2024年度グッドデザイン賞受賞ザ・パークハウス 京都河原町
2024年10月16日
京都・最高層31m マンションと街並みを共存させる
「ザ・パークハウス 京都河原町」は、京都の中心市街地において最も高さ規制が緩和されている「31m高度地区」に位置し、大きなボリュームの建築が可能であり、周囲に与える景観への影響が懸念されていました。
本計画地の東側は「15m高度地区」に隣接し、風情豊かな高瀬川、鴨川界隈からの視認性が高く、京都の景観を形成する重要な要素となります。それらと調和し京都の街並みを維持・継承しながら建築・空間へ昇華できる高層集合住宅の在り方を提案しました。
鴨川界隈からの視認性が高く、
主要道路の河原町通と西木屋町通に面した立地
東側に隣接するエリア(高さ15m規制・12m規制有)は小規模建築群が建ち並び、かつ京都の風情が残る町家等が軒を連ねています。そこで周辺にある鴨川や高瀬川等、京都の景観を形成する重要な要索と高層住宅がいかに調和しながら、今後の良好な街並み形成に寄与できるのか考えました。
マンションと街並みを共存させる3つのポイント
POINT1建物を雁行・分節させて周囲に与える圧迫感を軽減しつつ
周辺(京町家等)のスケールとの調和を実現
東側の建物形状はバルコニーや内部空間を1スパン毎に雁行配置としました。周辺に対する圧迫感の軽減を図りつつ、各スパンは町家の間口に近づけたことで、街並みとの調和・親和性の向上を図りました。
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- スパン:間口。構造体を支える柱と柱の間隔のこと。
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- 雁行設計:各住戸または数住戸ごとに斜めにずらして配置する形式のこと。
敷地配置図イラスト
東側の建物形状を1スパン毎に雁行配置とすることで分節し、周囲に与える「圧迫感」を軽減した
各スパンを町家の間口に近づけたことで街並みとの調和・親和性の向上を図った
POINT2バルコニーの天井部分に斜め形状の庇を計画し、
京都特有の町家、寺院建築との親和性を向上
各バルコニー上部は町家・寺院建築を参照した木目調の斜め庇としました。空に向かって斜めに設置をすることで立体感が生まれ、周囲を歩いている人から建物を見上げたときに美しい表情となり、夜には室内の明かりが反射して木目が柔らかく浮き出るデザインとしています。
- ※
- バルコニー概念図は、計画段階の図面を基に描き起こしたもので、実際とは異なります。雨樋、エアコン室外機、給湯器等再現されていない設備機器等がございます。
バルコニー概念図
空に向かって斜めに設置をすることで、見上げたときに美しい表情となった
夜は室内の明かりが反射して木目が柔らかく浮き出るデザイン
POINT3建物内の光で道路を照らし歩行者の安全性に配慮しつつ、
格子の設えにより居住者のプライバシーを確保
西木屋町通沿いの1階は一部照明を道路を照らすように設置し、加えて東側接道部分に沿って格子状の列柱を配置。建物のセキュリティの向上及び居住者のプライバシー確保にも配慮しつつ、観光客の往来もある路地裏を灯すことで、夜間の歩行空間の安心感につなげました。
京都・最高層31m マンションのあるべき姿とは。
京都の低層建築は庇を設けて水平ラインを強調するなど、京都の街並みと調和させやすい。本敷地周辺はビジネスエリアで高層建築も多いですが、経済合理性なども含め外観や景観を意識した建物はさほど多くはありません。商業地域で容積率消化の難易度や建設費などを鑑みると、事業性とのバランスが難しい計画ではありましたが、企画設計段階から方向性を定め、一貫性をもって取り進めました。数々の困難がありましたが、「ザ・パークハウス 京都河原町」は京都の市街地景観を形成する重要な立地であると考え、景観を重視した建物を計画し、都市景観の好循環を促す目的でチャレンジし、解決手法の一つとして提案できたと思料します。
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- 掲載のイラストは計画段階の図面を基にイラストで表現したもので実際と異なります。周辺道路・建物等は簡略化しております。
「ザ・パークハウス 京都河原町」の物件情報は以下サイトよりご覧ください。
※販売済みでご確認いただけない場合もございます。
審査委員の評価コメント
京都のような町家が基盤としてあった都市に新たに高層建築を作ることは、そう容易いことではない。これまでに幾多の試みがあったが、成功したと思わせるものも、そう多くはない。しかしこの建築は、雁行する平面によって立面を分節し、さらにバルコニーの上下階の間に軒裏のデザインを施すことで彫りの深い表情を生み出し、上下方向にもさらに分節している。この小さなスケールの集合体だけでも美しいが、同時にこの大きなスケールの集合住宅が小さな町家群とも見事に調和しうることを示してくれていて、心地よい。