“ほどよいミニマリスト”がちょうどいい。「トヨタ式お片づけ」が叶えたゆとりある住まい

“ほどよいミニマリスト”がちょうどいい。「トヨタ式お片づけ」が叶えたゆとりある住まい

[暮らしのアイデア]

2018年03月07日

お片づけの専門家「ライフオーガナイザー®」として活躍する香村薫さん。著書で、かつて勤めていたトヨタグループで浸透している仕事術を暮らしに生かした「トヨタ式お片づけ術」を紹介し、大きな反響を呼びました。夫婦共働きの忙しい時代に経験した"ある失敗"から、試行錯誤を経て"ほどよいミニマリスト"という生き方にたどりついた道のりと、理系の女性ならではの、ロジックにもとづく片づけ術がもたらす豊かな暮らしについて、お話をうかがいました。

失敗を重ねて気づいた、ほどよくモノのある暮らしの良さ

香村薫さんは3LDKのマンションに、ご主人と7歳と5歳の男の子、1歳半になる女の子の一家5人で暮らしています。その素敵な住まいや暮らし方はSNSなどでも人気を集めていますが、過去には「『豊かな暮らし』とはどういうものか、何もわかっていない時代があった」といいます。

「社会人2年目で結婚しマンションを購入。もともとモノに執着しない2人でしたが、共働きで仕事が忙しかったこともあり、新婚当初からしばらくは、家事にかける時間を省くことに夢中になっていました。時短のためにとにかくモノを捨てる、いわば"やりすぎミニマリスト"になっていたんです」。

たとえば「カウンターで立って食事をすれば、お皿を流しにすぐ置けて時短になる」と、ダイニングテーブルを処分。ほかにもテーブルやイス、テレビに至るまで、どんどん減らしました。
「おかげで家の中を見渡すと本当に何もない状態。でも『なんて効率的なんだ!』と満足していました」。

「やりすぎミニマリスト」だった時代のリビングと客間の様子。極限までモノを減らしていた。

効率を求め断捨離を続けた香村さんご夫婦。仕事で忙しい平日はよいものの、そのうち休日に異変が起こるように。
「家にいても落ち着ける場所がなく、何もないリビングに座布団を引いて食事をしても夫婦の会話が生まれない。自然と外食したり、外に娯楽を求めたりするようになりました。今思えば、家でモノを捨てても、外でお金を使っても、心身ともに満たされないというストレスを抱えていたんですね」。

そんなとき、お父さまの不幸をきっかけに「豊かな生き方とは」と考えた香村さん。モノを捨てて自由な時間を作っているのに満たされないのはなぜかをご夫婦で話し合った結果、「家の中を改善しよう」という意見で一致しました。ご夫婦ともに勤務していたトヨタグループの仕事術にのっとり、「家を心地よくする」ことをプロジェクトとして「見える化」していきました。

 

心地よい家を作るために、トヨタ式で住まいを「見える化」

トヨタ式の「見える化」とは、簡潔に表現すると「状況を一瞬で把握できるようにする」こと。すべてを数字で考えることが基本です。
「殺風景な家をどうすれば心地よくできるか。改めて考えたときに思ったことが『人が呼べる家にしたい』ということだったんです。トヨタ式にのっとれば、具体的な数字が必要です。そこで、目標を『見える化』して、『週に3回、最低2時間、人が呼べる家にしたい』と決めました」。

大きめの植栽を取り入れたいという香村さんの要望と、男っぽいインテリアを揃えたいというご主人の要望を実現したリビング。奥のアクセントウォールは2017年10月に香村さんが塗り替えを行った、現在のリビングの様子。

そこから、人を2時間呼べるような家はどんな家かを考え、少しずつ住まいを変えていった香村さん。例えば、グリーンはどのくらいあれば心地よいか、カトラリーは何本必要かなどを明確にすることから始めました。モノを捨てることを目標とするのではなく、「何がどのくらい必要なのか」「それはなぜなのか」を明確にし、自身の適正量を把握しながら揃えていくことで、心地よい暮らしとすっきりと整頓された住まいが実現していったそう。同じように、「一人で夜くつろげる場所が欲しい」などのご主人の要望や、子どもたちの要望も明確にし、家族にとって心地よい住まいを一緒に作ってきました。

 

トヨタ式で、家族みんなで住まいの整理整頓に取り組む

トヨタ式のメリットは、目標が明確になり、住まい作りに家族みんなで取り組めること。特に、『数字で考えてモノを選び、片づける』という考え方は、どのご家庭でもご主人に響きやすいそう。理論的に片付ける仕組みがあることで、ご主人も住まいに対して積極的に考えるようになり、夫婦共通のビジョンが持てます。

「家を心地よくする」ことが大切だと感じた経験をきっかけに、今ではご主人もライフオーガナイザーの資格を持ち、夫婦そろって片づけに悩む人のサポートをしている香村さん夫妻。香村さんの長男も、「室内用の自転車など、リビングで遊ぶためには片づけられた状態であることが必要」としっかり理解し、自発的に片づけに参加するそうです。

大切にしたいモノは使ってこそ価値がある

トヨタ式で数を決め、モノを厳選して選ぶことによって、大切にしたいものだけに囲まれている香村さんの住まい。香村さんは「大切にしたいモノは使ってこそ価値がある」と言います。たとえば食器なら、日常使いと特別用にそれぞれ別のモノを用意するのではなく、厳選して大切にしたいものだけを持ち、毎日大切に使います。
「割られるのが怖いけど(笑)、1歳の娘の食事にも作家さんの器を使います。小さいときから良いものに触れる機会になると思って」。

一眼レフカメラもその一つ。以前なら子どもたちには「触っちゃダメ」と言っていましたが、ふと使わせてみたそう。
「三脚に固定することでなるべく壊されないようにしつつ(笑)、カメラに触れさせてみました。そうしたら、兄弟ふたりで構図や照明を相談しながら、とても喜んで撮影していて。使うことで『カメラって楽しい』と気づき、そういう道に進むこともあるかもしれない。使ってこそだ、と実感しました」。

 

トヨタ式で部屋の目的を明確に。住み替え時こそチャンス

心地よい住まいを作ったことによって、いまは、「やりすぎミニマリスト時代」にはなかったゆとりを感じることが出来ていると香村さん。現在は家事や子育てをしながらも、自分の時間を2時間はキープできるよう心がけています。

「家で一番お気に入りの場所は、夜のリビング。子どもを寝かせたあとにリビングのソファに座り、21時からは夫婦で過ごす時間を楽しんでいます。お酒を飲むなどお互い好きなことをしながら、『5年後にどうしたいか』など、これからの暮らしについて毎晩のように語り合っています」。

「未来のビジョン」を明確にしておくことは、住まい作りでとても大切なことだと話す香村さん。住み替え時こそ、その機会だと言います。

「住み替えは、新しい暮らしについて自然に話し合えるチャンスだと思います。私はトヨタ式で部屋の目的を明確にすることをおすすめします。大切なのは『いま目的がはっきりしていない部屋』を作らないこと。例えば、『いつかは子ども部屋に』と考えるのではなく、『5年後は子ども部屋にしたいから、それまでどのように使うか』を考えることです。そうすることで空間をより活かすことができます」。

自分や家族にとっての「心地よい」を軸に住まいを「見える化」し、一緒により良い住まいを作っていく。それが「家族との豊かな時間」というゆとりを生み出すコツのようです。

  • 香村薫

    香村薫さん


  • 愛知県岡崎市在住。大学卒業後トヨタグループの会社に就職。仕事と家事の両立をはかり、ミニマリスト道を極めすぎて心身に不調をきたす。それをきっかけに「何のために片づけるのか」を分析し続け、たどりついた片づけ術を「トヨタ式」と名付け、著書『5つの「しくみ」でみるみる片づく! トヨタ式おうち片づけ』(実務教育出版)にまとめる。2018年3月に新著「トヨタ式超ラク家事 -5つの「S」でスイスイはかどる!」を発売。

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