旅する料理家SHIORIさん流、“多国籍なインテリア”の自分らしいまとめ方
[暮らしのアイデア]
2018年04月11日
シリーズ累計370万部のベストセラーとなった『作ってあげたい彼ごはん』の著者で、料理家のSHIORIさん。年に数回は海外に赴き、その国の料理や文化を学んでいるそう。その経験は住まいにも活かされており、家の中心となるリビングダイニングには、さまざまな国&年代のインテリアが揃えられています。さまざまなテイストのインテリアを、どのようにセンス良く、自分好みにまとめているのでしょうか?SHIORIさんのインテリアへのこだわり、そして食と住まいの関係について、お話を聞きました。
さまざまな国、年代の家具がミックスした心地よい空間
SHIORIさんのご自宅は、都内の高台に建つマンションの8階。周りに高い建物がなく、広々としたリビングダイニングには、明るい陽ざしが差し込みます。そんな空間をさらに心地よく感じさせるのは、SHIORIさんのこだわりが詰まったインテリア。さまざまな国の異なるテイストを持つアイテムの数々が不思議と調和した、”多国籍”なしつらいです。
例えば、ダイニングスペースの中心に据えられたヴィンテージテーブルはデンマーク製。それに合わせて配されたチェアは、イギリスのブランドの4脚を中心に、アメリカのブランド「イームズ」のチェアも違和感なくまとめられています。
ヴィンテージテーブルは拡大することができ、お客様を招く際に重宝。アメリカのブランド「イームズ」のチェア(一番手前グレーと、奥のメッシュのもの)が、モダンな空気をプラスしている
ソファを配したリビングスペースを彩るのは、モロッコの幾何学模様のラグ。さらにスウェーデン製のバタフライチェアや、デンマーク製のコーヒーテーブルがアクセントとなっています。そして部屋の緑と調和したグリーンのカーテンは、美しい色に惹かれてスペインから取り寄せたものだそう。
まるで家にいながら海外を旅するかのようです。
「とにかく『自分が好きなもの』という点だけを徹底したら、こうなりました(笑)」とSHIORIさん。特にルールなどはなく、「好き!」という直感に従い、少しずつ揃えてきたのだそう。「他の家具との調和や、置き場所があるのかということも考えないぐらい」と話しますが、そうは思えないまとまりを感じさせます。
「意識して選ぶわけではないですが、好きな家具の共通点は“温もり”かもしれません。特に木の素材感が大好きで。ただ、“ほっこり”し過ぎないよう、素材やテイストを織り交ぜて、バランスをとるようにしています」。
デンマークのブランドMaterのBowlテーブルは、丸みを帯びたテーブル部分と、シャープな脚の組み合わせが印象的
「自分へのご褒美」という、椅子への思い
新品で無機質なものではなく、長く使い込まれたヴィンテージの風合いに惹かれることが多いというSHIORIさん。ご自身も、メンテナンスをするなど、家に迎え入れた家具を大切に扱っています。
「特に椅子が大好きで。10年ぐらい前はアメリカ『イームズ』のヴィンテージチェアを集めることに熱中していました。当時は狭い部屋に住んでいて置く場所もないのに、『次に本を出したらこれを買おう』と自分へのご褒美にしていて。結局8脚も集めることになりました(笑)」。
SHIORIさんが自分へのご褒美に集めてきた、イームズのチェアたち。鮮やかなカラーやアイアン素材が、空間をほどよく引き締めている
椅子への思い入れは相当なもの。例えば、ダイニングチェアはロンドンの「G-PLAN」というメーカーの年代物。出会ったとき、ファブリック部分はかなり汚れていたそうですが、「こんなに素敵なチェアにはもう出会えない」という強い思いから、ファブリックを丁寧にはがしてクリーニングに出し、また貼り直して家へ迎え入れました。
また下の写真は、バタフライチェアという愛称で知られるスウェーデンCUERO社の「BFKチェア」。SHIORIさんが一目ぼれしたアイテムですが、今ではご主人のお気に入りになっているそう。
「私がソファをゴロゴロと占領し、バタフライチェアが夫の定位置になっていることが多いです(笑)」。
「椅子がムダに多くて」と話しつつも、それぞれに共に過ごした時間のストーリーがある様子です。
「人を呼んだときも、それぞれ心地のよい居場所を見つけてくつろぐことができる。椅子はいくつあっても困ることがないですね」。
海外で料理とともに学んだ「暮らしの楽しみ方」
SHIORIさんがインテリアに興味を持つようになったのは、海外での経験が大きく影響しているそう。
「結婚をした27歳のときに、自分のキャリアや強みを見直そうと、リフレッシュも兼ねて海外に短期滞在しました。以来、ちょこちょこといろんな国に出かけるようにしています。いまでも、海外に料理を勉強しに行くことがライフワークの1つです」。
イタリアでは寮に入り料理学校でしっかり学んだり、パリではおいしいものを探し歩くため、アパルトマンで一ヶ月間の仮住まいをしたりと、さまざまな経験をしたSHIORIさん。料理を学びながら、ヨーロッパ、インド、東南アジアなど、いろんな国の住まいやインテリアを見ることで、多くの「取り入れたいもの」に出会ってきました。
「特に印象的だったのは、パリで滞在したアパルトマンの床。この素敵な床は何だろうと感動して」。
後日、それがヘリンボーンという床の張り方であることを知ったそう。今のお住まいは偶然ヘリンボーン床で、「内見のときに運命を感じた」とSHIORIさん。床暖房を設置する予定でしたが、「この素敵な床を壊したくない!」と、機能よりもヘリンボーン床の魅力を重視し、残すことを選びました。
内見のときに運命を感じたというヘリンボーン張りの床。床板を“矢羽状”に張ることで、独特の上品な雰囲気が生まれる
「海外で学んだのは『とにかく、まず楽しむ』ということ。例えば料理なら、日本では基礎の勉強を重視しますが、海外では『楽しむ』を重視する。暮らし方も同じで、優先順位が違いましたね」。
ヘリンボーン床の魅力を重視して残したのも、「デザインを楽しむ」という学びが生きているのかもしれません。
「もちろん『働くこと』を優先する、日本の考え方にも学ぶべきことはたくさんあります。どちらかだけではなく、『働く』『楽しむ』どちらも充実させたい、という気づきを旅で得たように思います」。
『こういう暮らし方がしたい』という思いを形にする喜び
日々、料理教室を開くアトリエや自身がプロデュースするお店で忙しく働くSHIORIさん。家で過ごす時間は大切な安らぎの時間になっているそうです。
「いつも『早く家に帰りたい』と思っています(笑)。 アトリエもお店も、お気に入りの空間であることは変わりないのですが、どちらもテンションやモチベーションを上げておかなければいけない仕事場。家は、すべてのものを脱ぎ捨てて心が安らげる唯一の場所です」
SHIORIさんの至福の時間は、休日に大きなソファに寝そべりながらゴロゴロとひなたぼっこすることだそう。
「日当たりの良さが、この家を選ぶ決め手となりました。夫とともに、日が当たる時間をゴールデンタイムと呼んでいて。彼も仕事が忙しいので、一緒に過ごす時間は大切にしています。そのためにも、安らげる空間づくりは意識していますね」。
部屋に安らぎを与えているグリーンの世話は、ご主人の担当。「話しかけたり霧吹きをかけたりして、とにかくかわいがっています」
ここに暮らしてもうすぐ2年になりますが、家に手をかけたいところはまだまだたくさんある、とSHIORIさん。
「私は、自分が『食べたい』と思うものを作ることに幸せを感じています。暮らしも自分が『暮らしたい』と思うように作れるもの。せっかく暮らすなら心地いいようにしたいと思っています。この家は、まだまだ完成形ではありません。暮らしながら、自分の“好き”という感性や、家族の居心地の良さを考えて、最適化しながら暮らしをつくっていきたいですね」。
SHIORIさん
料理家。代表作「作ってあげたい彼ごはん」をはじめ著書累計400万部を超える。「同世代の女性にもっと料理を楽しんでもらいたい」をモットーにファッション誌連載、書籍の出版、テレビ、広告、イベント、企業コラボなど多岐に渡り活動中。近年は海外料理留学にも力を注ぎ、料理教室L’atelier de SHIORIを主宰する。2017年に中目黒にファラフェルスタンド「Ballon」をオープン。https://www.ballontokyo.com/
(テキスト)大森りえ
(写真)鈴木真弓
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