行正り香さんに聞く、「毎日が思い出になる」ダイニングを作るコツ

行正り香さんに聞く、「毎日が思い出になる」ダイニングを作るコツ

[暮らしのアイデア]

2018年04月18日

留学や会社員時代の海外出張で培った舌と審美眼で、料理はもちろんインテリアやライフスタイルまで、女性たちの支持を集める料理研究家・行正り香さん。「特別な日だけでなく、日常のテーブルを囲む豊かな時間の積み重ねが、家や家族、仲間との思い出を生む」と語ります。そんな行正さんが家づくりを考えるときに最優先するのが「食を楽しむ空間」です。毎日が思い出になるような、食を楽しむ時間のコーディネートや、テーブルを囲むことで深まる家族や仲間とのコミュニケーションについてうかがいました。

 

家族の大切なことは、すべて食卓で決まってきた

行正り香さんのご自宅玄関を開け、すぐ目の前に広がるのは美しいチェアとローテーブルが配置された広いリビング。壁を取り払っており、リビング、ダイニング、居間、キッチンと続く空間は仕切りがなく、開放感が抜群です。20年前に新築で購入されて以来、徐々にリフォームして手をかけてきたお住まいには、行正さんの暮らしへのこだわりと、家族との思い出がたくさん詰まっています。

会社員時代を経て、現在はさまざまなレシピ本の出版やレストラン経営など料理家として活躍される傍ら、子どもの英語教育システムの開発にも力を入れ、忙しくも充実した日々を送っている行正さん。「もし、これまでのキャリアとは違った道を選ぶとしたら、インテリアコーディネーターという人生も楽しかったでしょうね」と語るほど、インテリアや暮らしに関する本を多く執筆し、国内外の建築や美術にも造詣が深いことで知られます。

住まいに興味を持つきっかけとなったのが、高校3年生の時のアメリカ留学。現地の友人たちの家に招かれた際、テーブルスタイリングを介した彼らのホスピタリティに感銘を受けたそうです。社会人になってからも海外出張が多く、滞在先では自らの費用で憧れのホテルに宿を取り、そのインテリアやもてなしに触れて見聞を広めました。そんな行正さんが暮らしにおいて何よりも大切にしているのが、食を楽しむ時間と空間だそうです。

「家族の大切なことは、すべて食卓で決まると思っているんです。私が家族に留学したいと両親に打ち明けたときも、結婚後に子どもができたと夫に伝えたときも、子どもの進学先が決まった喜びを共有するときも、いつも家族でテーブルを囲んでいました。おいしいものを食べておなかと心が満足したときに、大切な言葉が出てくるものだと思います。もちろん、不安や悩みを打ち明けるのも同じですよ。私はそうやって家族や友人との思い出を食卓でつくってきたような気がします」。

現在の広いリビングダイニングには、丸いテーブルが2つ。以前は四角いダイニングテーブルを置いていましたが、オーバル型を経て、いまは大理石のラウンド型を使用しています。

「家族が増えたため、顔を見て話せる丸いテーブルがよいと考えました」。

家の中で一番のお気に入りは、この丸いテーブルとルイス・ポールセンがデザインした「アーティチョーク」というペンダントライトがかかったダイニングスペース。これまでに、家族はもちろん、多くの友人も招いて、ここで時間を重ねてきました。

 

食事を五感で楽しみたいから、テーブルづくりにもこだわる

親しい友人たちを招く際に行正さんが意識しているのが、「五感で楽しむ空間」をつくること。料理と同じくらい、「空間」をプレゼンすることが大切なのだそう。

「料理を作る人が、料理だけではなく、インテリアから音楽まで五感で感じる要素すべてをプロデュースすることが重要です。特に、テーブルコーディネートはインテリアの一部でありインパクトが命。料理の腕が30点でも、テーブルのプレゼンテーションの腕がよければ、そのほうが『おいしい』と感じ、トータルで100点に思ってもらえるかもしれません(笑)」。

料理をふるまうときは、「おいしく作る」ことに必死になりすぎる人も多いですが、大切なのは「共に楽しい時間を過ごすこと」。テーブルスタイリングは、目で楽しんでもらう大切なおもてなしの一つだそうです。

「料理を出す前に、最初にテーブルの上のコーディネートだけつくっておくのがおすすめです」。

そこで、和・洋・ティータイムという3つのシーン別コーディネートを行正さんにご紹介いただきました。

(1)「大人数での和食」をテーマにしたテーブルのスタイリング

行正さんが和食でおもてなしをするときは、大皿料理を各自で取り分けてもらうスタルが多いそう。箸やグラスもすべて折敷(方盆)にのせると全体が引き締まります。取り皿は、骨董市で見つけたアンティークのものを。

「骨董品屋さんだとお高いので、骨董市に足しげく通っています。料理にあわせやすいというよりも、見た目のインパクトでおもしろいものを選ぶようにしていますね」。

器は料理に合いやすいものばかりを選んでいくと、無難な無地を選びがち。テーブルがつまらなくなってしまうので、オリジナリティがあるもののほうが面白い、というのが行正さんが器を選ぶ際のモットーです。

(2)「家族揃って洋食」をテーマにしたテーブルのスタイリング

家族のディナーや洋食のおもてなしでよく登場するのが、30年ほど前から愛用しているデンマークのジョージ・ジェンセンの銀製カトラリーと、スウェーデンのデザイナー、ヨナス・ボリーンのプレート。プレートには、銀色の花柄が上品にあしらわれています。
パスタなどの簡単なメニューでも、プレートをもう1枚重ねることで、“おもてなし感”が格段にアップします。また行正さんの普段のテーブルに欠かせないのが「キャンドル」。お花がなくてもキャンドルを灯すだけで食卓が華やかになるため、毎日の夕食にも必ず点けるそうです。

(3)「友人とのティータイムを楽しむ」テーブルのスタイリング

女友達と集まって楽しむアフタヌーンティーは、ロイヤルコペンハーゲンのティーセットを主役に。

「カップやポットはいろいろ試してきましたが、このシリーズは使いやすく、欠けたり割ったりしてしまってもまた購入できるというマネジメントのよさが気に入っています」。

リビングのキーカラーは「赤と茶」と決めており、壁に掛けた絵の赤や赤茶のチェアにあわせて、キャンドルホルダーも赤に統一。空間の全体像をいつも頭の中に思い描き、テーブルの上だけではなく、同じ空間にあるランプの雰囲気と調和するかなど、全体がどう見えるかを広い視野で考えているのだそうです。

手慣れた手つきでどんどん素敵なテーブルをつくっていく行正さん。ホテルやレストランで「これいいな」と思ったコーディネートは、必ず家でマネをしてみるそう。また、美術館で一流の器を見るのも目を養う近道だとか。

「最初に『よいもの』の基準を知っておくと、選び方がわかるようになります」。

「食べることが人生」という行正さんにとって、食卓は人と繋がるメディア。そのためのセンスを磨くトレーニングは、常に怠らないようです。

 

日常の中にもっとも豊かな時間がある。それを伝えたい

行正さんのペット、相棒のトトちゃん。リビングにある鏡の前がお気に入りの場所

この春、高校1年生と中学1年生になったばかりのふたりのお嬢さんは、最近夕食の後片付けを担当してくれるようになったそう。今は、買ってきたお惣菜も必ず器に移して食べることを、“口を酸っぱくして”伝えているのだとか。「子どもたちが雑用力をつけることも、食べるときにどんな食べ方をするべきかを知ることも、大切な教育」と、行正さんは語ります。

「私が娘たちに残したいのは、お金でも宝石や高価なバッグでもなく、『楽しかったね』『おいしかったね』と振り返ることができる思い出。日常の中にもっとも豊かな時間がある、それを伝えていきたいですね。大人との会話も楽しめるようになったので、あとはお酒を飲めるようになるのを待つだけです(笑)。食のある空間には、いい時間が流れると思ってくれたらうれしいですね」。


行正り香(ゆきまさ りか)さん
料理研究家。1966年、福岡県生まれ。高校時代にカリフォルニアに留学した頃から料理やテーブルコーディネートに興味を持つ。帰国後は広告代理店でCMプロデューサーとして活躍。海外出張が多く、さまざまな国の料理やインテリアに出会う。現在は料理やインテリアの仕事のほか、英語学習本「ビリからはじめる英語術」の出版、英語教材用アプリ「カラオケEnglish」の開発などにも携わる。『肉の本 今夜は、お肉を食べよう。』(扶桑社)ほか著書多数。

(テキスト)大森りえ
(写真)鈴木真弓

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