プロフェッショナルの目線 Vol.5 ペットとの共同生活に必要な心構えとは

プロフェッショナルの目線 Vol.5 ペットとの共同生活に必要な心構えとは

[暮らしのアイデア]

2016年05月11日

かけがえのないパートナーとして10数年の年月をともに過ごすペットのために、
飼い主が知っておくべきこと、するべきことを、獣医師の佐藤裕臣さんにうかがいます。

話=佐藤裕臣(代官山ペットクリニック院長)
麻布大学卒業後、神奈川、埼玉の動物病院に勤務。東京・世田谷区の動物病院院長を経て、2014年に代官山ペットクリニックを開業。ウサギ、ハムスター、カメ、トカゲ、ヤモリなどの診察も行う。

text by Seishi Isozaki

目線1

ペットを迎え入れるための準備をする

近年、犬も猫も寿命が延びる傾向にあり、15~16年生きるのが珍しくなくなりました。「ひとたび飼い始めたら、それだけの長い期間、自分が世話をすることになる」。そう心積もりをして、ご自宅にペットを迎え入れていただきたいと思います。「とりあえず飼ってみてから考える」のでは遅いのです。

日本の住宅事情を考えると、室内で小型犬や猫を飼うことが多いと思います。その他の動物、例えばウサギ、ハムスター、カメ、トカゲなどを飼う場合は、あらかじめ通院できる範囲に受診可能な動物病院があるかどうかを調べておいたほうがいいでしょう。いずれも静かで臭いが少なく、小スペースでも飼育できるため集合住宅でも飼いやすいのですが、診察できる動物病院は少ないのが現状です。

ペットを迎える前にそろえておきたいのが、動物病院などに連れていくときに必要になるキャリーケース、食器と水入れ、トイレ(猫砂、ペットシーツ)です。トイレは部屋の隅など、リラックスして用が足せる場所に置くのがベスト。猫はきれい好きでこだわりが強いので、複数頭飼う場合は、頭数以上のトイレが必要です。犬を飼う場合は、散歩用のリードも用意しておきましょう。小型犬は気管が弱いことが多いので、首輪よりも胴輪につけるタイプがおすすめです。犬も猫も、首輪をつけっぱなしにするとその部分の毛が抜けてしまうことがあるので、注意してください。

ペットがストレスを感じるとき
ペットの健康を保つための病気予防処置
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住環境を整え、病気やケガを未然に防ぐ

犬は自分の居場所があると安心し、仕切られた狭い空間で眠るのを好むので、サークルもあったほうがいいでしょう。設置はリビングなど、人目につく場所が適しています。子犬は、新しい環境では体調を崩しやすいので、何か変化があったときや排泄したときにすぐ気づいてあげられる場所を選ぶようにしてください。ただし、直射日光やエアコンの風が直接当たる場所は避けること。子犬は寒さに弱いので、冬場はペットヒーターを使うことをおすすめします。品種にもよりますが、犬や猫にとっての適温は22~26℃といわれています。夏場は人が「少し涼しい」と思うくらいがちょうどよく、1日の温度差は5℃以内、湿度は40~60%に保つのが理想です。犬は猫よりも暑さに弱く、人より低い気温で熱中症になるので、特に注意が必要です。「エアコンの設定温度」を鵜呑みにせず、温度計で実際の室温を確認するようにしてください。

玄関やベランダへの飛び出しを防ぐための柵や、ペット用の階段やスロープも用意しておくと、室内での思わぬケガを回避できます。ソファやベッド、階段から飛び降りたことが原因で足を痛めるケースは非常に多いです。また、高齢や足腰の弱いペットにとっては、ツルツル滑るフローリングもケガの原因となります。カーペットを敷くことで問題は解決しますが、爪が伸びると引っかかることがあるので、定期的に爪の長さをチェックしてあげてください。

その他、室内で気をつけたいのはキッチンでの誤飲誤食やヤケドです。特に猫は調理台にも簡単に登れるので、火を使うときは十分に気をつけるようにしてください。

ラグに爪がひっかからないよう、定期的に爪のお手入れを。

ラグに爪がひっかからないよう、定期的に爪のお手入れを。ソファやベッドなどからの飛び降りも思わぬケガの原因となるので注意が必要。

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目線2

早め早めの対処が心身の健康を保つ

ペットも日々ストレスにさらされています。主な原因を右にあげましたが、現実的にはストレスの原因を100%取り除くのは不可能ですから、あまり神経質になることはありません。家の中でゆっくり休める場所があれば、自然とペットのストレスは軽減します。それに人間も動物も、まったくストレスがない環境下では、かえって体調を崩しやすくなるのです。

ペットの健康を維持するためには、普段と違うことがないか、日頃からよく観察することが肝心です。食欲や排泄物のチェックのほか、ブラッシングをマメにすることで、皮膚の異常やシコリにも気づきやすくなるでしょう。多飲・多尿は病気の可能性が高いので、早めの受診をおすすめします。

病気の予防には、予防接種やワクチンが有効です。犬は年1回の狂犬病予防接種が法律で義務づけられており、蚊が媒介するフィラリア症も薬でほぼ100%防げるので、しっかり予防してあげましょう。また、避妊手術にも将来起こりうる子宮や乳腺の病気を予防する効果があることが分かっています。手術の時期が早いほど乳腺腫瘍の発生率が下がるため、最初の発情を迎える前に手術を行うのが理想です。

健康に見えても、6歳を過ぎたら年に1回は健康診断を受けるようにしてください。血液検査では、甲状腺のホルモン量も測定しておくと安心です。犬は甲状腺からホルモンが出にくくなる病気、猫は逆に出すぎてしまう病気があるのですが、定期的なチェックにより早期発見できるケースが多々あります。病気の治療に際しては、病状などを詳しく伝えていただくことが治療の手助けとなります。言葉での説明が難しい場合は、家での様子を録画して獣医師に見せるといいでしょう。

犬は生後3カ月までの生活が、性格形成に大きな影響を及ぼす。この時期に飼い主との信頼関係をしっかりと築き、トイレなど、人との共同生活に必要なしつけを行うのが好ましい。

飼い主との信頼関係をしっかりと築き、トイレなど、人との共同生活に必要なしつけを行うのが好ましい。

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しつけは早い時期から、ただし焦らず、根気よく

健康管理と同様、欠かせないのがしつけです。特に飼い主以外の人間や他の家のペットと接触する機会が多い集合住宅では、無駄吠えや噛み癖などの問題行動を起こさないよう、きちんとしつけることが求められます。しつけは自宅に迎えたタイミングで始めるのが理想ですが、子犬は最初の2週間は体調を崩しがちです。構いすぎると低血糖を起こすことがあるので、最初はゆっくりと、トイレの指導をするくらいがいいでしょう。言うことをきかせるために怒鳴りつけたり体罰を与えたりすると、飼い主を「恐怖の対象」として認識し、オドオドした性格になることがあるのでご注意を。

しつけの目的は、犬も社会の一員として共同生活ができるようにすることなので、飼い主との信頼関係をしっかりと築くことが何より大切。普段から犬の行動に関心を示し、お利口にしているときに褒めることも大事です。問題行動がある場合は、そうなった原因を考え、根気よく対処していきましょう。プロのトレーナーに託すのもひとつの方法ですが、飼い主が以前と同じように接していたら、犬の行動もやがて元に戻ってしまいます。犬を変えたかったら、ご自身も変わらないといけないのです。

猫は散歩の必要がなく、留守番させても寂しがらないが、思わぬ行動に出ることがある。

猫は散歩の必要がなく、留守番させても寂しがらない。犬に比べて手がかからないが、思わぬ行動に出ることがある。調理中の調理台に飛び乗ったり、狭い場所に入り込んだりすることがあるのでご注意を。

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