プロフェッショナルの目線 Vol.10 ヴィンテージ家具のある暮らし。

プロフェッショナルの目線 Vol.10 ヴィンテージ家具のある暮らし。

[暮らしのアイデア]

2017年08月16日

デザインされてから半世紀以上経ってもなお、古びることがないヴィンテージ家具。
ただ美しいだけではないその魅力を、『カーサ ブルータス』の松原亨編集長が語ります。

話=松原亨(『カーサ ブルータス』編集長)

text by Seishi Isozaki
photo by Naoki Seo

目線1

だからミッドセンチュリーの家具はかっこいい。

「ヴィンテージ家具」と「アンティーク家具」はどう違うの?そういう疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。どちらも古い家具を表す言葉で、「100年以上前につくられた手工芸品・工芸品・美術品」をアンティークと呼ぶのが一般的ですが、実際には世界標準の定義はありません。21世紀に生きる私たちにとっては、19世紀以前につくられたものをアンティーク、20世紀につくられたものをヴィンテージと呼ぶ、というくらいのざっくりした感覚で、家具屋さんたちもこの言葉を使っているように思います。

一般にアンティークと呼ばれる家具は凝った装飾が施され、その装飾性こそ魅力です。一方、20世紀初頭に始まったモダニズムデザインのムーブメント以降につくられた家具は、装飾を排除したシンプルなデザインで、構造美や機能美を愛でるものに大きく変化しました。いま人気のあるヴィンテージ家具の多くは20世紀初頭から1960年代までのモダンデザイン時代につくられたものです。この時代の家具のもうひとつの特徴は素材です。19世紀の家具はほとんど木製ですが、20世紀前半にはスチールやプラスチックなど、その当時の最新素材が椅子などにも使われるようになりました。

20世紀前半のモダンデザインの流行は世界的なものだったので、世界各地で同様のコンセプトで、でもその土地ならではの美意識をもってデザインされた家具がつくられました。アメリカ、北欧、フランスやイタリア、そして日本でも。そのため、さまざまな国の文化を反映した個性豊かなヴィンテージ家具を、現代の私たちは楽しむことができるのです。

特に1940年代から1960年代の、いわゆる「ミッドセンチュリー」の時代は、世界的にモダンデザインのピークだったのだと思います。構造美、機能美を追求し、プライウッド(合板)やプラスチック、金属などさまざまな素材を駆使した美しい椅子やテーブルなどが世界中でデザインされました。いまでもこの時代の家具の人気は非常に高い。誤解を恐れず言えば、ミッドセンチュリーこそ家具デザインの頂点だったのではないかと思えるほど、時代を超えた美しさを持っています。


だからミッドセンチュリーの家具はかっこいい。
1951年にハンス・ウェグナーがデザインした、APストーレン製<イージーチェア>。1,900,000円(税別)。

1951年にハンス・ウェグナーがデザインした、APストーレン製<イージーチェア>。1,900,000円(税別)。

HIKE

ハイク
扱うのはミッドセンチュリーの北欧家具がメイン。実際の暮らしをイメージしたディスプレイは、商品の入れ替えに合わせ、週1回変更する。

住所/東京都目黒区東山1-10-11
電話/03-5768-7180
営業時間/11:00~18:00
定休日/火曜・水曜
www.hike-shop.com

目線2

ストーリーのある家具が暮らしを素敵に。

いまでは国内で流通するヴィンテージ家具は多様化し、それらを取り入れたインテリアのスタイルも一般化するようになりました。多くの人が古い家具に魅了されるのは、デザインの素晴らしさに加え、使い込まれた家具には〝ストーリー〞があるからだと思います。いつ、どこで、誰が、どんな目的でつくり、どんな人が使ってきたのか。そうした背景を知る楽しみを味わっているのです。

『カーサ ブルータス』は何軒もの家を取材してきましたが、素敵な家には必ずと言っていいほど古い家具がありました。買ったものもあれば、誰かから譲り受けたものもあり、なかには「祖母の家を取り壊したときに『これは捨てないで!』と言って引き取った」という、ドラマチックな話もありました。こうしたストーリーが空間ににじみ出て、その家ならではの空気感をつくっているわけです。

これからヴィンテージ家具を取り入れる方も、そうしたストーリーを買うつもりで商品を見て、直感で選んでいけばいいと思います。あれこれ考えず、まずは純粋に家具選びを楽しむ。そのほうがいいものに出合えますし、一目惚れした家具がインテリアのテイストを決めてくれるかもしれません。また、新築物件に古い家具は合わせづらいと思う方もいるかもしれませんが、僕はむしろ新しい家にこそヴィンテージ家具を取り入れることをお勧めします。まだ歴史もストーリーもない新築の空間で、住み手のスタイルや好みを表現するのに、ヴィンテージ家具が大いに威力を発揮すると思います。


ストーリーのある家具が暮らしを素敵に。
シャルロット・ペリアンが50年代にデザインした「ステフ・シモン」のエディション。1,500,000円(税別)。

シャルロット・ペリアンが50年代にデザインした「ステフ・シモン」のエディション。1,500,000円(税別)。

YAECA HOME STORE

ヤエカ ホーム ストア
一軒家を改装した店内でブランドの世界観を体現。フランスのミッドセンチュリーの家具を数を絞って展示している。

住所/東京都港区白金4-7-10
電話/03-6277-1371
営業時間/12:00~20:00
定休日/月曜
www.yaeca.com

目線3

家具選びは、実際のシーンを想像できる店で。

初めてヴィンテージ家具を買うなら、倉庫のように商品を積み上げている店ではなく、実際の生活シーンをイメージした、わかりやすい展示をしている店に行くことをおすすめします。たとえば、中目黒の『ハイク』。2000年にオープンしたこの店は、業界で初めて「北欧ヴィンテージはいい」と明確に打ち出しました。この時代の北欧家具は本当に形がきれいで、見ているだけでも楽しめます。コンディションのいい商品しか店に出さないので、初心者でも安心して選ぶことができるでしょう。

白金の『ヤエカ ホーム ストア』は、大人気のアパレルブランドが手掛ける店ですが、フランスのミッドセンチュリーデザインを中心としたセレクトが素晴らしい。ルネ・ガブリエルや、その弟子のピエール・ガーリッシュ、ル・コルビュジエの従兄弟で、彼の右腕として活躍したピエール・ジャンヌレなど、日本ではまだあまり知られていないデザイナーの作品は、シンプルですが、どこかかわいらしくもあります。ゆったりと家具を配置した空間も心地よく、部屋づくりのお手本となる店です。

最後に、かなり個性の強い店になりますが、『トムブラウン 青山店』を挙げます。アメリカ人デザイナー、トム・ブラウンが自らセレクトした家具でコーディネートした店内は、ミッドセンチュリーのオフィスを想起させる独特な雰囲気で、とにかくかっこいい。窓がなく、蛍光灯に照らされた無機質な空間に家具を置くという独特なセンスからも、学ぶことは多いと思います。


写真手前/ジオ・ポンティが50年代にデザインしたコーヒーテーブル。1,280,000円。 左/店舗で実際に使われているデスクはエドワード・ワームリーのデザイン。1,010,000円。 右/グレーのラウンジチェアは、イギリス人家具デザイナー、T.H.ロブスジョン・ギビングス作。二脚セット1,510,000円(すべて税別)。

写真手前/ジオ・ポンティが50年代にデザインしたコーヒーテーブル。1,280,000円。
左/店舗で実際に使われているデスクはエドワード・ワームリーのデザイン。1,010,000円。
右/グレーのラウンジチェアは、イギリス人家具デザイナー、T.H.ロブスジョン・ギビングス作。二脚セット1,510,000円(すべて税別)。

THOM BROWNE AOYAMA

トムブラウン 青山店
店内に置かれた家具はすべてトム・ブラウン自身が厳選し、配置も入念にチェック。自分の世界観の一部となれば、作者や年代にはこだわらない。

住所/東京都港区南青山5-3-20
ブルーサンクポイントA棟-2
電話/03-5774-4668
営業時間/12:00~20:00
定休日/年末年始以外無休
japan.thombrowne.com

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