プロジェクトリポート「ザ・パークハウス 鎌倉大船」古都に寄り添い華やぐ街、大船で始まる歴史×モダンの美意識。
2018年12月19日
鎌倉市の北西に位置し、横浜市や藤沢市と隣り合う交通の要衝、大船。
都市のにぎわいと古都鎌倉の美意識を纏った街の風景のなか、四季を感じられる全45邸の新たなレジデンスが誕生した。
photos by Teruhisa Kobayashi
text by Norihiko Morita
大船駅の東口、東南東に延びる芸術館通りは、街路樹が一直線に続く大船のメインストリート。整備された通りのにぎわいを眺めつつ歩を進めると、少しずつ駅前の喧噪から離れていく。6分ほど歩いただろうか、交差点で立ち止まり振り返れば、美しい街並みと空が二分する、気持ちよい風景が広がっている。その交差点の角地に佇むのが『ザ・パークハウス 鎌倉大船』。並木道となじむように配された植栽と、直線的フォルムに深い色合いを纏った外観が、大船の街に溶け込む、落ち着いた風情を醸し出していた。
潜り戸を思わせるゲートと、その先のモミジに迎えられるエントランス。
風情ある街並みと都市機能を備えたシンボルロード「芸術館通り」に建つ。
JRと湘南モノレールが乗り入れる大船駅までは街のシンボルロード「芸術館通り」が続くフラットなアプローチ。通り沿いには各金融機関や店舗などが建ち並び、利便性の高い街並みを形成している。電線を地中化し、歩車分離した並木道が、にぎわいを感じさせながら街の美しい景観を創出。駅まで続く、日々の生活動線そのものが潤いある散歩道になっていることも、『ザ・パークハウス 鎌倉大船』に住まう喜びのひとつと言えるだろう。
古都の薫りとモダンの融合、情緒と温もりを感じる迎賓空間。
鎌倉市の北西部に位置する大船は、北は横浜市、西は藤沢市と隣接し、古来より鎌倉と市外を結ぶ交通の要衝として栄えてきた。大船駅を中心とする市街地は小高い丘陵に囲まれ、鎌倉文化圏のゆったりとした雰囲気と、都市としてにぎわう街並みが共存している。この大船にふさわしい住まいを計画したのが、三菱地所レジデンスの松本淳だ。
「大船は鎌倉市のなかでも、大正時代に英国式の田園都市計画を構想したり、昭和初期に映画の撮影所を誘致した歴史を持つ先進的な街。その大船らしい「ザ・パークハウス」とするため、鎌倉をイメージする〝和〞と、大船が歩んできた〝モダン〞な街の歴史が融合するレジデンスを目指しました」
『ザ・パークハウス 鎌倉大船』のエントランス前から外観を眺めると、武家屋敷(書院造)を彷彿とさせるバルコニー手摺りの水平ラインとシンメトリーなデザインに目が留まる。そして潜り戸を思わせる石積みのゲートと、その先で居住者を迎えるモミジが特徴的な和の景観を形づくっている。さらに棟へと向かう動線には、鎌倉の路地裏をイメージしたクランク状の回廊風アプローチ。角を曲がりながらピロティへと誘われると、そこで目にするのはのは透かしレンガの壁から光が漏れるモダンな空間だ。和を感じさせる乱張りした自然石の床が、建物の内と外の境界を現している。風除室を抜け、歩を進めると、目の前に広がるのは静謐な印象を与えるエントランスホール・ラウンジ。一つひとつ微妙に表情の異なる壁面のタイルや御影石を敷きつめた床が、特別な場所、迎賓の空間であることを教えてくれる。
「タイルは専門の職人がひとつずつ手作業で仕上げたもの。年を経るごとに独特の風合いを重ねていきます。ほかにも天然の景石を配した坪庭や、それらの魅力を高める照明など、随所に私たち〝つくり手〞の想いを散りばめています」
松本たち施工者はもちろん、設計者にデザイナー、造園スタッフが求めたのは、居住者にくつろぎの時を堪能していただく場所。デザインやマテリアルなどの細部にこだわり、上質な空間をつくりあげた。ラウンジのソファから窓いっぱいに広がる坪庭を眺め、四季の移り変わりを感じる暮らし。それは、ここに住まう者だけの最高の贅沢と言えるだろう。
(上)エントランスホール・ラウンジから眺められる坪庭には、アジサイやユキヤナギ、ヤマブキなど四季の草花を配置。御影石や小松石の景石とともに和の空間を構成している。
ゲートからエントランスに向かう動線。
クランクをつけた回廊風のアプローチで、住まいへと導く。
透かしレンガから柔らかな光が漏れるピロティ。紅葉の時期には、色づいたモミジの赤が映える。
四季を愛で、時にくつろぐ、迎賓の場所。
十分な広さと重厚な設えのエントランスホール・ラウンジでは、床や壁面の多彩なマテリアルが、坪庭の景観を引き立てている。全45邸の居住者と、訪れる人のみに許された贅沢な空間で、植栽が彩る四季折々の表情を楽しむ。そんな暮らしのありようを『ザ・パークハウス 鎌倉大船』で実現している。
自然石のタイルが重厚感を際立たせる、エントランスホール・ラウンジの暖炉。
エントランスホール・ラウンジのソファに座って眺めるときの目線に合わせて坪庭の植栽をレイアウトしている。
エントランスホール・ラウンジの一角に設えたシングルソファ。エントランスのゲートなども含め、ところどころに見られるシンメトリーなデザイン、レイアウトがシャープな印象を与える。
(下) ザ・パークハウス 鎌倉大船』を「芸術館通り」から臨む。建物を囲むように植栽を配置し、並木道になじむ景観をつくりだしている。
和とモダン、素材の上質感を求めたデザインコンセプト。
鎌倉の玄関口として栄えた大船にふさわしい邸宅とすべく、和の要素とモダンな意匠を組み合わせた、情緒を感じさせるデザインが特徴。静謐な雰囲気のエントランスホール・ラウンジに用いられるタイルなどの素材は、クレイマイスター(手作業で装飾タイルをつくりあげる職人)の手によるもの。年月を経ることでより深い表情に変化する。タイルや天然石など、素材の一つひとつを吟味し、和とモダンが融合した意匠を随所に取り入れることで、邸宅の造形美、質の高い住まいを実現している。
バルコニーの鼻先、手摺りの横格子で水平性を表現。また、マリオン、バルコニー手摺りを木目調とすることで、温かい木造書院造のイメージを加えている。
鎌倉文化の継承を感じさせる、自然石を積み上げたエントランスゲート。
エントランスホール・ラウンジの壁面には装飾タイルをあしらい、陰影のある佇まいを表現。
住まう人、地域の人、つくる人、すべてに配慮した建設計画。
『ザ・パークハウス 鎌倉大船』の共用部が、素材やデザインにこだわった上質な空間を指向したことは先に述べた。一方、各住戸はというと、共用部同様に上質感を求めつつ、居住者の快適性を考慮しているのが特徴だ。その代表的なものが、三菱地所レジデンスのものづくりの仕組み「EYE’S PLUS」の製品・仕様を取り入れていること。メンテナンス性や機能性を持たせ、さらに長く使える普遍的なデザインのキッチンやバスルーム、布団も楽に収納できるストレージや可変性のあるシューズボックスを採用することで暮らしやすさを追求している。また、建設地の土地利用の観点からは、地域の方々の利便性に配慮。もともと駐車場だった計画地には、この地域で利用されていた小道(抜け道)があり、この小道を廃止すると地域の方々に不便が生じる。そのため、小道を「まちづくり空地」として残し、街の暮らしを変えない工夫を施した。そして、建設工事には中低層マンション向け「PC(プレキャスト・コンクリート)工法のシリーズ化」を採用。工場で製作したコンクリート部材を現地で組み立てるため、工期の短縮と熟練工不足への対応が可能となった。「竣工までの厳しいスケジュールを可能にしたのは、この工法によるところが大きい」と松本が言うように、これまで主に大規模マンション用だったPC工法を中低層マンションでも可能にした新工法は、先進的なマンション建設手法のひとつと言えるだろう。
鎌倉文化圏にあり、新しい風を取り込んできた歴史を持つ大船に、最新の技術と和モダンの意匠が施され誕生した『ザ・パークハウス 鎌倉大船』。これから時を重ね、街とともに深い味わいを宿すレジデンスとなる。
地域の人々の利便性を確保した「まちづくり空地」。
『ザ・パークハウス 鎌倉大船』の東側に位置する「まちづくり空地」。既存の道路と「芸術館通り」をつなぐ抜け道として利用されている。
『ザ・パークハウス 鎌倉大船』が建つ土地はもともと駐車場であり、そこには「芸術館通り」へと抜ける小道が存在した。この小道は地域の人々が利用する道だったため、計画上「まちづくり空地」として残し、街の暮らしを変えない工夫を施している。
PC(プレキャスト・コンクリート)工法のシリーズ化で工期を短縮する最新のマンションづくり。
PC工法のシリーズ化による組み立てシーン(参考写真)。
『ザ・パークハウス 鎌倉大船』は、これまで中低層マンションでは採用されにくかったPC(プレキャスト・コンクリート)工法で施工されている。PC工法とは、コンクリート部材(柱や梁など)をあらかじめ工場で製作し組み立てる工法のこと。安定した品質と工事工程の短縮化が実現できる一方、コンクリート製造用の型枠を建物ごとに設計・製作するため部材を大量生産する超高層建築物以外ではコストメリットが望めなかった。このPC工法を三菱地所レジデンスと木内建設が協業し、PC製造用型枠を15種に絞るとともに可変性を持たせることで多様な建築物への採用を可能にした(PC工法のシリーズ化)。これにより、部材品質の安定供給と、コスト・工期の削減を成功させている(型枠工や鉄筋工の人員を削減)。
街の歴史に想いを馳せて、美しい住まいに、美しく暮らす。
ザ・パークハウス 鎌倉大船(販売済)
古都鎌倉の玄関口、大船駅からフラットなアプローチで徒歩6分ほどの立地環境。和モダンの意匠がエントランスホール・ラウンジなどの共用部に施された、落ち着きのある空間設計が特徴のひとつ。各住戸の収納システムや水回り設備には三菱地所レジデンスの「EYE'S PLUS」シリーズを採用。上質感だけではなく、暮らしやすさを求めた住まいを実現している。
●所在地/神奈川県鎌倉市大船2丁目259-1(地番)
●構造・規模/鉄筋コンクリート造・地上6階建
●総戸数/45戸
●竣工/2016年10月
●売主/三菱地所レジデンス(株)
●施工会社/木内建設(株)