして人工地盤の上には、分厚く土を盛り、それこそ数千本の単位で植樹しました。これはコストを考えるよりも先に“こうあるべき”という思いがあったからこそ。そして、そこには現場の思いを認め、かつ見守ってくれた会社の姿勢があったのだと思います」

外構、設備、バルコニー....すべてに徹底したこだわりを

多摩川沿いの遊歩道。

多摩川沿いの遊歩道。ところどころに彫刻が置かれている。

緑が生い茂る遊歩道。

緑が生い茂る遊歩道。まるでどこかの森に迷い込んだよう。近隣の方も緑を楽しんでいる。

クオリティの追求が具体的な形となって現れたのは、地下駐車場に限らない。全9棟のうち、高層棟を多摩川沿いに配して、既成市街地側は雁行させたり、セットバックさせたりすることで、日影の影響や圧迫感を極力抑えた。敷地内通路には、なだらかなカーブを与え、自然石の乱張り舗装を施すと同時に、周辺街路や多摩川沿いの緑道もあわせて整備。緑道には個性の異なる作家による彫刻を置いて、豊かな空間を演出した。


もちろんクオリティの追求は、居住空間でも徹底された。平均面積100㎡以上。広々とした玄関に加え、廊下も従来よりも10㎝幅広に。さらに天井高も廊下部分が2,300mm、各居室が2,400mm、住戸のグレードを物語るリビング・ダイニングは折り上げ部分で2,750mmと、高さを確保するだけでなく、変化をつけることにより、暗から明、狭から広へのドラマチックな視覚演出が施された。設計者は語る。

「間取りの変更や部屋の模様替え的なことは、居住者の皆様が必要に応じてリフォームできる部分。一方で私たちは居住者が自分で変えにくい部分、変えられない部分を質の高いものにするよう注力しました。特に玄関スペースは、一般的なマンションでは、住居タイプの広さに合わせ、広い住戸では広く、小さな住戸では小さく設計します。リビングなどを少しでも広くするためです。ですが、玄関は家の顔となるスペースです。だから『パークハウス多摩川』では、住居タイプの広さにかかわらず、できる限り玄関のスペースを広く取りました。東京で最善のマンション、東京の住まいの新しいプロトタイプをつくろうとしたのですから、社内には異論もありましたが、個人的にどうしても譲れない部分でした」

また北街区の建物はブラウン系、南街区の建物はブルー系のカラー磁器タイル貼りとし、それぞれ1階の下層部だけは花崗石貼り、さらに玄関の庇の屋根には緑青銅板で仕上げを施すなどのアクセントをつけ、遠くから見る美しさと歩いて近づいてきたときの美しさを両立させた。また全9棟の建物のドアは、今なら設備メーカーがマンション用にラインナップしている既成のドアを使用することが一般的だが、ここでは9棟それぞれ違ったデザインでオリジナル製作されたドアになっている。

東京の住まいの新しいプロトタイプをつくる

各住戸のベストポジションにスパンいっぱいのリビングを設定。奥行き2mのバルコニーがゆとりを与えている。

各住戸のベストポジションにスパンいっぱいのリビングを設定。奥行き2mのバルコニーがゆとりを与えている(竣工記念パンフレットより)。

手すり部分には熱線反射ガラスを採用。

手すり部分には熱線反射ガラスを採用。昼間、外部からの視線を遮り、内部からは外の景色を楽しむことができる。

天井埋め込み型タイプのエアコンを採用。

天井埋め込み型タイプのエアコンを採用。リビング・ダイニングの天井高は2,750mm、エアコンやダウンライトをビルトインした部分でも他の居室と同じ2,400mmの高さを確保(竣工記念パンフレットより)。

ほかにも住戸内における最良の場所に幅いっぱいのリビングを設定。大型サッシュによるパノラマを実現するとともに、床一面にタイルを敷き詰めた奥行き2,000mmのバルコニーをリビングサイドに設置することによって、「良い建築は開口部が美しい」という通説を見事に証明した。奥行2,000mmのバルコニーは今では当たり前だが、『パークハウス多摩川』から始まったといえる。部屋と外界との接点となり、ときにはくつろぎのスペースともなるバルコニー。当時は1,200mmが標準的な奥行だったが、部屋の内部から緑豊かな外部環境を楽しむために、コストアップを承知で取り組んだ。

さらにバルコニーの床面にはタイル貼りを施した。2015年の今でも、そこまで配慮している物件は珍しいくらいだ。リビングに座って外を見た時に通常のマンションのようにコンクリート仕上げのバルコニー床面がそのまま視界に入らないように配慮した。バルコニーは、住戸専有面積に含まれないので、そこまで注力する必要はないと考えることもできたが、快適性やリビングから見える景色においても「東京の住まいの新しいプロトタイプ」をめざした。

住居の内部に目を移すと、エアコンは天井埋め込みタイプのものをあらかじめ全部屋に設置した。まるでホテルのようなその仕様は、室内の高級感を際立たせるとともに、部屋をより広く感じさせる効果を生み出した。

ハード面だけではなく、ソフト面でも24時間常駐のセキュリティサービスを提供。さらに敷地内にフィットネスクラブやクリニックを設置して、居住者が健康的で快適な生活を送るためのサポートを行うなど、現代の大規模マンションでは当たり前になっていることのいくつかが、この「パークハウス多摩川」から生まれている。

「東京の住まいの新しいプロトタイプをつくりたい」。その思いは、細部に至るまでの徹底的なこだわりによって実現され、現代へとつながるマンションのデファクトスタンダードが「パークハウス多摩川」で誕生した。

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