眠りの時間をより上質に ― 自分のからだに合う寝具の選び方&快眠のヒント
[暮らしのアイデア]
2017年05月31日
いつのまにか深い眠りへといざなわれ、目覚めたときに満足感を得られている……。そんな上質な睡眠は、日々の充実と心身の健康を叶えてくれます。仮に睡眠時間を8時間とすれば、人生の約3分の1は寝室で過ごし、寝具にからだをゆだねることになります。大切な寝具をどのように選び、寝室空間をどのように整えればよいのでしょうか。IDC OTSUKA 有明本社ショールーム スリープアドバイザーの滝﨑敏之さんにお話をうかがいました。
高まり続ける“睡眠”への意識
寝具を選びにいらっしゃるお客様のお話をうかがうと、買い替えの理由として多く挙げられるのは、引っ越し・住み替えや結婚・出産といったライフスタイルの変化です。ただ、最近は睡眠の大切さを理解されている方が多く、眠りに「健康」を求めて買い替えを検討されるお客様がとても増えています。
寝つきが悪い、目覚めたときに肩や腰が凝っている、日中に眠くなってしまうなど、日々なんとなく感じている睡眠の不調を改善したいとお考えになるお客様は多く、眠りへの意識の高まりをつくづく実感します。健康はもちろん暮らしの質を高めるために、私どもも常に商品や情報をアップデートしながら、お客様それぞれに合ったアドバイスができるように心がけています。
寝具や寝室の見直しとして、重視したい基本は次の通りです。
・理想的な寝姿勢を保つマットレスと枕を選ぶ
・パジャマやシーツなどは肌ざわりのよいものを
・カーテンや照明で光をコントロールする
もちろん、就寝前にパソコンやスマートフォンの使用を控える、カフェインやアルコールを摂取しない、アロマや入浴でリラックスするという生活習慣の見直しも大切です。
自分のからだに合う正しい寝具の選び方
寝具の選び方を、わかりやすくSTEP順に図解
寝具は、マットレス、フレーム、枕、シーツ類という順番で選ぶことをおすすめしています。まず、どのような選び方、選択肢があるのかをご説明してから、お客様のご要望・ご予算に合った寝具を見つけていきます。
もちろんご都合によってマットレスのみ、枕のみなどを選ばれるケースもあります。その場合は、売り場でご自宅の寝具に近い状況を再現してから、購入する商品を比較検討していただき、よりよい寝心地を探していただけるようにしています。
●「やわらかいマットレスは腰が痛くなる」という思い込みは間違い
約100台ものベッドが展示されたショールーム。同じマットレスを異なるフレームで試すなど、寝心地を体感しながら選ぶことができます
マットレスの最大の目的は、立った姿勢をベッド上でもキープすること。ご自身のからだの凹凸に合ったものを正しく選ぶことが大切です。マットレスがやわらかすぎると、からだで一番重いお尻が沈んでしまって腰に負担がかかります。逆にマットレスがかたすぎるとお尻や骨盤といったからだの出っぱった部分がうっ血し、よけいな寝返りや肩こり・腰痛・冷え性の原因となります。
とはいえ、捨てていただきたいのが「やわらかいと、腰が痛くなる」という思い込みです。このような思い込みを持って来店される方も多いのですが、実は、マットレスが厚くやわらかいもののほうが、よい寝心地を叶え、価値が高いとされています。その理由は、マットレスの構造にあります。
断面模型で、各マットレスの特徴を確認しながら選べます。
マットレスは「コイル」「クッション材」「側生地」の3つからできています。価値の決め手は「コイル」で、コイルの密度が高くしっかりしているものがいいマットレス。バネの強度がなく、スカスカしたコイルがいわゆる「腰を痛めるやわらかいコイル」、つまり“やわらかすぎる”マットレスです。コイルがしっかりしていれば、からだが接するクッション面がやわらかくても体圧がしっかり分散されるので、からだの一部のみが沈みこむことがなく、よりよい寝心地が叶えられます。
●寝心地を追求するならダブルクッションタイプのフレームを
マットレスを選んだら、つぎは「フレーム」について考えます。あまり知られていないのですが、同じマットレスでも、フレームによって、寝心地は大きく変わります。
フレーム選びに大切なのが、ご自身が優先したい条件です。寝心地を優先したいのか、収納付きのベッドがいい、電動リクライニングタイプがいいなどの機能を重視したいのか、あらかじめお考えになっていただけるとスムーズです。
寝心地を追求したいという方には、次の順番でおすすめしています。
①「ダブルクッションタイプ」
内部にスプリングを使用したフレームで、欧米では9割がこのタイプ。ホテルのベッドを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。からだの凸凹をマットレスだけでなく、ボトムスプリングでもサポートしてくれます。
②「ウッドスプリングタイプ」
木製のバネを使用したフレームで、弓なりにしなるウッドスプリングがからだの凸凹をサポートします。通気性がよいのでマットレスも長持ちし、下に空間があるので掃除がしやすいのも特長のひとつです。
③「シングルクッションタイプ」
スノコや板の上にマットレスを置くタイプのフレームで、引き出しや収納スペースがついていたり、電動リクライニングがついていたりと、ライフスタイルに応じた機能的なフレームです。からだの凸凹をサポートする力は3つのなかでは一番低いですが、マットレス選びを工夫すれば快適な眠りが得られます。
●枕はマットレスと一緒に選ぶことが大切
立ったときの姿勢を、ベッドの上でもキープするという役割はマットレスも枕も同じ。さらに枕には、マットレスだけでは支えることのできない頭部と頚椎を支えるという大切な役目も担っています。マットレスにからだが沈む度合いに合わせ、あごが5度ほど下がる姿勢を保てるものを選びます。
枕は、マットレスとの相性を見極めることが欠かせませんので、ぜひ一緒に選んでいただきたいですね。選んだマットレスに寝てみて、合う枕を試しながら選んでいただければと思います。ちなみに、寝具にも寿命があり、一般的にはマットレスは7~10年、持ちのいいタイプのもので15年ほど。枕は2年と言われています。この寿命も寝心地や衛生面を左右しますので、買い替えの目安にしていただきたいと思います。
●肌ざわりや季節感はカバーリングで楽しみたい
マットレスと枕を選んだら、もうひとつ揃えたいのが掛け寝具。からだの負担にならないような軽い寝具、そして適度な温度と湿度を保つものを季節に合わせて選びます。
さらに、こだわりたいのがカバーリングです。肌に直接ふれるものですし、眠っているときに目を閉じると触感は研ぎ澄まされますので、大切にしたいのが肌ざわりの良さです。やわらかな質感がお好みなら伸縮性のあるコットンのニット素材を。エジプト超長綿を使ったシーツはホテルのようなパリっとした肌ざわりを好まれる方におすすめです。
Tシャツのようにマットレスにフィットするニット素材のシーツ。さらりとした触感のよさが特長で、リピーターも多い人気の素材です
暮らしのあちこちに快眠のヒントがある
はじめにも少しお話ししましたが、質のよい眠りは寝具だけで得られるとは限りません。就寝前のリラックスや、よい眠りへといざなう寝室環境も欠かせない要素となります。そこで、寝具のほかに、カーテンや照明、カーペットなどを工夫することもアドバイスさせていただいています。
●普通のカーテンと遮光カーテン、おすすめは?
夜明けとともに明るくなる光を感じて、からだが起きる準備を始めることは目覚めのよさにつながります。ほとんどの方に普通のカーテンをおすすめしますが、夜勤などで明るい時間にしっかり眠りたい方などは例外です。遮光カーテンにも遮光のグレードがありますので、ご自身のライフスタイルに合わせて選んでください。
カーテンの一部を遮光にして、朝の訪れを感じながらも光の量を調節するオーダーカーテンや、目覚まし時計と連動して起床時間に自動でカーテンが開くカーテンレールなど、よりよい眠りと目覚めのためのアイテムもご紹介しています。
部分的に遮光にできるカーテンもつくれます。夜間は窓から入る外灯などのまぶしさを抑えながらも、朝は陽の光を取り入れ、すっきりと目覚めることができます
●就寝前は、赤みのある暖かな照明光を
仕事など日中の作業には蛍光灯の白い光が適していますが、夜は赤みのある暖かな光がおすすめです。夕方から夜にかけて、徐々に照明を落として入眠準備をしましょう。
寝たときに電球が見えるような照明器具は、まぶしいので眠気を妨害してしまいます。シーリングライトは曇りガラスなどで光を和らげ、リモコンや枕元の調光器で光を加減できるようにしましょう。
リモコンで光量や色合いを変えられる照明器具もあります
●1日のはじめの一歩を、やさしく心地よく
ベッドから降りたとき、床の冷たさに驚くことがあります。夏はベタつきが気になりますし、冬のフローリングはとくに冷たく、足がふれた瞬間に心臓がドキっとすることがあります。
1日のはじめの一歩が、やさしく心地よいものであるために、足元用にカーペットやラグをひくことをおすすめしています。
上質な眠りを得るためには、寝具はもちろん、暮らし全般に見直すべきポイントがたくさん散りばめられています。寝具からカーテンなど寝室空間の演出まで、担当スタッフが責任をもってアドバイスさせていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。
取材協力:IDC OTSUKA 有明本社ショールーム
展示面積約23,000平米を誇る日本最大級のインテリアの専門店としてソファやベッド、ダイニングセットなど、さまざまなスタイルのインテリアを豊富に取り揃えている。スリープアドバイザーも多数在籍。
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Text:大森りえ
撮影:鈴木真弓