頭金だけじゃ足りない?マンション購入諸費用の内訳や抑えるコツを解説

頭金だけじゃ足りない?マンション購入諸費用の内訳や抑えるコツを解説

[住まい選びの基礎知識]

マンションの購入資金を検討する際、多くの方がまず住宅ローンや頭金に目を向けるのではないでしょうか。ただ、購入価格以外に、原則として現金で支払わなければならない諸費用がかかることは意外に見落としがちです。購入手続きを安心して進めるためには、いつ・何に・どれだけ費用がかかるのか?を事前に知っておくことが重要です。
本記事では、ファイナンシャルプランナー・豊田眞弓さんへの取材をもとに、マンション購入時に必要となる主な諸費用について、その内容と支払いの時期、概算金額の目安をわかりやすく解説します。

マンション購入の諸費用、いくらかかる?
種類と金額の目安

まず「諸費用とは何か」という全体像から説明します。図1のように、マンションを購入する際に、住宅ローン以外の自己資金として用意しなければならないのは頭金だけではありません。頭金は購入代金の一部に充てられますが、購入代金とは別にかかるさまざまな項目が諸費用です。つまり、「頭金+諸費用」を自己資金として、現金で用意する必要があります。自己資金は、購入する際に最初にかかるイニシャルコストという意味で「初期費用」とも言います。

図1.購入に必要な初期費用と諸費用の内訳

諸費用の種類は、大きく「税金関係」「ローン関係」「保険関係」「その他」の4つに分けられます。それぞれに細かい項目があり、支払うタイミングも違ってくることに注意してください。なお、税金関係といえば建物代にかかる消費税もあなどれません。ただ、消費税は購入価格に含まれて表示され、住宅ローンの対象にもなるため、諸費用からは除いています。手続きの流れに沿った内容は次項で解説しますので、まず、総額でいくらぐらいになるか、おおまかな目安を知っておきましょう。

「具体的な物件が既に決まっている場合は、新築マンションの事業主や中古マンションを販売する不動産会社から、諸費用の概算計算書を提示してもらえるのが一般的です。ただ、いろいろな物件を比較検討する段階では、ご自身でも、諸費用が購入価格の何%ぐらいになるかを把握しておいたほうが賢明でしょう。おおよその目安としては、新築マンションは価格の3~6%、中古マンションの場合は6~9%と言われています 」(豊田さん。以下コメントは同様)

たとえば、リクルートが調査した「2024年首都圏新築マンション契約者動向調査」によると、平均購入価格は6629万円。その3~6%は199万~398万円になります。2024年度の首都圏における中古マンションの平均成約価格は4939万円(東日本レインズ調べ)。その6~9%は296万~445万円です(個人間売買の場合)。

ファイナンシャルプランナーの豊田眞弓さん

ファイナンシャルプランナーの豊田眞弓さん

実は、新築より価格の安い中古のほうが諸費用は高くなっています。その理由は、売主または買主が不動産会社(仲介会社)を間に立てて売買したときに仲介手数料(物件紹介や契約事務等の成功報酬)が発生するためです。仲介手数料は宅地建物取引業法で上限が決められており、売買価格800万円を超える物件の場合は次の速算式「売買価格×3%+6万円(+消費税)」で計算できます(個人間売買の場合)。新築マンションは通常、仲介手数料はかかりません。また、「リノベーション済み中古マンション」を売主の買取再販事業者から直接購入する場合も、仲介手数料は不要です。諸費用の項目ごとに詳しく試算した結果は最後に紹介します。

新築・中古マンションの売買・仲介概念図

新築・中古マンションの売買・仲介概念図

諸費用の支払い時期はいつ?
手続きの流れに沿って解説

諸費用全体のおおまかな目安はつかめたでしょうか。ただ、その全額を一度にまとめて支払うわけではなく、図2のような手続きのタイミングに合わせて段階的に用意しなければなりません。そこで各ステップのポイントを解説していきましょう。

図2.諸費用がかかるタイミング

①売買契約

事業主・売主と売買契約書を取り交わすときに支払うのが印紙税です。契約書に記載された金額に応じて決められています。価格が「5000万円超~1億円以下」の場合は3万円です。税法の本則では、この価格帯は6万円ですが、2027年3月までの軽減措置として半額になっています。最近増えている電子契約であれば、印紙税はかかりません。中古マンションの場合は、このタイミングで不動産会社に仲介手数料の1/2を支払うことが多いようです。

図3.契約時にかかる印紙税

②ローン契約

住宅ローン契約を結ぶ際にも印紙税がかかります。借入金額が「5000万円超~1億円以下」では6万円です。売買契約と同様に、電子契約なら印紙税はかかりません。次に、金額の差が大きいのが、ローン契約に付随してかかる事務手数料とローン保証料です。金融機関によって設定が異なり、図4のようなパターンに分かれてきます。

図4-1.事務手数料とローン保証料の組み合わせパターン

大別すると、事務手数料が大きくなる「a.事務手数料型」と、ローン保証料が大きくなる「b.保証料型・一括前払い方式(保証料一括払い型)」に分かれます。もともとは「b.保証料型・一括前払い方式」が主流でしたが、ネット銀行系が「保証料なし」を特徴にした商品を展開するようになってから、保証料の代わりに事務手数料を高めに設定する「手数料型」のパターンも増えてきました。

「a.事務手数料型」は返済期間に関わらず融資額に一定の割合を掛けて算出するタイプ。「手数料定率型」とも言われます。「b.保証料型・一括前払い方式型」は、事務手数料は定額で、保証料が融資額と返済期間に応じて決まります。新築マンションで多い35年返済では、初期費用だけで比べると「a.手数料型>b.保証料型・一括前払い型方式」になるケースが多いでしょう。また、購入後に繰り上げ返済をしたり、買い換えて一括返済をしたりした場合、「b.保証料型・一括払い型方式」は保証料が一部戻ってくるため、実質的な負担は軽くなります。つまり、将来の返済計画によって損得が変わってくるわけです。

「a.事務手数料型」の場合、繰り上げ返済しても事務手数料は戻ってきません。諸費用としては多くなりますが、「a.事務手数料型」を扱う金融機関では「b.保証料型・一括前払い方式型」よりも金利は低めになるケースが多いようです。そのため最後まで完済したときの、諸費用と支払い利息を含めた総支払額では、「b.保証料型・一括前払い方式型」より負担は低くなります。

図4-2.金融機関に支払う費用の例(借入金5000万円の場合)

さらに現在は、事務手数料がなく、保証料を金利に加算する「c.保証料型・金利上乗せ方式」も登場しています。「最初に支払う諸費用としてはゼロで、元利金の毎月返済額と一緒に保証料を後払いする仕組みです。このように、ローン関係の諸費用については、金利との関係も併せて考える必要がある点に注意してください。総支払額を計算してみないと損得はわかりません」(豊田さん)

この他、民間の住宅ローンでは基本的に「団体信用生命保険」へ加入しなければなりません。ただし、標準プランの場合、保険料は金利に含まれているのが一般的。保証対象の病気や症状を増やしたり、所得補償を付保したり、オプションが増えると上乗せ金利も高くなります。また、火災保険への加入も義務付けです。地震保険は任意ですが、火災保険とセットで加入する割合が増えてきました。保険料は、地域や建物の構造・価格によって異なります。ここ数年で保険料率が相次いで値上げされているため、負担が重くなる傾向にある点も注意が必要です。

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③残金決済・引き渡し・登記

この3つの手続きは同時に行うのが一般的です。「残金決済」は、売買契約時に支払った手付金、住宅ローンを除いた頭金の残金と諸費用を支払う手続きのこと。その場で、登記関連の書類を確認して司法書士に登記を委託し、住戸の鍵を受け取り引き渡し完了となります。

ここでポイントになるのが登記費用です。不動産を登記するときにかかるのが登録免許税。図5の通り、登記の種類によって変わります。専有面積が50m2以上など、一定の条件をクリアした住宅には税率が軽減される特例も知っておきましょう。この特例を受けられるか否かで、税額に大きな差が出ます。適用条件をよく確認するようにしてください。
なお、税額を計算する基になる価格は、購入価格ではなく、固定資産税評価額です。また、登記手続きは司法書士に委託するのが通例で、10万円程度の報酬がかかります。

図5.登録免許税の主な税率

新築マンションの場合は、管理に関わる費用についても把握しておきましょう。昔は、管理費と修繕積立金は入居後に月々支払うのが一般的でしたが、昨今は資金が不足しないように、引渡し時に一括して支払う「管理準備金」や「修繕積立基金」を設定するケースが主流になっています。金額は物件によってまちまちですが、「管理準備金」は月額管理費の1~2か月分、「修繕積立基金」は月額修繕積立金の90~110か月分程度が多いようです。物件によっては設定金額が大きくことなるケースもあるため、個別に確認してください。

残金決済・引き渡し・登記費用のイメージ画像

そのほか、残金決済・引き渡し時の諸費用としては、売り主が負担していた1年分の固定資産税・都市計画税を、引き渡し時期で按分して支払う「精算金」があります。また、中古の場合は、仲介手数料の残金をここで支払うのが一般的です。

④引っ越し・入居後

マンション購入に伴う諸費用についての解説では、引っ越し代や家具家電・カーテン代も含めているケースが多いようです。ただ、個別の条件によって金額のバラツキが大きいため、なかなか一般的な目安は示しにくいかもしれません。引っ越し代は、荷物の量(ピアノなど特別な荷物の有無)、移動距離、時期(繁忙期と通常期)・曜日・時間帯などによって大きく変わります。あくまでも一例ですが、3~4人ファミリー、3LDK、50km圏内の移動で10~50万円(繁忙期以外)といったところでしょうか。家具家電・カーテン代は、ライフスタイルや趣味嗜好によってまちまち。数十万円から数百万円までの幅がありますから、各自で検討してみましょう。

最後に、入居後しばらくたってから支払うのが不動産取得税です。住宅の場合、税額は「固定資産税評価額×3%」になります。本来は購入者による申告納税が原則ですが、一生に何度もない高い買い物のためか、ほとんどの自治体では税務事務所から納税通知書が届く仕組みになっています。早ければ入居後3~4ヵ月、遅い場合は1年以上先になるケースもあるようです。こちらも登録免許税と同様に税額軽減の特例があることを覚えとくとよいでしょう。特例を受けると、ファミリータイプの一般的な新築マンションでは税額がゼロになることも珍しくありません。

引っ越し・入居後費用のイメージ画像

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諸費用をできるだけ抑えたい!
知っておくべき4つのコツと注意点

コツ1. 税額軽減の特例を活用

登録免許税と不動産取得税には税額の軽減措置があると前述しました。また、購入時の諸費用ではありませんが、入居してから毎年かかる固定資産税にも、建物の税額が住宅の種類によって3~7年間も軽減される特例があります。これらの特例を受けるうえで最大のポイントが住宅の床面積です。登録免許税は「50m2以上」、不動産取得税は「50m2以上240m2以下」、固定資産税は「50m2以上280m2以下」です。下限はすべて「50m2以上」ですから同じだと思うかもしれません(図6参照)。

図6.軽減措置の床面積要件の違い

「実は、国税の登録免許税と地方税の不動産取得税・固定資産税では、マンションの面積を判定する方法が違うことに注意してください」(豊田さん)

登録免許税は専有面積(登記簿面積=内法面積)が判定基準ですが、不動産取得税と固定資産税は「専有面積(登記簿面積=内法面積)+専有面積割合による共用部分の按分面積」が基準となっています。そのため、広告に表示された専有面積(壁芯面積)が50m2ちょうどだった場合、登録免許税の特例は受けられませんが、不動産取得税の特例は受けられるというケースもありえるわけです。コンパクト・マンションの場合、これに近い状況が起きやすいことを覚えておきましょう(図7参照)。

図7.床面積の基準の違い

コツ2. 諸費用を住宅ローンで賄う

現金で用意する自己資金をダイレクトに減らすために、諸費用を融資で賄う方法もあります。金額の大きい事務手数料やローン保証料、修繕積立基金が融資の対象に含めている金融機関は珍しくありません。
「現金の出費を抑えるためにローンの比率を増やすのも有効です。結果として、金利負担や総支払額が増え、返済リスクも高まるため、余裕をもった資金計画を組める場合に検討すると安心です。資金計画全体を見て、総合的に判断することが大切です」(豊田さん)

コツ2. 諸費用を住宅ローンで賄う

コツ3. 自分でできる手続きは任せない

「登記費用を節約するために、司法書士に委託せずに自分で手続きをする方法もあります。不動産投資家など、手続きに慣れている人の場合は有効かもしれません。ただ、手続きに必要な書面や取引当事者の本人確認など、専門家でないとスムーズに進められない面もあります。わずかな金額を節約するために、不備があって登記できない事態を招くおそれもあるでしょう。初めてのマイホーム購入では、あまりお勧めはできません。また、一般に、売買契約書で司法書士をデベロッパーが指定することが多いようです」(豊田さん)

コツ4.中古マンションを売主から買う

冒頭で紹介したように、諸費用の目安は新築より中古のほうが高めになっていました。これは不動産会社が介在して、仲介手数料がかかる点が大きいと言えます。そこで中古マンションを検討している場合は、売り主からダイレクトに購入すれば、仲介手数料はかかりません。不動産広告の「取引形態」が「売主」と書いてある物件を選ぶことです。最近は、リノベーション済みの中古マンションを販売する買取再販事業者も増えています。
「ただし、再販物件の場合は、事業者の利益や手数料が含まれているため、仲介手数料がないだけでおトクかどうかは判断できません。物件の中身と価格のバランスが取れているかも考慮して選ぶといいでしょう」(豊田さん)

コツ4.中古マンションを売主から買う

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同価格で物件種別や立地で諸費用はどう変わる? 6600万円の物件でシミュレーション

最後に、これまでの解説を踏まえて、諸費用の項目全体を含むシミュレーション結果を紹介します。購入価格は同じで、物件の種別や立地を変えた3パターンを試算してみました。土地と建物の比率、評価額が変わることによって、諸費用がどう変わるかを知るうえで役立つでしょう。

● 物件の条件

物件の条件

● 諸費用の内訳

諸費用の内訳

4つのポイントをチェック!

◆ポイント1
冒頭で紹介した諸費用全体の目安のパーセンテージの範囲内に収まっています。
◆ポイント2
C.新築コンパクトは、税金が安くなる特例の面積要件に当てはまらないため軽減を受けられず、A.新築マンションより少し高い水準になっています。単位面積当たりでは割高と言えるでしょう。
◆ポイント3
真ん中のB.中古マンションは個人間売買で仲介手数料がかかっている例です。買取再販事業者から購入する場合、価格が同等だとすると仲介手数料分だけ安くなり、A.新築マンションより1%以上も低い金額になります。
◆ポイント4
上記では、引っ越し代・家具家電・カーテン代を含めていません。仮に、これらの項目全体を概算で100万円程度とすると、購入価格に対する諸費用の割合は、上図の結果に1.5~1.6%を上乗せした数値になります。

以上、これからマンションを購入する際の資金計画の参考にしてみてください。

<プロフィール>

豊田眞弓さん
豊田眞弓さん

FPラウンジ代表。ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、子育て・教育資金アドバイザー、相続診断士。経営誌や経済誌のライターを経て、1994年より独立系FPとして活動。現在、個人相談や講演、各種媒体へのマネーコラムの寄稿・監修などを行うかたわら、亜細亜大学ほかで非常勤講師も務める。著書に『[改訂版]「住宅ローン」賢い人はこう借りる!』(共著。PHP研究所)、『都心の小さな家・マンションに住み替える』(監修・ダイヤモンド社)など多数。

TEXT:木村元紀
PHOTO:村山雄一

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