2019年開発 あ!ここにも EYE’S PLUS「やり過ぎない、押し付けない」クローゼット開発秘話
2020年10月12日
三菱地所レジデンスでは、ご購入されたお客様から入居後にアンケートを頂いています。
住まわれているお部屋の感想、お困りのこと、ご要望など…。「本当に居住者のこと考えて、造ってくれているのかしら」。
厳しいご意見もたくさんあります。なかなか造り手の想いは伝わりにくいようです。
そこで、地味な商品開発の裏側をのぞいてみませんか?
もう一歩踏み込んでみると、本当の課題が見えてくる
クローゼットでよくあるお客様の要望や不満は「洋服が入りきらない」「奥にしまったものは、一度入れてしまうとなかなか取りだせない」「そもそも使いにくい」ということ。
では、箱自体を大きくすれば解決するのか。使いやすくするために可動棚を増やせばいいのか。そうではないと考えました。
使えないものを使えるようにするのが第一段階。ただ使えるだけでなく、お客様の「いいね!」を引き出す商品に昇華させることが第二段階として重要だと考えます。因みに、お客様の「いいね!」を引き出す商品として開発した「クローゼット」は、特許出願中です。
EYE’S PLUSの新クローゼットができるまで
開発の裏側をのぞきみ①
クローゼットの中で、何が不要か、何が必要なのかを見極める
有孔ボードで何度も位置を確認し、最適な場所を探り出しました。ボードについているメモテープは、検証を繰り返した証。
具体的にクローゼットを例にとってご説明致しましょう。
まず、クローゼット全体を見回した時、気になったのが上の棚板収納。あるのが当たり前と思っていましたが、結構高い位置にあるので、いざ何を入れるかとなると最後まで思い悩んでしまう場所ではないでしょうか。
棚板を外してみると、意外にスペースがあります。高いところにバーをもう1本増やせば、長さのあるワンピースなども収まりが良く、今より多く洋服が入れられそうです。
パイプの位置を実験
パイプの最適な位置を実験するため、パイプが設置できる穴をたくさんあけました。
これで高さだけではなく、最適な横の位置やパイプの並べ方も同時に確認することができます。
実際の商品についているパイプは3本あります。収納する服の量を増やすために、2本のパイプの間隔は、ハンガーを掛けた時に前後の洋服の肩の部分がぶつからない絶妙な位置になっています。これで収納できる量が3割アップしました。
開発の裏側をのぞきみ②
動かしてみて初めてわかる1枚棚の重さ。ここから生まれる発想が、付加価値に繋がる
1枚板の場合は、収納の箱のサイズに合わせているため、奥行きだけでなく、横幅もあるので、持ち上げるのが大変。
パイプの位置を検証中に下の可動棚を動かそうとした時です。あまりの重さにびっくりしてしまいました。
これでは、一度棚の位置を決めた後で、気軽に動かすことなど到底できません。腕の力がない人でも簡単に棚を動かせるよう、可動棚は前後2枚割りにして1枚の大きさを半分にしました。
2枚割にしたことで、棚の使い方も広がりました。
例えば奥に片方だけ取り付けると、手前に長さのある洋服が裾を引きずることなく掛けられます。棚板を手前に設置すれば、取り出しやすさもプラスします。
ちょい掛けだけでなく、洋服のメンテナンスも気軽にできる「一時掛けハンガーバー」。
一時掛けハンガーバーの効用
着た服をすぐにクローゼットに入れたくないということで、洋服を掛けられる一時掛けハンガーバーを考えました。プラスで洋服を選ぶときに、ちょい置きする場所があってもいいのではないか、という発想です。
ただ、気になるのが、耐久性の問題。扉裏に一時掛けハンガーバーを設置すると、冬のスーツなど重い服を掛け続けると扉が歪んでしまう可能性があります。
そこでハンガーバーの取り付け位置を、扉裏ではなく、クローゼット本体の上部につけることにしました。
一時掛けハンガーバーの使い方について、様々な意見を収集。その結果、家に帰って脱いだ後のスーツやワンピースを一時的に掛ける時や布用消臭剤を散布する時、ハンディアイロンをかける時にも使えるなど、お客様に使い方のご提案ができるまでになりました。
一時掛けハンガーバーにハンガーを掛けたままでも扉が閉められるように、取付け位置にもこだわりました。これで、いつでも扉がキレイに閉まります。扉が半開きになった状態は、部屋の美観も損ねます。クローゼットだけでなく、部屋全体のことも考えて、制作しています。
開発の裏側をのぞきみ③
他で代用できるものは、お任せしよう。
下げ方に工夫とセンスがいるネクタイ・スカーフ掛け。すぐに掛けたものが落ちてしまう。
試作品を検証している中で、次回に持ち越しになった案もたくさん。
一例をご紹介します。
クローゼットの中には、洋服だけでなくネクタイやスカーフ、ベルトなども一緒にしまう方もいるでしょう。実際、既存のタンスの扉裏には、ネクタイ掛けが付いていたりします。
収納力を増やすため、扉裏に専用バーを取り付け、実際にネクタイやスカーフをかけてみました。しかし素材がシルクなどのせいか、バランスを考えないままに掛けるとスルスルっと落ちてしまうことが判明。
重ねて掛ければ摩擦で止まることもありますが、そうなると取り出しにくく、結局使わなくなってしまうことが予想されます。世の中には便利グッズもあるので、扉裏の専用のネクタイ掛けは、今後の商品開発に乞うご期待!!
お客様の声に、プロの視点をプラスして形にしたクローゼットが誕生
開発によって使いやすさと収納力がアップしたクローゼット。ただ改良するだけでなく、使う人に気づきと発想を提供する、工夫を随所に散りばめた「EYE’S PLUS」の新生クローゼットが誕生しました。
洋服の厚みをずらして掛けることで、無駄なスペースがなくなり収納力もアップ。
2枚割の可動棚の使用例。これこそカスタマイズ次第で、使い方が広がる良い例。
お客様の実生活に即した使い方を、丁寧に検証してみる、閃いたことや気づいたことを試作品を使い検証していくと、理論だけではない、使いやすいなどといった感覚的なことがよくわかってきます。
泥臭くそれらを拾い集めて、商品を創り出してきました。モノを造っていく上で念頭においていること。それは、「やり過ぎない、押し付けない」ということ。
大切なのは、商品を通してお客様に共感してもらうことです。どこが良いのか、どんな工夫をしているのかが、プロしかわからないものでは仕方がない。お客様が思わず納得する、わかりやすいものを造ることが大事なのです。
シンプルなものは、使う人がそれぞれの使い方を見つけ出していきます。これが本当のカスタマイズということです。
そのためには、使い方の提案はしつつも、発想が生まれる余裕を持たせること。そこから生まれる満足感と感動。マイナスの側面をプラスに変えることが、商品に付加価値を与えることにつながるのは、そういう瞬間なのです。
(テキスト)山田江理子
(写真)清水タケシ
(イラスト)高村あゆみ
住んだ後の暮らしを
考えるものづくり EYE’S PLUS
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EYE‘S PLUS(アイズプラス)とは、お客様の声を軸とし、プロの視点(EYE’S)を加えて、「新たな価値を創造(プラス)」していくものづくりの仕組みです。三菱地所レジデンスでは、ザ・パークハウスにお住まいのお客様の声とトレンドを掛け合わせながら、住んだ後の暮らしを考えるものづくりを行っています。
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