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京の一生もん×ザ・パークハウス

        
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ご先祖さまを想う

五山の送り火

ござんのおくりび
2023.07.26
#夏の終わりの風物詩#無病息災
#保存会の方々の努力

一人でも手を合わせる人がいる限り、
大文字に火を灯す

「お精霊しょらいさん(先祖の霊)が、
迷うことなくあの世に戻れますように」。
夜空に浮かび上がった送り火を眺めながら、
ご先祖さまを想い、今ある平和な暮らしに
改めて感謝する。
8月16日の五山の送り火は、
京都の人にとって大切なお盆の行事です。
五山の中で最初に火が灯る「大文字」、
その送り火の伝統を守ってこられた
大文字保存会の理事長である
長谷川綉二さんに、お話を伺いました。

(左から順に)東山の大文字、妙、法、船形、左大文字、鳥居形

(上段左から)東山の大文字、妙、法
(下段左から)船形、左大文字、鳥居形

東山の大文字 火床からの景色

東山の大文字 火床からの景色

この地に生まれた瞬間から
大文字と共に生きてきた

毎年8月16日の夜、東山如意ヶ嶽にょいがたけの「大文字」からはじまり、松ヶ崎西山・東山の「松ヶ崎妙法」、西賀茂船山の「船形万燈籠」、金閣寺付近の大北山の「左大文字」、嵯峨鳥居本の北方に位置する曼荼羅山まんだらやまの「鳥居形松明たいまつ」と順番に、炎の文字や柄が現れます。今では夜の8時から30分ほどかけ、順を追って五山に点火されますが、それぞれの寺社や山で日時を設定していた時代もあったそうです。
「東山の大文字と左大文字の送り火が旧暦のお盆にあたる7月16日から新暦の8月16日に変わったのは、五山送り火連合会が設立された昭和38年以降。 8月16日同日に五山の送り火を見ることができるようになったのは、最近の話ですよ」
現在、五山の送り火になくてはならない大文字保存会を支えているのは、銀閣寺周辺で生活を営む40軒ほど。「送り火というのは、古くからこの地に住み続けてきたご先祖さんによって執り行われてきました。大文字に関わり始めてから長谷川家は私で6代目だと聞いています。私の小さい頃はこの地で生まれたら、大文字のお手伝いをすることが自然な流れでした。私がお手伝いを始めたのは5〜6歳頃だったと思います。18歳ぐらいになってやっと一人前の役を担えるようになりますが、保存会会員になることができるのはもっと先。私が父から会員を譲り受けたのは48歳のときでした」
割木を火床に積む作業の様子

割木を火床に積む作業の様子

激しく燃え上がる大文字の火床

激しく燃え上がる大文字の火床

五山すべての火が灯ることで
無事にあの世に戻ってゆける

送り火の本番は8月16日ですが、準備や作業に尽力するのはその前後だけではありません。送り火が終わって落ち着く間もなく、翌年の準備が始まります。「10月末頃から点火に使用する麦わら用の小麦の作付さくつけが始まり、11月になると資材を調達するため山の中へ。赤松をどこで伐採するか決めて、2~3月頃に伐採し山から降ろして、点火に使う松葉とともに乾燥作業を行います。4〜5月に割木わりきに仕上げて、梅雨明けしたら8月16日の本番に向けた作業が続きます。これらすべてを、ほぼ手作業で行うのです」
そうして迎えた8月16日、会員のほか多くの協力者の手を借りて山上に運ばれた松葉約100束、麦わら約100束、そして厄除けや無病息災を願い奉納された護摩木ごまきと割木約500束が井桁に組まれ積み上げられていきます。
「75カ所の火床に分配した割木が一斉にちゃんと点火して、美しい大の字になるまで、毎回緊張します。五山の点火の順番について子ども達から聞かれると、このように伝えています。『太陽やお月さんが東の空から西の空に沈むように、お精霊さん(大文字)が念仏(松ヶ崎妙法)を唱えて、船(船形万燈籠)に乗られて三途の川を渡り、もう一度現れた人の形(左大文字)が西方浄土さいほうじょうどの門(鳥居形松明)をくぐって戻っていくんやで』とね。大文字の向いの山にある最後の鳥居形が点いたのを山上から確認し、家に帰って妻から『よかったね』と言われると、ようやくホッとします」
送り火に使われる赤松の割木

送り火に使われる赤松の割木

美しく灯された東山の大文字

美しく灯された東山の大文字

ご先祖さまを想って感謝する
送り火はその祈りの象徴

「市内にたった一人でも、送り火を見て手を合わせておられる人がいるなら、火を灯すべきだと思っているんです。毎年、おばあさんとお孫さん、若い世代のふたり、いろんな人たちが大文字に向かって手を合わせている姿を見ると、灯し続ける意義を感じます。ご先祖さまを想い、点火を待っておられる人たちに、できる限り美しい大文字を見せてさしあげたい。この素晴らしい伝統をどうやって次世代に渡していけばいいか、そのことばかり考えています」
未来へ残していくべき伝統は、豊かな資材なくしては継承できません。送り火の資材である赤松をはじめとする、“材”を残すことも保存会の大事な務めだと長谷川さんは考えています。「私もあと2年で80歳。頭の中にあるものも、体で覚えているものも、次の世代にすべて伝えたい。点火に使う赤松は、どんどん入手しづらくなっています。樹木は植えたら終わりではなく、次第に酸素放出量が減少するので、伐採してまた新しく植樹する、といった手入れを持続していかないといけません。“材”を継承することも本当に大事なことです」
どのように行事を執り行うか、というのは長谷川さんが伝えていきたいことのほんの一部。森林の循環、自然の保全は京都の伝統・文化と深いところでつながっていました。
人との出会いが
なによりの一生もの

私にとっての「一生もの」はと聞かれたら、やはり人との出会いだと答えるでしょう。
大文字の活動を長年続けてきて、祇園祭の関係者、老舗料亭の大将や女将、ボランティアの大学生など、様々な出会いがありました。人と人とは会話でつながれる。京都の人は本音で話せば、素直に話を受け止めてくれます。困っている人がいたら助けたい、相談を持ちかけられたら嫌とは言えない、そんな気質があると思います。自分にとって困難な相談内容だと感じたとしても、すぐ「できない」とは言わず、「ここまでならできるかもしれないから、少し時間をもらいたい」と申し出るんじゃないでしょうか。私も本気でお願いごとをされたら嫌と言えないところがあるし、相手のために自分なら何ができるのか考え抜いて、なんとかしますから。思い切って懐に飛びこめば、きっと心が通いますよ。

大文字保存会 理事長 長谷川綉二
大文字保存会 理事長 長谷川綉二
大文字保存会 理事長
長谷川 綉二 
(だいもんじほぞんかい りじちょう
はせがわしゅうじ)

特定非営利活動法人 大文字保存会 理事長。
令和元年より大文字保存会理事長就任。
同年より京都五山送り火連合会会長就任。

大文字保存会 理事長 長谷川 綉二
※記載の写真、内容は取材当時(2023年6月)のものです。
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