津田沼『奏の杜』プロジェクト 住民の思いから生まれた新しい街づくりのカタチ。

プロジェクトリポート津田沼『奏の杜』プロジェクト 住民の思いから生まれた新しい街づくりのカタチ。

畑で穫れたブランドニンジンは、長い間、市場で高い評価を得てきた。
その誇るべき仕事から離れる決心は、
生まれ育った土地への愛着があったからこそ導き出された。
次の世代に残すために考え抜かれた街づくり。
コミュニティの未来像がそこにある。

text by Yuji Iwasaki
photos by Yoko Sawano

『ザ・パークハウス 津田沼奏の杜』から北東方向を望む。左手は『ザ・レジデンス津田沼奏の杜』。中央上は、2013年4月にオープンしたショッピングセンター『奏の杜forte(フォルテ)』。駅前から続く立地で、日々の生活に便利。

『ザ・パークハウス 津田沼奏の杜』から北東方向を望む。左手は『ザ・レジデンス津田沼奏の杜』。中央上は、2013年4月にオープンしたショッピングセンター『奏の杜forte(フォルテ)』。駅前から続く立地で、日々の生活に便利。

『ザ・パークハウス 津田沼奏の杜』タウンゲート前。街路樹とつながるような高木を設けている。

『ザ・パークハウス 津田沼奏の杜』タウンゲート前。街路樹とつながるような高木を設けている。

オレンジロードに整備された水のモニュメント。

オレンジロードに整備された水のモニュメント。

千葉県習志野市にあるJR津田沼駅は、東京駅まで直通で最短27分という立地を誇る。1日の平均乗車人員は10万人を超え、千葉県内でも有数の規模の街として知られている。1970年代以降、南北の駅前周辺に大型商業施設が次々とオープン。ともに活気づいていったが、南口の駅前には市街化調整区域である広大な畑が広がっていた。市街化区域に編入するか住民投票が行われたこともあったが、結果的に市街化調整区域として存続することになった経緯がある。

畑で栽培されていたのは、4月から7月に旬を迎える春夏ニンジンだ。もともと習志野市のニンジンには、甘さに富む品種の栽培を成功させ、市場で高い評価を得てきた歴史がある。津田沼駅の南側でも、そうした品質に優れたニンジンが栽培されてきたのである。

その後、土地利用転換の機運の高まりを受け、地権者の総意で土地区画整理事業が行われることになった。この地で農業に従事してきた三代川利男氏は、のちに土地区画整理組合の理事長となった人物である。

「うちの家系は七代にわたって住んできて、私自身、この土地に愛着がありました。ただ、近年の農業経営者たちは高齢化してきたうえに、後継者がいないという問題があったんです。そこで、地域では長年にわたって意見交換がなされてきました。一時期、プロ野球の本拠地となる野球場を誘致するという話が出たこともあります。ひとつの選択肢ではあったんですが、土地の活かし方としては納得できるものではなかったんですよ」

野球場を誘致すれば、全国的に話題を呼ぶことは確実だ。多くの人たちが訪れることにもなるだろう。しかし、大切に土地を守ってきた者たちの愛着や思い入れは反映されない……。そこで三代川氏は、同じような思いを抱く地元の人々とともに、2003年、組合設立準備会を発足。土地区画整理事業を推進するにあたって、組合設立準備会は白紙状態から街づくりを考えることとした。

オレンジロードやザ・レジデンス津田沼奏の杜などのようす

左上 / オレンジロードは近隣住民の憩いの場。散歩に連れられたウサギの姿も。
左下 / オレンジロードの一角に置かれたベンチ。心和むコミュニティ空間となっている。
右上 / 『ザ・レジデンス津田沼奏の杜』のエントランス。
右下 / 『ザ・パークハウス 津田沼奏の杜』のエントランス。子どもを乗せた送迎バスが立ち寄る。

※「JR津田沼駅南口特定土地区画整理事業 土地利用計画図 平成24年1月27日変更認可」に、施設名、道路、駅などの名称を加えています。

※「JR津田沼駅南口特定土地区画整理事業 土地利用計画図 平成24年1月27日変更認可」に、施設名、道路、駅などの名称を加えています。

次の世代に残すための方法と模索。

2007年、用地の大部分は広大な農地だった。

2007年、用地の大部分は広大な農地だった。

2013年、のちにオレンジロードと命名されるプロムナードが開通。「奏の杜まちびらき」では数々の音楽が奏でられた。 2013年、のちにオレンジロードと命名されるプロムナードが開通。「奏の杜まちびらき」では数々の音楽が奏でられた。

2013年、のちにオレンジロードと命名されるプロムナードが開通。「奏の杜まちびらき」では数々の音楽が奏でられた。

現在も『奏の杜パートナーズ』では雅楽演奏などのイベントを開催。

現在も『奏の杜パートナーズ』では雅楽演奏などのイベントを開催。

2004年、組合設立準備会は自分たちの思いを反映させるための街づくりコーディネーターとして、ゼネコンとして名を馳せる株式会社フジタを選んだ。その2年後、三菱地所レジデンスが参画した。街開発事業部長の岡田友裕が説明する。

「フジタさんと弊社は、これまでも数多くのプロジェクトでご一緒したことがあります。ただ、今回のプロジェクトでフジタさんが担った役割は、これまでと少しニュアンスが違っていたようです」

フジタの担当者のひとり、津田沼プロジェクト室長を務める鎰谷聡氏が語る。

「組合設立準備会からは、『次の世代に残せる街づくりのために、あらゆる提案を』とリクエストされました。約250名に及ぶ地権者の方々の資産を維持・発展させる施策を提案し、街づくりを仕切り、さらにコーディネートしていくということ。住み続けたいと思うような雰囲気づくりや、街全体の魅力を高めるためのアイデアが求められたのです」

畑が広がる土地は、季節ごとの美しさを見せる。区画や所有者が違っていても、隣り合う畑同士が互いを引き立て、全体を魅力的な風景にするからだ。フジタをはじめ参画した事業者に課せられたのは、畑を建物や道路に変え、作物を人に変える仕事であった。それぞれの街区で完結せず、隣り合う街区同士がつながり、引き立て合い、建物同士が協調し、街全体を形成していく。さらに、住む人たちにも共通の価値観で結びついていってもらう。

こうした街づくりを実現させるために設けられたのは、景観、安心・安全、環境、エリアマネジメントという4つのテーマだった。多岐にわたる要素を満たすために、プロジェクトには各分野のスペシャリストが集められた。景観の全体像を提案する都市プランナー、住民が歩く舗装路に演出性と機能性を持たせるランドスケープデザイナー、エリアごとの照明や街灯を提案するライティングデザイナー、標識や看板などに街のアイデンティティを反映させるサイングラフィックデザイナー、緑地の樹種選定や植栽パターンを検討する植栽専門家、防犯の環境設計などを行うタウンセキュリティの専門家などである。

住民の視点に立った体制をもって、ついにプロジェクトが動き出した。

 

  • 当初考えられた『ザ・レジデンス 津田沼奏の杜』の通り沿いのイメージ。
  • 当初考えられた『ザ・レジデンス 津田沼奏の杜』の中庭のイメージ。

当初考えられた『ザ・レジデンス津田沼奏の杜』の通り沿いと中庭のイメージ。

『ザ・レジデンス津田沼奏の杜』は、高さが違う4棟を並べて配置。周囲に圧迫感を与えないよう配慮。

『ザ・レジデンス津田沼奏の杜』は、高さが違う4棟を並べて配置。周囲に圧迫感を与えないよう配慮。

フォトギャラリー

『ザ・パークハウス 津田沼奏の杜』エリア

  • パークゲート前、オレンジロードに設けられたガス灯は、昼夜で異なる印象を与える街角を演出してくれる。
  • 共用施設のひとつ、ライブラリー。
  • 四季の変化を感じられるビオガーデンは、住民同士のコミュニティスペースとしても機能。
  • 四季の変化を感じられるビオガーデンは、住民同士のコミュニティスペースとしても機能。
  • 開放感のあるロビーが出迎えてくれる。
  • 公開空地を歩道と一体化させるデザインに。
  • 敷地内のビオコリドー。
  • クルマが出入りするゲートから、オレンジロードを挟んで『ザ・レジデンス津田沼奏の杜』を望む。
  • 美しい植栽に面した歩道では、ペットオーナーたちが自然と声を掛け合う。

思いに応えて建てられた集合住宅。

都市計画道路として新たに整備された〈はばたきのみち〉。『奏の杜forte』から西に向かって走る道で、幅員16~21m、約620mにわたって延長されている。

都市計画道路として新たに整備された〈はばたきのみち〉。『奏の杜forte』から西に向かって走る道で、幅員16~21m、約620mにわたって延長されている。

組合設立準備会が、習志野市JR津田沼駅南口土地区画整理組合として正式に認可されたのは2007年のことだ。それ以降、ディベロッパーとして打ち合わせの場に出席するようになった岡田は、関係者たちの熱い思いに心動かされるようになったという。

「よい街をつくりたいという気持ちが、ひしひしと伝わってきました。特に驚かされたのは、組合員の方々が高い意識を持っておられたこと。たとえば、将来にわたって質の高い街であり続けるため、具体的な街づくりの取り組みに関するルールや指針などをまとめ、独自に『まちづくりまち育てガイドライン』を作成しています。また、2本の都市計画道路を〈はばたきのみち〉〈海浜へ誘うみち〉として、1本の市道を〈地域文化の香るみち〉としてそれぞれ整備したり、電線類の地中化を推進したり、さらには『オレンジロード』や『ラビット公園』、『キャロット公園』など住民が憩う場の愛称を公募したりと、街全体の環境形成に深く関わっていったのです。これほど思い入れを形にしていったケースは、なかなか見られるものではありません」

2011年2月、31街区が引き渡され『ザ・パークハウス 津田沼奏の杜』が着工した。約35 haに及ぶ広大な開発地における、最初の大型物件の建設である。その後の街づくりのモチベーションに影響を与えることは必至であり、岡田を筆頭に三菱地所レジデンスの社員は、これまでにない思いを抱いた。

「街全体のコンセプトやガイドラインと連動した集合住宅というものを、私たちが表現するわけです。周辺と樹種をそろえたり、路面の素材やデザイン、色を歩道と合わせたり、建物以外の要素もとても重要になってくる。共同事業のような感覚でいましたね」

着工後に開設された販売センターは、2011年9月にオープン。想定以上の問合せと来場者に、モデルルームの担当者はプロジェクトへの期待度の高さを実感し、まさにうれしい悲鳴をあげることになった。

 

  • 『ザ・パークハウス 津田沼奏の杜テラス』と隣接する『ラビット公園』。名称は公募選定されたもの。〈はばたきのみち〉の北側には、『キャロット公園』も設けられている。

    『ザ・パークハウス 津田沼奏の杜テラス』と隣接する『ラビット公園』。名称は公募選定されたもの。〈はばたきのみち〉の北側には、『キャロット公園』も設けられている。

  • ライティングのデザインを手掛けた内原智史氏。

    ライティングのデザインを手掛けた内原智史氏。

  • 温かみや愛着を感じられるよう、内原氏がデザインした街灯。

    温かみや愛着を感じられるよう、内原氏がデザインした街灯。

  • 地面のタイルに描かれた自転車のサイン。街づくりに則した道路の特徴によって、3種類のデザインを使い分けている。

    地面のタイルに描かれた自転車のサイン。街づくりに則した道路の特徴によって、3種類のデザインを使い分けている。

  • ペットと過ごす人たちが住みやすい街となっている。

    ペットと過ごす人たちが住みやすい街となっている。

  • 歩行者をモチーフとしたサインも3種類用意。

    歩行者をモチーフとしたサインも3種類用意。

コミュニティを育む新たな試み。

このプロジェクトでは、全国的に注目を集めている先進的なエリアマネジメントのシステムが導入されている。主体となっているのは、『奏の杜パートナーズ』という一般社団法人だ。メンバーは、居住者、土地所有者、各種事業者など。各会員が納めた会費をもとに、街の維持・管理・運用を行うと同時に、地域イベントの実施やサークル活動のサポートなどを目的としている。公式サイトに掲載されたコンテンツのひとつ『奏の杜まちづくり憲章』では、緑、安心、健康、子ども、自分らしさをキーワードに、街づくりの考え方が示されている。現在、理事長を務めるのは織戸久雄氏。三代川氏同様、昔からこの地に住み続けてきた人物である。

「この街は7000人規模になることを見込んでいます。さまざまな価値観を持つ多くの人が、皆しあわせな生活を送り、数十年先まで“憧れの街”と思われるようにしていきたい。そのために、一緒に街をつくる組織をつくったのです。あくまで主役は街の人たち。ひとりひとりの思いが街を育てていくのです」

かつてニンジンを実らせた畑は、人のしあわせを育んでいく街とへ、いま大きく生まれ変わりつつある。

以下、写真は『ザ・レジデンス津田沼奏の杜』エリア。

  • 南側に位置するオレンジロードから、『奏の杜forte(フォルテ)』方向を望む。

    南側に位置するオレンジロードから、『奏の杜forte(フォルテ)』方向を望む。

  • 南西側のエントランスのアプローチ部分。

    南西側のエントランスのアプローチ部分。

  • 北側のエントランス。

    北側のエントランス。

  • 回廊のように広がるオーバルガーデン。木々や植栽の季節ごとの変化に触れられる。

    回廊のように広がるオーバルガーデン。木々や植栽の季節ごとの変化に触れられる。

  • 落ち着いた色調にまとめられたロビー。

    落ち着いた色調にまとめられたロビー。

  • 敷地内のベンチに腰掛け、会話を楽しむこともできる。

    敷地内のベンチに腰掛け、会話を楽しむこともできる。

  • 『ザ・パークハウス 津田沼奏の杜テラス』と、道路を挟んで位置する『ラビット公園』。
  • 『ザ・パークハウス 津田沼奏の杜テラス』と、道路を挟んで位置する『ラビット公園』。

『ザ・パークハウス 津田沼奏の杜テラス』と、道路を挟んで位置する『ラビット公園』。

  • 『ザ・レジデンス津田沼奏の杜』の中庭には、災害ベンチが設置されており、かまどとして利用できる。

    『ザ・レジデンス津田沼奏の杜』の中庭には、災害ベンチが設置されており、かまどとして利用できる。

  •  

「奏の杜」の最後の大規模集合住宅。

奏の杜で三菱地所レジデンスが手掛ける集合住宅は、全部で4物件ある。うち3物件は入居を済ませ、すでに住民たちは新たな街づくりに加わっている。4物件目となる『ザ・レジデンス津田沼奏の杜テラス』は、今秋に入居予定。数多くの集合住宅が建てられてきた奏の杜のなかで、集大成となる「最後の大規模集合住宅」である。

〈はばたきのみち〉から1本奥まった立地は、3方が道路で、もう一方は公園という開放感に満ちたもの。さらに敷地内には、共用廊下と並行して巡らされたガーデンパサージュ、庭を観賞しながら過ごせるガーデンサロン、菜園として利用できるファームガーデンなどが設けられ、自然の恩恵を身近に感じられるよう計画されている。

また、住民同士のコミュニケーションを深めるきっかけづくりになる、集会室、キッズルーム、ライブラリー、バーベキュースペースなどを採用。安らぎと喜びに満ちた日々の暮らしが、奏の杜の目指す新しい街づくりにシンクロする集合住宅となっている。

  • 庭と住棟をつなぐ役割も持つ回廊状のガーデンパサージュ。

    庭と住棟をつなぐ役割も持つ回廊状のガーデンパサージュ。

  • ガーデンサロンのラウンジ。大きな窓から陽光が降り注ぐ。外に見える緑が、日々送り迎えしてくれる。

    ガーデンサロンのラウンジ。大きな窓から陽光が降り注ぐ。外に見える緑が、日々送り迎えしてくれる。

  • グランドエントランスにはゆるやかな弧を描く車寄せが。重厚感のある素材とデザインが格調の高さを感じさせる。

    グランドエントランスにはゆるやかな弧を描く車寄せが。重厚感のある素材とデザインが格調の高さを感じさせる。

  • ラウンジと隣接するライブラリー。温かみのある光に包まれる空間だ。

    ラウンジと隣接するライブラリー。温かみのある光に包まれる空間だ。

  • ザ・レジデンス津田沼奏の杜テラス
  • ザ・レジデンス津田沼奏の杜テラス
    ●所在地/千葉県習志野市奏の杜1丁目110番1(地番)
    ●構造・規模/鉄筋コンクリート造地上14階地下1階建
    ●総戸数/291戸
    ●売主/三菱地所レジデンス(株)・野村不動産(株)・三井不動産レジデンシャル(株)
    ●施工会社/(株)フジタ
    ●入居/2016年11月下旬予定

    http://www.trtkt291.com/

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