まるで「垂直の森」!?イタリア・ミラノに植物との共生を目指すタワーマンションが誕生

まるで「垂直の森」!?イタリア・ミラノに植物との共生を目指すタワーマンションが誕生

[暮らしのアイデア]

2015年08月18日

「マンションに住まう」を考えるサイト「マンション・ラボ」(2015年7月15日)より転載。


イタリア北部の中心都市ミラノ。ルネサンス文化が花開いた長い歴史をもつ街として知られる一方、近年の再開発で近代的な建物も次第に増えてきた。

そのなかで特に目をひくのが、木々が生い茂ってまるで巨大な森のようにみえるタワーマンションだ。いったいこの建築は何なのだろうか!?

人間と植物の共生を目指すマンション

イタリアに新しくできたタワーマンション「ボスコ・ヴァーティカル(以下:BV)」。名前の意味は、イタリア語で「垂直の森」。

その名のとおり、3〜9メートルに育つ木が約800本、1〜2mの高さにまで成長する低木は約4,000本、さらに蔦や多年生植物1,500本以上が壁面やバルコニーに生い茂っており、全体でBVには1,000種類近くの植物が植えられている。その緑の総面積は、なんとサッカーフィールドと同規模にもなる。まさに“そびえ立つ森”なのだ。

実はフランスの自由旅行者向けガイドブックでミラノ観光の見所として紹介されるほど、今やこの街で最も注目されている建築物の1つとなっている。

このマンションは高さ112mある26階建てと、高さ80mの18階建ての建物が2棟隣接する造りとなっている。2010年に建築がはじまり、2014年夏に完成。さまざまなシステムの確認や点検に3カ月を費やしたため、同年10月にオープンした。建築中から大きな話題となっていたこともあり、部屋はオープン前にほぼ完売していたという。

BV最大の特徴といえば、この木々たちが生い茂るテラスであることは間違いない。

2棟からなるボスコ・ヴァーティカル。現在は、まだまだ若い木々がほとんどで緑がまばらだが、経年するにつれて緑が生い茂る。

例えば、通常の高層マンションであれば、テラスの位置はすべての階で同じ場所だろう。しかし、写真をみればすぐに分かるとおり、BVではそれらが意図的に不規則に配置されている。

そんな変則的な構成が建物全体の外観の美しさを形成するとともに、木を植えて成長させるのに必要なスペースを確保することにもつながっている。

後で説明していくが、このテラスのセッティングには大きく2つの意味がある。まず、タワーマンションで背の高い木々を育てるため、そして安全に植物との共生を実現するために熟考されたデザインということができるのである。

「垂直の森」と呼ばれるゆえんである、木々が生い茂るバルコニー。イタリアらしくオリーブの木も目立つ。

「ボスコ・ヴァーティカル(BV)」のエコロジー効果とは?

このマンションを竣工・販売したのは、1999年設立のハインツ・イタリア社。アメリカに本社のある世界的なマンション・ディベロッパー:ハインツ社のイタリア法人だ。

半世紀以上の実績をもつハインツ本社は、世界18カ国100以上の都市にネットワークをもち高品質な不動産を供給していることでも有名な会社。

とくにイタリアでは、近年、エコロジーに重点を置いた不動産開発で注目されている。そんなハインツ・イタリア社のCEOマンフレディ・カテッラさんに話を聞いた。

カテッラさん:「例えば、BVのテラスに植えられた広葉樹は、夏には暑い太陽光線をさえぎり、冬は反対に太陽の光を室内に十分取り込むことができる。こういったことから、このテラスの存在がマンション全体のエネルギー消費抑制につながるという設計になっているのです。

また、植物は空気中のCO2ばかりでなく、大都市の交通機関が輩出するさまざまな微粒子まで吸収してくれます。つまり、ミラノ市全体の空気浄化にも大きく貢献することを期待されているのです。このマンションは、植物と都市建築の新たな関係についての1つの実験ともいえるでしょう」

ミラノ市内ではひどい大気汚染が問題となっているのだが、BVのテラスに植えられた植物の効果は大きく、さらに放射能や騒音からも保護してくれるという。

また、部屋のすぐ外側にあるグリーンは光合成によって適度な湿気をもたらしてくれるので、年間を通してとても住み心地のよい環境を住人に与えてくれるというメリットもある。

そんなBVの設計を担ったのは、ステファノ・ボエリ氏。ミラノ出身であり、かつ建築を学んだのもこの地というミラノっ子だ。現在はミラノ工科大学アーバンデザイン学の教授として活躍すると共に、自身の建築事務所を率いる建築デザイナーでもある。

この建物の設計面でもっとも先進的といえるのは、やはり人間と植物との共存性を熟考した点だろう。“大都市で、環境を破壊せずに人と自然が共存できるか”というテーマに対するボエリ氏の回答こそ、“マンションを丸ごと森にしてしまおう”というデザインというわけである。

住民が1に対して、植物が2という比率を『人間と共に分かち合う木のための家』と、ボエリ氏は名づけた。この設計により、大都市の中心にほど近いわずか1500平米の土地が、なんと2ヘクタールの森と同じエコロジー効果を生み出すことになった。面積としては13倍を超える緑の効率性が実現されているのだ。

さらに、突如ミラノ上空に現れた木々は多くの鳥たちを惹きつけ、たちまちのうちにBVの木々に巣をつくるものまででてきた。

この光景は生物学者の興味を引き、BVを生きた実験場としてすでに定期的な観察がはじめられている。

ハインツ・イタリア社のマンフレディ・カテッラさん。

世界が目を引くBVの設計

そんな人間と植物の共存性を高めたBVの設計は、世界からも注目を浴びている。

今までにない“都市のなかでの自然と建築の融合性”という斬新なコンセプトが大きな支持を得て、BVは2014年度の国際高層ビル賞の最高賞を獲得した。

この賞は、2年に1度世界で最も美しく革新的な高層ビルに贈られるものとして知られているもの。残念ながら日本の建築物はまだ受賞したことがないが、アジアでは2010年にバンコクの高層コンドミニアム:ザ・メットが受賞しているものだ。


建設中のBV。この芝生オープンスペースの地下には、地下3階にわたる駐車場がひろがっている。

それ以上にBVの関係者が重視するのは、この建築がアメリカのグリーンビルディング協会によるLEED(Leadership in Energy and Envioronmental Design)の金賞にも輝いていることだ。

LEEDは、水やエネルギー、資材、資源を有効に使い、環境破壊や環境汚染を削減し、環境や人体への負担を減らす工夫をした建物に与えられるもの。その選定基準は、立地や設計、建設のみならず、運営はもちろん改築や解体時にいたるまでもに関し、環境や資源に配慮した建築物であるかがどうか。さらにこれらのエコロジーの視点に加え、デザイン性や教育、啓蒙など多くの項目で高い評価を得なければLEEDを受賞することは出来ない。

この賞を獲得したことで、BVの不動産評価が大きく向上したとされるのも、この建物の緑との共生が各方面からの確固たる評価をえたからこそという。

これらの受賞歴からも、BVが現在世界がもっとも注目する自然と調和する住居であることは間違いない。

建設中時点のBV。建物の完成は2014年夏だがシステムのメンテナンスのため、完全なオープンは10月となった。

「立地は経済とファッションの中心地・ミラノ

ではここで、BVが建つミラノについて確認しよう。ミラノはイタリア北部ロンバルディア地方の中心都市でミラノ大聖堂を中心に放射状に拡大した大都市。その起源は古代ローマにさかのぼり、中世以降にははやくもローマと並ぶイタリアの最重要都市となった。

現在ではイタリアでもっとも都市化と工業化が進んだ地域として知られ、北イタリア工業地帯の中心としても機能している。その存在感はヨーロッパ全域のなかでも非常に大きなものとなっている。

当然のように、ミラノはイタリア経済の最重要拠点であり、国内の大企業の本社のほとんどや世界各国の銀行、海外企業のイタリアでのメインオフィスが集中している街でもある。

さらに国内のサービス業やメディア、出版業界の拠点でもあり、またモードやデザインの発信地としても有名だ。ファッション界でも、パリやニューヨークと肩を並べる存在である。

また、イタリアセリエAの強豪チーム・ACミランやFCインテル・ミラノの本拠地でもある。

イタリア北部に位置するミラノ。現在も経済の中心であるが、歴史的にも重要な場所でありつづけた。

サッカーセリエAのインテル、ACミランのホームスタジアムである「サン・シーロスタジアム」。

欧州の主要な銀行グループの1つであるウニクレーディト・イタリアーノ。BVのすぐ横に位置している。

その一方で、ミラノはルネッサンス期以降、この国の芸術や文化面の一大中心であっただけに市内には多くの歴史的建築物、博物館、美術館があることでも世界中にその名を知られる。

「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会」にあるレオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』や、国際的に有名なオペラの聖地「スカラ座」は芸術面でのミラノの象徴といえるだろう。

また、スカラ座前広場と「ミラノ大聖堂(ドゥオモ)」前広場を結ぶガラス張りの天井が特徴的な「ビットリオ・エマヌエレ2世アーケード」は、19世紀に建てられた歴史的建造物。東京ディズニーランドのワールドバザールのモデルとしても名高い。

イタリア・オペラの最高峰「スカラ座」。1776年に一度焼失してしまい、現在の建物は2代目にあたる。(C) Shutterstock

そんな街では、2015年5月からミラノ万国博覧会が開催される予定。間違いなく、現在、世界中からの注目を集めている街といえるだろう。

ミラノの交通網についていうなら、国内や海外からの訪問者にとってなじみ深いのは3カ所の空港と2つのターミナル駅だろう。

空の便については、国際線で世界中の主要都市と結ばれているマルペンサ空港がミラノの代表。ここは万博開幕に合わせて、急ピッチで新装工事が行われている最中だ。そして、市内から7kmほどの距離にあるリナタ空港が、主に国内線とヨーロッパ各都市を結んでいる。日本からミラノを目指すなら、ほとんどの場合、この2つの空港を利用することになる。

これらに加えて、3番目の空港として主に格安航空会社が利用するベルガモ・オリオ空港がある。これらいずれの空港もミラノ市内とはシャトルバスで結ばれている。

また、主要ターミナル駅のひとつは昔ながらの重厚な趣のある駅舎が特徴で各国からの国際列車が発着するミラノ中央駅。そしてもうひとつがイタリアの誇る高速列車イタロが発着するポルタ・ガリヴァルディ駅だ。

フィレンツェ、ローマ、ナポリといった国内の主要都市を最高時速360kmで結ぶこの真っ赤な特急イタロ開業にあわせ、2012年にモダンで近代的なターミナルに生まれ変わったのがこちらの駅である。

モダンな外観のポルタ・ガリヴァルディ駅からは、BVがすぐ先にみえる。

BVは、ポルタ・ガリヴァルディ駅からわずか徒歩5分という好立地。さらに同駅はマルペンサ空港ともつながっており、海外からのアクセスにも便利で多くの観光客が利用する。日本人にも十分なじみのある駅なのだ。またミラノ中央駅からもそれほど遠くない。

もちろん、市内移動にもBVは有利な位置にある。ミラノを走っている5つの地下鉄路線のうち3ラインの駅が徒歩圏。昔から市内を走っている路面電車やトロリーバスを利用して街の中心部に向かうという手もある。

そんな交通の便の良さもBVの魅力のひとつだろうと、カテッラCEOは話す。

カテッラさん:「ポルタ・ガリヴァルディ駅を含め、地下鉄やバスなどの公共機関が徒歩5分以内に集まっています。入居者にこの建物を選んだ理由を聞くと、何番目かにはだいたいが交通アクセスの良さを挙げますね」

歴史を残しつつ新しい姿へ

ポルタ・ガリヴァルディ駅周辺では、今も再開発計画が進行中。じつはBVもその一貫として計画されたものだ。このプロジェクトは「ポルタ・ノーヴァ」とよばれ、始動から10年を経て次第にその真の姿を現しつつある。

元々再開発計画自体は50年近く前からあったが大規模開発につきまとう諸事情から、遅々として進まなかった。それが今世紀になってようやく「ポルタ・ノーヴァ」という具体的なプロジェクトとして動きだしているのである。

開発面積は全体で東京ドーム約6個分となる29万㎡。このポルタ・ノーヴァ一帯は、大きく3つの地区に分かれる。有名ブランドのファッションブティックが軒を連ねるコルサ・コモ通り中心としたガリヴァルディ地区、BVのあるイゾラ地区、ヴァレヅィン地区だ。

しかもポルタ・ノーヴァは、ミラノ大聖堂や19世紀以前の建物が立ち並ぶ市の中心部地域からわずか1kmほどしか離れていない。これほど歴史的地域に近い場所の再開発、特に高層建築を建てる例は、景観の問題からかヨーロッパの他の都市では例をみない。

ミラノの象徴である「大聖堂(ドゥオーモ)」は、旧市街の中心に位置している。これは世界最大級のゴシック建築で、多くの芸術家により500年の歳月をかけて完成した。近くには、スカラ座が建っている。(C) Shutterstock

例えば、同じように大規模な再開発が行われたパリのラ・デファンスは市の外側で展開された。ロンドンなどでも、古い建物を壊して新しいビルに立て替えることがしばしばあるが、その場所は中心地から3〜4kmほどは離れているのが一般的である。

ポルタ・ノーヴァのようにほとんど旧市街に隣接する場所での広域再開発など考えられないというのが一般常識なのだ。

大規模開発の進行とともに、ポルタ・ノーヴァには、オフィスや居住用の低層ビル、商業施設など新しい建物がぞくぞくと建てられている。これらは、歩行者・自転車用レーンで結ばれており、暮らしやすさに配慮が置かれるのがポイントだ。未来的で“人間目線”の新しい街がいままさに誕生しようとしているともいえるだろう。

当然のことながら、BVは独立したひとつのタワーマンションではなく、イゾラ地区、ひいては「ポルタ・ノーヴァ」を形成する重要なひとつの要素として捉えなければならない。

BVの“森”からも明らかなように、この地区で意識されているテーマのひとつは都市の中に心地よい空間つまり緑を取り入れるということにほかならない。

実際、総面積9ヘクタールもの緑地公園が造築中であり、やがて新緑の季節には「ポルタ・ノーヴァ」を特徴づける、木々の清々とした息吹を感じることのできるスペースとなることが期待されている。

BV周辺の地図。中心にそびえ立つのがBVだ。前面には、緑あふれる広さ9ヘクタールの公園が建設予定。このように、ポルタ・ノーヴァ地区は都市と緑の共生に力を入れている。

ポルタ・ノーヴァ計画で誕生した「ガエ・アウレンティ広場」のビルにあるモニュメント。芸術の街・ミラノを実感することができる

「森のマンション」その内部へ

いよいよ「ボスコ・ヴァーティカル(BV)」に足を踏み入れてみよう。

誰もが行き来できるBV前のプライベートな敷地。小さな公園のようになっており、子どもの遊び場としてとても人気だ。建物のエントランスは現代的で、まさかこの上に森が広がっているとは思えない。

エントランスを入ってすぐが、開放感あふれる共用ロビー。ここには、24時間365日コンシェルジュが待機しており、来客対応や住民のいろいろな要望に応えている。

住人は、自分の鍵でロビーの奧にあるエレベータホールに入り、それぞれの住居に上がっていくというシステムだ。

共用ロビーは、11mもの高さがある広々とした雰囲気のモダンなトーン。

また、エントランス左手には住人専用のアメニティ・フロアに続く階段がある。30人くらいまでの小規模なパーティは各住居で十分だが、100人以上の人数を集めるときや、各種会合などではこちらのスペースを利用する。

100人を超える大規模なパーティも行える住民専用のフリースペースには、キッチンやバスルームも設置されている。

BVでは一層ごとに、2〜3戸の分譲マンションが用意され、上層階になるほど2戸の割合が増えていく。10階より上ではミラノの街はもちろん北側にアルプス山脈を望むことができる。この眺望はタワーマンションならではの魅力だろう。

高層階の開放感あふれるバスルームからは、ミラノの街が一望できる。

平均的な住居マンションの部屋数は3〜4部屋。1フロアにゆったりと2戸を配置した階層では、各戸内にドメスティックと呼ばれるお手伝いさん用の部屋が設置されているのも、BVの特徴となっている。

カテッラさん:「家族利用が大部分であることを想定していたので、もちろんペットも一緒に暮らせます。ドアや壁は非常に厚く丈夫にできているので、もし犬が吠えても外部に音が漏れることや周りに迷惑をかけることはありません」

現在の入居者の85%は、ファミリー層。購入者の多くは元々ミラノで暮らしていた家族だ。残る15%ほどは、部屋を投資目的で購入した人々。しかし、BVは居住専用物件。オフィスなどに転用することはできないので、そういった人たちは第三者にマンションを貸して賃貸収入を得ている例が多い。そのこともあってか、日本のような全住民が参加する管理組合はつくられていない。

BVの販売価格は、80平米ほどの小さな部屋で24万ユーロ(約3200万円)からだ。一般には上層階になるほど価格も上昇し、一番高価な部屋は、上層階のワンフロアタイプやメゾネットタイプで、200平米ほどの居住スペースが販売価格は200万ユーロ(約2億6000万円)となっている。

カテッラさん:「周辺の物件に対して特別高価格というわけではないですよ。ただし、ミラノの中心からわずか1Km程度で交通の便も良い。また、現在もっとも注目されている地域の中心的な物件ですから、ある程度富裕層向けであることは間違いないですね。

また、ほぼ完売とはいっても、最上層階は現在も内装の最終工事中です。これらはどちらもフロア全体での分譲物件ですので、どんな間取りにするかは、購入者の自由です。例えば、細かく区切ってワンルームのスタジオに改装したり、フルフロアやメゾネット全体を1軒として広々と利用することもできます。

購入者の裁量次第でいかようにでも使っていただけるのは、BV上層物件の魅力的なポイントと考えていただきたいですね」

安全性を最優先した植栽計画

BV最大の特徴といえば、やはりこのテラスだろう。

普通の高層マンションであれば、テラスの位置はどの階でも共通だ。一方、BVのテラスは意図的に不規則に配置させている。

それは、外観の美しさを考えたデザイン的な意味に加え、木を植え成長させるのに必要なスペースを確保するという意図に基づいたもの。さらには、これは植物との共生をとりながら生活上の安全性を保つための仕組みでもある。

じつは、マンションのグリーン・エリアは分譲の対象外。ハインツ・イタリアが所有して管理を行っているのだ。

細かくいえばテラスの縁までが分譲範囲で、その外側の土の部分は管理会社の管轄となっている。そのため、各戸の購入者が勝手に土いじりをすることは不可能。購入者が花好きでも、ここに自分の好きな草花を植えることはできないということになる。

植樹されたバルコニー部分は、1階にあるコントロール・ルームで一括管理されている。例えば、屋上にある太陽光発電施設で稼働する水分補給装置により、自動的に水やりが行われるのだ。

6メートルもの高さになるような木を直接バルコニーに植えるような試みは、世界広しといえども、おそらくこのマンション以外ではみられないだろう。そのため、建築デザインの詳細と同時に、植栽計画も十分の配慮の元で進められた。

低層部分と高層部分に植える木の選定から始まり、木々は根を整えながら別の場所で2年間育成したという。

植物を植えるポットは、研究を重ねた新素材を使い安全性を最優先して開発されたもの。また、高層ビルの上層では避けようのない強風にも耐えられるように木の根の部分は全てスチール板で押さえ、さらに幹や枝葉が大きくぶれないよう、すべてひとつ上の階のテラスとスチールケーブルで結ばれた構造になっている。

これらの手法は、くり返しの実験によって実用化されたもので、なんと植樹林は毎時220キロメートルの風速にも耐えられる強度を確保しているのだ。

それではカテッラさんにBVの居住スペースを見せてもらおう

案内されたのは上層階22階のワンフロアタイプの住宅。キッチン、リビング、ランドリールーム、その奥にはお手伝いさんや子守の人が寝泊りできるスペースもあり、ベッドルームは3室あるものだった。

各ベッドルームにはそれぞれバスルームとトイレがついている。またキッチンからリビング全体にかけては意図的に仕切りを設けない一体型になっており、それは家族の団欒を重視したためとのことだ。

大きなガラス張りの窓から見えるテラスの緑は目に優しく、窓を閉めて室内にいると、あまりの静けさにここが大都会の真ん中であることを忘れてしまう。

セキュリティの面から、居住スペースには専門エレベータからしか昇れない。エレベータは3基用意されており、そのうち1基は大型荷物の搬入用だ。

上層フロアの間取り。24〜25階はフロア売りの予定で、購入者が自由にレイアウトも可能。

内階段が設置されているメゾネットタイプのレイアウトも用意している。

カテラさん:「じつはBVの居住スペースでは内装をオプションで、3タイプから選ぶことができるようになっています。エスニックなジプシースタイル、モダンなコンテンポラリースタイル、個性的なブティックスタイルとあります。またヨーロッパのアパートでは珍しくはないのですが、各インテリアに合わせた家具付きでも提供しています。入居と同時に快適な暮らしを始めたい人には便利なシステムだと好評なんですよ」


インテリアを担当したのはドルチェヴィータホームズというホームデザインオフィスだ。イタリア語で「甘い生活」という社名を持つだけあって、とくにファミリー向け住宅の内装設計に定評があり、数々のコンクールでの受賞歴を持っている。

森の中にいるかのような感覚になる室内。最新のインターネット設備が完備され、マンション内のどこでもWi-fiが利用可能だ。

現代的な空間演出のポイントのひとつは、大胆に使われる大きな窓で、BVの住居でもそれが十分に活かされている。この窓から部屋全体に入る自然光は、外壁の緑と共に住んでいる人をやさしく癒してくれるようだ。

室内から眺める緑のテラスは、まるで空中庭園のようにもみえる。春から夏、秋、いやたとえ冬でも暖かい日ならテラスにテーブルや椅子をしつらえ、読書やアペリティフ、食事をするのもいいだろう。まるで避暑地にいる気分で、ゆったりした時間を過ごすのに最適のスペースなのだ。

カテラさん:「BVは、これまでのマンションとはまるで違った斬新的エコ・プロジェクトです。その試みと共に、四季によって移り変わる外観の美しさも世界中で話題になっています。このような住居を実現できたことを、私たちは誇りに思っています」

※取材・撮影協力、図版提供:Hines Italia
※掲載情報は原稿作製時のものです。


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