住まいを見る目はパリで養った~こぐれひでこさんの、運命の家との出会い方

住まいを見る目はパリで養った~こぐれひでこさんの、運命の家との出会い方

[暮らしのアイデア]

2018年01月24日

食や暮らしを綴るエッセイで人気を集める、イラストレーターのこぐれひでこさん。パリ、そして東京での暮らしを経て、67歳のときに偶然出会った、海に近い現在の家にお引っ越ししました。これまでの暮らしを彩ってきてくれた思い出のモノを大切にしつつ、住み替えによって生まれた新たな変化を楽しむ、充実した日々。そんなこぐれさんに、良い住まいとの出会い方や自分らしい住まいを作るコツについてうかがいました。

運命の住まいとの出会いは、偶然?

こぐれさんが相模湾を望む現在の住まいに引っ越したのは2014年12月。住んで約3年となりますが、その前に住んでいた東京の家は35年も住んでいたとのこと。長く住み慣れた家から、なぜ引っ越そうと考えたのでしょうか?

「大好きな家だったけれど、私たち夫婦も60代半ばになって。子どももいないし、もう少しコンパクトな家に暮らしてもいいんじゃないか、この大きな家をどうしよう…と、引っ越す2年ほど前からずっと考えていたんです。そんなとき、たまたまインターネットで“見つけてしまった”のが今の住まいで」。

すぐに引っ越そうとは考えてなかったものの、たまたま見つけた物件の眺めの良さにひと目ぼれ。すぐに現地を訪れ、即決したのだそう。物件購入は大きな買い物。慎重になる方が多いと思いますが、こぐれさんが迷わずに住まいを選べたことには、理由がありそうです。

 

自分好みの住まいを見つける目は、パリで養った

「私は家が大好き。物件情報を見るのが趣味なの」とこぐれさん。引っ越す予定はないのに、不動産の物件情報を見たり、好みの物件を探したりする“家探し遊び”が長年の習慣になっているとのこと。若いときには、「いろんなところに住んでみたい」という好奇心に身を任せて、住まいを転々としていたこともあるそう。

「とくに、パリに住んだときの経験が大きいですね。パリでは不動産屋に行かなくても、見学できる物件情報が新聞に掲載されていて、アポイントをとらなくてもいろんな家を見て回れるんです。すごく豪華なアパートメントから、こじんまりとしたところまで、いろいろと見学をしてみました」。

「住まいを見たい」という思いから、気軽にさまざまな物件の見学を重ねたおかげで、「自分が好きな家を見つける目」が養われたというこぐれさん。“家探し遊び”は面白い出来事の連続だったそう。

「ある日、高級住宅地のそれはそれは素晴らしい物件を見に行ったとき、キラキラと着飾ったマダムが不動産屋さんの担当として出てきたの。翌々日に別の安い物件を見に行ったら、同じマダムが地味~な服を着て出てきたことがあって。『あなたいったいどんな物件を探しているの?』ってあきれられました(笑)」。

全く趣向の違う物件をつぎつぎと見て回っていたため、不動産屋さんに驚かれることもあったようです。ただ、その行動は好きな住まいに出会う近道にもなりました。

「その後も、不動産屋さんに通ってあちこち案内してもらっては、『暗い』『風が通らない』など気に入らない点を伝えて断り続けるということを繰り返していました。そんなある日、『あなたが好きそうな部屋がある』と案内されて。訪ねてみたら、明るくて風の通りが良いという、とても私好みの家だったの。私が断る理由を覚えて、不動産屋さんも勉強してくれたのね(笑)」。

住まいに積極的に出会い、自分にとって最適な家を“引き寄せて”きた、こぐれさん。現在の家をひと目ぼれで見つけることができたのも、その経験があればこそなのかもしれません。

 

夫婦生活48年。大好きな住まいで、思い出深い品々と共に過ごす暮らし

ご夫婦の暮らしは48年目に突入。長く暮らしてきただけ、思い出の品々は多くなります。
「前の家はもっと広かったので、ここに引っ越す際は、大量にモノを処分しました。でも長く慈しんできたモノは、なかなか捨てられないですね」。

どんなモノでも、出会いや共に過ごした歴史があり、「いつどこで出会い、一緒に何をしたか」という思い出を大事にしたいと話すこぐれさん。思い入れのある愛しいモノはなかなか手放せないとか。ただ、思い出深い物をしまい込まず、毎日目に触れ、手の届くところで“共に過ごす“のがこぐれ流。パリの蚤の市で買い集めた家具や食器をはじめ、大事にされてきたさまざまなモノたちが、家のいたるところで息づいています。

リビングダイニングの棚には、お気に入りのグラスがずらりと飾られている。

水仙を生けたアルミのピッチャーも、パリの蚤の市で買い集めたお気に入りの一品。

天井近くにずらりと飾られているのは、お酒のオブジェ。これは個展で発表した作品なのだそう。「手をかけたし思い出もあり、そばにあると、これを作った自分が誇らしいと思える」とこぐれさん。住まいのあちこちに飾られた品々は、こぐれさんの行動力豊かで軽やかな生き方を表現するかのようです。

キッチンの上部に飾られたワインボトルのオブジェは、こぐれさんの思いが詰まった作品。

そして、たくさんの品々のなかでも一番大切にしているのは、旦那さんからもらったオルゴール。何度引っ越しを重ねても大切に連れてきているのだそう。

「20代後半、私はパリ、夫はバルセロナにいたんです。そのとき私が仕事の悩みを愚痴っぽく手紙に書いて送ったの。それを見て心配した夫が、2,000キロの道のりを運転してパリへ駆けつけてくれた。これは、そのときにプレゼントしてくれて」。

「素敵な話でしょ?」と笑いながら話すこぐれさん。バレリーナが好きなこぐれさんを思って旦那さんが選んだオルゴールは、毎日の食卓を囲むダイニングに置かれています。

「あれから40年以上経ち、ずいぶん動きがゆっくりになりましたが、ねじを巻けばオルゴールもバレリーナもまだがんばって動いてくれる。親近感を覚えますよね(笑)」。

「食べること」を準備から楽しむ暮らし

こぐれさんご夫婦が一番大事にしているのは、「食」の時間。お客様が来る特別なときはもちろん、1日3食&お茶の時間も、食事に合わせて毎回テーブルセッティングを楽しんでいます。そこで活躍するのは、やはり、これまでこつこつと買い集めてきたお気に入りの食器やテーブルクロスたち。

ある日の食卓より。食事に合わせてお皿やテーブルクロスなどを考えるのは、日々欠かせない楽しみの一つ。

また、キッチンにはオープンラックを設置し、グラスや器が飾るように並べられています。

「お客様が来て一緒に食事をするときには、積極的に準備に参加してもらいます(笑)。料理にコップや器は棚にオープンに並べているからすぐ手にとれるし、鍋も壁にかけてあるから『お鍋どこですか』って聞かれなくていいの。そのスタイルがゲストにとってもラクみたい」。

長年1つ1つ集めてきた道具たちを眺められるオープンなしつらえは、訪れたお客様もリラックスできる、居心地のいい空気を生み出しているようです。

 

住まいに積極的であることは、人生を豊かにする近道

「ひと目ぼれした現在の家は、3年をかけて本当にいい家になりました」とこぐれさん。しかし、実は今でもインターネットでいろんな物件を見ているとのこと。

「だって趣味なので(笑)。『この家に暮らしたらどんな毎日が待っているんだろう』って想像するのが好きなんですね」。
大好きな家で暮らしている喜びを感じつつも、さらに相性のいい住まいに出会えたら、次の住み替えをすることもあるかもしれないと話します。

「家は、やはり気がいいところ、風が通る家がいいですね。今の住まいに引っ越して、住まいや環境が変わり、思わぬ新しい発見がたくさんありました。住まいに積極的でいることは、人生を豊かにする近道なのだと思います。それはいくつになっても変わらない。少なくとも私は、これからもそうありたいですね」。

  • こぐれひでこさん

  • 1947(昭和22)年、埼玉県生まれ。東京学芸大学卒業後まもなく同級生であり現在もカメラマンとして活躍する小暮徹さんと結婚。イラストレーター、エッセイストとして活躍する。著書に『こぐれひでこのおいしい画帳』(東京書籍)、『こぐれの家にようこそ』(早川書房)、小泉今日子さんとの共著『往復書簡』(SSコミュニケーション)など。毎日の食事を紹介するwebマガジン『MYLOHAS』での連載「こぐれひでこの『ごはん日記』」も人気。

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写真:鈴木真弓
※食卓の写真は小暮さん・オルゴールのUP写真は小暮徹さん撮影(『MYLOHAS』提供)
テキスト:大森りえ

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