2013年度グッドデザイン賞受賞ザ・パークハウス 池田山
[グッドデザイン賞]
2013年10月01日
記憶を継承し、新しい風景を創造する
「ザ・パークハウス 池田山」は、城南五山の一つ、岡山藩池田家の広大な下屋敷があった『池田山』という歴史ある閑静な地に誕生した低層レジデンスです。
「記憶の継承と新しい風景の創造」をコンセプトに、旧総理大臣公邸であったこの地の既存樹や景石を保存するとともに、ヨーロッパの古典建築から続くシンメトリーな様式を取り入れ、彫りの深い石造りの建築を思わせる重厚な外観デザインとしました。
誠実なる街の想いをつなぎ、新たな邸の指標を築く
備前岡山藩池田家の広大な下屋敷があったことから「池田山」と呼ばれることになった、東五反田五丁目の高台。かつて首相仮公邸としても使われた旧内閣法制局長官公邸の瀟洒な建物が建ち、大谷石と年輪を重ねた大樹が趣のある風景をつくっていました。
この地に生まれる新たな邸宅は、ここに流れてきた時間と、人々に愛されてきた風景を次の時代へとつないでいきます。
年輪を重ねた既存樹を移植し、この地の記憶を次の世代へ
ここにあったモミジやスダジイなどの既存樹は、およそ40年~80年の年輪を重ねてきたものです。
この既存樹を活かすことで、この地に積み重ねられてきた記憶を伝えながら、未来への風景をつくっていきます。
既存の大樹を活かしてつくる、もてなしの風景
ゆったりとした風景をつくるため、樹木で建物を包んでいます。外からの視界を柔らかく遮りながら、街並に豊かな緑の風景を提供し、建物と街をつなぐ景観づくりです。
また、緑景を残すために、池田山町会と共同で品川区と行政協議を行い南側歩道状空地部分を街並み維持の観点から緑地帯とすることの許可を得ました。
街と建物をつなぐ柔らかな緑のフェンス
窓先には自邸の庭のような、また見下ろした時の眺めとして、プライベート感のある静かな景観のゆったりとした風景をつくるため、四季折々に楽しめる樹木で建物を包んでいます。
それはまた、外からの視界を柔らかく遮りながら、街並に豊かな緑の風景を提供し、
建物と街をつなぐ景観作りにもなっています。
池田山に求められている泰然とした風格と重厚感。そして、新しい時代性を邸宅の形に
建物の顔となるエントランスがある北側には、ヨーロッパの古典建築から続くシンメトリーな様式を取り入れ、建物の中央に階段状のアプローチと軒の深い庇を設けました。
彫りの深い石造りの建築を思わせる重厚な外観をデザインしています。
建物に彫刻のような光と影を刻む
この住まいのためにデザインした立体的なタイルは、建物に彫刻のような光と影を刻み、ここにしかない豊かな表情を醸し出すでしょう。
窓も石壁に穴が穿たれたような奥行きのあるつくりで、サッシュなどの構造がそのまま表に出ないように配慮しています。
池田山の街に相応しい美しさを進化させ邸宅の新しいコードを創る
住む方が共有される空間では、階段を下りていくアプローチが特徴的なエントランス。
一段一段階段を下りていくごとにプライベートな静けさが深まっていくアプローチは、日常の時間を切り替えるイベント的な演出空間と考えています。
閑静な住環境を継承するため、生活動線を建物中央に集約し、四方に住戸を配置
1階には、茶室の露地をモチーフにした庭を設け、生活に常に寄り添う緑景をしつらえました。
また、歩行者・自転車・自動車の出入口を完全に分離し、日常生活における安全性を確保したことに加え、生活騒音源・臭気源となる駐車場や駐輪場等を建物地下に隠蔽することで周辺生活環境へも配慮しました。
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建物に彫刻のような光と影を刻む立体的なタイル。窓も石壁に穴が穿たれたような奥行きのあるつくりで、サッシュなどの構造がそのまま表に出ないように配慮している
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階段を下りていくアプローチが特徴的なエントランス
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エントランスがある北側には、シンメトリーな様式を取り入れ、建物の中央に階段状のアプローチと軒の深い庇を設けた
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残されていた「青石」や灯籠、古い大谷石などを活かし、1階には、茶室の露地をモチーフにした庭を設け、生活に常に寄り添う緑景をしつらえた
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景石を設置している光景
2012年11月竣工済み
※ 社名・所属部署・肩書・名称などは受賞当時(掲載年月)のものです