家事シェアのプロに教わる。居心地のいい暮らしは家族でつくる

家事シェアのプロに教わる。居心地のいい暮らしは家族でつくる

[暮らしのアイデア]

2019年04月26日

近年、「家事シェア」という言葉を目にする機会が増えてきました。実際に、夫婦共働きの家庭が増えている社会的背景もあり、とても注目されているキーワードです。
とはいえ、家事シェアの理想と現実のギャップに悩む家庭も多いのではないでしょうか。そこで今回は、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事の村上誠さんに、家事シェアのメリットや賢く取り入れる方法をうかがいました。

 

家事シェアって何?家事の分担とはどう違う?

「家事シェア」とひとことで言っても、そもそもどういう時代背景や価値観から生まれた考え方なのか、ご存じでしょうか? 意識を高めるためにも、家事シェアの意義や、提唱された経緯を知ることは重要だと村上さんは話します。

「この10年ほどで、日本では『イクメン』という言葉が生まれ、育児に関わろうとする父親は増えましたが、分担がうまくできず、まだ完全に協力し合えていないと感じていることが多いようです。また共働き世帯が増えていることからも、家事シェアが注目されてきています」

家事を「分担」するのではなく、「シェア」するという意識を育むことも、家事シェアを考えるうえでのポイントだそうです。

「家事の『分担』と言うと、『私の担当は○○と△△、あなたの担当は●●と▲▲』とはっきり分けるイメージがあるかと思います。これも悪い方法ではありませんが、自分の担当以外の家事はひとごとになってしまいがち。そのため、急な仕事や病気の時などひとりが家事時間を確保できなくなると、その家事が滞ってしまいますし、やって当たり前になっていると、それぞれの苦労やストレスを分かち合うことも難しいでしょう」。

「また、布団の上げ下げやベッドメイク、ゴミの分別、シンクの掃除、日用品の補充や交換などのこまごまとした作業は『名もなき家事』と呼ばれ、あらかじめ分担されずに、ひとりの負担になりやすい傾向もあります」。

家事育児の夫婦の役割分担の現状や理想、解決方法を探る際に活用するワークシート。埼玉県女性キャリアセンター「夫婦のためのライフワーク講座」資料より引用。

一方、家事の『シェア』は、家庭の作業すべてを自分事として共有するイメージです。理想のライフスタイルや、家事の好き嫌い・得意不得意などをすり合わせ、特定の誰かにストレスや負担がかかることを避けながら家事に取り組む『シェア』の意識を持つことで、家事を『分担』する以上に暮らしやすさが向上するのではないでしょうか」。

 

家族仲にも仕事にもいい効果が!家事シェアがもたらすメリット

ひとりに集中しがちな家事負担を減らす観点で提唱されることが多かった家事シェアですが、さらなる「夫婦円満のカギ」になることも。

「うまくシェアできるようになると、ストレスや負担が減り、夫婦円満の手助けになるはずです。また、家事を共有することで、夫婦それぞれのもの・お金の使い方や育児のビジョンなど、家庭の現状が把握しやすくもなるでしょう。そこで共通認識が生まれれば、仕事の繁忙期や病児の対応時などピンチのときでも、協力体制が取りやすくなります」。

裏を返せば、家事シェアができていないと、家事以外のさまざまな価値観も共有しにくくなりますし、家の居心地も悪くなる……という恐れが。

村上さんは、「家事で得たことは、きっと仕事にもプラスになるでしょう」と話します。

「限られた時間のなかで家事や育児をこなしていくことで、包容力や忍耐力、時間管理能力、マルチタスク処理能力、生活者目線の経済感覚などが備わります。また、家事・育児と仕事の両立に励む社員の気持ちがわかるようになり、マネジメント能力がアップしたという話も聞きます。家事を通して身につく多くの能力や社会性、そして思いやりは、『働き方の多様化』という時代の変化に対応するためのスキルになるはずですよ」。

さらに子どもとの家事シェアは、情操教育にもつながるとのこと。家事シェアを通じて、子ども自身が生活能力を身につける……つまり、家事シェアが一種の育児方法になるといえます。

「もちろん、子どもに家事を任せても、最初から完璧にこなすのは難しいので、根気強く教えたり、手伝いやすい環境や仕組みを作ったりする必要はあります。それでも、家事シェアが子どもの自立心と生活能力を育てることは確かだと思います。長い目で見ると、子どもが家族の一員として率先して家事ができるようになれば、結果的には親の負担が軽減される時期も早まるでしょう」。

「家事シェアは親が子どもと会話をして仲良くなったり、子どもの成長ぶりを確認したりできる貴重な機会でもありますから、そのチャンスを失うのはもったいないと思います」。

 

これできっとうまくいく!家事シェアのコツ

家事シェアは普通に考えれば、ごく当たり前のことなのですが、なかなかうまくできない家庭が多いのは、ここまでお伝えしてきたとおり。上手に家事シェアをするコツについて、村上さんにうかがいました。

① 役割を与え、託して、ねぎらう

「最初は、相手が好きな家事や得意な作業を、全面的に任せることから始めるといいでしょう。たとえば掃除なら、相手がよく使うところや汚しやすいところを、そこの『責任者』として担当してもらうのもおすすめ。責任感が芽生えて、協力してもらいやすくなります。

任せるときは、完璧を求めすぎないことも大切です。『シェア』ですから、それぞれの心地よいポイントをすり合わせ、妥協できる地点に落とし込みましょう。

褒める子育てが推奨されて久しいですが、子どもだけでなく大人にも評価と承認は必要です。主体性に任せて、自己肯定感とやる気を引き出し、自立を促すように、感謝の言葉や、頑張りを認める言葉をかけるのも効果的です。私は役割・託す・ねぎらうの頭文字から『やっ・た・ね!』と名付けています」。

② 家族でスケジュールを共有し、生産性を上げる

「仕事や育児のスケジュールを1週間や月単位などで洗い出し、そのつど家事の担当を決めるという方法も、臨機応変にサポートし合える環境を作れますし、気持ちのすれ違いも防げていいと思います。わが家でもカレンダーアプリやスマートスピーカーなどのITを活用し、予定を共有しているので、相談がスムーズです。

また、仕事のように期日とゴールを設定し、『この日までに終わらせて、みんなで○○に行こう』など、楽しみや目標を作ると、生産性も上がりますよ」。

③ 「マイナス→ゼロ」家事から、「ゼロ→プラス」家事に意識を向ける

「ちらかった場所や汚れたものをリセットするといった『マイナスになった状態をゼロに戻す作業』には達成感を感じることは難しく、家事が負担になりやすいです。でも、好きなものをきれいに飾って『見せる収納』にしたり、最新家電を導入するなどで、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を向上させるための『プラスの状態に引き上げる作業』も家事には存在します。自分の個性や趣味などを家事につなげられると、作業が楽しくなりますし、パーソナルな事柄を家族と共有し、仲を深めるきっかけにもなるはずです」。

④家事がしやすい住環境を整える

「住宅購入や住み替えを考えているなら、家事のことを想定して選ぶのもひとつの方法です。たとえば、家族で使いやすい高さのキッチンを選べば、料理のモチベーションが上がるかもしれません。ワンフロアで家全体を見渡せる間取りのマンションを選ぶのも、家事動線がシンプルになりますし、みんなで『自分事』として共用できる部分も多いので、家事シェアには向いているでしょう」。

村上さんの話を参考に、「家事シェア」をスタートさせてみるのはいかがでしょうか?

NPO 法人ファザーリング・ジャパン『パパとママの育児戦略』(repicbook )、『家族を笑顔にする パパ入門ガイド 』(池田書店)、『新しいパパの教科書』(学研マーケティング)など多数。家事シェアや子育てについて、新しい価値観を提供している。

<プロフィール>
村上誠(むらかみ まこと)
NPO 法人ファザーリング・ジャパン理事、ファザーリング・ジャパンちば代表、NPO 法人孫育て・ニッポン理事、NPO 法人いちかわ子育てネットワーク理事。秘密結社主夫の友総統。「主夫=主体的に家事育児に携わる男性」と定義し、男性の育児・家事のさらなる浸透と女性活躍の推進、夫婦の多様性を目指して活動中。テレビ出演、雑誌掲載、講演多数。

(テキスト)矢郷真裕子
(写真)塙薫子、gettyimages

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