将来を見据えた暮らしやすい住まいの整え方〜マンションライフを快適にする収納スペースを増やす方法〜

将来を見据えた暮らしやすい住まいの整え方〜マンションライフを快適にする収納スペースを増やす方法〜

[暮らしのアイデア]

2019年12月18日

家の快適性は生活を充実させ、自分らしい暮らしは幸福感をもたらしてくれます。40・50代は、近い将来、子どもが独立して家を離れたり、仕事をリタイアした後の生き方を考え始める人も多い時期なのではないでしょうか。人生100年時代と言われ、これからの人生を前向きに楽しみたいと考えたとき、基盤となる家を住みやすくしたいと思うのは当然のこと。

自らの経験に基づき暮らしやすさを提案している一級建築士の水越枝美子さんに、40・50代の世代が将来にわたって快適な暮らしを実現できる暮らしやすい住まいの整え方を教えていただきました。

 

誰にとってもわかりやすい家であることが大事

ライフスタイルが変化すると、快適な住まいの考え方も変わってきます。どんな家族構成でも水越さんが大事だと思うのは、家族みんなが自分で自分のことができる家。どこになにがあるかなど、「わかりやすい」家づくりが快適性を高めるポイントです。

「かつては、家の中のことは奥様しか知らないというご家庭が多かったですが、現在は夫婦一緒に家事を行う家庭も多いです。またいずれ介護サービスを頼るようになれば、家族以外の人が家に入ってくることも。そのような状況を見据えると、誰にとってもわかりやすい間取りが求められます」。

水越さんが暮らしやすい家を実現するために、間取りに必要な要素として挙げているのが「動線、収納、インテリア」です。

暮らしやすい住まいを支えてくれる動線。もともとの間取りに頼るだけでなく、ごみ箱や棚をどこに配置するかなどでも快適性が変わってくる。

特にわかりやすい家にとって大事なのは、動線と収納の明確化。実現できれば、例えば、食事に必要なテーブルクロスやカトラリーの場所がわかることで、家族が食事の準備などを手伝いやすくなります。また、はさみや薬など必要なものを自分で取りに行き、片付けることもできます。みんなが協力し家事ができれば、ゆとりの時間が生まれます。

 

高密度収納で叶えるスムーズな動線

マンションの場合、基本的にワンフロアなので動線はシンプルです。しかし、収納場所が遠いと部屋を行ったり来たり、複雑な動きになります。それが、物が出しっぱなしになりやすい状況を作り出す原因になることも。
収納スペースを増やすのは難しいと思っている方も少なくないのではと思います。

「実は収納スペースは増やせます。収納場所がないと言う方に収納を見せていただくと、収納内部や引き出しの奥まで利用できていない場合が多いです。収納スペースの中にさらに棚を増やしたり、引き出しの中を細かく仕切り隙間なく利用することで、収納の絶対面積を増やすことができます。これらの工夫で収納場所が少ないという問題を解決できることも多いのです」。

空間の中の使える面積をいかに増やすかが重要になるのです。

収納スペースの絶対面積はスペースを区切ることでつくることができる。板やボックス、かごなどを使えば簡単。

収納スペースを棚で区切ったり、サイズを測ってプラスチックのカゴを揃えるのは手間がかかる作業と感じてしまいがちですが、これが「片付けるしくみ」につながります。一度しくみを作ってしまうと、物は所定の場所に収まりやすくなります。

この時に大切なのが「適所適量の収納」です。物を使う場所にしまうのが「適所」、買い過ぎず暮らしに必要な量だけストックするのが「適量」です。収納スペースを見直し、「家事の流れに合った動線+収納」になるよう徹底することで人の動きや片付けはスムーズになります。

 

まずは洗面室の
収納スペースを増やす

水越さんが収納を見直す場所として力を入れるのが洗面室です。洗面室は歯磨きや洗顔、洗濯など行動が多岐にわたる空間です。そこに洗面グッズからタオル類、洗剤まで物が詰め込まれています。

「欧米スタイルの場合、洗面室は個室のベットルームにあるので家族と共用しないことが多いです。しかし、日本の家庭の洗面室では歯を磨く、脱衣する、メイクをする、髪をとかすなど、パーソナルな事を家族で共用するパブリックな空間です。各人が使ったあとのものを納めやすいスペースを確保しておくなど、次に使う人の事を考えて空間を整えるようにしたいものです。洗面室は、『立つ鳥跡を濁さず』という日本人の精神性が反映される場所。手始めに、比較的狭い空間である洗面室を家族の誰もがきれいに片付けられるような空間に整えてみてはいかがでしょうか」。

収納スペースを細かく分けることでより多くの物をよりたくさん、すっきりと片付けることができる。

洗面台の下、鏡の裏など既存の収納スペースを活用できているか、収納グッズを使って収納場所をもう少し増やせないだろうか、そんな視点で見直します。収納を改善することでスペースができたら、下着やパジャマを収納してみましょう。下着やパジャマを寝室ではなく入浴する場所、「適所」に置くことで、部屋に取りに行く動きが不要になります。洗面室の収納を機能的にすることで今まで気づかなかったスムーズな動きが実感できます。

 

マンションでできる収納改善

収納スペースそのものを作り出す方法として水越さんが提案しているのが、廊下に収納スペースを設けることです。

「廊下を通ってリビンクに行く間取りのご家庭の場合、廊下に浅い壁面収納をつくると、驚くほど家が片付くようになります」。

廊下に配置できる薄い棚などを取り付けることで、家族が共有する物を収納できます。また、奥行きが浅い収納であれば一目で見渡すことができます。

家族みんなが通る廊下にあれば、物がある場所を周知することができるのもメリット。

 

また、ダイニングルームは、食事や子どもの宿題などいろいろなシーンで家族が集うことが多い場所。取り皿や文房具や書類などダイニングに置くものは想像以上に多いので、周辺に収納スペースをたっぷり確保しておくと、ダイニングテーブルの上や部屋全体がスッキリします。

「ダイニング周辺に収納を設ける場合、壁面収納では室内に圧迫感が生まれがち。おすすめは、目線より低いカウンター収納です。カウンターにはちょっと飲み物を置いたり、お客様が来る時にグラスを並べたり、インテリアを楽しむことができます。ダイニングは家族やゲストがくつろぐ場なので、収納と見た目を合わせて考えるといいですね」。

ダイニングの収納は目線より低くすることで空間に余白を生み出すことができる。

水越さんは暮らしやすい家を実現するために必要な要素として、「動線、収納、インテリア」を挙げています。実際、快適な暮らしの空間に収納スペースを挙げる人は多いそうです。動線は収納によって変えることができ、工夫次第で収納の稼働面積を広げることができます。

空間を整えることによって生まれたスペースには、お気に入りの物や思い出の品を飾って。お気に入りの物を毎日眺めることで気持ちが安らぎ、心が満たされるはず。これからの生き方を考えながら、40・50代で自分が楽しめる理想の住まいをデザインする視点を持ってみては? それがこの先のいきいきとした生活につながりそうです。

水越美枝子さんプロフィール
一級建築士。キッチンスペシャリスト。日本女子大学住居学科卒業後、 清水建設(株)に入社。 商業施設、マンション等の設計業務に携わる。現在は主に住宅設計の分野で、建築デザインから インテリアコーディネイトまで、トータルで住まい作りを提案。日本女子大学非常勤講師、NHK文化センター講師。 『人生が変わるリフォームの教科書』(講談社)、『いつまでも美しく暮らす収納のルール』、『美しく暮らす住まいの条件』(エクスナレッジ)、『40代からの住まいリセット術―人生が変わる家、3つの法則』(日本放送出版協会)など著書多数。

(画像提供)アトリエサラ 撮影/永野佳世
(テキスト)小林純子
(TOP・プロフィール画像)塙薫子

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