2022年度グッドデザイン賞受賞ザ・パークハウス 鎌倉
2022年10月07日
建築を成す4つの面
そのすべてが「表の顔」となる
若宮大路に面した鎌倉らしい景観等を享受できるよう「連続水平窓」を設け、軒と共に外周に廻すことにより、「表裏を感じさせない外観」を実現しました。
四方に開かれた敷地形状を生かしながら、仏塔建築の重なる軒のように庇を各階外周に廻し、どの方向も街に向けられる「表の顔」となる外観デザイン。
鎌倉の歴史に流れている美意識を取り入れ、周辺の街並みから意匠を考え、木目調の庇や版築風の壁を用いて、鎌倉の歴史の継承、街景観の向上に寄与する邸宅意匠を計画。
軒を廻すことで日射遮蔽や外壁の劣化が抑えられるデザイン。軒裏には耐久性・耐候性に優れる再生木を使用。
上層階の一部を法令上で規定されている数値以上にセットバック。周辺の圧迫感軽減及び街のスカイラインを確保し、街の景観向上に貢献。
軒の先に鎌倉の景観が続いて見える、開放的なパノラマ景色
水平窓を活かし、ガラス窓を大きく取ることで、古都鎌倉の歴史を継承し、庇や版築風の壁による和の趣を演出しながら、建物の外周を廻しているガラス面による建物のモダンな顔を演出しています。
逆梁を用いることで外部からの視線に配慮し、内部からは鎌倉らしい景観を望めるように視界コントロールに寄与しています。
緑量の増加や道路の拡幅等を実施し、
周辺居住者の生活動線へも配慮
敷地の前身は建築家の山脇巌が設計した「犬猫の峰病院」。その前身が地元の方々に大事にされ、市の重要な建物でもあることから、鎌倉市を通じて「鎌倉市景観配慮協議」団体を紹介いただき、地元のまちづくりに取り組む方々の意見をいただく場を設け、地元の方や、観光客、鎌倉市の歴史等に対して多方面的に配慮しました。
建物東側は動線を設けず、小道に対してフェンス外側に生垣を配置して緑量を増加。周辺居住者の生活動線や街並み景観に配慮。
マンションの居住者に心地よい住空間を提供するだけでなく、地域への寄与も意識して計画。
古都鎌倉、その礎の地に在るべき佇まい
本計画は、鎌倉市の歴史的シンボルである八幡宮参道の「若宮大路」に面する特殊な立地であることから、歴史性や景観を尊重し街の景色に調和するデザインを図りました。
また集合住宅の計画には希少な立地でもあることから、鎌倉の街並みに根ざしながら街並みの景色を先導できるような集合住宅を計画しました。
審査委員の評価コメント
鎌倉は、奥行きの深い歴史を背景に、観光と居住が近接して存在する都市構造になっており、都市景観の維持とともに地元住民の生活環境の保全に対する対応が求められている。緑量も多く低層建築が大半を占める鎌倉において、中規模マンションの建設となれば、地域住民に対する丁寧な説明と配慮が必要であろう。ここでは庇の設置やセットバックによる周辺環境との馴染みをよくする仕掛けや建物自体の色彩など、随所に思慮深いデザインが実現している。逆梁によって可能となった天井高さ一杯の開口部によって、庇の水平性と内外の空間の連続性が強調され、居住空間にも存分に鎌倉の豊かな風景を取り込んだ端正な住宅建築である。