データで見るタワーマンション購入者の実像――意外? 都心でも年収1,000万円以下が多い!?

データで見るタワーマンション購入者の実像――意外? 都心でも年収1,000万円以下が多い!?

[住まい選びの基礎知識]

2018年12月07日

タワーマンションの立地は都心寄りのエリアにあることが多いため、「高額で手の届きにくいもの」「憧れの存在」というイメージを持つ人がいるかもしれません。実際はどうなのでしょうか。首都圏の都心や郊外駅近と関西圏のタワーマンションの購入者データを調べてみると、意外な事実が浮き彫りになりました。

【はじめに】データについて

今回紹介するデータは、三菱地所レジデンスが分譲したタワーマンションの購入者(2014~2016年に契約)を対象にしたアンケート結果です。「都心・湾岸(首都圏)」「郊外駅近※(首都圏)」「関西圏」の3つのエリアに分け、それぞれ2物件のデータを集計しました。物件の価格帯や間取りは、表1の通りです。いずれのエリアでも4,000万~6,000万円台の価格帯が中心で、都心でも億ションの割合は5%程度です。

※駅近:
2物件とも最寄り駅から徒歩5分以内

物件ごとの特性が異なるため、これらのデータが各エリアの平均値を表すものではないことを予めご了承ください。グラフの出典はすべて同調査によります。

表1.物件の概要

1.【購入者の年齢層】首都圏は30代がトップ、関西圏は50代が多い!?

図1:タワーマンション購入者の年齢層

タワーマンション購入者の年齢層は、首都圏では一般のマンションと同様に30~40代が中心です(図2-2~2-3参照)。ただ、5歳きざみで見ると「都心・湾岸(首都圏)」では40代前半が最多、「郊外駅近(首都圏)」では30代前半が最多となり、郊外のほうが年齢層はやや若いことがわかります。

また「都心・湾岸(首都圏)」では高齢になるほど、購入者の割合が大きく減るのに対して、「郊外駅近(首都圏)」は年齢が高くなっても減り方が緩やかで、70代でも10%近くを占めるのが特徴です。

一方、関西圏は、最も多いのが50代です。次いで40代、30代となり、首都圏とは異なる傾向が表れています。この理由は、次に紹介する「家族構成」や「購入目的」の違いを反映しているのかもしれません。

2.【家族構成】どのエリアも2人世帯が最多! それ以外はエリアによる違いも大きい

図2-1.タワーマンション購入者の家族数

次に家族数について見ると、「2人」がすべてのエリアで最多でした。しかし、その後の順位はエリアによって、次のように異なっています(多い順。5人、その他を除く)。

  • 都心・湾岸(首都圏):「2人→3人→1人→4人」
  • 郊外駅近(首都圏):「2人→3人→4人→1人
  • 関西圏:「2人→1人→3人→4人」

つまり、「1人(シングル)」の位置がエリアによって違うのです。「都心・湾岸(首都圏)」では、「4人」よりシングルのほうが前、「郊外駅近(首都圏)」では3~4人のファミリー世帯よりシングルが後です。「関西圏」では、3~4人のファミリー世帯よりもシングルのほうが前になっています。

さらに、年齢と家族数との関係を見ると、エリアによる特徴が見えて来きます。

図2-2.年齢別の家族数/都心・湾岸(首都圏)

まず「都心・湾岸(首都圏)」では、すべての年齢層で、家族数「2人」が最多です。中でも30代が突出して多くなっており、夫婦共働きの世帯も少なくないのではないでしょうか。「3人」と「1人」は、ともに30代と40代が同じくらいの世帯数です。「都心にあるタワーマンションは、功成り名遂げた富裕層がステータスシンボルとして、または投資対象として購入する」という先入観を持たれがちですが、必ずしもそうとは限らないようです。本文の最後のほうで紹介する購入者の声には、利便性や防犯性などの機能面を評価し、住まいとして購入するファミリーやカップルが少なくありませんが、このデータからもその一端が窺えるでしょう。

図2-3.年齢別の家族数/郊外駅近(首都圏)

「郊外駅近(首都圏)」では、40代を除く各世代で「2人」がトップですが、50代以降、70代までほぼ同じ世帯数になっているのが、他のエリアにない特徴です。購入者のうち、買い換えの有無について調べると、「都心・湾岸(首都圏)」より「郊外駅近(首都圏)」のほうが、やや買い換え割合が多くなっていました。60代、70代で「2人」世帯が多いのは、子育て期を終えて、一戸建てなどに住んでいた人々が、駅に近く利便性の高いタワーマンションに買い換えた例も多いのではないでしょうか。

図2-4.年齢別の家族数/関西圏

「関西圏」でも「2人」がもっとも多いのですが、年代別では50代の世帯数が最多となっています。30代と60代も、あまり世帯数に大きな差がありません。この点が首都圏との大きな違いです。

3.【年収レベル】都心・湾岸(首都圏)でも1,000万円以下が最多、「手が届かない」のはウソ?

「都心・湾岸(首都圏)」のタワーマンション購入者は高額所得層がメインというイメージがありますが、果して実際は?

図3.タワーマンション購入者の年齢層

世帯主年収で、最も多いのは1,000万円未満で、サラリーマンの平均所得に近い700万円未満も少なくありません。意外にも、1400万円を超える高額所得層の割合は低いのです。ただ、回答者の3分の1近くが「不明」となっており、この中に収入を明かさない富裕層や投資家層が多く含まれているかもしれません。

「郊外駅近(首都圏)」では、700万円未満が最も多く、年収が高くなるほど割合が低くなっています。その中で2,000万円以上の割合が「都心・湾岸(首都圏)」よりも高い点が特徴です。「郊外の富裕層が、地域ナンバーワンともいえるタワーマンションのプレミアム住戸を購入する」という姿も想像されます。「関西圏」も同じような傾向です。

夫婦共働きの場合、世帯年収はもっと多くなる可能性もあります。ただ、今回の調査では、住宅ローン利用にあたって「収入合算」をした割合は、「東京郊外」で約13%、「東京都心・湾岸」「関西圏」はともに10%に達しません。共働きでも収入合算せずに世帯主の単独借り入れが多い、または、もともと共働き世帯が少なかったかのいずれかの可能性が考えられます。

なお、「パワーカップルがペアローンを使って購入する割合が増えている」という新聞や雑誌の記事も時折見かけます。「パワーカップル」とは、夫婦それぞれの年収が700万円以上、世帯年収が1400万円以上の高所得世帯のこと(日経新聞等の定義)。ペアローンは夫婦それぞれが融資を組み、相互に連帯債務者(連帯保証人)になるタイプのローンです。今回のデータでは、ペアローンの調査をしていませんでしたから、メディアの指摘は裏づけられませんでした。

ある研究データ(※)によると、世帯年収がもっとも多いのは、「1,000万円以上1500万円未満」と報告されています。地域や物件によって購入者の属性に違いがあることがわかるでしょう。

「東京都心湾岸部における住宅取得の新たな展開――江東区豊洲地区の超高層マンションを事例として――」(小泉、西山ら)地理学評論2011

4.【資金計画】都心部でも、自己資金20%以下が全体の4分の1

新築マンション購入者の資金計画は、自己資金(※)を購入価格の1~2割、残りを住宅ローンで賄うのが一般的です。しかし、今回のタワーマンション調査では、「オールキャッシュ」の割合が非常に高いという結果が出ています。

※自己資金:
ここでは「頭金(購入価格から住宅ローン借入額を除いた金額)」と同じ意味で使っています。

図4.タワーマンション購入者の自己資金比率

「都心・湾岸(首都圏)」や「関西圏」では半数以上、「郊外駅近(首都圏)」でも3分の1近くが現金だけで購入しています。その一方で自己資金2割以下の割合も高めです。「都心・湾岸(首都圏)」は4分の1(25.8%)、「郊外駅近(首都圏)」では3分の1(37.1%)に及びます。自己資金が少ないか多いか、二極化しているといえるかもしれません。

「都心・湾岸(首都圏)」や「関西圏」で「オールキャッシュ」が半数を超えるのは何故でしょうか。数年前に、都心のタワーマンションに対するインバウンド(外国人による日本の不動産への投資)が盛んだったことがあります。このグラフの調査対象は、ちょうどその頃に分譲された物件のため、こうしたインバウンドの動きが背景にあるかもしれません。

また、タワーマンションは相続税対策としての効果もあるため、国内富裕層の割合が高い可能性もあります。これらのケースを除いてマイホームの購入に絞れば、オールキャッシュの割合は、もっと低めになるのではないでしょうか。こうした違いを考える上で、次の購入目的も参考になります。

5.【購入目的】都心・湾岸(首都圏)や関西圏は投資やセカンドハウス目的も多い

図5.タワーマンション購入者の購入目的

タワーマンションを購入した目的は、「郊外駅近(首都圏)」では80%以上が「自己居住用」、つまりマイホームとして購入しています。一方、「都心・湾岸(首都圏)」では、「自己居住用」は60%程度に止まり、「投資用など」の割合が「郊外駅近(首都圏)」の3倍以上となる29.5%です。「投資用など」の割合が高いのは、さきほどの「インバウンド」や「国内富裕層」が含まれているのでしょうか。「法人の社宅用」というケースも考えられます。

「関西圏」になると、さらに「自己居住用」が少なくなり、55%に過ぎません。その一方で「セカンドハウス」が21.4%、「投資用など」が19.7%と、自己や親族の居住用以外の合計が40%強を占めており、首都圏よりも割合がかなり高くなっています。その中には先述の「相続税対策」が含まれているかもしれません。

多様な層が多様な目的で購入しているのがタワーマンションということがわかるでしょう。

<購入者像のまとめ>
  • 年齢層は30~40代中心ながら、70代まで幅広い。
  • 最も多いのは2人家族。3~4人のファミリー層も意外に多い。
  • 年収は1,000万円以下が中心。自己資金は2割未満とオールキャッシュが多い。
  • 購入目的で一番多いのは、やはり自己居住。投資やセカンドハウスも少なくない。

6. 【購入者の声】Q&A 住んでから実感した、タワーマンションの心地よさ

「ザ・パークハウス晴海タワーズ・クロノレジデンスからの夜景」
「ザ・パークハウス晴海タワーズ・クロノレジデンスからの夜景」

最後に、タワーマンションの住み心地に関心を持つ人も多いので、実際に購入して住んでいる先輩たちの声を集め、Q&A形式で紹介しましょう。

(※MJR住まいのギャラリー「オーナーズボイス」http://www.mecsumai.com/voice/keyword/tower/を参考に複数の声を再構成)
Q1.
総戸数が多くて人の出入りが激しそうなので、知らない人が入って来る心配は?
「24時間有人管理で、警備員が常駐しているので頼もしいですね」「エントランスから自分の部屋に入るまでに、二重三重のセキュリティシステムが働いているから安心です。カード認証でカギ不要なので、何度もカギを開ける手間はかかりません」
Q2.
上層階からゴミ出しするのは大変ではないですか?
A
「各フロアに24時間ゴミ出し可能なダストステーションがあるので、すごく楽ですね。清掃員が非常用エレベーターで地下まで運搬してくれるので、通常のエレベーターでゴミを持って鉢合わせしないで済むから清潔感もあります」「ディスポーザーがあって、生ゴミがほとんど出ないので、ゴミ出しの回数も減りました」
Q3.
超高層からの眺望といっても、すぐに飽きませんか?
A
「季節によって、天気によっても富士山を始め、海や山の見え方が違うんです。公園の植栽も色とりどりに変化するので、自然を身近に感じるようになりました」「夏の花火以外にも、近くのテーマパークで季節ごとにいろんなイベントをしているので、変化があって飽きません」

この他、タワーマンションを選んだ理由として、「駅に近く利便性が高い」「共用施設が充実している」「資産価値が落ちにくい」「以前からあこがれていた。ステータス感がある」などの声も多く挙げられていました。

購入者の声は個人の感想によるもので実際とは異なる場合があります。また、建物の構造・設備仕様・サービスなどは物件により異なります。

text: 木村元紀

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