ザ・パークハウスストーリー

ザ・パークハウス誕生までの物語をご紹介。テーマは、「一生ものに、住む。」そこに込めた住まいづくりの想いをお届けします。

「ザ・パークハウス 戸塚」子育てしやすい街づくりをリードする公民連携プロジェクト。

プロジェクトリポート「ザ・パークハウス 戸塚」子育てしやすい街づくりをリードする公民連携プロジェクト。

東海道五十三次で5番目に登場する宿場町、戸塚。
にぎわってきた街は、数十年前から大規模な再開発事業が進められ、横浜市が目指す街づくりのビジョンを感じられるエリアとなった。
過去に例のない公民連携プロジェクトから生まれた、集合住宅とその機能。理想を形にするためのプロセスとは。

text by Yuji Iwasaki
photos by Yoko Sawano

1993年の戸塚駅周辺の航空写真。

1993年の戸塚駅周辺の航空写真。(提供:戸塚区役所)

戸塚駅西口第2バスセンター。年代不明。

戸塚駅西口第2バスセンター。年代不明。(提供:戸塚区役所)

行政と民間事業者が連携して事業を進めていく〝公民連携事業〟。従来、この公民連携事業でよく見受けられたのは、行政が自らの知識や経験の範囲内で最適と考える事業スキームを構築し、詳細な条件設定をあらかじめ決めたうえで民間事業者を募集するケースであった。
その手法がうまく噛み合うこともあったが、市場の実状にそぐわず十分な民間事業者の応募を得られなかったり、民間事業者に大きな負担を強いることになったり、生かすべきノウハウやアイデアが埋もれてしまったり、といった課題もあった。

こうした状況を踏まえて、2008年、横浜市は共創推進事業本部(現・共創推進室)を立ち上げた。それまでの公民連携手法に留まらず、行政と民間事業者それぞれのメリットを生かしてさまざまな取組みを行うための組織である。1年後の2009年に共創推進事業本部に配属された、横浜市職員の谷口智行氏は言う。

「当初のメンバーは約20名でした。また、市職員のなかでもあえて民間企業経験者を多く集めた特徴的な組織でした。そしてまず、一歩進んだ公民連携である〝共創〟の基本的な考え方や仕組みをまとめた指針を策定したのです」

この共創推進の指針のなかでひと際目を引くのは、「共創の原則」という項目だ。「対等・対話」「目標共有」「アイデア保護と透明性確保」「役割分担と責任明確化」という4つの原則が記されている。そして「対等・対話」の原則を記した部分には、《共創における対話では、できるだけ早い段階から議論を開始し、市が想定する結論ありきではなく、ゼロベースから民間と市で課題を共有し、共に解決策を模索していく》という一文がある。

こうした指針と原則のもと、共創推進事業本部が初めて取り組んだ土地活用のモデル事業がある。のちに三菱地所レジデンスが選考事業者となって、建物内に認可保育所とコミュニティスペースを設けた『ザ・パークハウス 戸塚』。まさに、ゼロベースから考え出された集合住宅であった。

初の試みが前例となった1号案件。

以前の"開かずの踏切"。2015年にアンダーパスが開通した。

以前の"開かずの踏切"。2015年にアンダーパスが開通した。

共創推進事業本部の事業に三菱地所レジデンスとして参画を担当したのは、横浜事業部の鈴木正道である。

「最初に提示された公募要項の骨格について、まず民間事業者が意見や提案を出すという流れでした。このやりとりが『対話』に当たります。その後、対話の内容を踏まえて、どんな土地活用が適切なのかを横浜市が再検討し、正式な公募要項がつくられるというプロセスでした」

横浜市の記者発表資料には、「公民連携による課題解決型公募手法をモデル的に実施」とある。つまり、初の試みをモデルと位置づけ、正式な募集前に課題を浮かび上がらせる、そのプロセスも重要視したのである。

モデル実施に当たって横浜市は、いくつかの候補地のなかから戸塚区吉田町の土地を選んだ。そして、地域特性やニーズ、さらには横浜市が積極的に推進してきた保育所の待機児童を減らす対策などとあわせて、複数の検討課題を想定。2010年12月、公募要項の骨格提示とともに対話の進め方を説明する場で、民間事業者に向けて《民設民営による保育所などの子育て支援施設》《地域の生活利便性の向上や地域経済の活性化に資する公益性のある民間施設》などの対話の対象項目を公表した。

リーマンショック以降、他の地方自治体における公有地処分の不調を耳にしていたこともあり、谷口氏を始め共創推進事業本部では、興味を示す民間事業者数に不安を抱いていた。
「説明会には、10社ほどの民間事業者が参加してくれれば上出来だと思っていました。ところが、実際には27社も訪れていただきました。共創推進事業本部内では『やってよかった』という声が上がり、関わったほかの部署は驚いていましたね。何よりうれしかったのは、大手企業のほか、市内の建設業者や不動産開発業者など、さまざまな規模、地域の企業が参加してくださったことです」

谷口氏は当時の思いをこう話す。翌2011年1月に行われた対話の場には、18グループが参加。アイデアや意見、さらには問題点までもが各民間事業者から出されることになった。そして8月、対話の概要と対話結果に対する市の考え方が改めて示され、9月に正式な公募要項が発表されることになった。

「ザ・パークハウス 戸塚」

フォトギャラリー

  • 建物の上階から見下ろした防災広場。普段は、植栽の美しさを楽しめる中庭として親しまれている。建物の上階から見下ろした防災広場。普段は、植栽の美しさを楽しめる中庭として親しまれている。
  • 駅前に続く道路沿いに面したエントランス。駅前に続く道路沿いに面したエントランス。
  • 防災広場の一角には和風デザインの庭園スペースが。防災広場の一角には和風デザインの庭園スペースが。
  • 防災広場には散策路が設けられている。防災広場には散策路が設けられている。
  • ソファが置かれたラウンジ。ソファが置かれたラウンジ。
  • エントランスから道路に通じるスロープ。エントランスから道路に通じるスロープ。
  • エントランスの受付カウンター。エントランスの受付カウンター。
  • 居心地のよいウッドデッキから、季節ごとに表情を変える植栽を眺められる。居心地のよいウッドデッキから、季節ごとに表情を変える植栽を眺められる。
  • エントランスに掲げられた館銘板。エントランスに掲げられた館銘板。
  • 駐車スペースは道路から見えない奥まった位置に。また、一角にはカーシェアリング用の車が置かれている。駐車スペースは道路から見えない奥まった位置に。また、一角にはカーシェアリング用の車が置かれている。

  • 建物の上階から見下ろした防災広場。普段は、植栽の美しさを楽しめる中庭として親しまれている。
  • 駅前に続く道路沿いに面したエントランス。
  • 防災広場の一角には和風デザインの庭園スペースが。
  • 防災広場には散策路が設けられている。
  • ソファが置かれたラウンジ。
  • エントランスから道路に通じるスロープ。
  • エントランスの受付カウンター。
  • 居心地のよいウッドデッキから、季節ごとに表情を変える植栽を眺められる。
  • エントランスに掲げられた館銘板。
  • 駐車スペースは道路から見えない奥まった位置に。また、一角にはカーシェアリング用の車が置かれている。

2つの施設の実現性を高めるため。

鈴木は情報を整理しながら、横浜市と社内に提出するプレゼン用資料を仕上げていった。 ただ、事業参加を不安視する声も耳に入ってはいた。全国に先駆けた新たな試みとして行政が始めた公民連携プロジェクトであるから、当然の反応である。鈴木が明かす。

「保育所や公益性のある民間施設を設ける条件、興味を示していた事業者の多さから、私を含め関わったメンバーのあいだでは、『実現できたら奇跡だな』と言っていた時期もありました。でも、途中から意識が変わっていきました。やるなら、やってやろうと」

提案型コンペでは、実現性と継続性が重要なポイントとなる。情報収集の過程で、賃貸物件を利用している保育所が多いことを知った鈴木は、保育所のスペースを区分所有者として買い取ってくれる運営会社探しを考えるようになった。賃貸より買い取りの方が、安定的な運営を期待できると判断したのである。

そんな折、別物件の関係で招かれた市内の会合に顔を出す機会があった。そこで主催者から、ある人物を紹介された。東京を中心に多くの保育所と学童保育施設の運営を展開していた『グローバルキッズ』の社員であった。日を改め、鈴木はグローバルキッズの本社に足を運んだ。
打ち合わせの席には代表取締役である中正雄一氏が姿を見せた。プランの概要を説明したうえで、鈴木は本題を切り出した。

提供公園の遊具。

提供公園の遊具。

「もし弊社が事業者に選ばれた際には、区分所有者として保育所を設けられるか考えていただきたい旨をお話ししました。日を置いてから正式な返答をいただくつもりだったのですが、横浜市で保育所を広く展開したいというタイミングでもあったようで、中正社長はその場で『わかりました。やりましょう』と即答されました。あの決断力は、私にとって心の支えにもなりました」

風向きは明らかに変わった。続く課題は、《地域の生活利便性の向上や地域経済の活性化に資する公益性のある民間施設》だ。対話後に市は、この民間施設について「多世代間のコミュニティの創出」という考え方を示している。鈴木は、大規模マンションのコミュニティづくりに実績のあるコンサルティング会社を通じて、NPO法人『くみんネットワークとつか』と連絡を取った。

一般企業に当たる選択肢もあったが、営利性の視点に立つと、継続性を損なうリスクを伴うと考えたのである。すでに、カフェやイベントの運営で実績を重ねていた『くみんネットワークとつか』は、鈴木の提案に賛同し、アイデアまで逆提案してくるほどに好反応だった。そして、多世代間の交流の場として機能するコミュニティスペースとして『ふらっとステーション・とつか』を設ける方針が決まった。

『ふらっとステーション・とつか』で開かれたイベント「ベビーマッサージ」にて。

『ふらっとステーション・とつか』で開かれたイベント「ベビーマッサージ」にて。

 『グローバルキッズ戸塚吉田町保育園』にて。

『グローバルキッズ戸塚吉田町保育園』にて。

井戸の設置にこだわった思い。

鈴木が設置にこだわった防災井戸。

鈴木が設置にこだわった防災井戸。

最終的に応募したのは7グループであった。そして2012年1月、三菱地所レジデンスが選考事業者として選ばれた。グループごとに特長ある企画案が出されたが、選考に当たって三菱地所レジデンス案が高く評価されたのは、保育所と民間施設の運営主体が具体的だったためだ。運営主体が異なる2つの施設を集合住宅内に設け、かつ互いにメリットを生かせるよう、さまざまな協議も重ねてきた鈴木の努力が報われたのである。

あとは横浜市と契約を済ませ、正式な事業計画書を提出し、実際の建設事業に移行することになる。ただ鈴木には、もうひとつ実現にこだわったアイデアがあった。敷地内に井戸を設置するというものだ。調査の結果、飲用に適した地下水が出ないとわかり、社内では「井戸は不要ではないか」という意見も出た。それでも鈴木は諦めなかった。

「このプロジェクトで対話の機会が設けられた2カ月後、東日本大震災が起こりました。あの震災で改めて思い知らされたのは、生活用水確保の重要性でした。井戸の脇にマンホールが2つあります。災害時にはこのマンホール上に災害用トイレを設置して、井戸の水を排水用に使うことで、臨時のトイレとして利用できるようにしました」

防災広場では、高さの異なる木々や植物が植えられている。

防災広場では、高さの異なる木々や植物が植えられている。

ウッドデッキのテラスとなっている防災広場は、普段は住民の憩いの場となっている。しかし、かまどベンチなども設置されており、防災倉庫とあわせて災害時に対応できるようになっている。さらに、状況に応じて地域住民も受け入れる計画だ。

「最初は、駅からの近さが一番の魅力でした。住み始めてからは、安心安全な子育て向きの環境が何よりの魅力だと感じています。『ふらっとステーション・とつか』では、子ども向けのイベントがあって、顔を出す機会もあります。いろいろな人が集まって面白いんですよ」

『ザ・パークハウス 戸塚』に住んでいるという子連れの女性の言葉だ。行政と民間事業者のアイデアによって生まれた『ザ・パークハウス 戸塚』は、コミュニティと街づくりの核となった理想的な成功例といえるのかもしれない。

子育てしやすい街づくりをリードする公民連携プロジェクト

グローバルキッズ戸塚吉田町保育園

グローバルキッズ戸塚吉田町保育園

右上/建物に掲げられたロゴプレート。右下/子どもに遊びの種類やスケジュールを強制せず、自由に過ごさせるという。左上/食材や調理法、食育にも力を注ぐことが、グローバルキッズの指針のひとつとなっている。左下/ 園庭のシンボルとなっている小山。

2006年に創業した『グローバルキッズ』は、東京都内で60カ所以上、横浜市内で17カ所もの認可・認証などの保育所を展開している大手。その規模から知名度が高いが、保育環境にこだわった理念と質のよさでも知られている。

地域の特性や子どもの個性に柔軟に対応しており、事実『グローバルキッズ戸塚吉田町保育園』では、園長の戸田雄介氏が土を入れた土のう袋を自ら車で運び、園庭に遊べる山をつくった。

もともと戸田氏は他県で10年以上にわたって保育士を務めたベテラン。現在は、戸塚区の園長会の役員も務めている。そんな戸田氏は、「横浜市のなかでも、特に戸塚は保育環境が素晴らしい」と言う。


電話/045-866-2822
※入所のお申込みなどは戸塚区役所〈こども家庭支援〉担当
(045-866-8467)へお問合せください。
開園時間/7:30~20:30(土曜~19:00)
休園日/日曜日、祝祭日、年末年始
www.gkids.co.jp/

ふらっとステーション・とつか

ふらっとステーション・とつか

右上/カフェのテーブルから新しい活動が生まれることも。右中央/ コンサートの様子。子どもから学生、年配者まで、幅広く交流するさまざまなイベントが催される。右下/壁はギャラリーとして利用可能。左/ 会議室で開かれた「ベビーマッサージ」のイベント。

戸塚をよりよい街にするため、2008年に立ち上げられたNPO法人、『くみんネットワークとつか』が手掛けるコミュニティスペース『ふらっとステーション・とつか』。

「居場所づくり」をメインテーマに、子ども、学生、子育て中の保護者、社会人、ご年配の方まで、戸塚エリアに関わるあらゆる人が自由に立ち寄れる場となっている。

スペース内にはカフェと会議室があり、さらに一角に委託販売用の棚を設けたり、壁をアート作品の展示に利用したりと、出入りする人たちのアイデア次第でさまざまな活動が可能。

代表の内山郁子氏は、「ここで出会った人たちが、自主的に活動の幅を広げていくことが多いんです」と言う。


電話/045-435-5068
営業時間/10:00~17:00
休業日/木曜日、年末年始、夏休み(8月中旬)
備考/イベントについてはホームページを確認。
www.furatto-totsuka.com/wp/

『踊場公園こどもログハウス』にて。

『踊場公園こどもログハウス』にて。

『グローバルキッズ戸塚吉田町保育園』にて。

『グローバルキッズ戸塚吉田町保育園』にて。

『こまちカフェ』にて。

『こまちカフェ』にて。

子どもを連れて行きたい戸塚エリアの注目スポット

横浜市の内陸部に位置する戸塚エリアは、湾岸エリアとは違って子ども向けスポットが数多い。平日から週末まで、子連れで楽しく過ごすためのヒントを見つけたい。

こまちカフェ

こまちカフェ

住所/神奈川県横浜市戸塚区戸塚町145-6 奈良ビル2階
電話/070-5562-9555 営業時間/10:00~17:00(L.O.16:30)
(ランチは11:00~14:00)
休業日/日曜日、祝日、第2月曜日
(祝日の場合は第1または第3月曜日)、お盆休み、年末年始
※駐車場設備はありません。公共の交通機関、あるいは周辺の駐車場をご利用ください。

『こまちカフェ』は、子連れでも利用しやすいようにプロデュースされたカフェ。店内には木の遊び場が設けられ、子ども用の椅子や木のおもちゃも用意されている。

提供されるメニューは、安心安全な食材にこだわって、素材の持ち味を生かす調理法を採用したものばかりだという。しかも、ゆっくりと過ごせるよう、平日のランチタイムには見守りスタッフが常勤している。

最近では、このカフェで知り合った客同士が一緒に過ごしたり、子どもを連れて里帰りした際に地元の友人と待ち合わせたりと、さまざまなつながりが生まれているとか。

また、さまざまな講座やイベントを店内で実施。コミュニティとしても機能している。

舞岡公園・小谷戸の里

舞岡公園・小谷戸の里

住所/神奈川県横浜市戸塚区舞岡町1764
電話/045-824-0107 開館時間/9:00~17:00
小谷戸の里休館日/第1・3月曜日(祝日の場合はその翌日)、
年末年始(12月29日〜1月3日)※有料駐車場があります。

都市公園でありながら、昔の田園風景が残された『舞岡公園・小谷戸の里』。敷地面積は28.5haにも及び、ピクニック気分で散策するだけでも十分に楽しめる。

もっとも休日ともなれば、子どもや孫を連れた大人たちがイベントに参加するために足を運ぶことが多い。

田んぼや畑での農作業体験、古民家で開催されるワラ細工、竹細工、茶摘み、月見、収穫祭、正月飾りづくりといった四季折々の行事、生物多様性を体感できる自然観察会など、年間1,000を超える自然体験や農文化体験のイベントが催されているからだ。

土に触れる機会が減った子どもに勧めたいスポットといえる。ただし、農作業などは事前申し込みが必要なケースが多いので、前もって確認を。

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