プロジェクトリポート「ザ・パークハウス 中野タワー」多様性の街、中野の新たなランドマーク。
2018年08月15日
新宿にほど近く、サブカルチャーの発信地でもある中野。
中野駅周辺の再開発も進み、さまざまな個性が集まるこの街に、『ザ・パークハウス 中野タワー』が誕生した。
“多様性”をコンセプトにシンボリックな外観、共用部を備え、新たな街のランドマークとして中野の空にそびえる。
photos by Teruhisa Kobayashi
text by Norihiko Morita
新宿区や渋谷区に隣接する、交通利便性の高い街、中野区。区の中央を横切るJR中央線中野駅の北側を早稲田通りに向けて貫いているのは、多くの人々でにぎわう「中野サンモール商店街」と、サブカルチャーの聖地として知られる「中野ブロードウェイ」。さらに、駅前に広がる再開発エリアには、整備された公園のまわりに大学や商業施設が建ち並び、今と昔が重なり合う街の表情をつくりあげている。この多様な、モザイク模様のような中野の街に誕生したのが『ザ・パークハウス 中野タワー』だ。新たに街の風景の一部となった地上24階建てのタワーレジデンスは、中野の文化、伝統に寄り添うような意匠を纏い、独自の個性へと昇華した。
高さ約6mの吹抜が印象的なエントランスホール。共用部は「ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ」がデザイン全体の監修を担い、「メック・デザイン・インターナショナル」の飯島雅朗氏がデザインを担当。
(上)メインアプローチとなるブリリアントゲート。道路から奥行きをとり、歩行路には御影石でモノトーンのパターンを描いている。
(下)1階東側のプライベートゲートは、ひっそりと落ち着いた雰囲気。
白い壁面を陽光が照らす二層吹抜空間のメンバーズラウンジ。流線型のソファは、世界的建築家ザハ・ハディド氏のデザイン。
コンセプトは“多様性”。中野を象徴するレジデンスへ。
『ザ・パークハウス 中野タワー』のコンセプトづくりの段階から携わっているのが三菱地所レジデンスの大原悠司(現・三菱地所)だ。中野らしいマンションとは何か。中野だからこそ表現できるタワーレジデンスとは何かを、大原は考えた。歴史ある街のにぎわい、サブカルチャーを育む土壌、再開発で進化する街の機能。一見、捉えどころのないように見える街こそが中野なのだ、と気づくのにそう時間はかからなかった。
「デザインコンセプトは“ランダム”です。中野はさまざまな要素が組み合わされた“多様性”のある街。その魅力をマンションで現したいと思いました。ランダムな組み合わせのうえにモダンな意匠、設えを備え、高級感のある住まいを実現できないかと」
この大原のアイデアを具現化したのは、一級建築士の池田雅之氏(プラネック・デザイン代表取締役)。『ザ・パークハウス 多摩ニュータウン永山』などを手掛けてきた集合住宅設計のプロフェッショナルだ。池田氏はランダムな意匠をまず外観に求めた。太さと長さの異なるマリオン(飾り柱)を外観デザインに組み込み、計6色のガラス手摺りを不規則に配置。陽の当たる角度や時間により印象が変化する、タワーマンションの新しい姿を提示した。
抽象絵画を思わせる、ランダムな表情
外観デザインには “ランダム”というデザインコンセプトを導入。さまざまな太さのマリオンと計6色のガラス手摺りを配置し、変化に富んだ外観を実現。ランダムとはいえ、マリオンが各住戸の居住性を損なうことがないよう、設置位置には十分な配慮がなされている。
マリオン(垂直ライン)と水平ラインの構成
外観のマリオン(垂直ライン)や手摺りなどの内側に見え隠れする、柱と梁によるグリッド。
3種類の太さの異なるマリオン。
2種類の太さの異なる水平ライン。
マリオン(垂直ライン)と水平ラインの構成
(左)22~24階のバルコニー手摺りに使用するカラーガラス。
(右)3~21階のバルコニー手摺りに使用するカラーガラス。
(左)[青系]2色の配置
(中)[白系]2色の配置
(右)[緑系]2色の配置
「街のさまざまな場所から目に入るタワーマンションとして、中野の個性豊かな街の風景のなかでも埋没しない、インパクトのある外観デザインだと思います。またランダムなデザインコンセプトは豊富な間取りを生み出しました。16もの異なる平面プランに77タイプもの間取りを用意。多彩なライフスタイルに対応した、かつてない集合住宅になったのではないでしょうか」
池田氏とともに多様な間取りを実現すべく腐心したのが、三菱地所レジデンスの鈴木健。従来のマンションでは縦割りの間取り(一定の階数において、縦列に同じ間取りを配置する)とするのが常識のところ、16もの平面プランを用意するため、平面プランごとに各住戸をパズルのピースのように当てはめ、最適なスペースを割り出さなければならない。
「平面プランも幾度となく修正を重ねますので、その度にほとんどの住戸の間取りが少しずつ変わります。そのおかげで多様な住戸プランを実現できたと自負しています。最終的にはどの階にどの間取りの住戸があるのか、すべて記憶できていました(笑)」
24 階建てに対して16の異なる平面プラン
ダイバーシティの街「中野」という背景を考慮し、共同住宅に多く見られる縦割りの間取りを一新。24階建てに対して16の異なる平面プランを作成し、全178戸に77タイプもの多様な間取りを実現した。
4階平面図(9戸割)
15階平面図(8戸割)
22階平面図(6戸割)
非日常を演出するギャラリーホール
外観のランダムな表現は、共用部の内装にも引き継いでいる。ギャラリーホール(風除室)では、ライン状の間接照明の装飾を施し、3色の御影石をパターン張りした床が空間の個性を印象づける。幾何学モチーフのオリジナルアートは、現代美術家の江上計太氏の作。
壁の装飾には複数のタイルを使用
壁材には大判の天然石を使用し、アクセントとなる柱や壁の装飾にはモノトーンのモザイクタイルやブルーにきらめくタイルなど、複数のアイテムを採用。美しいマテリアルが個性を主張しながら空間の美を演出している。
多様性+高級感のある住まい。ホテルライクな空間デザイン。
大原と鈴木は、共用施設においてもデザインコンセプトである“ランダム”を踏襲する。さらに「ホテルのような高級感」をプラスすることで、上質なタワーレジデンスにしようと模索した。そこで白羽の矢が立ったのが、共用部デザインを監修したロイヤルパークホテルズアンドリゾーツと、共用部デザインを担ったメック・デザイン・インターナショナルだ。大原がかつて感動を覚えたという『ザ ロイヤルパークホテル 東京羽田』を世に送り出した両社と、設計担当の池田氏がコラボレートすることで「ザ・パークハウス」ブランドのなかでもモダンなタワーマンションが生まれることとなる。それは、吹抜のシャンデリアと多様なモザイクタイルを壁面にあしらうことで上質な空間を求めたエントランスホールや、オリジナルアートとランダムなライン状の間接照明が印象的なギャラリーホール(風除室)などに表現されているばかりか、21階のスカイスイート(パーティールーム兼ゲストルーム)でも体感可能だ。『ザ ロイヤルパークホテル 東京羽田』のスイートルームと同様のデザインエッセンスを取り入れたスカイスイートは、新宿副都心方面の眺望を楽しめるコミュニケーションスペース。ワイドバルコニーにヘリンボーン張りの床、直線的なモダンデザインが特徴のキッチンなど、居住者だけに許された最高の贅沢を味わえる空間に仕上がっている。
ホテルのスイートルームのデザインを取り入れた共用スペース
21階のパーティールームとゲストルームからなるスカイスイートは、居住者に与えられた優雅な社交空間。『ザ ロイヤルパークホテル 東京羽田』のスイートルームのデザインエッセンスを取り入れている。
折上天井やヘリンボーン張りの床など、エレガントさを求めたスカイスイート(内パーティールーム)。ゲストルームも備えている。
モザイクタイルとステンレスの光沢が斬新なイメージを与えるキッチン。
収納カウンターの引き出しそれぞれに照明を備え、室内照明が抑えられたパーティシーンでの使い勝手を考慮している。
スカイスイートのバルコニーからは新宿副都心方面の風景が広がる。
「中野という街の個性があるからこそ、ここまでアグレッシブなデザインのタワーレジデンスが実現できたのだと思っています。多様性のある街に、多様性を内包した住まい。中野の新しいランドマークになってくれるとうれしいですね」
大原は『ザ・パークハウス中野タワー』1階のサブアプローチであるプライベートゲートに佇むのが、とくにお気に入りだと言う。中野駅から続くにぎやかな街並みを抜けて辿りつく、静かなプライベートゲート。そこから見上げるランダムなマリオンと色ガラスで組み合わされたタワーの容貌。ダイバーシティに富む東京の、そのなかでもひときわ個性豊かな中野に、異彩を放つタワーレジデンスが誕生した。
太さの異なるマリオン(垂直ライン)で、ランダムな表情を見せる外観。
ザ・パークハウス 中野タワー(販売済)
制震構造を採用した24階建てのタワーレジデンス。あえて不規則にレイアウトした飾り柱や色調の異なるガラス手摺りで多様性を表現している。中野ブロードウェイと中野サンモール商店街を通り、中野駅まで徒歩6分。にぎやかな街並みを楽しめるロケーションも魅力のひとつである。
●所在地/東京都中野区中野5丁目194番1(地番)
●構造・規模/鉄筋コンクリート造(店舗・機械駐車・塔屋等鉄骨造)地上24階、地下1階建※制震構造
●総戸数/178戸(事業協力者住戸29戸含む)
●売主/三菱地所レジデンス(株)、(財)首都圏不燃建築公社
●施工会社/西松建設(株)