Mr.グランデスク
長期ステイしたくなる、沖縄北部の風景を巡る(後編)
前回に引き続きお届けする
「沖縄北部」編。
今回は、観光客にはまだあまり知られていないレアスポットをご紹介します。
豊かな人生へのご提案として、「住む」ことにフォーカスしながら様々な街をご紹介してきたGRAN DESK(グランスデスク)スタッフによる“街歩き”。前回に引き続き沖縄北部編をお届けいたします。
後編は、同じく北部の街・本部町を中心に、レアスポットをご紹介します。オフシーズンだからこその楽しみ方、長期ステイしてゆっくりとめぐる沖縄北部の魅力をお届けします。
柴田 紀香 プロフィール
1999年生まれ。2021年に三菱地所レジデンス入社以来、都心の新築分譲マンション販売を担当し、2024年4月よりグランデスクに配属。最近は、YouTubeで日本各地や世界を巡る旅行vlogを頻繁に視聴。旅情をふくらませながら、様々なエリアへの想いを馳せています。
“やんばる”の名で知られる、
沖縄北部の豊かにして奥深い魅力にあふれる自然をご紹介。
前回の“街歩き”は、沖縄北部の観光定番スポットをご紹介しました。壮大な世界観に魅了された「沖縄美ら海水族館」がある「海洋博公園」。ノスタルジックな風情漂う「備瀬のフクギ並木」。そして沖縄のグルメ&ショッピングの魅力を集約したリゾート市場「オキナワ ハナサキマルシェ」。そこには、一度は訪れるべき定番スポットならではの魅力と共に、何度も訪れることでより深く沖縄の自然や暮らしに触れられるような雄大な世界がありました。
後編となる今回は、沖縄北部において、観光客にはまだあまり知られていないレアスポットを探して“街歩き”しました。
日本一早い桜まつりは、
沖縄北部に訪れる。
2025年1月に、日本一早い桜まつり「もとぶ八重岳桜まつり」が開催されました。沖縄本島で2番目に高い標高453.4メートルの八重岳には、頂上まで約4kmの上り道に沿って約7,000本以上もの桜の並木が続いています。
桜の品種は、寒緋桜(かんひざくら)。見ごろは1⽉中旬から2⽉上旬にかけて。二人が訪れた2月上旬は、「桜まつり」は終わっていましたが、花はまだ見頃で桜は山全体に咲き乱れ、緑の原生林と桜が見事なまでに美しいコントラストを描いていました。
沖縄に「春」のイメージを持っていなかったMr.グランデスクも、思いがけなく出逢った日本一早い春を満喫。都心とはまったく違う時間が流れているこの地は、「春から夏にかけてじっくりとステイする」、そんな「沖縄時間」の醍醐味を教えてくれました。

川幅約4mほどの小さなせせらぎに宿る
沖縄北部の神秘。
沖縄北部を象徴する街、本部町内の国道449号を南に行くと、名護市に入る手前、観光で訪れた方が見落としてしまうほどのささやかなせせらぎがありました。
見つけたのは木々に囲まれた小高い山の前、「天然記念物 塩川」の碑。上流でも川幅4m、全長300mほどのせせらぎですが、実は国の天然記念物に指定されています。その理由は、コンコンと湧いている川の水が、世界的にも数少ない塩水であるから。科学が発展した現代においても、そのメカニズムは未だに解明されていないとのことですが、奥深い沖縄の自然の神秘を感じる場所でした。
歩き続けた後はしばしソーキそばを
食して休憩。
八重岳の北側、本部町役場前を通り名護市へと伸びている名護本部線(84号線)は「沖縄そば街道」と呼ばれ、観光客にも親しまれています。その中で私たちが足を運んだのは、地元の方々に長く愛されているという「石くびり食堂」。
石くびりとは、その昔、本部町の伊野波の小高い丘にあった鬱蒼とした小道で、琉球古典舞踊で歌われた古のロマンスの舞台。
その「石くびり」の名を冠した石くびりそばは、鰹出汁のあっさりとした味でした。店員さんに伺うと、沖縄そばは地域やお店によって、主に鰹・豚骨・昆布の3種類の出汁の違いがあるそうです。地元の方に、昔から変わらないアンマー(お母さん)の味として親しまれている石くびりそばは、手打ちの縮れ麺に、三枚肉、本ソーキ、大きなかまぼこの具材。麺は弾力感たっぷりで、スープをしっかりと絡め取る、食べごたえある中太麺。そしてかまぼこも驚くほどのもちもち感でした。軟骨ソーキと本ソーキも、しっかりと味が染み込んでいて、肉の旨味が口の中に広がりました。

一枚から注文できる田いもの天ぷらも注文。揚げたてで美味しい!
伊野波地区の特産品である田いもの天ぷらは、外はサクサク、中はほっくり。すりつぶした田いもを贅沢なまでに使ってカラッと揚げた天ぷらは、田いもの自然な甘みがほっくりと広がってくる絶品でした。田いもは沖縄のお正月料理でもある「ドゥルワカシー」にも用いられ、文化庁認定の「100年フード」にも選出。まさにアンマーの味なのです。「石くびり食堂」は、気取らず入れる昔懐かしい食堂のような店内。地元の方にこそ愛されているのがよくわかります。メニューは他にも、とうふチャンプルーなどの沖縄定番の料理を楽しむことができるため、観光で訪れる方にもぜひお勧めしたいお店です。
本部町には「沖縄そば街道」があるように、地域色が強いグルメが充実しています。ソーキそばの他にも、木炭そばの有名店や、田いも天ぷらの専門店も。
観光で訪れる方々も多いエリアですが、むしろ地域のライフスタイルを垣間見ることができる食の魅力が、ここにはありました。
沖縄北部の農・畜産・漁業の魅力がぎっしり。
日常的に愛したくなる沖縄の恵みがずらり。
“街歩き”の締めくくりは、本部町を飛び出して海岸沿いに、名護市へ。海岸沿いから離れて山間部に入ったところ、JAおきなわ が運営するファーマーズマーケット「はい菜!やんばる市場」に足を運びました。
パイナップルやパッションフルーツはもちろん、東京では見かけることの少ない新鮮な野菜や果物がところ狭しと並んでいました。沖縄野菜が豊富に揃っているほか、タンカン等のフルーツ、ボゴールパイン やマンゴーピューレなど、色鮮やかな沖縄特産品がたくさん。海産物コーナーには、北部の美しい海でとれた海ぶどうや生もずくもありました。
フードコートも併設されており、サーターアンダギーなどがその場ですぐ食べられるのも嬉しいサービス。訪れるだけで沖縄のライフスタイルや特産物への理解が深まると共に、お土産品を買い揃えることもできます。
Mr.グランデスクが手にとったのは、お土産にぴったりの瓶製品。沖縄県産のパイン酢と醤油をベースに、県産シークヮーサーを加えたぽん酢など一度は食してみたい瓶製品も充実していました。ロングステイした際には様々な食べ物にチャレンジしたり、豊富な食材で調理を楽しんだり…そんな使い方がしたくなる市場でした。
新テーマパークオープン予定や
アクセス網整備計画など、
期待感高まる将来性も魅力の沖縄北部。
美しい海、壮大に広がる緑など豊かな自然が残された沖縄北部に、この7月に話題のテーマパークのオープンが予定されています。この地でなければ体験できない雄大な自然を背景にしたアトラクションやアクティビティ、絶景のもとで自分自身が溶け合うようなスパや天然温泉。さらにバラエティに富んだ食の愉しみも加わります。この60haに及ぶ開発も、北部の豊かな自然があってこそ。
また、テーマパーク開業により訪れる方の増加が見込まれるとして、国が主導して、沖縄中南部から北部地域までを約11分短縮する「名護東道路」が開通するなど、アクセス性も向上しています。「名護東道路」はさらに、沖縄美ら海水族館付近までの延伸、全線を自動車専用道路とすること、新テーマパーク近辺など4箇所にインターチェンジを設けることなどの計画があります。

※出典:内閣府 沖縄総合事務局
本部町の美しい海辺を起点に巡った沖縄北部の“街歩き”。そこには、沖縄が持つ“海のリゾート”というイメージに留まらない豊かな魅力がありました。やんばるの木々の力強さ、日本一早い春と出逢う喜び、美しい夕陽、食や農産物からあふれる地域の魅力。夏だけではなく、オフシーズンをもここで過ごすことで、四季折々の風景を愉しみ、観光客なら見落としてしまう場所を訪れたり、ローカルフードを食すなどゆったりとした過ごし方ができる。そこにこそ「沖縄時間」があり、同時に自分だけの時間を見つけることができる。沖縄北部は、そんな時間を過ごすために何度でも訪れたい、と感じる場所でした。
提供写真
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やちむん工房 Mug
- 住所
-
沖縄県国頭郡本部町渡久地4
本部町市場
- 定休日
- 不定休
- 営業時間
- 11:00~17:00
- https://www.instagram.com/potteryshopmug/
古我知焼 窯元
- 住所
- 沖縄県名護市我部祖河916
- TEL
- 0980-52-0727
- 定休日
- 毎週木曜日
- 営業時間
- 9:00~18:00
参考写真
参考写真
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今帰仁城跡
- 住所
- 国頭郡今帰仁村字今泊5101番地
- 定休日
- 年中無休
- TEL
- 0980-56-4400
- 営業時間
- ・通常期間(1~4、9~12月)
8:00~18:00(最終入場17:30)
・夏期延長期間(5~8月)
8:00~19:00(最終入場18:30)
提供写真
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星空浴と宙さんぽ STARGATE ENTERTAINMENT presents
- 住所
- 国頭郡本部町本部町豊原669-1
- 定休日
- 通年開催(要予約)
- TEL
- 080-6492-8516
- 営業時間
- 20:00集合(所要時間80分程度)
石くびり食堂
- 住所
- 国頭郡本部町東464-1
- 定休日
- 日・月曜日定休
- TEL
- 0980-47-4769
- 営業時間
- 11:00~14:00
- 小川:
- 沖縄といえば…青空、真っ白な積乱雲、エメラルドグリーンの海、色とりどりのサンゴ礁、瑠璃色の魚、赤いハイビスカス…とにかくカラフルなイメージでしたが、本部町、名護エリアは亜熱帯ならではの緑が壮観。夏以外の季節も過ごしてみたい場所でした。
- 柴田:
- そうですね。私も「沖縄といえば夏!海!」のイメージでしたが、北部はゆったりとした時間の中で1年中楽しめる場所だと思いました。
- 小川:
- 地元の新鮮な食材を集めてローカル色豊かな料理を地元の方から教えてもらう、など…豊かな時間へのイメージは無限に浮かびますね。まさに「大人時間」が似合う、ゆったりとした時を過ごしたい方には人生の楽園と呼びたい地でしたね。
- 柴田:
- 沖縄そば、ソーキそばなど有名なものでも店やエリアによっても様々なんですね。
何度訪れても新しい経験や発見ができるので私もロングステイしてみたいと思いました。地元の人の話を聞いたり、ローカルグルメを堪能したり…。
- 小川:
-
今回は行くことができませんでしたが、是非ロングステイして「やんばるの森」でのアクティビティを楽しみたいですね。滝のシャワークライミング、カヤック、トレッキング…。亜熱帯の深い森でしか体験できないことがたくさんあります。
7月に「新テーマパーク」のオープンも控えていますし、道路の延伸など開発も計画されており、那覇空港からの交通の便はどんどん良くなっていくと思いますが、北部のほんとうの魅力は、車より自転車や徒歩でないと出逢えないものが多いのではないでしょうか。ローカル色豊かなモノやコトに出逢うゆったりした時間を過ごすためにも、やっぱりロングステイがお勧めですね。観光だけではもったいない、そんなほんとうの人生の楽園だと思いました。
Mr. グランデスク
小川武史が感じた沖縄北部の魅力。
私にとって今回の“街歩き”は、人生二度目の沖縄でした。
前回は猛暑の7月。今回はハイシーズン前の落ち着いた時期だったこともあったのでしょうか、ゆったりとした気持ちになれたことも、北部に魅了された理由でしょうか。とにかく、北部の「やんばるの森」に近い本部町界隈の本州とはまったく表情が異なる緑に圧倒されました。植生の森が幾重にも連なっている。雨を森に蓄える。そして土のミネラル分を川が海に運ぶエコシステムを目の当たりにできたことも感動的でした。訪れた「備瀬のフクギ並木」にも独特の感動がありました。およそ100年前に屋敷の防風林として整備されたという起源、そしてそんな気象条件と共生してきた人々の想いに感じ入ると、思わず庭先を掃いているお住まいの方と目が合い「こんにちは!」と挨拶してしまいました。
ゆったりとした時間の中で、こうした地域の方々ともじっくりとお話ししながら過ごしてみたい、そんな気持ちにもなりました。
帰りの飛行機の中、若い頃読んだ「パパラギ」(サモアの言葉で西欧人)という本を読み返したくなりました。初めて文明を見た南海の酋長ツイアビの島民への演説集なのですが、その中の「こうしてパパラギは、一生、休みなしに駆け続ける。ぶらぶら歩き、さまよう楽しみを、私たちを迎えてくれる、しかも思いがけない目標に出会う喜びを、彼らはすっかり忘れてしまった。」という一説を思い出しました。
次に訪れる時は、是非、歩いて、自転車で、もっとゆっくりと街を巡り、多様な北部の魅力を堪能してみたい、そう思った“街歩き”でした。