木陰の気持ちよさをお部屋に。グリーンを”普段使い“する方法
[暮らしのアイデア]
2017年07月26日
木々の緑は、気持ちに安らぎを与えてくれます。そんな、思わず深呼吸してリラックスしたくなるような自然の心地よさを、家の中にも取り入れてみませんか? 「植物を育てるのが苦手で…」という方でも大丈夫。フラワーショップに行けば、「切り枝」や、「葉物」などのグリーンが手に入ります。基本的にグリーンは持ちがよく、手入れも簡単なため、忙しい方でも植物を暮らしに取り入れる方法としておすすめです。
グリーンを“普段使い”する方法を、花と空間のデザイン事務所「SENBUN」のフラワーデザイナー 太田文子さんに教えていただきました。
「インテリアとしてのグリーン」という考え方
「葉物」などのグリーンは、以前は「花束でカラフルな花を引き立てる役」として考えられがちでした。でも最近は、グリーンだけを求めて花屋にいらっしゃるお客様も増えているように感じます。家具やインテリアに興味のある方が多く、フラワーベースなども含めて”インテリア“としてグリーンを楽しんでいるという印象を受けます。
グリーンが人気を集める理由は、どんな住まいにも合わせやすく、枝1本、葉1枚だけでも絵になるということ。持ちがよく、手入れも簡単。枝や葉だけでなく、実もありますし、生からドライへと表情を変えていく様子を見守る楽しみもあります。また生命力あるフレッシュな香りにも癒されます。
「グリーンを取り入れたいけど、何から始めていいのかわからない」という方には、どこに、どのように置きたいかをうかがいます。食卓に花の代わりに葉ものを飾りたい、リビングのコーナーに大ぶりな枝を置きたいといったイメージを伝えてくださると、さまざまな提案がしやすいです。
食卓で器に葉を載せるだけでも、ぐっと魅力的なテーブルに
枝を使って、部屋に「木陰」をつくる
緑豊かな自然の安らぎを部屋で感じたいなら、切り枝を使って部屋の中に「木陰」をつくってみてはいかがでしょう。1本あるだけで、たちまちリラックス空間が演出できますし、部屋に立体感と奥行きも生まれます。
季節ごとに枝の表情が異なるのも魅力です。例えば春は桜やライラックなどの花を咲かせる枝、秋は葉が赤や黄に色づく枝などを楽しむことができます。ただグリーンの生命力を感じたいなら、新緑がみずみずしく茂る枝がおすすめです。5月から8月にかけては、とくに豊富な種類の枝が出そろうシーズンです。
ドウダンツツジは枝ぶりが美しく、ベースに挿すだけで様(さま)になる
●木々の青さが楽しめるおすすめの枝は
ブルーベリーの枝は、実をつけた様子が愛らしい
飾りやすいのは、軽やかでかわいらしい葉をつけ、枝ぶりも美しい「ドウダンツツジ」。「馬酔木(あせび)」は少しインパクトを出したいときにおすすめです。「スモークツリー」は大ぶりな枝と一緒に飾っても素敵ですし、ドライフラワーになってもきれいです。実をつけた「ブルーベリー」の枝もかわいいですよ。和の雰囲気がある「ナツハゼ」は乾燥に気をつけて飾ってください。
●センスよく飾るには、どこに置けばいい?
「自分が一番目にするところ」に置くと、よりグリーンとの時間を楽しむことができるでしょう。はじめての方は、花の代わりに食卓に小ぶりな枝を飾るのが手軽です。リビングならソファに寝転んだときに見上げられる位置に飾るのもリラックスできるのでおすすめです。お客様が多いご家庭でしたら、部屋に入ったときに正面になるところに飾るのも素敵。「ここに置いてみようか」といろいろと試してみてください。
●枝物のグリーンを長く楽しむお手入れ方法は
水は1日1回かえることが理想的ですが、2日に1回でも大丈夫。水の吸い上げをよくするために、枝の茎先を割ってください。これは太い枝であればあるほど大切なひと手間です。ハサミで割るか、金づちのようなもので砕いてもOK。表皮もむくとより吸い上げがよくなります。
水の吸い上げをよくするため、ハサミを縦に入れる
ハサミの刃の部分などで表皮をむくと、より吸い上げがよくなる
しなびた葉は除いてあげると見た目にもきれいですし、残っている葉も元気になります。
葉や実を使って、食空間をおしゃれに演出
いつものテーブルにいつもの食器。見慣れたわが家の食卓も、季節の草木があれば毎日違った食卓を楽しむことができます。テーブルコーディネートや、壁にかけるなどして楽しむ「スワッグ」など、食空間にグリーンを取り入れるアイデアをご紹介しましょう。
●生の葉や実で彩るテーブルコーディネート
たとえば、暑い中お越しくださったゲストに冷たいハーブティーをお出しするとき、トレーやお皿にグリーンをあしらうと、見た目にも涼やかに、ゲストをおもてなしすることができます。形を整えるなどで切り落とした枝や実も、捨てないで気軽にテーブルコーディネートに活用してみましょう。
使うグリーンを変えるだけでも、印象が大きく変わります。上左はブルーベリーやユーカリの枝先などを少し切り落として、お皿やグラスにアレンジ。上右は「モンステラ」などの大ぶりで濃い緑の葉を置き、斑入りの「ミスカンサス」を数本あしらったものです。ミスカンサスはしごくと簡単にカーブをつけることができます。
比較すると、左はナチュラルな印象、右はスタイリッシュな印象になります。
和風やアジアン風なアレンジもできます。
つくしのような形の「トクサ」に、水引きに見立てた「ベアグラス」を巻きつけると和風な印象に(左)。さらに結び目を隠すように「ワイヤープランツ」を巻くと、かわいらしさもプラスできます(右)。
ただ、アレンジは難しく考えなくても大丈夫。下の写真は、木製のトレイに、「タバリアファン」を置いただけですが、レイシーな葉の透け感が、繊細なグラスによく似合います。
またカラフェやワイングラスにグリーンを巻きつけても。落ちた葉は白いシンプルなお皿にのせるだけでも絵になります。
最近インテリアショップなどで市販されている試験管にグリーンを入れて、カトラリーレストにしても素敵です。試験管にワイヤープランツを入れ、「Welcome」のタグをつけるだけで、おもてなしのプレートに早変わりします。
グリーンの枝先や落ちた葉を利用するのはもちろん、ベランダなどでハーブを育てておくと、気軽に摘んでアレンジに使うことができるので、重宝すると思います。
●話題の「スワッグ」の作り方
最近では、好きなグリーンや花を束ねて吊るすように飾る「スワッグ」も人気を集めています。リースよりも簡単に作れますし、ドライになる過程も楽しむことができます。またギフトにしても大変喜ばれます。今回はユーカリを使った、写真のスワッグの作り方をご紹介しましょう。ユーカリの葉は香りが高く、形も絵になります。ダイニングの壁に飾るなどして長く楽しんでください。
【ユーカリのスワッグの作り方】
(1)ユーカリの枝4本と、ユーカリの実がついた枝1本をラフに束ねる。長いものは奥、短いものは手前にすると立体感が出る。
(2)茎先を麻ひもでくくる。最低でも幅3cmにわたって巻きつけると、丈夫に束ねることができ、見た目のアクセントにもなる。あとで壁に掛けやすいように、ひもをループ状に残しておくとよい。
生花をドライ化させるときは、蒸れないように気をつけてください。床に置いたり紙で包んだりせずに、風通しのいい場所で下向きに飾りましょう。
また、同じユーカリでも、ドライになると色合いが変わります。手にしているのはドライになったスワッグ。壁に掛けた飾りたてのスワッグとは色合いが異なるのがわかると思います。
まだみずみずしいグリーンと、スワッグで楽しんでドライになったグリーンを合わせて飾っても、グラーデーションの色合いとなり、まとまりが生まれます。
グリーンのある暮らしで、人生を豊かに
グリーン使いが上手になる近道は、花屋を上手に使うこと。自分の感性にあう花屋を見つけるために、いろんな花屋に出向き、ディスプレイが素敵だなと思ったら、ぜひお店に入ってみてください。枝や葉、実も、植物にはひとつとして同じものはありません。できれば月に1回でも花屋に行く日を作って、ご自身の好みを探るのも、有意義だと思います。
グリーンは暮らしに豊かさを連れてきてくれます。新芽が出てきたな、つぼみが開いたなというちょっとした気づきは、日々の小休止となり、そのひとつひとつが気持ちのゆとりにつながるのではないでしょうか。グリーンを飾ると、その周りもきれいにしたくなってくるから不思議です。そんなゆとりある毎日を、グリーンを通じて一人でも多くの方に感じていただけたらと思います。
プロフィール:太田文子(あやこ)さん
フラワーデザイナー/フラワースタイリスト
花と空間のデザイン事務所SENBUNを主催し、ウェディングやイベントデコレーション、ショップやオフィスから個人宅まであらゆる空間に植物のニュアンスをプラスした装飾を手がけている。
取材協力:SENBUN
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Text:大森りえ
撮影:鈴木真弓
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