"一生ものに、住む。"ということふたつとない環境と響きあう邸宅建築の妙。

ふたつとない環境と響きあう邸宅建築の妙。

日本建築に造詣が深く、京都の代表的な建物を手掛けてきた建築家、大谷弘明さんが2017年夏に完成した『ザ・パークハウス 京都鴨川御所東』を訪れた。
設計を担当した三菱地所設計の石井邦彦さんと三菱地所レジデンスの開発担当、菊田真悟の案内を受け、鴨川の最前列に建った新たなマンションについて語り合っていただいた。

大谷弘明(以下、大谷) これは私の持論ですが、京都に建てるなら、スケールを小さくすべきだと思うんです。京都は街が細やかにできているので、建物も細やかさが求められる。東京の7割5分から8割が適切な気がします。

石井邦彦(以下、石井) 確かにそうですね。実は、日本建築の魅力、スケール感を以てマンションができないかとずっと思っていました。『ザ・パークハウス 京都鴨川御所東』は、それをつくるチャンスだったんです。

大谷 三菱地所レジデンスなら豪華にと望む人もいると思いますが、景観条例が厳しい京都では、真逆のチャレンジができるんです。天井が低いといった商品の観点では欠点とされることが、美点となります。面積が大きければいい建物ができるわけではないんです。

石井 むしろ、逆かもしれませんね。

大谷 この建物には、内庭を除くと吹き抜けがないでしょ?でも、息苦しさを感じないから成功しているんです。クランクが多いのも特徴ですね。

コンシェルジュデスクの壁に、陶芸家・田嶋悦子氏の作品「FLOWERS」が彩りを添える。

コンシェルジュデスクの壁に、陶芸家・田嶋悦子氏の作品「FLOWERS」が彩りを添える。

石井 クランクがもたらすシーンについては、特に意識しました。奥へ巡っていくごとに、空間が展開するようにしたかったんです。

大谷 特に、1階の廊下の構成はすばらしい。コンシェルジュデスクのそばで、廊下を少し遮るように壁から格子が出ていますね。そのため、反対側の内庭に視線が流れるわけです。そして、奥と手前の廊下とではデザインを変えている。組子障子の内側に間接照明を入れているのも巧みですね。

石井 このあたりの空間構成には、非常に時間をかけました。

1階廊下に配した格子から、右手の内庭に視線が流れる。

1階廊下に配した格子から、右手の内庭に視線が流れる。

1階廊下の組子障子が麗しい。

1階廊下の組子障子が麗しい。

周囲の街並みに溶け込みつつ緩衝帯となる、多彩な植栽と築地塀。

周囲の街並みに溶け込みつつ緩衝帯となる、多彩な植栽と築地塀。

大谷 それにしても得がたい敷地です。一期一会とはよく言うけれど、二度とない土地のために、建築家は全精力を傾けて設計するわけです。しかも、最初からあったように、あとあとまで愛される建物になるようにストーリーを持っていかなければなりません。私も鴨川前列に建つ『ザ・リッツ・カールトン京都』を手掛けるにあたり、京都の景観を左右する責任を感じました。

石井 そうですね。この敷地での設計は、やはり緊張します。場所に敬意を払い、きちんとした仕事をしたいという人たちが集まりました。自分で言うのも何ですが、出来たときから不思議と周囲にしっとりなじんでいます。

大谷 あたかも最初からそこにあったかのように見えることが、名建築の条件ですから。周囲の景観に入り込んで邪魔せず、自分が目立たないのは大事なこと。ここの築地塀も、あと数年したら周囲の環境を支えてくれますよ。


――ここで開発担当、菊田真悟も加わり、図面を見ながら説明がされた。

ラウンジ「YUSUI―幽邃―」は"庭屋一如"を具現。

ラウンジ「YUSUI―幽邃―」は"庭屋一如"を具現。

京都の樋口造園が腕を振るった内庭「SANSUI―山水―」。

京都の樋口造園が腕を振るった内庭「SANSUI―山水―」。

菊田真悟(以下、菊田) 実は、京都では南に抜けているマンションが珍しいんです。南側のスパンが取れたので、本館の南向き住戸はゆったり住んでいただけるよう100m2以上あります。

石井 本館の北向き住戸は50〜60m2とプライベート感があり、鴨川側の別館は約120〜284m2と特別感があります。

大谷 共用部の面積は、図面で拝見すると意外に小さいですね。歩いているときは、もっと広く感じましたが。

石井 重心を低くして、天井が低くても圧迫感が感じられないようにしました。空間の連続性や、植栽に抜けていく広がりも意識しています。

大谷 庭は大事な要素。建築の脇役と思いがちですが、「庭屋一如」の言葉通り、主従ではなくふたつでひとつなのです。『ザ・リッツ・カールトン京都』と同じ樋口造園の仕事なら、安心ですね。

石井 ここではアートシーンも重要です。京都のアートディレクターが選んだ7人の現代アートがガラスケースの垣根を越え、身近に置かれています。

大谷 マンションでは、ここまでアートを取り入れることはないのですか?

菊田 破損を懸念して額に入れたり囲いを設けたりするので、ここまで自然な形で置くことはあまりないですね。

アートが日常にある住まい。左は、辻村史朗氏の描いた屏風「土」と樂雅臣氏作の彫刻「輪廻 奏」。右は樂雅臣氏の「つくばい」。

アートが日常にある住まい。左は、辻村史朗氏の描いた屏風「土」と樂雅臣氏作の彫刻「輪廻 奏」。右は樂雅臣氏の「つくばい」。

大谷 大事なおもてなしですね。住人も招かれた客も、おもてなしゾーンを通るのは気分がいいでしょう。そして、鴨川に面した別館の住戸に入ると、8mを超える思いきった間口に切り取られた窓が広がっています。窓際に梁がないので、窓から見える風景がすべて自分のもの。通常、リビングに間仕切りを入れて部屋をつくりがちですが、そうしないのが功を奏しています。何より、バルコニーの手すりのラインが一本線で入るデザインがいいですね。

菊田 最近のマンションで、手すりを透明ガラスにするのは珍しいんですよ。

鴨川に面した別館「AKATSUKI―暁―」の最上階は、袖壁を取ったバルコニーがコーナーウィンドー風に見える。

鴨川に面した別館「AKATSUKI―暁―」の最上階は、袖壁を取ったバルコニーがコーナーウィンドー風に見える。

本館5階のエレベーターホールから内庭を見下ろす。真正面に東山の大文字が。

本館5階のエレベーターホールから内庭を見下ろす。真正面に東山の大文字が。

町になじむ落ち着いた佇まい。

町になじむ落ち着いた佇まい。

大谷 この場所は、透明でないと意味がないですからね。一方、本館は軒先を下げていくことで、各階が自分のところに屋根が付く感じです。この軒を下げていくのが京都風。野球帽を深くかぶるのが格好いいのと同じです(笑)。

菊田 なるほど(笑)。2つの棟の構造は、周囲の状況により異なっています。

大谷 私が好きなのは、別館最上階の左右の庇を切ってバルコニーの袖壁を取り、コーナーウィンドー風にしたところ。屋根が浮いて見えて豪華です。

石井 京都市では原則、バルコニーに袖壁をつけないといけないのです。でも、ここは大事なところなので、最上階は外したいと京都市役所に交渉したところ、理解していただけました。

大谷 そうでしたか。ところで、これがあと2階分、高さを上げていいとなったら、ずんぐりとした建築になって美しくないでしょう。景観規制は、実は資産価値を上げてくれるのです。住める人も限られてきますしね。

菊田 鴨川に面した別館はわずか24世帯です。マンションの前には鴨川の堰があって、水の音もいいんですよ。桜並木が続いていて、春は2、3階から窓の外は一面のピンク。これはできてから気づいたのですが、本館の5階、エレベーターホールからも、東山の大文字が見えるんですよ。

大谷 そんな奥から大文字が見えるなんて、滅多にないことですよ。京都御所がなぜ東向きかというと、月が東から昇るため。往時の貴族たちにとって東は大事な方角で、東山の端に出る月を愛でた場所に住むのは最高の贅沢。この物件は高さを抑えられているけれど、極めてヒューマンスケールに合ったいい環境なんですよ。

石井 それと、夕刻のゆったりとした空気感は特に気持ちがいいので、そういう贅沢な時間も味わってほしいです。

大谷 石井さんとは初対面ですが、500m南の建物を担当したので無言のメッセージを交わしていた気がします。同じ方法論でもってつくったという思い。そして、このマンションの影響を受けた建物が出てきて、京都の街の景観がさらによくなればと思います。

大谷弘明

大谷弘明 株式会社日建設計 執行役員 設計部門副統括兼代表。日本文化への造詣を反映した『ザ・リッツ・カールトン京都』『宮内庁正倉院事務所』など多くの建築設計を手掛ける。『積層の家』で日本建築学会賞(作品)受賞。

石井邦彦

石井邦彦 株式会社三菱地所設計 建築設計二部チーフアキテクト。『ザ・キタハマ』『グランフロント大阪オーナーズタワー』など数多く集合住宅を設計。『ザ・パークハウス グラン 千鳥ヶ淵』でグッドデザイン賞ベスト100受賞。

菊田真悟

菊田真悟 三菱地所レジデンス株式会社 関西支店 事業企画部 計画第一グループ リーダー。広告宣伝の業務を経て開発部門へ。『ザ・パークハウス 京都鴨川御所東』では、着工時よりプロジェクトの全体統括として関わる。

  • 古都の美意識を昇華した、
    新たな普遍の住まい。

    古都の美意識を昇華した、新たな普遍の住まい。
  • 四季折々の自然が美しい。
    鴨川の恩恵を受ける豊かな暮らし。

    四季折々の自然が美しい。鴨川の恩恵を受ける豊かな暮らし。
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