災害危機管理アドバイザーのアイデア伝授。キッチン収納のコツと備蓄アイテムの管理方法

災害危機管理アドバイザーのアイデア伝授。キッチン収納のコツと備蓄アイテムの管理方法

[暮らしのアイデア]

2019年03月08日

昨今、記録的な豪雨や台風、大地震が各地で相次ぎ、防災への意識が高まっています。普段から地震や大雨といった災害から身を守るためにどのように備えておくべきなのでしょうか。今回は、家の中でも物が多いキッチンで地震などの災害から身を守るためにどんなことに気をつけるべきなのか、キッチン収納のコツや備蓄アイテムの管理方法など、災害への備えについて、災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんにお話をうかがいました。

 

災害からキッチンを守るコツはまず整理整頓から

災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さん。

――どの部屋でも災害時の安全性の確保は大事だと思いますが、比較的物が多いキッチンは地震などで物が散乱し、危険度が高そうです。災害時にキッチンの被害を軽減する方法はありますか?

キッチンは、食器などの割れ物が多いほか、包丁など危険なものも多い場所です。見せる収納としてフライパンや鍋などを壁にかける方もいますが、これはおすすめできません。できるだけものは外に出しておかないことです。日頃から、棚や引き出しの中にしまう習慣をつけておくこともキッチンの被害を軽減する方法になります。

また、冷蔵庫は揺れにより意外と動きやすいです。転倒防止粘着マットなどで、床にしっかり固定しましょう。冷蔵庫などの上に電子レンジを置く人が多いですが、高い場所に重量のあるものを置かないこと。食器棚の中でも、食器など割れやすいものは、耐震パッドを敷いてその上に置いておくと動きにくくなります。食器棚などを固定する際、天井と棚の間に転倒防止用のH型のつっぱり棒を利用されている方も多いかと思いますが、これは緩んだままにしておくと危険です。使用する場合は、粘着マットで床面も固定するのがおすすめです。

――基本的な設置方法が大事なんですね。キッチンの収納には、主に引き出し型と棚型がありますが、どちらのほうが災害に強いのでしょうか?

どちらも大差はありません。開き扉の場合は、耐震ラッチが効果的です。地震などで揺れると扉がロックされるので、設置しておくと安心です。最近のマンションの吊り戸棚にはほとんどついていると思いますが、付いていない場合はあとから取り付けできるものがありますので設置しておきましょう。収納は、造り付けの壁面収納が倒れる心配がなく安全性が高いので、これから住まいを検討されている方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。

様々な用途に対応可能な家具転倒防止器具「スーパータックフィットMNT」 三菱地所レジデンス株式会社が、住宅デベロッパー2社と共同開発した、さまざまな「人・場所・家具」に対応可能な家具転倒防止器具。〈2014年度グッドデザイン賞受賞〉北川工業株式会社の協力の下、固定が容易な粘着ゲル、長さ調節が可能な耐震バンドを採用することで、様々な「人・場所・家具」に対応可能で、誰にでも取り付け易い商品を開発しました。

 

備蓄食糧の上手な管理方法や備蓄におすすめの食糧は?

――キッチンに、備蓄アイテムを保管しているご家庭も多いので、被災時もキッチンはとくに生活の要として守りたい場所ですよね。備蓄アイテムは、家族の健康を守るためにも大事ですが、キッチン収納の一環として上手な管理方法や備蓄におすすめの食糧などを教えてください。

まず、家にストックしておく備蓄食糧ですが、水や食糧は3日分~1週間分とよくいわれます。備蓄というと長期保存ができるものを、と考える人が多いかもしれませんが、じつは特別に用意することはありません。普段よく使うもので代用できます。

購入したら、日付の古いものから消費し、ある程度減ったら買い足します。これは、「ローリングストック」という備蓄方法です。

つまり、まず1週間分の食糧をストックしておき、そのうち3日分くらいを使用したところで追加購入すれば、常に3日以上の食糧が備蓄されていることになります。これは、3日に一度食糧を購入するというわけではありません。備蓄用の缶詰などが半分ほどなくなった時点で追加するので、いつのまにか消費期限が切れて備蓄食糧を無駄にしてしまうということがありません。


備蓄におすすめの食糧は、スパゲッティなどの乾麺です。消費期限も長く、停電時やガスの使用ができないときでも、カセットコンロなどで簡単に調理もできますし、レトルト食品と組み合わせると味のバリエーションも多彩です。また、災害時は、野菜や果物が手に入りにくいので、トマト缶や桃缶などを用意しておくといいでしょう。

備蓄食糧の保管場所は、食糧の場合はキッチンが一般的です。キッチンにスペースがない場合には、ウォークインクローゼットの下部や押入れのなかなど半畳程度のスペースを探しましょう。クーラーボックスなどに入れて、納戸に置いておくのもいいでしょう。クーラーボックスは停電で冷蔵庫の通電ができない時の一時的な保存にも役立つので便利です。

――災害の状況によって対策は変わってくると思いますが、例えば「自宅でライフラインの復旧を待つ時」、「避難所に身を寄せる時」で準備は異なりますか?

避難所に行かないまでもライフラインの停止により普段通りの生活は送れず、集合住宅では、エレベーターが停止することも考えられます。とくに上層階の場合、水や食糧などを補充する際に大きな支障となるため、長期の停電に備え、日頃から水や食糧は十分に用意しておくと安心です。また、水や食糧のほかに、簡易トイレを用意しておくと生活用水の節約に役立ちます。

避難所に身を寄せるような被災時は、普段の生活とは異なるためストレスや疲労により、免疫力が下がってしまうことも多く、感染症にかかりやすくなります。高齢者や子どもがいる場合は、うめぼし、はちみつ、緑茶などを常備しておくといいですね。これらは、口にすることで、免疫力のアップや風邪やインフルエンザなどの感染症を防ぐ効果があります。

また、避難所へ行く場合は、非常用持ち出し袋を持って行きましょう。1人(幼児~成人相当)につき500mlの水2本程度、簡易食のほかは生活用品、衛生用品、健康を維持するための日用品を入れます。また、メガネやコンタクト、赤ちゃんがいる場合は、使い捨て哺乳瓶やおむつ、持病がある人は薬など、個人的に必要なものは優先して用意しておきましょう。

中身だけでなく、非常用持ち出し袋は、いざという時に持ち運びやすくあるべきです。リュックサックのように背負える袋で、重量は避難の邪魔にならないよう4~5㎏に抑えるのが理想です。避難の際バラバラになってしまうことも十分考えられるので、家族分をまとめて1袋に入れるのではなく、1人1袋用意するのが基本です。小学校低学年以下のお子さんの分は、ご両親の袋に一緒に入れてください。保管場所のおすすめは、玄関付近。できるだけ目に着くところに置いておきましょう。

注意したいのは、非常用持ち出し袋の中身を、キッチンなどに備蓄しておく水や食糧と混同しないことです。キッチンなどに備蓄している水や食糧は、自宅でライフラインの回復を待つために必要なものです。緊急時に持ち出せるものには限りがあります。普段から分けて保管しておくことでいざという時スムーズに対応できます。

 

災害に備えるにはアウトドアライフがいい理由

――キッチンに保管する水や食糧などの備蓄アイテムの充実は、災害時でも日々の暮らしを支えてくれそうです。非常用持ち出し袋やキッチンの備蓄食糧などをきちんと管理、チェックすることで、日頃から防災意識を高めたり、災害に備えられたりするといいですが……。

防災意識を常に高めておくことは現実的に難しいですね。でも、東日本大震災があった3月11日と関東大震災があった9月1日に、非常持ち出し袋や備蓄している水や食糧などを総チェックするということを決めておくといいかもしれません。

常に意識することよりも、慣れておくことで、いざという時に備えることもできます。災害の際は、いつもとは違う不便な暮らしになります。それは少しアウトドアと似ているんです。なので、たまに家族で楽しくキャンプなどを楽しんでみてはいかがでしょうか。

実際、アウトドア用品は、インフラのないところで役立つものが多いです。持っていれば災害時にも役立つはず。また、キャンプをすることで、不便に慣れる、不便を楽しむことができれば、災害時も慌てずに過ごすことができます。食事は、カセットコンロとスキレットなどがあれば簡単に美味しいものが作れますよ。私もアウトドアが好きでよくやるのですが、インフラのない状況に対応できる対策としては有効ですね。

災害は、忘れた頃にやってきます。毎日災害を意識して生活するのは難しいですが、万一の場合に備えておくことは重要。災害が起こっても、避難所で受け入れられる人数は限られています。実際に多くの人は自宅を拠点とすることが多くなります。そうなると、キッチンを守ることは、災害時の心配事のひとつである「食」を守るとともに、家族の健康を支えることにつながります。

また、インフラが整っていない不便な状態を楽しめるアウトドアの経験は災害時にきっと役立つはず。楽しく遊んで、食べて、しかもいざというときも慌てずに対応できる力が身につけられるので、家族で挑戦してみてはいかがでしょうか。


<プロフィール>
災害危機管理アドバイザー 和田隆昌(わだ たかまさ)
感染症で生死をさまよった経験から「防災士」資格を取得し、災害や危機管理問題に積極的に取り組む。専門誌編集長を歴任し、長年のアウトドア活動から、サバイバル術も得意。主な著書に『まさかわが家が』(うしお出版社)があり、講演会ほかTVなどマスコミ出演多数。All About「防災」担当。

(テキスト)高田薫
(写真)斎藤泉、Getty images

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    ザ・パークハウスの防災プログラム

    三菱地所レジデンスでは、実効性にこだわった防災プログラム「そなえるカルタ」「そなえるドリル」の提案、防災計画書作成の推進、住宅デベロッパー3社で共同開発した家具転倒防止家具の開発など、防災に関するさまざまな取り組みをしています。

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