これからのマンション選びは
「オンライン&モデルルーム見学」のハイブリッド型がトレンドに
2020年11月06日
新型コロナをきっかけに、マンション選びのスタイルが変わりつつあります。これまでは、詳しい情報を得るにはモデルルームのあるマンションギャラリーを訪問するのが常識でしたが、今では足を運ばなくても、自宅で物件の詳細情報を手軽に得られるオンラインサービスが登場しているのです。今回は、そのなかでも注目を集めている「無料オンライン相談」にスポットをあてて紹介します。
自宅にいながら気軽に詳しい情報を入手できる
以前は、物件に興味はあっても、遠くにお住まいの場合や、小さなお子さん連れで外出しにくい場合、高齢の方で現地までの移動が大変な場合などは、モデルルーム見学に踏み出せないケースもありました。さらに、新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言後は、マンションギャラリー(※)が一時的にクローズされ、行きたくてもいけない状態がしばらく続きました。
- ※
- マンションギャラリー:販売されているマンションのモデルルームや関連情報の展示、相談ブースなどがある施設。「販売センター」ともいいます。
さまざまな理由からモデルルーム見学ができない人たちに注目されているのが「無料オンライン相談」です。
今回は、新型コロナの問題が起きる前からサービスを始めていた三菱地所レジデンスの事例を取材し、サービスの内容や相談の様子を詳しく紹介します。
話をうかがったのは、高輪ゲートウェイマンションギャラリーで「ザ・パークハウス 三田ガーデン レジデンス&タワー」の販売を担当している菅井佑大さん。
無料オンライン相談は、インターネットの接続環境、カメラ付きパソコンやタブレットがあれば、国内外どこからでもできます。
相談の所要時間は、マンションギャラリーでは2時間程度かかるのが一般的ですが、オンラインでは30分~1時間程度と少し短めです。
販売担当の菅井佑大さん。2020年8月下旬に実施した取材中はマスクを着用。
実は、無料オンライン相談を受ける方は、必ずしも遠方でマンションギャラリーに行けない方ばかりではありません。「私が担当している物件では、半数は現地に近い方です」と菅井さん。
また、年齢層は20代後半から40代前半の方が中心ですが、60代後半の方もいます。
「国内と海外に別々に住むカップル、都内のご夫婦と地方の実家の親御さんなど、お客様のご家族が異なる場所にいて、マンションギャラリーと三者をつないで実施したケースもございます」
オンライン相談は、マンションギャラリーでの対面相談並みに中身が濃い
では、実際の相談風景について取材を基に再現してみましょう。
※予約方法や相談に必要なシステム環境などについては、こちらをご覧ください。
a)まず物件概要や周辺環境を説明
- スタッフ
- 「担当の菅井です。本日はご予約いただきありがとうございます。物件概要から、まずご説明させていただきます。上空から見た物件の写真が画面に映ってますでしょうか。」
- 相談者
- 「はい、見えます。ホームページでは、この画像はなかったですね」
- スタッフ
- 「広さ5000㎡を超える敷地にタワー棟と中高層のレジデンス棟がゆとりをもって配置されています。空地率は約50%です」
――画面上を、スタッフがポインターで指し示しながら現地周辺の様子を説明します。
- 相談者
- 「都心の割に、ずいぶん贅沢なつくりですね。この近くの建物は何ですか」
- スタッフ
- 「こちらが敷地配置図です。前面道路からエントランスへのアプローチは……」
――図面上へ、リアルタイムに矢印を書き込み、どこを指しているか示しながら説明してくれます。インタラクティブな操作ができるオンライン相談ならではのやりとりです。
相談者側から見た画面。ホームページやパンフレットには載っていない物件資料が示されます。
相談者側から見た画面を拡大した様子。
b)リクエストしていた周辺相場と価格の話題に
――相談者からも随時質問できます。
- 相談者
- 「事前にお伝えした周辺の価格相場について知りたいんですが…」
- スタッフ
- 「承知しました。こちらが周辺で販売されている物件データの一例です」
- 相談者
- 「このマンションの物件概要では、最低と最高、最多価格帯が出ていましたが、具体的な住戸の価格は教えてもらえますか」
- スタッフ
- 「お客様のご希望は、タワー棟の〇〇m2、〇LDKでしたね。階数によって幅がありますが、××万円から△△万円です」
スタッフ側から見た物件周辺の価格相場が出ている画面。
――必要な資料はすべてスタッフの手元に用意されているため、相談者のリクエストに応じて柔軟に対応し、ほとんど待ち時間もなく、画面に表示されます。ここでは客観的なデータを基に、価格の根拠について説明してもらえました。
c) 間取り図からVRモデルルームへ
- スタッフ
- 「詳しい間取り図をご覧になりますか。こちらが、○○㎡の○LDKで東南角住戸の○タイプ。同じくらいの広さで南西角の住戸もあります。LDの南西正面が広いコーナーサッシで、柱に遮られることなく眺望が開けるタイプです」
- 相談者
- 「開放的な感じですね。でも、こういう変形した間取りだと、家具の配置が難しいとか……」
- スタッフ
- 「こちらのタイプでは、家具レイアウトを書き込んだ間取り図もご用意しております」
――この他、「日照」「眺望」などをシミュレーション画像で確認することができます。
家具のレイアウトやサイズ感がわかる図面。物件によっては、完成済みの建物内住戸に仮想的に家具を配置したAR(拡張現実)画像を作成しているものもあります。
写真(一部加工)は、22階相当の北東方面の眺望を、方角を示した敷地配置図と併せて表示した資料。昼間、夕方、夜景の3パターンあり。
- 相談者
- 「モデルルームは見られますか」
- スタッフ
- 「はい “VRモデルルーム”をご用意しています。実際のモデルルームを360度パノラマカメラで撮影したものをオンライン上に再現して、画面上を動き回りながら見学できるものです。物件によってはすべてホームページ上に公開しているわけではありません。いろいろなコンテンツごとに、公開する時期が違っていることがございます。」
VRモデルルームの一画面。スタッフの操作で、バーチャルなモデルルーム内を移動しながら各部屋の様子を見られます。
d)次は、二度目のオンライン相談orマンションギャラリーへ訪問
この後、時間に余裕があれば、資金計画の相談まで進むケースもあります。オンライン相談の最中に使用された資料は、一部を除いてダウンロード可能なデータとして提供してもらえるため、後日、資料を見直しながら、再確認することが可能です。
二度目のオンライン相談を申し込む方もいます。たとえば、より詳細な住戸の説明を聞きたい場合や資金シミュレーションのご相談のケース、自宅が持ち家で買い換えが必要な場合に、自宅がいくらで売れるかを仲介会社に査定してもらうケースなどです。マンションの販売担当者、仲介会社の担当者と、相談者の三者をつないでオンライン相談をすることもできます。
やっぱり「実際のモデルルームを見たい」人が多い
一度オンライン相談を体験すると「実際のモデルルームも見てみたい」と感じる方が多いようです。「設備や内装の素材感、質感は、手で触れてみないとわかりませんし、天井高なども、実際の部屋の中に立ってみないと実感が湧きません。オンライン相談だけで終わらずに、マンションギャラリーを訪問するお客様の割合が高いですね」
今回、オンライン相談の取材をさせていただいた菅井さんに、高輪ゲートウェイマンションギャラリー内にあるモデルルームも案内していただきました。
事前にオンライン相談で詳細な説明を受けたうえで、実際のモデルルームを見学した方々からは「ポイントを絞って質問できた」「雰囲気に流されず、知りたい部分について詳しくチェックできた」など、効率的、効果的に進められるようになったという声が多く聞かれます。
完成済みで販売中の物件の場合、現地ならではのメリットもあります。モデルルーム以外の希望住戸も内覧できることです。ついでにいろいろな住戸の見学をしたり、共用施設をじっくり見て回ったりすることもできました。
ただ、新型コロナ問題が起きて以降は、既に入居した住民の方々への配慮のため、現地での滞在時間や人数が制限される傾向があります。
そのため、完成物件でも、一つひとつの住戸の内部、共用施設、駐車場や駐車場の状況、住戸までの導線なども撮影して、オンライン相談で動画を見られるように工夫しているそうです。
以上のように、オンライン相談だけでも、モデルルーム見学だけでもなく、両方をうまく組み合わせて活用することによって、より中身の濃い検討ができるようになります。
また、マンションによってはオンラインセミナー形式で物件紹介をするケースも増えてきました。自宅でも新規物件の詳しい情報を、いろいろなルートから入手でき、幅広い検討が可能です。
たとえ、新型コロナの問題が収束したとしても、「オンライン+モデルルーム見学」のハイブリッド型が、新しい住まい選びのスタイルとして定着していくのではないでしょうか。
TEXT:木村元紀
PHOTO:村山雄一