プロジェクトリポート「ザ・パークハウス 浦和タワー」浦和の新たな景観美、街の象徴をめざして。
2019年02月22日
古くは深い古木林を有する「調神社」や真言宗寺院「玉蔵院」の門前町として栄え、江戸時代には日本橋へと続く中山道の宿場町として発展した浦和。
『ザ・パークハウス 浦和タワー』は、その歴史ある街のランドマークとして産声をあげた。
photos by Teruhisa Kobayashi
text by Norihiko Morita
旧中山道に面した、浦和の中心地。
かつての浦和宿として知られ、現在も埼玉県庁や伊勢丹など、公共施設・商業施設が集結する浦和駅西口エリア。
『ザ・パークハウス 浦和タワー』は、浦和初の百貨店である「名店センター」の跡地(老朽化のため2014年に取り壊し)に建つ。長年、浦和の人々に親しまれてきた場所が生まれ変わり、街に新たな表情を加えた。
※写真は昭和50年に撮影された浦和駅西口エリア。
東京駅および新宿駅から直通で25分以内。JR浦和駅の西口に出ると、ショッピングセンターの浦和コルソと、それに連なる伊勢丹浦和店が駅前の顔として目の前に現れる。そして、その裏手は無数の商業ビルが並び広がる街の中心部だ。行き交う人々の波に乗り、ふと空を見上げてみると、ビルの谷間から姿を覗かせているのは、竣工から1年半を経た『ザ・パークハウス 浦和タワー』。街のところどころで目に留まるタワーマンションは、浦和の新たなランドマークとして、街を見守るかのように佇んでいた。
かつての「浦和宿」に誕生したこの土地ならではのタワーマンション。
浦和は、調神社や玉蔵院といった古社、古刹の門前町として栄え、江戸時代までくだると宿場町、浦和宿として発達した歴史ある街。2001年に大宮市、与野市と浦和市が合併し、さいたま市浦和区となってからも、埼玉県の行政・経済を司るエリアのひとつとして発展し続けている。『ザ・パークハウス 浦和タワー』は浦和駅から徒歩3分ほど、旧中山道に面した場所に立つ。
「もともと半世紀以上、人々に愛されてきた浦和初の百貨店『名店センター』の跡地に建設しました。その歴史を引き継ぎ、新たな浦和のランドマークとなるよう、浦和ナンバーワンの集合住宅を目指しました」
そう語るのは三菱地所レジデンスの中村摂子。商品企画部の一員として設計全般に携わった。では、浦和のランドマークとなるために、具体的にどのような設計ポイントを盛り込んだのだろうか。
敷地を有効活用し、緑化空間を創出。
旧中山道から大幅にセットバック(約31m)して居住棟を配置することで、居住者だけでなく周辺への圧迫感も軽減。さらに余白を生かした緑化空間を実現している。モミジやシラカシなどの木々が四季を彩り、暮らしに潤いを与える。
ホテルライクな広々とした車寄せスペースに大型キャノピー(庇)を設けたエントランス。
セットバックしたことでメインアプローチに奥行きが生まれる。館銘板は旧中山道側に寄せて視認性を向上。
列柱の並ぶコリドール前のガーデンでは、イロハモミジにノムラモミジ、シラカシやコブシなど、季節ごとに表情を変える植栽が趣を醸し出している。
列柱の並ぶコリドール前のガーデンでは、イロハモミジにノムラモミジ、シラカシやコブシなど、季節ごとに表情を変える植栽が趣を醸し出している。
「ナンバーワンでありオンリーワンの魅力を備えるべく、V字型の住棟配置を計画しました。これにより敷地内に余白が生まれ、緑化空間を確保するとともに全戸南向き(南東・南西向き)を実現しています」
かつて浦和宿であったこのエリアは、間口が狭く奥行きが長い短冊状の地割りを現在まで踏襲している。そのため、集合住宅や商業ビルは、細長い“板状型”の設計になりがちだ(航空写真参照)。そこで、ほかとの差別化を図るべく、中村たちはひときわ目を引く“V字型”を採用した。もちろん、見た目のインパクトだけで採用を決めたわけではない。中村が述べたように全戸南向きのメリットを享受できるほか、隣接する板状型の建物との正対を回避することでプライバシーにも配慮している。「土地それぞれにベストな計画を立てる」ことが、商品企画部の設計思想。エリアの個性、土地の条件、目指すべき住まいの理想を勘案し、最終的に現在のフォルムへと行きついた。
「旧中山道から大きくセットバックすることで、周囲に対する圧迫感も軽減しています。南向きのため光を取り入れやすく、開放感のあるタワーマンションになりましたね」
居住棟に隣接するタワー型駐車場。外壁に色違いパネルをランダムに配置することで、居住棟と並立しても違和感のない印象となるようにデザイン。
タワー頂部に優美なティアラを冠し、ライトアップ。浦和の夜景に新たな彩りを加えた。
デザイン監修を担当した建築家・渡辺純氏(JWA建築・都市設計)も、浦和の街とその歴史に敬意を払い、この土地にふさわしいランドマークを目指したひとり。遠景、中景、近景で、それぞれ違った表情となるよう、外観には縦のルーバーで空に突き抜けるようなデザインを施し、頂部に配したティアラが夜間ライトアップ。“浦和ナンバーワン”をデザインの視点から追求した。
縦と横のラインが美しいモダンデザイン。
新しい浦和のランドマークとしてモダンでスタイリッシュなデザインを採用。ティアラを頂部にあしらい、縦ルーバーのマリオンが、空にそびえるタワーの美しさを高めている。北側(開放廊下側)も外階段をルーバーで覆うなど、シャープな意匠を施している。
頂部へと続くマリオンは、ルーバーの本数に変化をつけることで外観にランダムな表情を与えている。
外階段やエレベーター囲いにも縦ラインのルーバーやパネルを施し、棟全体でシャープな印象を演出。
居住棟をV字配置とし、快適な居住空間を実現。
V字配置にしたことにより、開放的なメインアプローチや店舗前広場を実現。街の区割りに45度振る構造となるため、隣接ビルとの正対を避け、プライバシー確保の利点も生まれている。
航空写真を見ると、周辺が「浦和宿」時代の区割りを踏襲した「板状型」建築で構成されていることがわかる。そのなかにあって、V字型の『ザ・パークハウス 浦和タワー』はランドマークとしての異彩を放っている。
敷地形状やすでにある街並みに従えば板状型の居住棟となるが、あえてV字型配置を採用。周辺のマンションや商業ビルにはないオンリーワンの建築美を生み出すだけでなく、敷地内に空間をつくり出し、周辺建物との距離を確保。全住戸南東・南西向きのV字配置ならではの日照や開放感を実現している。
モダンデザインと地震への備え。「中間免震構造」という選択肢。
『ザ・パークハウス 浦和タワー』は、その土地に適したV字型配棟計画とともに、もうひとつ大きな特徴がある。それは「中間免震構造」を採用した点だ。中間免震構造とは、1階と2階の間に免震装置を設置することで地震の揺れを軽減する構造を指す。
「免震装置により、1階と2階の間に高さ約3mの中間免震層ができます。最下階の2階住戸は3階程度の高さとなり、アプローチからの視線を回避するメリットも生じます」
中村が言うように、中間免震構造は地震の揺れに対応するとともに、プライバシーの面でも居住者の安心・安全を確保している。そして、デザイン的にも1階エントランスと中間免震層部分を合わせて住戸階と異なる意匠を施すことが可能となった。エントランス前のキャノピー(庇)と2階住戸下の壁面の存在感により、まるでホテルのような車寄せスペースを実現している。建物頂部のティアラと、基礎部のモダンで重厚なデザインが、広々としたアプローチや緑化空間とともに、上質な雰囲気を醸し出した。
一日が終わり、人々が帰路につく時間。浦和駅のホームからも、ティアラが輝く『ザ・パークハウス 浦和タワー』が垣間見える。浦和の街がこれからも発展を続ける、その象徴のような地上20階建のタワーマンションは、最新の安全への備えと、その土地ならではの設計・意匠を纏い、浦和に帰るすべての人々を出迎えているように感じられた。
居住者を守る免震構造。
中間免震タワーイメージ図(構造概念を示すものであり、実際とは異なる)。
安全・安心の暮らしを目指し、1階と2階の間に免震装置を配置する「中間免震構造」を採用。中間階部分に免震装置(鉛プラグ入り積層ゴム支承)を配置することにより、地盤から地上部構造(住戸部分)への地震力を低減する。地下を含めた建物全体を免震構造とする場合は、建物の「揺れしろ」を考慮したスペースが必要だが、「中間免震構造」であれば『ザ・パークハウス 浦和タワー』のように敷地面積に余裕がない場合も免震タワーマンションを実現できる。
免震装置(参考写真)。地震の振動をやわらげ、建物の揺れを長周期化する。鉛プラグ入り積層ゴムとは、天然ゴムを主原料としたゴム板と薄い鋼板を交互に組み合わせたものに、鉛プラグ(芯材)を圧入した、ダンパー一体の免震支承のこと。※支承(ししょう)=上部構造と下部構造の間に設置する部材。
県都「浦和」のシンボルとして、街の誇りとなるレジデンスへ——。
中間免震タワーマンション『ザ・パークハウス 浦和タワー』からの風景。眼下に浦和の街が広がる。
行政、商業、教育、文化が集積する街、浦和でNo.1の住まいを目指した『ザ・パークハウス 浦和タワー』。浦和のシンボル、ランドマークとして、すべての人々に誇りと感じていただけるようなレジデンスになるべく、これからも時を重ねていく。
ザ・パークハウス 浦和タワー(販売済)
浦和駅北口から徒歩3分。頭上にティアラを冠したようなその容姿が、浦和の空に映える。V字型の居住棟は、地上20階建の全146戸。19、20階は100㎡超のプレミアム住戸としている。免震装置を備えているほか、住戸階全フロアに防災倉庫を設置し、住まいの安全を支えている。1階にはカフェなどのショップが入居し、生活利便性も高い。
●所在地/埼玉県さいたま市浦和区仲町一丁目30番1(地番)
●構造・規模/住宅棟:鉄筋コンクリート造(ELVシャフト・店舗等一部鉄骨造)・地上20階、地下1階建、タワー型駐車場:鉄骨造・地上2階建1棟
●総戸数/146戸(事業協力者住戸4戸含む)、ほかに管理室1戸・店舗1戸
●竣工/2017年5月
●売主/三菱地所レジデンス(株)、大栄不動産(株)
●施工会社/(株)フジタ