Mr.グランデスク
都区内唯一の渓谷
“等々力渓谷”をゆく
今回のグランデスク“街歩き”は、
前田昇と共に「世田谷区等々力」から
お届けします。
前回は、GRAN
DESK(グランデスク)で営業を担当しております小川武史が、私たちならではの視点で“街紹介”のポイントをご紹介し、多くのご反響をいただきました。
今回は私とともに様々な角度から不動産と街の魅力の解読に研鑽を積んでまいりました前田昇と共に、世田谷区等々力の街を歩きます。グランデスクならではの視点で等々力の魅力をご紹介して参りますので、ぜひご期待ください。
前田 昇 プロフィール
1964年4月生まれ。趣味は最近健康のために始めたロードバイク。
1987年三菱地所住宅販売(現:三菱地所リアルエステートサービス)入社。
都心・城南エリアを中心に数多くのプロジェクトを担当する。
2023年4月より三菱地所レジデンスのグランデスクスタッフとなる。
太古から継承された暮らしを「不動」
という名が物語る求心地、
東京の奇跡のオアシスがここにある

世田谷区等々力。
上質な住宅地として知られる世田谷区にあっても、その閑静さ、豊饒な自然を有することで知られる住宅街です。とりわけ23区とは思えない別世界を形成する「等々力渓谷」については広く知られていることでしょう。
ところで等々力には、「不動」という名と共に物語られる景勝があります。ひとつは「等々力不動尊」、そして等々力渓谷内の「不動の滝」です。表現されているのは、いずれも揺るぎないもの。「不動心」を表現する「不動尊」、絶えることない水流を表現する「不動の滝」も。
等々力渓谷で、「不動の滝」の解説板を見てみました。「杖を振ってうがつと霊泉がほとばしり出て瀧を成したこの瀧の上に奉納した不動尊を安置したのが崖の上の御本堂の等々力不動尊である」とあります。滝が先んじて存在したという事実を、私たちはこれまで知りませんでした。
この稀少な自然とそこに積み重ねられてきた地層、そして歴史。まさに“不動なる存在”が歳月を超えて息づく街こそが等々力。そこに、住宅地としての魅力を紐解く秘密があるのかもしれません。
紅葉の季節には絶好のスポットになる手水舎
豊かな樹木に囲まれた山門付近から心が凛とします
自然植生の息吹を感じる
水辺空間
地名から紐解く“東京のオアシス”、等々力。
前回、さまざまな街の地名には、起源があることについてお話させていただきましたが、今回は地名から街の歴史を紐解いてみましょう。
等々力渓谷は長い時の中でいくつかの段階を経てきていると推測されています。滝もまた、地勢の変化の中で消失した過程もあったことでしょう。その過程における音がまさに轟くような音がしたので、「トドロキ」という地名になったと言われています。滝の存在が歴史に登場するのは約1,000年前。地名そのものに、「住み継がれてきた地」としての歴史が宿っています。
さらに、この自然的景観を古くから有しているからこそ、1933年という昭和初期に等々力の一部は「多摩川風致地区」に指定。建築条件が厳しいエリアとなったことも、閑静で凛とした空気に満たされた住宅街を生んだ秘密といえるでしょう。
湧水、地層。そこに悠久の刻が積み重なっていく。
等々力渓谷は、武蔵野台地を谷沢川が侵食してできた全長1kmの渓谷です。谷沢川は世田谷のオアシスを貫く河川として、このエリアで多くの不動産に携わってきた私たちにも身近な川。流域にはいくつかの湧水が見られますが、中でも数多くの湧水が見られるのが等々力渓谷で、「不動の滝」もそのひとつ。武蔵野台地上部のローム層、武蔵野礫層でゆっくりと濾過され、水を通さない粘土層で地下水となり地表に湧き出します。
等々力渓谷を訪れると、悠久の刻に身を委ねているような気持ちになるのはなぜでしょう。絶え間ない水の流れ。森林浴を思わせる大樹。そして流れる滝と共に崖状に剥き出しになった地層。3~6 万年前の富士山火山灰が基となったローム層。6~12 万年に堆積した武蔵野礫層。歳月を超えて東京の住宅を支えてきた武蔵野台地の地層の神秘を、ここで見ることができます。
等々力渓谷を構成する谷沢川について詳しく書かれた案内板
「等々力渓谷公園」案内板にはこんな克明な地形図も
地質・地形についても詳しく知ることができます
春には満開の桜も。
渓谷を見渡せる「見晴し舞台」
私たちが訪れた初夏、望むことができたのは一面の緑。その圧倒的な緑量に癒されました。ここは渓谷を一望できる「見晴し舞台」。春には満開の桜が、秋には情緒あふれる紅葉が愉しめる贅沢なスポットで、毎日のように訪れると、都心にいながらにして贅沢な四季を心ゆくまで謳歌できる場所です。


等々力の地の原点を物語る
「不動の滝」
この静かな水脈が数千年にわたって絶えることなく流れ落ちていると聞くと、心が落ち着き、その岩肌に吸い込まれそうになります。初夏の蒸し暑いこの日、体感温度も3℃ほど低く感じられ、吹きわたる涼風は天然のクーラーのよう。そして振り返ると風情ある利剣の橋。岩肌の上を覆うように繁茂する木々や稀少な植生。歳月を超えた「生命」がここにはあります。


その絶えることない“とどろき”に、
積み重ねられた地層と
四季を謳歌できる大自然に、
生きることの豊かさを実感する日常。
この等々力渓谷が、都内に、
身近にある奇跡。
等々力という街は、まさに「等々力渓谷」のイメージに象徴される自然の豊かさ、静けさこそが魅力ですが、エリアを超えて訪れる方が多い街独自の利便性が充実していることも大きな魅力。近接する上野毛や深沢とともに「暮らしやすさ」も併せ持つ世田谷を代表する住宅地であり、自由が丘や二子玉川にも近接した利便性あふれる暮らしの舞台でもあるのです。
しかしながら、そうした人気立地と一線を画しているのは「等々力渓谷」が江戸時代から景勝地であったように、歴史を超えて「不動」なる魅力が今なお街に息づいていること。そのことを再認識させられた、等々力渓谷散策でした。
- 前田:
- 世田谷区は5つの地域に分けられていて、等々力が位置する玉川地域は閑静な住宅地の印象が強いですね。
- 小川:
- 玉川地域は早くから耕地整理が進められた場所。等々力も道路が碁盤の目状できれいだよね。
- 前田:
- この界隈のほとんどが第一種低層住居専用地域ですね。
- 小川:
- そのうえ風致地区もある。等々力渓谷は都から文化財指定されているからね。文化財の近くに住む、というのはたいへんな贅沢かもしれませんね。
Mr.グランデスク
小川武史が改めて想う。
「等々力には、人生という時間をいつまでも上質に研ぎ澄ますことを求めてやまない方にこそ、
住んで欲しい」
今回歩いた等々力は、世田谷区を構成する5つの地域の中で最南端に位置し、田園調布や自由が丘とも近接する、目黒区や大田区の洗練や地域性も併せ持つエリア。緑豊かで閑静な住宅地が広がるエリアでありながら、東京の西の玄関口としても発展を続けています。
今回は「等々力の街」というより、「等々力渓谷」をじっくりと時間をかけて歩きました。
自然や歴史を物語る街に暮らすことが、この度歩いてみて、改めて豊かでかけがえのないものだと思えたからです。文中でもご紹介したように、文化財に指定される名勝を身近に住まえることは、なんと贅沢なことでしょう。「住む」ことの豊かさを深める、それはそこに流れ、積み重なる時間を研ぎ澄ますこと。等々力はまさに、そんな人生に向き合う方にこそ住んで欲しい街です。