かつての本郷を偲び、いまに残す名宿の記憶。

プロジェクトリポート「ザ・パークハウス 本郷」かつての本郷を偲び、いまに残す名宿の記憶。

明治から昭和にかけて、多くの文人が居を構えた文京区本郷。
この地で創業してから一世紀以上を誇る老舗旅館は、平成の世の終わりにその姿、かたちを変え、再生を果たした。
旅人を迎える宿から「一生もの」の住まいへ。その記憶を残しながら。

photos by Shinichiro Nakazato
text by Norihiko Morita

文京区本郷は明治から昭和にかけ、夏目漱石や樋口一葉、宮沢賢治に川端康成など多くの文人が集い、優れた作品を生み出してきた場所。かつての帝大、東京大学のお膝元でもあり、今日までアカデミックな気風のある文教エリアとして知られている。街角のあちこちには戦災を免れた煉瓦塀が残り、現在と過去が同居する落ち着いた雰囲気も魅力のひとつだ。
東京メトロ丸の内線、都営大江戸線の本郷三丁目駅から西へ、ちょうど東京ドームや小石川後楽園を目指すように路地を抜けていくと現れるのが『ザ・パークハウス 本郷』。小高い丘の一角にある地上14階建てのレジデンスは、この地で一世紀以上続いた老舗旅館に代わり、新たな住まいとして人々の暮らしを見守り始めた。

街に調和しながらも存在感を放つ、地上14階建てのレジデンス

外壁には瓦をモチーフとしたタイルと左官仕上げをイメージしたマットな質感のタイルを採用。和の質感、色調を感じられる外観を求めた。

外壁には瓦をモチーフとしたタイルと左官仕上げをイメージしたマットな質感のタイルを採用。
和の質感、色調を感じられる外観を求めた。

高台として知られる本郷エリアは、古社古刹や戦前からの煉瓦塀をあちこちに残すかつての面影と、近代的な集合住宅が連なり交わる閑静な住宅街。
『ザ・パークハウス 本郷』は、その本郷の街並みに寄り添うように、豊富な緑量とシャープでありながらも和の質感を感じさせる外観デザインを採用した。

老舗旅館から受け継ぎ、つなげる和のイメージ、もてなしの心。

東京大学の学生が多く暮らした本郷は、明治時代より学生向けの下宿屋や旅館が集まる旅館街を形成していた。戦後は修学旅行や観光の宿泊客を中心に栄えたという。
しかし昭和から平成へと時代が進むにつれ、老朽化や後継者不足から次々と廃業。『ザ・パークハウス 本郷』は、やはり老朽化によりメンテナンスが困難となったことから廃業を決意した老舗旅館「朝陽館本家」の跡地に建つ。

「我々の建設プランを受け入れていただけたのは、今後もこの地に住み続けたいという三代目当主のご希望に沿う内容だったからだと思います。112年続いた『朝陽館本家』のイメージを随所に散りばめ、旅館の記憶を次の時代につなげるデザイン・設計コンセプトをご提案しました」
そう語るのは、三菱地所レジデンスの鈴木豪。用地取得から施工、引き渡しまで携わり、当主の想いに寄り添い続けたひとりだ。

「灯籠の路地」は、かつて「朝陽館本家」の宿泊客が眺めた中庭の風景をイメージし、地域を彩る新たな緑として計画された。

「灯籠の路地」は、かつて「朝陽館本家」の宿泊客が眺めた中庭の風景をイメージし、地域を彩る新たな緑として計画された。

※敷地配置図イメージイラスト。

等価交換により当主が自らの住まいとして希望したのは、旅館の玄関・ロビーがあった辺りを含む1階部分。旅館からマンションへ、建物の姿かたちは変われども、これまで日々お客様を迎えてきた場所を新たな住まいに選んだ。

1階テラスを囲む築地塀風の壁も高さに変化を付けることで「当時と同じような街の風景が見えるよう工夫しています」と鈴木が言うように、変わるもののなかに「変わらないもの」を取り入れていくことがコンセプトのひとつとなっている。

建物と公道の間に設けられた庭園「灯籠の路地」。

建物と公道の間に設けられた庭園「灯籠の路地」。

『ザ・パークハウス 本郷』のエントランスに向かって右側に続く「灯籠の路地」も旅館の記憶をモチーフにした庭だ。
「朝陽館本家」のシンボルともなっていた石灯籠を移設し、庭の名に冠したうえ、敷石や庭石の一部にも「朝陽館本家」で使用していたものを再利用。さりげなく旅館の面影を残している。
植栽にはイロハモミジや株立ちのシラカシなどを配し、日本の四季を感じられるように計画。街並みに新たな彩りを添えた。

また、この「灯籠の路地」は「朝陽館本家」にあった中庭をイメージしてもいる。かつての中庭は宿泊客にしか観賞できなかったが、マンションとして再生するにあたり、居住者はもちろん地域の人々にも開かれた庭にした。それも三代目当主の希望だった。長きにわたりこの場所で旅館を営んできた当主の、本郷への愛情、感謝の気持ちを表現した庭とも言えるだろう。

本郷で112年、朝陽館本家の跡地に誕生

『ザ・パークハウス 本郷』が建つ場所は、本郷で112年続いた老舗旅館「朝陽館本家」の跡地。
東京大学のある本郷は、明治末から旅館や下宿屋が集まり、昭和3年には120軒を数える旅館が営業していたという。「朝陽館本家」は、2016年3月末まで旅館業を営み、2019年1月、『ザ・パークハウス 本郷』として再生した。

営業当時の「朝陽館本家」。石灯籠が宿泊客を迎えてくれる。zoom

営業当時の「朝陽館本家」。石灯籠が宿泊客を迎えてくれる。

ぐるりと築地塀を巡らせた老舗旅館の趣。zoom

ぐるりと築地塀を巡らせた老舗旅館の趣。

「朝陽館本家」の中庭。窓から覗く木々が宿泊客を癒やした。zoom

「朝陽館本家」の中庭。窓から覗く木々が宿泊客を癒やした。

旅館の趣を散りばめた植栽、しつらえ

かつて「朝陽館本家」だった歴史、記憶を『ザ・パークハウス 本郷』に残すため、石灯籠を移設した庭園「灯籠の路地」や築地塀(土塀)のイメージを踏襲した外壁など、旅館の雰囲気が随所に配置された外構デザイン。
和のしつらえのなかに四季の変化を感じられる。

エントランス前には五葉松を新たに植樹し、和の雰囲気を演出。zoom

エントランス前には五葉松を新たに植樹し、和の雰囲気を演出。

街並みに彩りを添える「灯籠の路地」。イロハモミジやシラカシなどの広葉樹を中心に植栽を選定している。zoom

街並みに彩りを添える「灯籠の路地」。イロハモミジやシラカシなどの広葉樹を中心に植栽を選定している。

「灯籠の路地」には、その名の通り石灯籠を移設。zoom

「灯籠の路地」には、その名の通り石灯籠を移設。

「朝陽館本家」の築地塀を新たな形で再現。zoom

「朝陽館本家」の築地塀を新たな形で再現。

エントランス、バルコニーの天井を木調仕上げにすることで、かつての木造旅館をイメージ。zoom

エントランス、バルコニーの天井を木調仕上げにすることで、かつての木造旅館をイメージ。

外界とのつながりを意識した自然を愛でる共用スペース。

建物全体へと目を移すと、重厚感のある佇まいが印象的だ。
外壁には瓦をモチーフとしたリブ面状(細かい山型面)のブラックタイルと左官による塗り壁をイメージしたマットな質感のタイルを採用。エントランスのある西面1階から3階バルコニーまでの大部分を大判のストーンタイルで仕上げ、重心の低いどっしり落ち着いた雰囲気をつくり出している。

ラウンジ「迎賓の間」からも眺められる枯山水の庭「水面の庭」。シンメトリーに配された石卓が内と外をつないでいる。

ラウンジ「迎賓の間」からも眺められる枯山水の庭「水面の庭」。シンメトリーに配された石卓が内と外をつないでいる。

車寄せからエントランス、風除室を抜けると広々としたエントランスホールに入る。
まず目に飛び込んでくるのは、一段下がったラウンジ「迎賓の間」の先に見える庭の景色。床面から天井までの大開口により「水面の庭」と一体となったような感覚だ。

エントランスホールから一段下がったラウンジ「迎賓の間」から眺める「水面の庭」

エントランスホールから一段下がったラウンジ「迎賓の間」から眺める「水面の庭」

その外界とのつながりをさらに強調しているのが石のテーブル。「水面の庭」の石卓とシンメトリーに配置され、外へと続く一枚のテーブルを思わせる。窓ガラスで仕切られているとはいえ、まるで内と外との境がないように錯覚してしまうほどだ。
この庭とラウンジを視覚的につなげる効果を含め、『ザ・パークハウス 本郷』のデザインを担当したのは、これまで多くの「ザ・パークハウス」を手掛け、グッドデザイン賞など数々の受賞歴も持つSKM設計計画事務所。四季のうつろいや美しさを日常のなかに取り入れ、物語性のある空間設計を目指した。

エントランスホールに設置された木のアートスクリーン。

エントランスホールに設置された木のアートスクリーン。

エントランスホールとエレベーターホールの境にあるアートスクリーンは、一枚板を彫り抜いた存在感のある作品。日本および海外のホテルでインテリアデザインを担当するKayunデザイン工房が手掛けた。
アートスクリーンの模様は「自然有機性」をテーマに、眺める面により異なる表情を見せるように工夫されている。そのほか風除室やエレベーターホールもアーティストによる作品で装飾され、住まいに上質な価値を加えている。

外界とのつながり、四季のうつろいを感じながら

エントランスホール、ラウンジから木々がそよぐ庭を眺める静かなひととき。エレベーターホール前の坪庭に、自然との一体感を感じられる日々の暮らし。
住まう人、訪れる人に季節の訪れを告げるべく、外界とのつながりを意識した空間設計がなされている。

エレベーターホール前の坪庭「朝陽の小庭」は渓流をイメージ。

エレベーターホール前の坪庭「朝陽の小庭」は渓流をイメージ。

折上げ天井と照明、坪庭と壁面のアートにより上質感を高めたエレベーターホール。

折上げ天井と照明、坪庭と壁面のアートにより上質感を高めたエレベーターホール。

「水面の庭」と「迎賓の間」を視覚的につなげる石のテーブル。

「水面の庭」と「迎賓の間」を視覚的につなげる石のテーブル。

旅館としてのこれまでと、住まいとしてのこれから。

各住戸は全戸60㎡を超える2LDK、3LDKのゆとりある設計で、さらに三菱地所レジデンスが販売した50戸は自由設計を可能とした。自由設計とは水回り設備の位置以外を自由に変更できるプラン。たとえば2LDKを広々としたリビング・ダイニングの1LDKにアレンジするなど、購入者のライフスタイルに合わせた間取りを実現できる。

「ほとんどのお客様が自由設計を選択し、それぞれのご家庭の暮らしに合わせた間取りに変更されました。『一生もの』の住まいとして、お客様のご希望に沿うことができたと思います」

旅館としてのこれまでと、住まいとしてのこれから。

このように話す鈴木自身が住戸にこだわりを見せたのは天井高だ。2600㎜(一部2500㎜)を確保して空間を広げ、住まいの上質感を向上させた。デザインに直結するような派手さはないが、後で変えられない部分こそ、しっかり考えて計画する。
これこそが、住まいを提供する者、三菱地所レジデンスとしての責任を担う者の使命なのだ。

かつて漫画界の巨匠、手塚治虫が執筆のため「缶詰」になるべく投宿した「朝陽館本家」は、明治から平成まで長年にわたりたくさんの学生や出張の会社員、観光客を迎え入れてきた。
『ザ・パークハウス 本郷』は、新たに本郷での暮らしを始める人々に快適な住まいを提供する。
長い年月をかけて醸成してきた、老舗旅館のもてなしの精神を受け継ぐ全92邸。令和の時代の始まりとともにスタートした入居者それぞれの新たな暮らしが、旅館のときとはまた違った、たくさんの思い出、記憶を重ねていくに違いない。

地域の御神木、本郷弓町のクス

『パークハウス楠郷臺』管理組合が管理する「本郷弓町のクス」。なお「本郷弓町」とは旧町名。

『パークハウス楠郷臺』管理組合が管理する「本郷弓町のクス」。なお「本郷弓町」とは旧町名。

1999年竣工の『パークハウス楠郷臺(なんごうだい)』の敷地内にある「本郷弓町のクス」。推定樹齢600年の楠で、江戸時代から名高く、現在は文京区の保護樹木に指定されている。
三菱地所レジデンスでは、この楠を夏から秋のイメージとして捉え、『ザ・パークハウス 本郷』は秋のイメージで植栽設計。近隣の本郷保育園の桜(春のイメージ)とあわせ、地域の四季を表現している。

ザ・パークハウス 本郷(販売済)

ザ・パークハウス 本郷(販売済)

文京区本郷の高台に位置する地上14階建て、総戸数は92戸。三菱地所レジデンスが販売した50戸は自由設計を可能とし、購入者の好みに合わせた間取りを実現した(水回り設備の位置は固定)。
かつて旅館街だった本郷の地にあり、しかも老舗旅館の跡地という土地の歴史を継承した和のしつらえ、モダンでありながら落ち着きを感じられる重厚な邸宅が誕生した。

● 所在地/東京都文京区本郷1丁目28-8
● 構造・規模/鉄筋コンクリート造・地上14階建
● 総戸数/92戸
● 竣工/2018年11月
● 売主/三菱地所レジデンス(株)
● 施工会社/木内建設(株)

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