Mr.グランデスク
軽井沢の香りに酔いしれる
今回は「軽井沢で広がるお酒造り」をご紹介します。
等々力、四谷・六番町、日本橋人形町。そして前回の千鳥ヶ淵編まで、都心エリアの様々な魅力をお届けしてきたGRAN
DESK(グランデスク)スタッフによる“街歩き”。
今回は、小川武史とともに、今年度よりグランデスク担当となった柴田紀香が軽井沢を訪れました。
軽井沢は、日本初のシングルモルトウイスキーが生まれた地。三菱地所はこの地で生まれるウイスキーの販売促進を支援するなど、私たちにとっても「軽井沢」と「お酒」は縁がある存在です。そこでこの度は、「お酒」にスポットを当てて軽井沢の街歩きを楽しみました。
柴田 紀香
プロフィール
1999年生まれ。2021年に三菱地所レジデンス入社以来、都心の新築分譲マンション販売を担当し、2024年4月よりグランデスクに配属。
最近は、美味しいベーグルショップを見つけることを楽しみにするなど、街を訪れる度にお気に入りのショップや場所の発見に熱心。
軽井沢で愉しめる多彩なお酒
長野県北佐久郡軽井沢町。
言わずと知れた日本を代表する高原リゾート地であると共に、その寒暖差ある冷涼な気候、浅間山の伏流水、そして豊潤な大麦など自然の恵みは、ウイスキーをはじめとするお酒づくりに適した条件を有しています。城下町・小諸や佐久市には、江戸時代から続く日本酒の酒蔵があります。THE軽井沢ビールは、クラフトビール・地ビールでは最大規模ともいわれる工場で醸造。またその風土は、ワイン造りの適地としても着目され、近年続々とワイナリーが誕生しています。
その気候は、温暖化により厳しい夏を過ごすことが慣例になってしまっている私たちにとっても、カラッとした風が吹き抜け、食や酒の深い美味しさを思い起こさせてくれる心地よさ。葡萄、林檎などの果実にも酸がしっかりと残っており、美味しいお酒づくりに適しているそうです。
軽井沢ウイスキー
私たちが最初に訪れたのは、「軽井沢ウイスキー蒸留所」。
もともと軽井沢には、1955年に浅間山の麓に設立され、1976年に日本で初めてのシングルモルトウイスキーを生みながら、2012年に惜しまれながら閉鎖した「軽井沢蒸留所」がありました。“幻のウイスキー”とも呼ばれ、復活を望む多くの声を受けて2022年に新たに開設されたのがこの「軽井沢ウイスキー蒸留所」。この度は、代表取締役社長の戸塚繁さん、そして蒸留所閉鎖時の工場長であり、新・軽井沢ウイスキーのために再び世界に冠たるウイスキーづくりを目指す工場長 中里美行さんにお話しを伺いました。
軽井沢ウイスキー蒸留所
- 住所
- 長野県北佐久郡軽井沢町発地2785-318
- TEL
- 0267-46-4939(受付時間:平日9:00~17:00)
かつての「軽井沢ウイスキー」は、2001年にインターナショナルワインアンドスピリッツコンペティション(IWSC)で金賞を受賞するなど、ジャパニーズ・ウイスキーの世界的評価を高める先駆的存在でした。
その美味しさへの驚きと共に「伝統の技を復活させて地元に愛される文化にしたい」と考えたのが、長野県佐久市で創業360余年にわたり酒造りを続ける老舗・戸塚酒造の16代目の蔵元・戸塚繁さん。
<戸塚さん>
ジャパニーズ・ウイスキーは、世界の5大ウイスキーに数えられる存在で、今や小規模の蒸留所も含めれば全国に150超の販売免許を持つ蒸留所があります。その中においても、世界で唯一無二のウイスキーを生み出せると信じたからこそ、「新・軽井沢ウイスキー」を立ち上げました。
「軽井沢蒸留所」を、最後の工場長として知るウイスキー造りの匠 中里さんにとっての使命は、「新・軽井沢ウイスキー」を再び世界に冠たる味わいとして世に知らしめることに加えて、その技術を若い世代につなげていくこと。元々建築関連のお仕事をされていた中里さんは工場内の蒸留器も作成されたそうです。
<中里さん>
かつての軽井沢ウイスキーを超えるものを期待されていることを感じています。その味わいだけではなく、香りや色彩の深みなどウイスキーには多彩な楽しみがあることを若い方々にも知っていただきたいです。
<戸塚さん>
そうなんですよね。ウイスキーは、たとえばバーで1杯の注文で長く楽しむことができます。そんなゆったりした時間を過ごす楽しみ方が、若い方にももっと広まって欲しいと思います。軽井沢は洋酒の根強い文化があると同時に、発酵・醸造という食文化があります。だからこそ私たちもウイスキーづくりを長く長く続けていき、軽井沢土産や贈り物の象徴となるような魅力ある文化としてウイスキーを根づかせたいと思っています。
三菱地所は、戸塚繁さんの個人出資により設立した軽井沢ウイスキー社より、販売促進の支援業務を受託しています。ウイスキー「軽井沢」を通して消費者に地域の魅力に出会う機会を提供してまいります。
軽井沢アンワイナリー
次に私たちが訪ねたのは、「農ある暮らし」をコンセプトに、2023年に開設した「軽井沢アンワイナリー」。ショップとテイスティングバーを併設し、ワインだけでなくスパークリングワイン、シードルを購入できるほか、テイスティングやワイン葡萄の栽培体験等を行っています。遊休農地や古民家を活用したお酒づくりの場は、地域に開かれた場としても親しまれています。
お話を伺ったのは「軽井沢アンワイナリー」をはじめ、葡萄・林檎の栽培やワイナリーを中核に多様なプロジェクトを手がける松村肇さんと清美さんご夫婦。ご夫婦はもともと埼玉にお住まいでしたが、多忙な日常から離れるために移住した軽井沢町で出逢ったのが、周囲のあたたかなコミュニティ、そしてワインでした。
<肇さん>
「美味しいお酒は旅をしない」と言います。気候や風土だけではなく、周囲の人々にも魅了された私たちにとって、なにより「100%軽井沢産ワイン」の歴史を紡いでいくことが大切なのです。
そう物語る松村さんご夫婦が展開するのは、ワインに親しみ、その度にこの地が好きになるような魅力的な取り組み。
地域に迎えられ、地域の方々のあたたかさに魅了されたご夫婦にとって、このワイナリーは松村さんご夫婦の2人のお子さまも通った思い出の場所。軽井沢町大日向地区の文化財「旧大日向教会・聖ヨゼフ保育園」という地域のシンボルである歴史的建造物です。かつて子どもたちが遊んだ園庭で、現在はぶどうの試験栽培がおこなわれています。
<清美さん>
22年前に私たちをあたたかく受け入れてくださった地域の方々に、ワインづくりを通じて少しでも恩返しできたら。私たちにとって“軽井沢ワイン”をつくることが、地域の方々と共に軽井沢の新しい歴史を紡いでいくことなのです。
だからでしょうか、ワインやスパークリングワインは本格的でありながらどこか親しみが感じられる味わいです。
ワインのロゴはお化粧をしていない女の子をモチーフとしています。
<肇さん>
心がけているのは、純粋無垢なお酒づくり。キラキラとハツラツとした女性に飲んでいただきたいですね。
ご案内いただいた葡萄畑、なによりもともと「旧大日向教会・聖ヨゼグ保育園」だったワイナリーからは、軽井沢ならではの地域の魅力と、この地へのご夫婦の深い愛情が伝わってきました。
「軽井沢ワインプロジェクト」は、「軽井沢アンワイナリー」でスタートしたワインづくりを、ぶどう栽培から醸造所、さらには地域の方々と共に「100%軽井沢ワイン」へと発展させる取り組み。
サポーターからファーマーズ会員に至る地域の方々を募り、地産食材と農業体験の提案など幅広い活動を行っています。
- 軽井沢ワインプロジェクトHP
- https://karuizawawinery.com
お酒と楽しむグルメ
軽井沢は、お酒や果実のみならず、多くの特産品を活かしたグルメも楽しみな地。お酒に合うグルメにも数多く出会うことができます。お野菜はもちろん、とくに盛んなのがハムをはじめとするお肉類やチーズなど燻製食品。
燻製にも多様な方法や伝統の技巧など、この地方ならではのこだわりが宿っています。これらの食品はいうまでもなく、ウイスキーからワインまで、お酒をより美味しく演出してくれるもの。会話と共に香りを、多彩な味わいを、その奥に込められた地域の方々の想いを感じに、是非グルメの旅に訪れてください。
軽井沢いぶる
年間を通じて気温が低く、絶えず良い風が吹き抜ける。その条件が奇跡的に揃った軽井沢に工房を構え、こだわりの「低温燻製」で素材の奥に眠る旨味をじっくりと引き出しています。いわゆる「スモーク」とはまったく異なる繊細な味わいは、軽井沢産のお酒と共に愉しみたいもの。オリジナルブレンドの燻製ナッツ&チョコレートやチーズ、豚や鴨の肉類はもちろん、醤油・岩塩・胡麻・だし・オリーブオイル等の調味料も手がけています。
軽井沢いぶる 中軽井沢店
- 住所
-
長野県北佐久郡軽井沢町
長倉鳥井原1690-1
軽井沢コモングラウンズ内
- TEL
- 0267-41-6677
- 営業時間
- 10:00~18:00 ※火曜日定休
アトリエ・ド・フロマージュ
日本のブルゴーニュといわれるほどチーズの本場フランスに似た風土を持つ東御市に工房を構えるチーズ工房。創業者がフランスから持ち帰った技術を元に浅間山麓の風土に合わせた独自の製法や地元産生乳にこだわって作られるチーズは国内外のコンテストで最高金賞を受賞するなどその品質の高さは国際的にも評価を得ています。
直営店の軽井沢店は自家製チーズやバラエティ豊かなチーズ製品が豊富に揃う人気店です。
軽井アトリエ・ド・フロマージュ 軽井沢店
- 住所
- 長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢東18-9
- TEL
- 0267-42-7394
- 営業時間
- 10:00~18:00 ※水曜日定休
軽井沢デリカテッセン
美味しい水、澄んだ空気。軽井沢の素晴らしい環境の中で、ドイツマイスター直伝の製法を守り続け、一つ一つ丁寧に手づくりする自家製ハム・ソーセージ専門店。サクラとナラの木を用いて直火でじっくり燻したハムやソーセージはアルコールとの相性も抜群。ベーコン、コンビーフ、サラミ、詰め合わせのギフトセットもお勧めです。
軽井沢デリカデッセン
- 住所
- 長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢657-6
- TEL
- 0267-42-6427
- 営業時間
- 9:00~17:30 ※木曜日定休
- 小川:
- 今回、ワイナリーと蒸留所でお話を伺って強く心に残ったことは、「縁」と「情熱」でした。私たちが普段お付き合いさせていただいているお客様にも、しばしば「縁」と「情熱」というお話をいただきます。そしてその2つのキーワードは「人」でつながっています。軽井沢には、街並みにも、建築にも、ここで生まれる素晴らしいお酒や食にも、人の息吹が込められていると感じました。
- 柴田:
- 私もものづくりをする方々の「情熱」、そして軽井沢という地や人が好きで大切にしたいという「想い」が印象的でした。街は新しい店舗が出来たり、モダンな別荘が建設されたりと更新を続けていますが、その中においても、歴史ある街ならではの気品がありますね。
- 小川:
- 確かに単なる避暑地、観光地ではないカルチャー、佇まいが感じられますね。軽井沢は宣教師の移住から別荘地文化が開花していますが、彼らの不文律は「時間と約束を守ること、嘘を言わぬこと、生活を簡素にすること」。この度出会った方々すべてからそうした気高さが伝わってきました。
- 柴田:
- 流れる時間もゆったりとしていますね。都心でせわしなく過ごす私たちを、前向きな気持ちにしてくれる街だと思いました。
- 小川:
- 美しい街並みや景観が保たれているのも、こうした地域の方々の品格によるものではないかと思います。お酒も食品も、そして街並みも、良質なものはこうしたマイスター気質から生まれるのかもしれませんね。
Mr.グランデスク
小川武史が改めて感じた軽井沢の魅力。
軽井沢を訪れるのは本当に久しぶりでした。初めて訪れたのは高校の修学旅行。これまで、蒸留所やワイナリーはもちろん、別荘地を巡ったこともありませんでしたので、今回は新鮮な「街歩き」を楽しむことができました。
「新・軽井沢ウイスキー」が象徴的ですが、100年超の歳月を経ても蘇らせたくなる動機を人に与える力が「軽井沢」という地にはあると思いました。ただのブランドではない何か。
ウイスキーもワインも、恵まれた風致、培われた歳月が深くかかわってきますが、最後にそこに息吹をもたらすのは「人」の想い。そしてその方々の想いや気高さもまた、この地ならではの風土が根底となっているのですが、私たちの仕事も同様に不動産に「人の想いを吹き込む」ことだと改めて感じさせてくれる「街歩き」になりました。
「アンワイナリー」で、私がお土産に選んだスパークリングの銘が「冒険はここからはじまります。」という意味の仏語でした。「街歩き」を共にした柴田も「前向きな気持ちにしてくれる街」だと軽井沢を表現しました。軽井沢の、単に「避暑」を過ごす以上の魅力は、確かにそこにあるのかもしれません。