- 廃棄物削減
街を彩った横断幕が、
今年も新たなかたちに
廃棄予定横断幕のアップサイクル活動2025
- #アップサイクル
- #地元企業
三菱地所レジデンスでは、環境に配慮した企業活動の一環として、使われなくなった広告用横断幕を再利用し、新しいアイテムへと生まれ変わらせるアップサイクル活動を続けています。
2023年度にトートバッグ専門ブランドとのコラボレーションで始まったこの取り組みは、翌年度には有志のメンバーが集まった社内ワーキングとして定着。お客様からの好評を受け、2025年度も継続して活動しています。今年は、日本の着物文化の継承やサステナブル活動にも注力しているブランド「京都デニム」と協働。昨年のお客様や社内の声を活かして、さらにブラッシュアップした新たなアップサイクルポーチが誕生しました。
京都デニムと紡ぐ「素材の物語」
京都デニムを運営する宮本様
京都デニムは、着物の製作に使われる伝統工芸の技をデニムに施し、次世代につなぐ世界で唯一のブランド。今回のコラボレーションでは、「横断幕」という異素材に挑戦しました。
担当の宮本様は、この素材に込められた時間と記憶をこう語ります。
「横断幕は建物建設中には街を彩り、人々の目に触れながら時を過ごしてきました。役割を終えたあとも、そこには確かな時間や記憶が刻まれているように思います。京都の伝統工芸が千年の都で受け継がれてきたように、この横断幕にも物語が息づいています。工芸の技を通してその物語を紡ぎ直し、次の世代へ手渡すことに、大きな意味を感じています」
また、屋外で使われる横断幕は、雨風に耐えられるよう丈夫に作られています。厚みや張りがあるためデニムとは扱いが異なり、制作過程では多くの試行錯誤があったそうです。
マンションに掲示されている広告用横断幕
「縫製にあたっては、強さを保ちながらも仕上がりを美しく見せる工夫が必要でした。単に再利用するのではなく、職人の手仕事を加えることで、“日常に寄り添いながらも品格を持つもの”に仕上げることを心がけました。
意識したのは『強さと美しさの調和』です。縫い代の処理やパイピングを細部まで丁寧に仕上げることで、使いやすさを損なわず、美しいラインを描けるようにしました。道具でありながら、一針ごとに工芸の表情が宿るよう、心を込めて作り上げています」
厚みのある横断幕素材を一針ずつ丁寧に縫い上げる
想いと手仕事が重なって生まれた“再生”のポーチ
制作現場に並ぶ、切り分けられた横断幕とリサイクルデニム
今回のコラボレーションでは、当初よりポーチの一部に京都デニムが回収したリサイクルデニムを使用することが決まっていました。
さらに一歩踏み込んだアップサイクルの取り組みとするため、「社員の不要になったデニムを回収して活用したい」とワーキングメンバーから京都デニムに提案があり、快諾となりました。すぐに社内で呼びかけ、捨てるはずだったデニムを回収し、横断幕以外の廃棄物削減に貢献することにも成功しました。社員の想いと京都デニムの想いが重なり、ひとつの製品に生まれ変わりました。
社員が持ち寄ったデニムも、想いの込もった素材として使用された
社員からは、こんな声が寄せられています。
「社内で集めたデニムが活用できてうれしいです。メッシュ素材を生かしたものづくりができ、自分でも使いたいと思えるポーチができました」
人の想いと職人の手仕事が融合して生まれたポーチを見たとき、宮本様の胸には“再生”という言葉が浮かんだそうです。
「横断幕がもう一度、命を得たと感じました。横断幕の無骨な力強さと、デニムのあたたかみが重なり合い、想像していた以上に人間味あふれる仕上がりになったと思います」
2024年はご入居者様への配布でしたが、今年はより多くの方に活動を知ってもらうため、京都デニムが店舗を構える京都エリアの物件「ザ・パークハウス 京都聖護院」のお客様にお渡ししています。
柄や色が異なる数種類のポーチをお見せし、お好きなデザインを選んでいただく際の様子を、担当者はこう振り返ります。
「会社の取り組みをお伝えすると、とても喜んでいただけました。実際に手に取ったお客様からは、『バッグに入れるのにちょうどよい』『ゴルフのピンを入れようかな』など、使うのを楽しみにしてくださっているようでした」
このポーチは、横幅約10メートルにも及ぶ大きな横断幕から切り出しているため、同じものはひとつとしてありません。偶然の模様や色の組み合わせが一つひとつ異なるポーチは、まさに世界に一つだけ。手に取る人の暮らしの中で、新しい物語が始まっています。
未来へつなぐ「残す」精神
宮本様は、今回の取り組みを通して感じた“ものづくりの意義”をこう語ります。
「大量生産・大量消費が当たり前になった時代にあって、工芸の力で“使い捨てられるはずの素材に新しい命を吹き込む”ことは、ものづくりを超えた意義があります。京都の伝統工芸が大切にしてきた『残す』という精神を、現代のかたちで表現できた取り組みだと感じています。
職人技とは、もともと“永く使うための工夫”の積み重ね。直して使う、受け継ぐ、素材を余さず活かす——。これは現代で語られるサステナブルの理念と自然に響き合います。伝統工芸は古びたものではなく、未来に生きるための知恵だと思います」
こうした職人の思想と共鳴するように、三菱地所レジデンスでもサステナブルな取り組みを着実に広げています。今年度は「ザ・パークハウス 京都聖護院」でのお渡しに続き、「ザ・パークハウス 京都河原町」「ザ・パークハウス 大阪梅田タワー」でのご入居者様向けイベントでもポーチをお渡しする予定です。
また、モデルルームで使用された食器や服、花瓶、文房具、造花などの小物類の再利用も実施し、“廃棄されるものに新しい価値を生む”活動を少しずつ広げています。
宮本様は、取り組みを共に進める中で、企業としての姿勢にも共感を寄せてくれました。
「私たちにとってサステナブルとは、“モノに命を与え続けること”です。素材の背景にある物語を尊重し、職人の手で新たな形に変え、次の持ち主の暮らしに寄り添う。そうして命を循環させていくことが、京都デニムのものづくりの根幹にあるのです」
お客様のもとへ届けられるポーチ
さらに、ポーチを手に取る方へ、宮本様は想いを込めてこう語ります。
「『この布には時間が刻まれている』ということを感じていただきたいです。街を彩った横断幕が、今度はポーチとなって日々の暮らしに寄り添う。その背景を知れば、モノはただの道具ではなく、心に語りかけてくる存在になります。京都の空気や工芸の精神を、日常の中で感じていただければうれしく思います」
その言葉通り、廃棄されるはずだった横断幕は、職人の手を通して再び息を吹き返しました。そしてこのポーチを手に取る人の暮らしの中で、また新しいストーリーが紡がれていくに違いありません。
※この記事の内容は2025年11月14日の掲載時のものです。
この取り組みに関する物件
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この取り組みに関する物件
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