プロジェクトリポート『ザ・パークハウス 上野』同潤会 上野下アパート 建替えプロジェクト:エリア散策
2015年07月22日
伝統とモダンが融合する下町文化に触れて。

上野でもなく、浅草でもない。そのどちらの魅力も持っている街、それが稲荷町。心地よさと温かさが待っている。
「ザ・パークハウス 上野」が建つのは、清洲橋通りと浅草通りが交差する稲荷町交差点近く。地域の象徴的存在といえるのは『下谷神社』だ。創建は730年と古く、都内の古社のひとつに数えられる。また下谷神社は、もともと正一位下谷稲荷神社と称され、稲荷町の地名の由来としても知られる。
交差点から西に進むと上野駅があり、その先には上野恩賜公園が広がっている。反対方向の東には問屋街として有名なかっぱ橋道具街が、さらに東には外国人観光客も多い浅草エリアがある。つまり稲荷町は、巨大ターミナル駅の上野と下町の代表格たる浅草に挟まれた、独特な立地条件を誇る街なのだ。
昔から変わらないのは、浅草や合羽橋と同じく職人や問屋が多いこと。『京源』の代表を務める紋章上繪師の波戸場承龍氏が言う。
「もともと台東区はものづくりの街。私は中央区に永くいたのですが、稲荷町で仕事を始めてから、とても居心地がよくなりました。職人とわかると、自然とつながりが深まるんです。温かさを感じますね」
息子の耀次氏がうなづきながら言葉を続ける。
「地域の職人やクリエイターが一般の方向けに開催する『モノマチセブン』というイベントがあるんです。自分も参加して、街の魅力を再確認しました」
職人気質の魅力には、氷で冷やす木造の冷蔵庫を置く寿司店『百万石』や、店内で商品の佃煮を毎日炊く専門店『鮒藤商店』でも触れられる。鮒藤商店の塚越美智子さんは、街の変遷を見つめてきた。
「上野駅に近いこともあって、昔は旅館が立ち並んでいたんですよ。普通の旅行者もいたし、修学旅行生もたくさんいました。最近は風景が変わりましたけど、親しい方とのご近所づき合いは変わらないままです。お茶を飲みに寄ってくれたりね」
『同潤会 上野下アパート』が建てられた頃と変わらぬ下町風情と、現代の営みが混じり合って、新たな伝統が育まれていく。そんな今どきの下町感こそ、稲荷町エリアの魅力といえるだろう。
ショップinformation

珈琲屋うさぎ
2009年にオープンした喫茶店。オーナーの冨沢愛子さんは喫茶店が好きで、若い頃から喫茶店で仕事をしてきたマダム。店内には趣味で集めたアンティークの調度品、アート作品が並べられている。こだわりのコーヒーは、すべて1杯ずつ淹れる方式。ゆったりと時間を過ごせる雰囲気に惹かれ、老若男女の常連が通う。
- 住所/
- 東京都台東区松が谷3-3-10
- 電話/
- 03-3844-8643
- 営業時間/
- 10:00〜L.O.18:00
- 休業日/
- 水曜、毎月最終水・木曜

鮒藤商店
1927年に創業した老舗の佃煮店。先代から教えられたとおり、現在も店内でひと品ずつ丁寧に炊き上げている。扱っている佃煮は25品前後。戦前から使ってきた九谷焼の大皿も、食欲をそそる。一番人気はあさりの佃煮だそう。店頭で購入できるほか、電話注文による取り寄せや、地方発送にも対応してもらえる。
- 住所/
- 東京都台東区東上野3-15-1
- 電話/
- 03-3831-2310
- 営業時間/
- 9:00〜18:00
- 休業日/
- 日曜、祝日

京源
着物に手描きで家紋を入れる職人、紋章上繪師の工房。波戸場承龍氏(写真右)は三代目にあたる。江戸時代に流行った紙切り遊び「紋切形」を再現したり、家具やグラスに家紋を入れるなど、現在は活動の幅を広げさまざまな商品を発表している。要望を伝えながら、オリジナルの紋を作成してもらうこともできる。
- 住所/
- 東京都台東区東上野3-2-4
- 電話/
- 03-6231-6856
- 営業時間/
- 9:00〜18:00(要予約)
- 休業日/
- 土・日曜

百万石
ひと手間かけた江戸前寿司を食べさせてくれる人気の寿司店。しっかりと締めたコハダ、自家製のからすみのみそ漬けなど、ゆっくりとお酒を飲みながら味わいたい品がそろっている。週末は美術館帰りの客が訪れることも多いとか。ネタケースがカウンターになく、鮮やかな手仕事を見られるのも魅力のひとつだ。
- 住所/
- 東京都台東区東上野2-11-5 江波戸ビル1F
- 電話/
- 03-3835-0487
- 営業時間/
- 11:00〜L.O.13:30 16:00〜L.O.21:30 (土曜〜L.O.20:30)
- 休業日/
- 休業日/日曜、祝日