プロフェッショナルの目線 Vol.12 ソファで生活をより豊かに、快適に。
[暮らしのアイデア]
2018年02月14日
リビングでとりわけ大きな存在感を放つソファの選び方やレイアウト術を、インテリアコーディネートのプロ、依田美和さんから学びます。
話=依田美和(株式会社インテリアズ)
米・Tacoma Community College卒業後、イタリア、フランスの家具ブランドを経て、2010年に株式会社インテリアズ入社。ショールームマネージャーとしてPRを担当し、セールスプロモーションマネージャーに就任。
text by Seishi Isozaki
illustration by Kenji Oguro
LDKをひとつの空間として捉える。
床とソファの色が似ている場合、ラグを敷いてメリハリをつけるのがおすすめ。床・壁・ソファの淡いベージュトーンよりも濃いブラウンのラグと、ダークトーンのサイドテーブルが空間を引き締める。
近年の日本では、独立したリビングがあるご家庭は少なく、ほとんどの場合、ダイニングとの境を無くした間取りになっています。最近はオープンキッチンが流行していることもあり、キッチンからリビング・ダイニングまでがひと続きになっているケースも多いです。こうしたリビングに置くソファを選ぶときは、LDK全体のテイストをそろえることが大切。置いてあるもの一つひとつは素敵なのに、全体を見渡すとなんとなくちぐはぐな印象を受ける……そんな残念な結果にならないよう、クラシカル、イタリアンモダン、北欧テイストなど、あらかじめ目指すスタイルを決めておくといいでしょう。もし一から家具をそろえるなら、空間全体の調和を考えながら選んでいくのが理想です。
一般的なLDKにおけるレイアウト3案。
1. テレビに向ける。
リビングの両側の壁際にテレビとソファを設置。ダイニング側には1人掛けのソファとオットマンをテレビに対して斜めに置いた。
2. 窓に向ける。
ソファは窓の正面に向けて設置。ダイニング、キッチンからの視界を遮らないよう、背もたれは低めのタイプを選ぶとよい。
3. 二面に窓がある場合。
タワーマンションなど、窓越しの景色を楽しめる部屋におすすめのレイアウト。テーブル代わりにもできるアイランドソファもプラス。
LDKがひと続きになっている空間で、どの向きにソファを置くべきかは、ケース・バイ・ケースになります。かつては、図1のように、壁際に固定されたテレビの正面にソファを置くのが定番だったのですが、最近はスタンド式やワイヤレス対応可能なテレビがあるので、レイアウトの自由度が上がってきました。また、タブレット端末などの普及により、家族全員でテレビを観ることも減っていますから、テレビをソファに対して斜めに置くことも考えてみてはいかがでしょうか。たとえばタワーマンションの高層階など、眺めのいい部屋にお住まいの場合には、ソファを壁に向けて置いてはもったいないので、窓に向けて置くこともおすすめしています。その際、あらかじめ電源・配線を処理し、テレビを窓際のコーナーに置けば、外の景色を見たいときにも邪魔になりません。図3のように二面に窓がある場合でも、テレビ越しに雄大なパノラマを楽しむことができます。
いずれの場合も、キッチン、ダイニングからの視界を遮らないようにすること、そして窓際までの動線を確保するようにします。図2のように、キッチン、ダイニングに背を向けてソファを置く場合、ハイバックタイプだと空間が仕切られ、閉塞感が出てしまうので、ミドルまたはローバックタイプのものがおすすめです。図1や3のようにソファを壁際に置き、補助的にパーソナルソファやオットマンを置く場合には、座面の低いタイプや圧迫感がないものを選ぶと、空間に広がりをもたらします。
誰がどう使うのかを考慮する。
重心の低いソファのまわりに背の高いグリーンやスタンドライトを配し、空間が間伸びしないように工夫したレイアウト。壁にアートを掛けたい場合は、あえて重心の低いソファを置く方がバランスがとれる。
ソファの新規購入や買換えをするお客様からのご相談を受ける立場として、私たちがまず知っておきたいのが、部屋の正確なサイズと壁・床・天井の素材と色です。
記憶に頼るとあいまいにしか答えられなくなるので、ソファを探しに行く際は、部屋の図面と、できれば写真を持っていかれるといいと思います。その上で、「部屋をどんなテイストにしたいのか」「誰が、どのようにそのソファを使うのか」をお店の方に伝えてください。ご家族だけで使うのか、来客が多いのか。仕事でも使うのか。ご家族に小さいお子さんや年配の方はいらっしゃるか。この先、家族構成に変化がありそうかなどを具体的に伝えると、お店側もより的確なアドバイスができるようになります。
たとえば、小さなお子さんがいるご家庭には、汚してもすぐに洗濯や交換ができるカバーリングタイプのシステムソファをおすすめします。システムソファは数を増やしたり減らしたり、レイアウトを変えたりするのが簡単なので、将来的にお子さんが増えたり大きくなったりしたときに対応しやすいと思います。
年配の方には、座面が高めで奥行きがあまりない、ハイバックタイプのソファか、体にフィットするパーソナルチェアを置くことをご提案します。座面が低くてフカフカのソファだと身体が沈み、立ち上がるのが難しくなるからです。
ソファで横になってくつろぎたい方には、2〜3人掛けのソファに、ロングシェーズタイプのソファを組み合わせるタイプが人気です。ひじ掛けが低ければ枕代わりにもなり、デイベッド的な使い方も楽しんでいただけます。
ソファまわりを洗練させるコツ。
オレンジ色のソファを中心にしたコーディネート。傍らに置いた大きめのオットマンは、ベンチにもテーブル代わりにもなる優れもの。後から変化もつけやすいので、ひとつ持っていると便利。
ソファの色には数えきれないほどのバリエーションがありますが、昔から変わらず人気があるのはベージュです。ソファはリビングで大きな面積を占めるので、色や形はベーシックなものを選んだほうが、やはり失敗は少ないです。ただ、空間全体を見たときにのっぺりした印象になりがちなので、床・ラグと色の強弱をつけてメリハリを出すほか、ビビッドな色の小物を足すといいと思います。
ソファのデザインは、最近はハイバックタイプが人気ですが、一方で、部屋を広く見せるために、重心の低いソファを選ぶ方も多いです。ただ、部屋の天井が高いと間延びして見えることがあるので、そんな時には、ソファの近くに大ぶりなペンダントライトを吊るしたり、壁に絵を飾ったりして、空間を埋めていくと引き締まった印象になります。また、コンパクトな部屋にお住まいの方が、やはり部屋を広く見せたくて小さなソファを選ぶことがあるのですが、それだとこぢんまりしすぎてしまいます。ソファだけは大きめの重厚感があるものにして、それ以外を小さくすると、全体がバランスよくまとまります。
冒頭でまずテイストを決めることが大事と言いましたが、そこに趣の違うものを少し混ぜて"ミックス感"を出すのが最近のトレンドです。また、古いデザインを見直し、メンテナンスしながら受け継いでいこうという傾向も顕著です。たとえば、モダンなソファの傍らにレトロなチェアを置く。そんなスタイルが、新しい定番となっているのです。
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