2003年(平成15年)10月「M.M.TOWERS」竣工

横浜みなとみらい21で先取りした、新しい時代の街づくり・住まいづくり

パート2
21世紀の都市にふさわしいマンションをめざして

柱や梁のないマンションをつくろう!

みなとみらいのシンボル「横浜ランドマークタワー」

みなとみらいのシンボル「横浜ランドマークタワー」

居室のコーナー(写真右奥)に柱がない

居室のコーナー(写真右奥)に柱がない

1983年(昭和58年)に開発がスタートし、1993年(平成5年)にはみなとみらいのシンボルとなる横浜ランドマークタワーが竣工。横浜ランドマークタワーは「にぎわいのある24時間都市」を基本コンセプトに、ショッピングモール、オフィス、ホテルが縦に並ぶ日本初の垂直統合ビル。また地上296mという当時日本一の高さを誇り、文字通りみなとみらいの“ランドマーク”となった。

まだなにもないまっさらな場所に、日本一の高さのビルをつくり、街づくりの方向性を具現化していく。みなとみらいは、三菱地所がもてる知見とノウハウを注ぎ込んだ一大プロジェクト。そしてその一大プロジェクトの中で、はじめてのマンションとして2003年に誕生したのが、30階建ての高層マンション3棟からなるM.M.TOWERSだ。

M.M.TOWERSの計画にあたっては、みなとみらいにはじめて建設されるマンションとして、どのようなコンセプトを打ち出すのか。「みらい」の名を冠した場所にふさわしい住居とはどのようなものかなど議論が重ねられた。設計担当者は振り返る。

「M.M.TOWERSのちょうど10年前に竣工したパークハウス多摩川は、その後の当社のマンションのベンチマークといえる存在でした。ただし、時代背景や立地条件が違うので同じものはつくれません。では、いまこの時代にこの場所でお客様にとって魅力ある住まいとはどんなものか。我々が提供できる住まいとはなにか。徹底してお客様目線で考え抜きました」

そのひとつの結論が、「柱や梁のないマンションをつくる」ということだった。「柱や梁がない」とは具体的にどういうことだろうか。

「従来のマンションは、居室タイプが決まっていて、その中からお客様に選んでいただきます。でも、それではお客様のニーズに100%応えられていないのではないかと考えました。なので、広さは変えられないとしても、間取りはお客様の希望に応じてできるだけ多くのバリエーションから選べるようにしたいと思いました。そのときにネックになるのが、住戸にある柱や梁の存在。ならば住戸から柱や梁をなくせばよいというわけです」

自由度と安全性を両立させた免震構造

免震コアウォール構造

免震コアウォール構造

スケルトン&インフィルシステム

スケルトン&インフィルシステム

その実現のために考え出されたのが「免震コアウォール構造」での建設だった。免震コアウォール構造は建物を免震装置で支えることに加えて、建物の中心部にロの字型の壁状の柱を設けて全体を支えることによって外周部の柱や梁をスリムにし、特に居住スペースでは柱や梁をなくす構造。これにより住戸の開口は最低でも7mを確保し、天井高さは2.7m、サッシ高さは2.3mと開放的な空間構成が可能となった。もちろん柱や梁がなくなったことで、間取りの自由度は飛躍的に高まった。

柱や梁がないことは、将来のライフスタイルの変化に応じたリフォームが容易なことにもつながる。M.M.TOWERSでは、建物全体を免震コアウォール構造とすると同時に、各住戸においてはスケルトン&インフィルシステムを導入。建物の躯体(スケルトン)と内装(インフィル)を明確に分け、さらに縦配管のパイプスペースを各住戸内ではなく住棟の中心部に集中させることによってメンテナンス性の向上と、間取りの変更や設備の更新に容易に対応できる仕組みとなっている。

住居の中に柱や梁がなく、内装の自由度が高い――それまでのマンションにはなかった大きなメリットをM.M.TOWERSではさらに活かした。開発担当者は語る。

「マンションを販売する場合、通常であれば、お客様とはまず広さの話をしますが、M.M.TOWERSでは違いました。まずお客様が望まれている居室のイメージや機能をお聞きし、その内容に応じて、お部屋をご案内するという流れでした。たとえば、通常のキッチンは幅が2〜3mですが『広いキッチンが欲しい』とおっしゃったお客様には4mのキッチンをご提案しました。あるいはトイレを2カ所に設置した事例もあります。『3LDKのタイプが欲しい』という選び方ではなく、お客様が住まいに描いているイメージや必要とされる機能から住まいをつくっていくことができました」

困難な建設を乗り越える情熱

半透明ガラスの天井から降りそそぐ自然光が、空間を柔らかく包み込むエントランスコリドー

半透明ガラスの天井から降りそそぐ自然光が、空間を柔らかく包み込むエントランスコリドー

ただし、お客様にとって自由度が高いということは、販売する側、つくる側からすると、手間が膨大に増えることにつながる。

通常のマンションであれば、設計段階でプランごとの戸数が決まるので、サッシの数や必要な什器の数なども決まって、手配を進めることができる。しかし、M.M.TOWERSではそうはいかない。お客様が住戸を購入され、ひとつひとつのプランが確定してはじめて、なにがいくつ必要になるかが明確になった。通常のマンション建設とは、工程管理の考え方を変える必要があった。当時、本社で商品企画部長を務めていた平生進一は振り返る。

「この計画を聞いたときには、驚きました。900戸近くあるマンションで、個別のカスタマイズに対応するとなると、設計の手間、施工の手間はどれほどのものになるか。本当にすべてを間違いなくつくって、お客様に無事に引き渡すことができるのかと心配にもなりました。しかし横浜支店の担当者たちの情熱は、本社から見ていてもすごいものがありました。『862戸すべて成功させる』という想いを全員が持っていたのだと思います」

ザ・パークハウスを紐解く、6つのストーリー

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