2025.07.28
#みやこ杣木#地産地消
#森林サイクル
#森林サイクル
「木」が持つ物語と先人たちの想いを、
過去から未来に繋ぐ
「目に見えない背景や物語が、
木材それぞれに宿っているんです」
そう語るのは
「丸嘉」5代目社長の小畑隆正さん。
安政6(1859)年から木材を扱う生業を
代々続ける京都の老舗木材問屋です。
地元京都市産の木材を積極的に扱う姿勢や、
サステナブルな取り組み、
木が持つ背景を大切にする想いについて
お話を伺いました。

「みやこ杣木」の認証を受けた北山杉

北山杉をはじめとする
様々な素材で作られた見本
地元木材を地産地消し
健全な森林を維持する
京都市伏見区で木材の卸売業を営む株式会社丸嘉の小畑社長。フローリングなどに使う国産木材、特に京都市産の「みやこ杣木」を多く取り扱っています。みやこ杣木とは京都市の認証木材の名称で、京都市内の森林から合法に伐採された木からできた製材品や合板のこと。「昔は交通も輸送も発達していなかったので地産地消が当たり前でした。現在は海外から木材を輸送できるようになったけれど、船や車で長い距離を輸送することになります。京都で採れた木材を京都で使用するのが理にかなっていると思うし、近年はSDGsの観点からも地産地消が推進されてきていると感じています」と小畑さん。
また、「みやこ杣木」を積極的に使うことで、森林を健全に保つことができるとも。「木は樹齢約40年程度で伐採の適齢時期がきますが、戦後、国の施策で植えた木が約70年経った今、利用可能な木が大量に存在しています。適齢期に伐採することが、森林にとって良いサイクルを生み出します」
森の木々が効率よくCO2を吸収するにはこのサイクルで伐採し、新しい木を植える必要があるのだとか。また、木の根が土壌を固定することで、土砂崩れを防いでくれる効果も。「森林の循環利用が、社会に良い影響を与えてくれるんです」

ギャラリーには「みやこ杣木」や
古材を利用した商品が並ぶ

「ザ・パークハウス 京都聖護院」の
モデルルームで採用されている「みやこ杣木」※1
目に見えない物語を
人から人へ橋渡しする
木の使い心地の良さについて伺うと、「木には空間を和らげる効果やリラックス効果があると私は思います。住宅の内装に木材を使うと、お部屋の湿度を調整したり、音の反響を柔らかくしたりするなどの効果が期待できます」と小畑さん。また、小畑さんが木材を選定する際に大事にしていることは、「誰がどこの山で育てたか、どういう想いで木を育てたかなど木材にまつわる背景や意味合い」。そうした面でも、産地の証明があり、認証を受けたみやこ杣木を扱うことが大事なのだとか。「目に見えない背景や物語が、木材それぞれに宿っているんです。木の苗を植えてから伐採の適齢期が訪れるまで約40年かかります。木を植えた人、育てた人、切った人、使っていただくお客さま……それぞれの物語を繋いでいくことが我々の使命だと思っています」
その一例として、左京区で子供向けに木製の写真立てを作るイベントを開催した際には、京都市内で育った木材を使い、子供たちになぜその木を使うのかという意味も伝えたのだとか。
「木のぬくもりや手触りを楽しんでもらいながら、身の回りにある木製品にも、京都の魅力や物語を感じ、愛着が湧くような背景やメッセージがあるということを伝えています」

たくさんの古建具が並ぶ「京都 古材市場」

5代目社長 小畑隆正さん
古いものを大切にしながら
新しい価値を創造
また、約160年以上続く家業を守りながら、小畑さんは日本でも数少ない古材事業を20年前にスタートさせました。「京都 古材市場」と称し、解体した京町家などから柱や梁を買い取り磨き上げ、カフェやレストラン、ホテルなど多岐にわたる取引先に古材の魅力を伝えています。「私が会社を引き継いだ20数年前、京都市内にある創業300年の呉服問屋の解体現場に出合い、立派な柱や梁が廃棄されると聞き、「もったいない」という想いから古材の取り扱いを始めようと決めました。木には3つの命があり、長いものになると伐採前の山で100年、家になって100年、解体してからも古材として更に100年利用できます。私はその循環の中で木を預かっている感覚なんです。何百年も前に柱や梁に使われた木材はとても立派で、現在だとなかなか手に入らない。特に、京都には古いものを使い続けるという文化があると思います。解体される古民家に伺うと、すでに古材が使われていることもあるんです」と小畑さん。京都の先人たちは、100年以上前からすでにリユースやリサイクルをしていたという事実に驚かされます。
「木材それぞれに背景や物語があるように、古材がどこから来たのか、どんな建物に使われていたのかなどを、私が次の世代につなぎ、木に込められた先人たちの想いを伝承していきたいと思っています」と力強く語る小畑さんでした。
京都に根付く温故知新の魂を胸に
京都の人には、背景や歴史、伝統を重んじる精神性があります。仕事ぶりや生活の中で、そういった精神が伝播して、京都の町と文化が形成されているのだと思います。そして今生きている人がまたその精神を未来に繋いでいく。
先代から唯一教えられたことは「京都の町で暮らしているけれど、我々が町や文化を作ったわけではない。先人たちが作り上げた過去があるから現在があるし、更に未来があるということを忘れてはいけない」という言葉。京都で培った温故知新の魂こそが、私にとっての一生もんです。
木は今日植えてもすぐに大きくはなりません。私が植えた木が孫の代でやっと利用できるように、何代もかけて大切に育てていく必要があります。先人たちの想いを次世代に残し伝えていくために、これからもさまざまな挑戦を続けていきたいですね。
株式会社 丸嘉 代表取締役 小畑 隆正

京都・木想商家
株式会社 丸嘉
(きょうと・もくそうしょうか まるよし)
株式会社 丸嘉
(きょうと・もくそうしょうか まるよし)
- 所在地
- / 京都市伏見区横大路貴船114
- 交通
- / 京都市バス「横大路」下車、徒歩3分
※記載の写真、内容は取材当時(2025年6月)のものです。















