インサイド・レポートハードからソフトまで幅広い対策で
安心して暮らせる住まいの実現を目指す
2012年12月11日
東日本大震災以降、住まいの耐震性や災害対策に注目が集まっている。マンション選びでもそれらは重要な要素となり、マンション開発業者は災害対応を強化する様々な取り組みを行っている。
徹底した品質管理の高さに定評のある三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス」でも、さらなる災害対応に力を入れている。そうした同社の取り組みについて、商品企画部長の日野永さんに聞く。
防災意識の高まりとマンションの災害対応
——東日本大震災以降、社会全体の防災意識が高まっています。丸の内の開発、数々のオフィスビルを手がけてきた三菱地所グループは、関東大震災の3年後の1926(大正15)年以降、毎年全社あげての防災訓練を行ってきた歴史があります。
三菱地所では関東大震災の際、飲料水の提供や炊き出しなどを行って以降、毎年9月に役員・社員、グループ会社などの関係者が参加する総合防災訓練を行っています。
災害発生時には全社をあげて緊急事態に対応できるよう、社員一人ひとりに役割分担が決められています。自分たちでつくってきた街や建物を自分たちで守ろうとの強い意識は、今日まで連綿と受け継がれています。
旧丸ビルの基礎に使用されていた約15メートルの松杭のレプリカとともに
——最近はマンションを選ぶうえでも災害対策を気にする人が増えているのではないでしょうか。
マンションの耐震性や災害対策は昔から重要な要素でしたが、最近は今まで以上に重視する方が増えています。私どもとしても、そのようなお客様の声に応え、より一層のきめ細かな取り組みを進めているところです。
「チェックアイズ」で徹底した品質管理
——御社のマンションは躯体構造の強固さに定評があります。
三菱地所グループはもともとオフィスビルを手がけてきただけに、建物の安全性には徹底的にこだわってきました。以前より法律で決められた基準に加え独自の基準を設け、より安全性の高い建物を目指してきました。
東日本大震災では、弊社のマンションに躯体構造上での深刻な被害はありませんでした。これは私どもが独自に設定している構造基準・設備基準の有効性が実証されたものだと考えています。
社内のスペシャリストが施工物件をチェック
——そのような御社の品質管理システムをまとめたのが「チェックアイズ」ですね。
私どものようなマンション開発業者の場合、施工は様々な専門会社に発注することになります。その際、施工会社によってお客様にお届けする住まいの品質にばらつきがあってはなりません。そこで我々が求める品質や性能、仕様をまとめ、マニュアルやチェックシートで徹底的にチェックする品質管理システムが「チェックアイズ」です。これは、設計段階での性能・施工の状況、お引き渡し段階での施工のまとめ、そして管理段階での定期点検の結果について、お客様にお伝えするものです。
災害対策基準を強化しコミュニティを守る
——昨年8月には東日本大震災をうけて災害対策基準を強化されましたね。
これまで以上に安心できる暮らしを提供しようと、マンションごとの立地や構造特性に合わせた基準を設定しました。とくにインフラが機能しなくなっても復旧までお住まいで暮らすことができる対策に力を入れています。
例えば防災倉庫、マンホールトイレ、非常時給水設備、救助用基本工具などの設置です。高層物件では非常用電源の稼働時間を延長し、エレベーターや給水ポンプ等の共用部分への電源を確保します。また、マンションごとに災害対策の取り組み内容をまとめ、建物の性能に関する情報をお知らせするチェックアイズブックの中に記載して、購入をご検討されるお客様にお渡しします。
防災倉庫には様々な備品を用意
——ソフト面での災害対策にも力を入れているそうですね。
災害対策には自助、共助、公助の三つが大切だといわれます。
我々が関わるのは自助と共助ですが、自助としては入居者のみなさんに防災マニュアルや防災グッズなどを配布します。
共助としては、災害の際に管理組合と居住者がとるべき行動をまとめる防災計画書作りをサポートする提案書を用意しました。管理組合と協力しながら、より効果的な防災訓練を行うしかけづくりにも取り組みます。
災害に強い地域は、人の絆の強い地域だとよくいわれます。入居者同士を結びつけ、コミュニティづくりの支援にもこれまで以上に力をいれ、災害に強いコミュニティ、地域づくりに貢献していきたいと思います。
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- 本記事は、2012年10月に朝日新聞に掲載された内容からの転載です。