いま住宅ローンを借りるなら「変動型?固定型?」住宅ライターが金利の見方を多角的に紹介

いま住宅ローンを借りるなら「変動型?固定型?」住宅ライターが金利の見方を多角的に紹介

[住まい選びの基礎知識]

2017年12月21日

「今の超低金利は、マイホーム購入の大きなチャンス」――と感じている方も多いでしょう。でも、同時に住宅ローンを組むことや金利の先行きに対する不安を感じているかもしれません。「変動型か固定型か」といった金利タイプの選択にも迷いがちです。そこで今回は、マイホームの資金計画に詳しいベテラン住宅ライターが、住宅ローンの金利の見方を解説します。

今まさに史上最低金利の記録を更新中…

初めに住宅ローン金利の現状をおさらいしておきましょう。1990年代半ばから始まった低金利時代は、20年以上に渡って続いています(図1参照)。この間に「もうこれ以上、金利は下がりようがない。今後は上昇する」と何度も言われましたが、その予測は見事に外れてきました。「ゼロ金利政策」で始まった21世紀は、「明らかな金利上昇トレンド」を一度も体験していません。

景気がやや浮揚した局面で、わずかに金利が上向きかけたことはあります。しかし、2008年のリーマンショック後に一段と低下しました。「異次元の金融緩和」や「マイナス金利政策」など、日銀の金融政策が「前例のない実験」ともいわれる未知の世界に入るにつれ、史上最低金利が更新され続けています。

(グラフ出典:変動金利:都市銀行の各年末の「店頭表示金利」(1989〜93年は長プラ連動、94年以降は短プラ連動)。固定金利:1989〜2003年は住宅金融公庫の基準金利、04年以降はフラット35の最低金利で各年末の水準(2017年は10月時点))

(グラフ出典:変動金利:都市銀行の各年末の「店頭表示金利」(1989〜93年は長プラ連動、94年以降は短プラ連動)。固定金利:1989〜2003年は住宅金融公庫の基準金利、04年以降はフラット35の最低金利で各年末の水準(2017年は10月時点))

住宅ローンの代表的な金利タイプには、住宅ローン契約後に市場金利が変わると適用金利も変わる「変動型(※1)」と、住宅ローン契約時の金利が返済終了まで続く「固定型」があります。その中間的なタイプとして、一定の期間だけ金利を固定する「固定金利期間選択型」もありますが、図1では代表的な変動型と固定型の2つを取り上げています。

※1.変動型の適用金利は半年に1度見直されますが、返済額は5年間ごとに変更するというルールがあります。その間に金利が変動した場合は、利息と元金の割合を調整することで吸収する仕組みです。また、返済額が増える場合は、従前の1.25倍が限度になります(金融機関によっては、この「5年/1.25倍ルール」が適用されないケースもあります)。

このグラフ上で、変動型は1995年以降ほとんど横ばいに見えます。しかし、これは「店頭表示金利(基準金利)」で、実際の「適用金利」ではありません。金融機関は、この店頭表示金利をベースに、大幅に金利を引き下げる優遇サービスを行っています。優遇サービスが始まったのは、1990年代後半に“金融ビッグバン”が起きた頃からです。金融機関によってばらつきはありますが、当初は1%程度までの小幅な引き下げから始まり、その後、徐々に引き下げ幅が広がりました。2016年2月にマイナス金利政策に転換してからは、最大で2%を超える引き下げも珍しくなくなっています。2017年10月現在、変動型の適用金利は0.5~0.6%台(店頭表示金利マイナス2%弱)が中心です。

「景気が良くなると金利は上がる」は本当か?

さて、気になるのは「この先の住宅ローン金利がどうなるか」という点でしょう。金利予測は非常に難しい分野です。正面から論ずるには、国内の経済情勢だけでなく、海外の政治経済や財政問題なども絡むだけに、金融や経済の専門家でもなかなか長期的に、かつ正確に見通すことは難しいかもしれません。そういう中でも、専門家の間で共通して指摘されるのが「長期金利は、景気が上向くと上昇する」というセオリーです。

そこで、経済成長率(名目GDP)と長期金利(10年国債利回り)の長期的な動きを追いかけてみましょう。過去40年間の推移を示したのが図2です。これを見ると、経済成長率が上がったり下がったりするのにやや遅れて、長期金利が追いかけるように動いていることがわかります。この点では、上記のセオリーは間違っていないようです。

(グラフ出典:内閣府 平成29年度 年次経済財政「長期経済統計/国民経済計算」を基に、5年移動平均値を試算)

(グラフ出典:内閣府 平成29年度 年次経済財政「長期経済統計/国民経済計算」を基に、5年移動平均値を試算)

問題はこの先です。ここ数年は「実感のない景気回復」といわれることも多いようですが、統計上は成長率がプラスになっています。セオリーからいえば、長期金利に上昇圧力がかかっていることは間違いないでしょう。とはいえ「バブル景気」(1986年11月~1991年2月の51ヶ月間)や「いざなみ景気」(2002年2月~2008年2月の73ヶ月間。戦後最長)など、過去の好景気の時の金利動向を見ても、平均値ではそれほど大きく上昇していません。瞬間風速的に高めの金利になる可能性はあっても、長く続くことはなかったということです。

そういう意味では、これまでの経済成長率との相関を見る限り、今後も、急激に長期金利が上がる可能性は低いと予測できそうです。1980年代の安定成長期以降、長期金利は経済成長率プラスマイナス1~2%の範囲で推移しています。これくらいの振れ幅で、動いていくと考えてもよいのではないでしょうか。ただし、前述した通り、金利動向には複雑な要素が絡むだけに、「絶対にこうなる」という正解がないことは覚えておいてください。

実際のところ、金融機関は、金利水準をどう決めているのか?

いざ住宅ローンを借りるとなると、金利のタイプを選ぶ必要があります。タイプによって金利動向も変わるのでしょうか。住宅ローンの金利について取り上げた新聞や雑誌の記事などを見ると、「変動型は短期金利に連動し、固定型は長期金利を参考に決まる」と解説されています(※2)。大きなトレンドを見る上では、こうした相関性があることは事実でしょう。

※2.短期金利の指標は「無担保コールレート」に連動する「短期プライムレート」、長期金利の指標は「10年国債利回り」、固定期間選択型は「円金利スワップレート」と相関性があるとされます。これらの一連の“レート”を総称して「市場金利」と呼びます。

ただし、市場金利と住宅ローン金利の動きは必ずしも一致していません。金融機関が住宅ローン金利を決める際に、どの指標をどの程度まで考慮しているかを示した図3をご覧ください。

(出典:(独)住宅金融支援機構『2016年度 民間住宅ローンの貸出動向調査』のデータを基に作成)

(出典:(独)住宅金融支援機構『2016年度 民間住宅ローンの貸出動向調査』のデータを基に作成)

これを見ると、変動型でも全期間固定型でも、「競合する他機関の金利」を考慮する金融機関が90%以上と、突出しています。固定期間選択型は省きましたが、変動型とほとんど同じ傾向です。つまり、金利水準を決定するに当たっては、市場金利を参考にしつつも、他行との競合に勝つことを最優先している姿勢がうかがえます。

金融機関としては「1%を大幅に下回るような金利では、採算的に厳しい」ともいわれています。それでも、破格ともいえる低金利を設定しているのは、住宅ローン商品を安定的な収益源として重視する金融機関が多いからです。住宅ローンの融資をきっかけに、口座に関わる取引、保険やファンドの販売、教育や相続に関わる融資につなげて行こうという思惑もあります。つまり、金融機関の総合的な営業政策として金利を決めているということでしょう。

そういう意味では、新聞やテレビなどで「長期金利が上昇!住宅ローン金利に影響か」といったニュースが流れても、一喜一憂する必要はありません。各金融機関の具体的な動向を見ながら、冷静に判断するのが賢明といえるでしょう。

ローン利用者は、どの金利タイプを選んでいる?

現在の金利水準は、固定型のほうが変動型より高いのが一般的です。そのため、金利の低さで選ぶなら、固定型より変動型のほうが得に思えます。それでは、実際に住宅ローンを借りている人が、どのタイプを選んでいるかを見てみましょう。

(グラフ出典:住宅金融支援機構「2016年度 民間住宅ローン利用者の実態調査/民間住宅ローン利用者編」(第2回)」のデータを基に作成)

(グラフ出典:住宅金融支援機構「2016年度 民間住宅ローン利用者の実態調査/民間住宅ローン利用者編」(第2回)」のデータを基に作成)

図4の通り、半分近くが変動型を選んでいます。全期間固定型は2割に達しません。固定期間選択型の中では、10年固定がもっとも多くなっています。

こうした変動型に偏った傾向に対して、FP(ファイナンシャルプランナー)などの専門家は、「今は最低水準の金利なので、いずれ上昇する可能性が高い。変動型は危険」と、固定型を勧めるケースが少なくありませんでした。

しかし図1で示したように、超低金利時代が20年も続きました。90年代に、安全性を重視して割高な固定型を選んだ人より、目先の低金利に惹かれて変動型を選んだ人のほうが得をしたわけです。これはあくまでも結果論ですが、金利の先行きを予想して選ぶのは、どうも得策ではないような気がします。

最近は、FPなどの専門家の間でも「低金利時代に金利が上昇すると予想される場合は固定型、高金利時代に金利が下がると予想される場合は変動型」といった、単純な言い回しは影を潜めています。職業や収入状況、家族構成やライフスタイル、人生設計などを考え合わせ、個別にアドバイスをしているようです。誰にでも当てはまる正解はありません。

変動型か固定型か?金利タイプを選ぶポイント

ここでは、金利タイプを選ぶ際の一つの考え方を紹介しましょう。ポイントは「金利上昇リスクの許容度」です。平たく言えば「返済額が上がっても家計が対応できるか」「住宅ローン返済に余裕があるか」ということです。あくまでも一つの考え方として参考にしてください。

「住宅ローン返済に余裕があるかどうか」は「住宅ローンの返済比率=年間返済額÷年収×100」で判定できます。年収が600万円で、ボーナス返済を含めた年間返済額が180万円(毎月平均15万円)なら、住宅ローンの返済比率は30%です。一般に、住宅ローンの返済比率が20~25%なら「余裕あり」、35%以上は「余裕なし」といわれます。

○変動型を選んでもよいのは…

金利上昇リスクへの許容度が高い人です。つまり、住宅ローンの返済比率に余裕があり、金利が上昇して返済額が増えても、家計を圧迫するおそれがないと自信がある場合です。購入する時の頭金を払った後に、自己資金がある程度残っていることも大切です。いざというときに、まとまった金額を繰り上げ返済して、住宅ローンの残債を減らすことができれば、金利上昇の影響を抑えることができます。

住宅ローン金利・変動型のしくみ

なお、※1で触れた通り、変動型を選んでも「返済額の見直しは5年ごと」「返済額が上がっても最大1.25倍まで」という「5年/1.25倍ルール」を採用している金融機関から借りれば、返済額上昇に一定の歯止めがあります(※3)。

※3.金利が短期間に急上昇し、毎月返済額を上回る金利が発生すると「未払い利息」が残ることがあります。その場合、繰り越された「未払い利息」分の返済が優先され、元金の返済は後回しになります。長期間に渡って高金利が続くと、返済期間中に元金を返しきれない可能性があります。

○全期間固定型を選んだほうがよいのは…

金利上昇リスクへの許容度が低い人です。現在の超低金利で計算した返済額から、少しでも増えたら家計が厳しくなる場合、変動型を選ぶことはお勧めできません。なお、一部の自営業の方や一定の年収(金融機関によって異なる)以下の場合は、民間銀行の審査が通りにくいといわれます。その場合は、全期間固定のフラット35が有効です。

住宅ローン金利・変動型のしくみ

以上の考え方で行くと、結果として「収入の高い人が金利の低い変動型(返済額も低い)」、「収入の低い人が金利の高めな固定型(返済額も高い)」が向いているということになり、不合理に思えるかもしれません。ただ、これはあくまでも「将来の金利上昇リスクに耐えられるかどうか」という視点で見たときの判断です。

たとえば、収入が低めで当初の返済に余裕がない場合でも、「将来的に収入が確実に増える見込みがある」とか「親からの相続などで繰り上げ返済に充てる余裕資金ができる予定がある」といったように、金利上昇リスクへの許容度が高まる可能性があるなら、変動型を選ぶことも必ずしも危険とはいえません。

○固定期間選択型を選ぶのは…

変動型と固定型の中間的な考え方になります。「何年固定が良いか」は一概に言えません。金利上昇リスクをどう読むかによって、人によって判断が分かれるでしょう。「金利が上がりそうだから、なるべく長期の固定にする」といった考え方もあります。

また「住宅ローンの返済に余裕があるかどうか」は別にして、5年単位、10年単位で将来を見通せる人は、人生設計に合わせて固定期間選択型を選んでいるケースがあるようです。たとえば、

5年固定のケース:最初のうちは妻が専業主婦で子育て中だけれど、5年後に再就職してダブルインカムになって収入に余裕ができるので、固定期間が終わった時の金利上昇に耐えられるようになる
10年固定を選ぶケース:子供が大学に進学する10年後までに教育資金を貯めたいので当初の返済額を抑えたい、など。

もともと固定期間選択型は、変動型をベースに当初固定期間の特約を付ける仕組みになっているため、固定期間が終わると変動型に戻ります。その時に再度、固定期間選択型を選ぶことも可能です。返済途中で固定期間選択型から変動型へ、またその逆に変換することもできます。

現在は、10年固定の金利が最長35年の全期間固定より低いケースや、3年固定や5年固定が変動型より低く設定されるケースもあります。常に金利情報をチェックして、少しでも自分の考え方に合った有利なものを選ぶようにしましょう。

○「変動・固定ミックス」という選択肢も

変動型が良いか固定型が良いか迷って決められない場合は、変動型と固定型をミックスすることもできます。金融機関によって、変動型と固定型を50%ずつと決っているケース、変動型30%・固定型70%など割合を変えられるケースなど、いくつかのパターンがあるようです。

金利優遇方式の違いは、どう影響する?

金融機関によって、固定期間選択型の金利優遇方式を2種類用意している場合があります。返済期間の全てに渡って同じ幅で引き下げる方式(全期間優遇タイプ)と、固定期間の引き下げ幅を大きくする方式(当初固定期間優遇タイプ)です。後者は、固定期間が終わった後は全期間優遇タイプより引き下げ幅が小さくなります。たとえば、図5のような配分です。

図5:金利優遇方式の違いで返済額はどうなる?

※最初の店頭表示金利と優遇内容は、都市銀行Aの2017年10月時点のもの。11年目以降の金利は仮定

この例では、当初10年間の毎月返済額、10年間の総返済額は、「当初固定期間優遇タイプ」のほうが低くなります。しかし、11年目以降の毎月返済額、最後まで返済したトータルの返済総額ともに、「全期間優遇タイプ」のほうが軽くなります。どちらを選ぶかは価値観や好みの問題です。たとえば、当初固定期間優遇タイプが向いているのは「返済当初は教育費の負担が重いので返済額を抑えたい」とか「10年で買い換えを検討している」といったケースでしょう。

「長く借りて短く返す」のが賢い?

住宅ローンに関しては、金利の動きだけでなく、長期間に渡る返済に不安を持つ人も少なくありません。ただ、実際に住宅ローンを借りて完済した人達は、最初に返済期間を設定するときは25年超の長期間で組み、最終的には、8割以上の人が20年以内で完済しているという調査結果が出ています(図6参照)。10年以内の完済が3分の1に達し、最初の返済期間通りに返した人はごく少数です。

(グラフ出典:住宅金融支援機構「2016年度 民間住宅ローンの貸出動向調査」)

(グラフ出典:住宅金融支援機構「2016年度 民間住宅ローンの貸出動向調査」)

最初に返済期間を短く設定すると、毎月返済額が大きくなって負担が重くなります。そのため、返済期間は長く設定しておき、その後に積極的に繰り上げ返済をして返済期間を短縮する人が多いということでしょう。あまり長期返済に不安を持つ必要はありません。この方法は、金利上昇リスクを抑える効果もあります。つまり、「長く借りて、短く返す」のが賢い返済計画といえるのではないでしょうか。

住宅ローンを選ぶ際には、金利以外の諸費用にも注意

今回は金利を中心に解説してきました。最後に、金利以外にも住宅ローンの負担を左右するポイントがあることに触れておきましょう。それは、図7のように多岐にわたる手数料です。これらを合わせた諸費用の総額は、借入金額に応じて数十万円から数百万円に達するケースもあります。

図7:住宅ローンに関わる各種手数料の種類

金融機関によって、ローン保証料や繰り上げ返済手数料がゼロという場合もあります。その代わり事務手数料が多いなど、手数料の種類や支払い方法は実にさまざまです。具体的な金額を計算して総額で比較しなければ、損得はわかりません。たとえばローン保証料は、金利に含まれている場合(内枠方式)と別途一括払い(外枠方式)の場合があり、表示された金利だけで判断することはできないのです。

このように諸費用の存在一つとっても、返済負担に大きな影響が出てきます。資金計画について悩んだ場合は、モデルルームで営業担当者へ相談してみたり、FPを始めとした専門家にアドバイスを求めたりするのも良いでしょう。ぜひ、ご自身のライフスタイルに合った資金計画を検討してみてください。

【関連記事】2017年度下半期、今すぐ買うべき? それとも待つべき? マンション購入の「迷いどころ」を、市況のプロが5つの視点から分析


Text:木村元紀
<プロフィール>住宅ライター。1963年東京生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。30年以上に渡り、不動産・住宅関係を中心に取材・執筆。主な著書に『住宅購入の危機管理』(共著)、『いま買うしかない!マンション・戸建て購入術』、編著に『住宅ローンを借りる前に読む本 ~地獄へ落ちないための23の知恵~』(山崎隆著。ファーストプレス)などがある。

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