部屋の「ここ」を変えるだけで違う雰囲気になる~ちょこっとリフォームのコツ

部屋の「ここ」を変えるだけで違う雰囲気になる~ちょこっとリフォームのコツ

[暮らしのアイデア]

部屋の雰囲気をちょっと変えたい、壁紙が汚れてきたのでキレイにしたいなど、住んでいる部屋のリフォームを考えるきっかけはいろいろ。家具のレイアウトを変えただけで、部屋の雰囲気が一新された気分になりますが、もう1歩踏み込んで、ちょっとだけリフォームしてみるのはいかがでしょう。壁の色を変えてみたり、必要なところに棚を付けてみたり、収納をもっと使いやすくしてみたり。DIYに初トライするのもいいですし、ハードルが高ければ、気になる部分だけリフォーム会社にお願いしてみてもいいでしょう。部屋の「ここ」を変えただけなのに、気分も変わります。今回は実例から見るパーツリフォームの紹介です。

事例1 10年先を想像し、自問自答して考えたカラーリング…Kさん邸

Kさん邸は、自分たちの希望が盛り込まれた集合住宅であるコーポラティブハウス(※)。高い天井から差し込む自然光が部屋全体を明るく開放的にする1LDKのお宅です。フリーライター&パーソナルスタイリストのKさんがリフォームを考えるようになったのは、在宅ワークが増えてからと言います。

コーポラティブハウス:入居希望の数世帯が集まって、建築家とともに共同でつくる集合住宅のこと

「洋服などモノが多いので収納が足りないと思っていました。部屋を見回すと壁紙の汚れや窓枠の塗装剥がれなどが気になり出して、一度リフォームを手掛ける設計会社に相談したのですが、自分たちの思うような提案がなく、完成までの時間も結構かかることが判明しました。夫も住宅へのこだわりがある人なので、二人で納得して進められるよう、一度に全部ではなく、少しずつリフォームすることにしました。」

まず取り掛かったのが、リビング・寝室・トイレ・洗面室の壁です。
白一色だったリビングの壁は、天井の梁のようになっている部分を境に下をシックなグレーに塗り直しました。余った塗料を譲り受け、リビングにある物入の扉も同じグレーに自分達で塗ったそうです。

床から天井にかけて色味を区切ることで、空間のバランスを作っているリビング

床から天井にかけて色味を区切ることで、空間のバランスを作っているリビング

壁の色をグレーにすることによって、温かみのあるナチュラルテイストのテーブルやTV台、無垢材のフローリングと、無機質な印象のTVやPCなどを調和させる効果も見られます。

リフォーム前のリビングの壁

リフォーム前のリビングの壁

寝室も白い壁だったのを睡眠導入に良いとされるブルー系にしました。
ブルーにしたことでゴージャスな雰囲気のカーテンが重く感じられ、カーテンは淡いグレーのローマンシェードへ変更。すっきりした印象になっています。

眠りに入りやすいブルーの壁に塗られた寝室(右上:リフォーム前の寝室の壁/左下:リフォーム前のカーテン)

眠りに入りやすいブルーの壁に塗られた寝室(右上:リフォーム前の寝室の壁/左下:リフォーム前のカーテン)

目覚めの良い部屋づくりのヒントは
こちら 

洗面室は白から濃いめのグレージュに変更。
「水回りは色もそうですが、水に強い素材のものに変更しました。以前の壁紙は表面に凹凸があり、経年による汚れがどうしても凹んだ部分に入ってしまいます。今度の壁紙は汚れが付きにくく掃除がしやすい素材で選びました。黒板のようにチョークで文字が書けるそうですが、それはまだ勇気がなく試していません(笑)。」

カラーはもちろん耐水性の高さにも考慮した洗面室(左:リフォーム前/右:リフォーム後)

カラーはもちろん耐水性の高さにも考慮した洗面室(左:リフォーム前/右:リフォーム後)

「以前は直感で壁の色も家具も決めていましたが、大概飽きてしまうんですね。今回は10年、15年先も愛せる色をと思い、何度も自問自答しながら壁の色や素材を決めていきました。これから玄関周りなどのリフォームも考えていますが、同じようにゆっくりじっくり、吟味しながら進めていきたいと思っています。」

事例2 お仕着せのリフォームではなく自分のアイデアを盛り込む…Iさん邸

「この家は窓から見える開放的な景色に一目惚れして購入しました。」
Iさん邸は一人暮らしにぴったりの、都心にあるコンパクトマンションです。一部リフォームされたマンションでしたが、千葉の古民家を改装しギャラリーにしてしまったIさんにとっては少し物足りない部屋でした。間取りは浴室などの水回りが住戸の真ん中にある1LDKです。出来るかぎり室内空間を広くしたいと考えたIさんは、廊下だった部分を洋室の一部とウォークスルークローゼットにし、水回り部分を洋室とリビングダイニングを繋ぐ通路へと変更しました。かなり大胆なリフォームです。

I邸の間取図。左が元々のプランで、右がリフォーム後のプラン

I邸の間取図。左が元々のプランで、右がリフォーム後のプラン

「限られた面積の中で、いかに生活有効面積を広げ、開放感を高めるかというのが課題でした。間取り図をじっくり見て、廊下が不要と感じ、その分を居室スペースとして使いたいと思ったのと、トイレと洗面室の狭苦しさも解消したい。単身世帯ということもあり、トイレの独立性よりも水回りとしての開放感を優先させました。」
廊下だった部分を居室にし、収納スペース(ウォークスルークローゼット)も確保。そして元々あったトイレの手洗い部分に洗面化粧台を移動させ、用途をまとめたことで通路部分のスペースも生まれました。
「将来、事務所としてこの部屋を使う場合、水回りに両部屋からの動線があれば、2部屋を独立して使うことも可能かとも思います。」
将来を見据えたうえ、大きく間取り変更することなく、大胆な発想で費用面も抑えたリフォーム。コンパクトサイズ住戸の参考になりそうです。

  (左)水回りの壁は温かみのあるイエローに。右にあるドアは洋室への通路用に新しく取り付けた。真ん中のドアは現在使用されていないもので以前の名残(右)開放感を追求したため、備え付けの収納付き鏡は取り付けず、自分好みの鏡を設置。左に見えるのがリビングへのドア

(左)水回りの壁は温かみのあるイエローに。右にあるドアは洋室への通路用に新しく取り付けた。真ん中のドアは現在使用されていないもので以前の名残
(右)開放感を追求したため、備え付けの収納付き鏡は取り付けず、自分好みの鏡を設置。左に見えるのがリビングへのドア

「リフォームするとき、例えば他所のお宅やカフェ、SNSなどで良いなと思う部分を事前にチェックしておき、自分でどんな風な部屋にしたいか、イメージをしっかり持っておくと良いと思います。リフォーム会社が作ってくれる図面に理想のイメージを言葉や絵にして具体的に描き込んで、作業される方にきちんと伝えることが大事です。」

古い物を活かしつつお気に入りのものを加えて、自分らしい住まいにする工夫は千葉のギャラリーでも同様。ギャラリーの名前にもなっている紫と緑の色ガラスを嵌めた扉(薬局ギャラリー紫と緑@gallery_murasaki_et_midori)

古い物を活かしつつお気に入りのものを加えて、自分らしい住まいにする工夫は千葉のギャラリーでも同様。ギャラリーの名前にもなっている紫と緑の色ガラスを嵌めた扉
(薬局ギャラリー紫と緑@gallery_murasaki_et_midori)

【コラム】気軽にできる簡単DIYのご紹介

Iさん邸には、簡単なDIYで部屋を使いやすくした工夫がたくさんあります。タオル掛けが付いていなかった浴室ドアには、ドア枠にポールホルダーを設置。腰高の位置ではなく上の方に取り付けているため、通路になっている浴室前を通っても邪魔にならず、干したバスタオルの乾きも良さそうです。
また洋室のクローゼットの枠にも、本来なら棚を置くフックを逆さにしてポールホルダーとし、洗濯物を掛ける物干しにしています。いずれも使う時だけポールを掛ければ良いので、普段は部屋の美観を損ねることもありません。

(左)浴室ドアの枠に付けたタオル掛け(右)クローゼットの外枠に付けた室内洗濯物干し

(左)浴室ドアの枠に付けたタオル掛け
(右)クローゼットの外枠に付けた室内洗濯物干し

事例3 収納はフレキシブルに。入れるもの飾るものを考えて設計…Mさん邸

ご両親との同居をきっかけにして、リフォームを考えるようになったというMさん。日本の伝統文化や、工芸品などものづくりをプロデュースして発信するクリエイティブ・ディレクターのMさんは、いっそのこと気になっていた収納なども自分のライフスタイルに合わせて変えることにしました。

モノの多さを感じさせず、すっきりした印象にしているのは、棚に入れている本や小物の色合いをまとめたこと。シックな壁の色が調和を持たせている

モノの多さを感じさせず、すっきりした印象にしているのは、棚に入れている本や小物の色合いをまとめたこと。シックな壁の色が調和を持たせている

「十数年前に新築で購入したファミリータイプの3LDK。」
間取りそのものは変更していませんが、リビングダイニングと洋室を隔てていた仕切り扉を外して、空間を広く見せるリフォームを行いました。

また、ちょうど洋室のクローゼットとリビングダイニングの物入が隣り合っていたので、そこを一つにまとめて大きな収納に変えています。

2つの収納を3枚扉の1つにまとめたクローゼット。3枚扉は半透明の素材を使用して、室内を柔らかで広がりを持たせる演出

2つの収納を3枚扉の1つにまとめたクローゼット。3枚扉は半透明の素材を使用して、室内を柔らかで広がりを持たせる演出

またキッチンシンクの上にあった吊戸棚を外したことで、背面が見えるようになりました。

そこにクローゼットと同じテイストの食器棚を造作し、部屋の統一感も持たせています。仕事柄、食器の数は相当ありますので、それをきれいに収めることができました。

扉のテイストを同じにすることで部屋全体の統一感を与えている

扉のテイストを同じにすることで部屋全体の統一感を与えている

収納の工夫は他にもたくさんありますが、すぐに真似できそうなのが寝室のクローゼット。
扉をロールスクリーンに変えて、扉によるデッドスペースを無くしています。中にあるものが取り出しやすくなった他、クローゼットのギリギリまで戸棚を置いて収納力をアップ。室内にもゆとりが生まれています。

室内に開放感をもたらす効果として、壁など色の組み合わせにも配慮しました。
「室内を明るく広々とした印象にするため、壁と室内ドアの色も同じ色に統一しました。以前は白壁に濃い茶色の木目調ドアでしたが、同じ色にしたことで視覚的にも広々とした印象になりましたし、部屋全体がすっきりとまとまりました。また、ダイニングスペースの壁は予め棚を置くつもりでしたので、そこに飾る小物や本を置いてもごちゃごちゃした感じにならないよう、そして置いてあるものが際立つような色をセレクトしました。他より少し濃い色にしています。」
壁の一面をアクセントウォールにする場合の参考になりそうです。

(左)扉をロールスクリーンにしたクローゼット。棚もギリギリの位置まで寄せることができる(右)壁と同色に塗ったドア。フローリングのテイストも壁やドアによく合う

(左)扉をロールスクリーンにしたクローゼット。棚もギリギリの位置まで寄せることができる
(右)壁と同色に塗ったドア。フローリングのテイストも壁やドアによく合う

また今回のリフォームでは店舗デザイナーのアドバイスが欠かせなかったというMさん。
「仕事柄、店舗デザイナーの知り合いがおり、その方に相談しました。室内ドアと壁を同じ色にしたのもその方のアイデアです。一般の方でしたら、例えばお気に入りの家具を扱っているお店などにご相談するのも良いかと思います。そこの家具を使って室内デザインまでしてくれたり、デザイナーを紹介するサービスを行なっている会社もあります。
私は犬を飼っているため、フローリングやドアなどの傷も気になっていましたが、全部張り替えるとなるとかなり予算オーバーになってしまいます。相談したところ、上からフローリングシートを貼ることを提案されました。種類も多く、見た目も木と間違えるようなクオリティ。そして何より汚れたり飽きたら張り替えられる気軽さもあります。貼った上からでも床暖房が使えるのも嬉しいポイントです。」

既存の住宅をヴァージョンアップさせてくれるリフォーム。
大規模な工事は費用も時間もかかってしまい中々面倒ですが、今ある家に手直し+αを加えるだけで、使いやすくなるのが「ちょこっとリフォーム」の良いところです。ぜひご参考にしてみてください。

(テキスト)山田江理子
(インタビュー写真)清水タケシ

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