The Parkhouse

三菱地所レジデンスの住まいのギャラリー

「ザ・パークハウス 神戸タワー」2020年度グッドデザイン賞受賞

「ザ・パークハウス 神戸タワー」2020年度グッドデザイン賞受賞。

維持保存が困難とされた歴史的建築物を“安全に残す手法”の確立を評価され、「ザ・パークハウス 神戸タワー」は2020年度のグッドデザイン賞を受賞しました。集合住宅で歴史的建築物の再生を行うという挑戦の背景には、いくつもの課題があり、様々な人たちの葛藤や苦悩、願い、そして努力がありました。今回は開発担当者としてプロジェクトに大きく関わった高橋さん、雪田さんに、当時の思いや三菱地所レジデンスの住まいづくりについて伺いました。

INTERVIEW
高橋 隆治さん
雪田 寛昭さん
※所属は2020年11月時点のものです。

街の歴史、人々の記憶を大切にしながら、
新たな未来へとつながるタワーマンションを。

街の歴史、人々の記憶を大切にしながら、新たな未来へとつながるタワーマンションを。

築110年以上の歴史的建造物を保存しながら

マンションをつくるという難題。

このプロジェクトの舞台となる旧ファミリアホールは、1900年に三菱合資会社神戸支店として建設されました。この建物は神戸市の「景観形成重要建築物等」に指定されており、法的拘束力はないものの、歴史的建築物の価値を保ちながら活かして使い続けていくことが求められていました。
また、所有者である子ども服ブランドのファミリアにも「保存してくれる企業に託したい」との想いがあり、地域の方々の大切な記憶を受け継ぐ想いと共に、開発担当として、神戸の歴史を物語る象徴的な建築物をいかにして保存・復元するかを念頭に、新しい住まいをつくるプロジェクトを進めました。

解体前の旧ファミリアホール
解体前の旧ファミリアホール
旧三菱銀行神戸支店時代の金庫扉
旧三菱銀行神戸支店時代の金庫扉
旧ファミリアホール内 石造りの半円アーチ
旧ファミリアホール内 石造りの半円アーチ
旧ファミリアホール 柱頭
旧ファミリアホール 柱頭
膨大な数の石材の保管風景
ひとつひとつに「ナンバー」が記された計5,327点にもなる膨大な数の石材の保管風景
マンション敷地内にモニュメントとして設置されている基壇部の石積オブジェ
マンション敷地内にモニュメントとして設置されている基壇部の石積オブジェ
高橋 隆治さん
「築100年以上経過しているので、解体にはより丁寧で緻密な工程が必要でした」と語る高橋さん

紆余曲折の上、安全性を第一に

「生け捕り」という手法を選定。

神戸の街に愛されてきた歴史ある建築物を、保存しながらマンションに変える。これは、全国的に見てもほとんど前例のない取り組みでした。しかも100年以上前の建物の図面は残されていないので、外壁の石の裏側がどうなっているのかわかりません。しかし分譲マンションはお客様の大切な資産であり、安全性の確保は大きな命題です。
「既存外壁の保存」の手法としては、原位置での存置補強や曳家などがありましたが、どれも外壁を原型のまま保存することになります。私たちは建築を担当する大林組と共に様々な手法を検討し悩んだ結果、住まいとしての長期の安全性を最優先するため「生け捕り」という手法を採用。「生け捕り」は外壁の石組みを一つずつ外すので、すべての石材を我々の目で確認した上で積み直すことができます。こうして安全性を確保した住まいをお届けすることが可能となりました。

職人の手作業と最先端の技術で、

5千点を超える石材を復元。

通常の解体は重機を使いますが、今回は一つ一つの石材を壊さないよう慎重に手作業で行いました。その解体作業中に職人さんが15cm角の小さな定礎板を発見。三菱合資会社名や起工日、建築家名等が刻まれており、明治期からの歴史を感じる、貴重な資料の発見となりました。
また、復元にあたってこだわったのが、石材の加工や洗浄です。石材に付着したモルタル等を除去、洗浄や保護剤を塗布し、風合いを残すため、きれいにしすぎないよう注意をはらいました。こうして仕上げた石材を、レーザースキャナーを使用してデジタル化した設計図を基に、元通りに積み直して復元。「ザ・パークハウス 神戸タワー」はこうした幾つものこだわりと最新技術を駆使し、建物の外壁を保存・復元したことで、引き続き都心部における重要な街角景観を形成し、「景観形成重要建築物等」の継続指定を受けることができました。

生け捕りにより復元された外壁の円柱
生け捕りにより復元された外壁の円柱
生け捕りにより復元された小アーチディテール
生け捕りにより復元された小アーチディテール
復元された壁面(北東側)にマンションのサブエントランスを配置
復元された壁面(北東側)にマンションのサブエントランスを配置

神戸の記憶を受け継ぐマンションが完成。

グッドデザイン賞受賞。

「ザ・パークハウス 神戸タワー」は用地取得から約4年、2019年11月に竣工しました。工事の足場が取れて建物が姿を現した瞬間、とても感動したのを覚えています。デザイン面では、歴史ある壁面と新しい建物を組み合わせる境目をどうするかも課題でした。上層部をセットバックさせることで基壇部の存在を際立たせ、復元した外壁をただの板状の壁ではなく、マンションに入りこんでいくように配置したことでバランスよく仕上げることができました。そして、ご購入者様がはじめて実際のマンションに入られたとき「おおっ」と感嘆の声を上げられたことも嬉しかったです。外観の復元だけでなく、エントランスやエレベーターホールに金庫の扉など生け捕りにした材料を再利用することでかつての雰囲気を表現しています。全体的な意匠のこだわりから細部への追求と、全てにおいて妥協のないマンションができたと言えます。
そして歴史的な建築物の保存と不動産開発の両立が評価され、「ザ・パークハウス 神戸タワー」は2020年度グッドデザイン賞を受賞しました。歴史的な建物を保存・復元するための一つの手法を確立できたことは後世にとっても意義のあることだと感じています。

  • 1階 エントランスホール1階 エントランスホール
  • 1階 エントランスホール1階 エントランスホール
  • エアリーパークエアリーパーク
  • 1階 メールコーナー入口・金庫扉ディテール1階 メールコーナー入口・金庫扉ディテール
  • 南面外観(メインエントランス)南面外観(メインエントランス)
  • 柱頭オブジェ柱頭オブジェ
  • 3階 カフェラウンジ3階 カフェラウンジ
神戸の街並みを一望できる26階のスカイラウンジ
神戸の街並みを一望できる26階のスカイラウンジ

街の歴史や風景を大切にする、

三菱地所レジデンスの住まいづくり。

私たち三菱地所レジデンスは、その場所の歴史や街の風景、生きる人たちの未来を見据えた住まいづくりを行ってきました。今回のプロジェクトは、グッドデザイン賞を受賞した歴史的建築物の保存という側面が目立ちますが、地域の文脈にふさわしいマンションを建てるということは、物件の大小に関わらず、私たちがいつも考えている当社の哲学のようなものです。

本プロジェクトが成功できた要因の一つに私たちの社風があると思います。所有者や神戸市、地域の人の声に応えようという気風があったこと、さらに元々は三菱合資会社の建物ということで、三菱グループとして強い使命感が生まれ、みんなが自然に同じ方向を向くことができました。これからも三菱地所レジデンスは、街を思いながら、人を見つめながら、住まいづくりを続けていきます。