三菱地所レジデンス

京の一生もん×ザ・パークハウス

        
三菱地所レジデンス
京の一生もん×ザ・パークハウス
観世流 能楽師

田茂井廣道

たもいひろみち
2022.11.30
#重要無形文化財#碧道会#親子3代

650年継がれてきた能を
後年にも遺したい

京都の能楽師の家に生まれ3歳で初舞台を
踏んで以来、
能楽師としての道を歩んできた
観世流能楽師シテ方の田茂井廣道さん。
重要無形文化財保持者(総合認定)でもある
国の宝です。
「能楽」とはどのような伝統芸能なのか、
能の魅力や楽しみ方とともに、
ご自身のこれまでの歩みや、
能を受け継ぐことへの想いについても
お聞きしました。

能『楊貴妃』

能『楊貴妃』

撮影:金の星渡辺写真場
能『船弁慶』 親子共演

能『船弁慶』 親子共演

撮影:金の星渡辺写真場

能は日本の諸文化や芸能が
集積した舞台

およそ650年前の室町時代に大成して継がれてきた能楽。ユネスコの世界文化遺産にも登録されています。一言で表すと古典的な「劇」ですが、その舞台にはおもてや舞台装置などの工芸、うたいや囃子などの音楽、服飾、絵画、文学、身体表現といったさまざまな要素が組み込まれている総合芸術であり、それらは長きに亘り、絶えることなく伝えられてきました。歌舞伎や文楽などの芸能も、能にならうところが多いといわれます。
「能はきわめて抽象的です。たとえば役者が月を見上げれば、そこに月はなくても、月をイメージする。不親切かもしれませんが、そのように観る側が自由にイメージする世界観が、能の魅力でもあります」と田茂井さんは話します。
田茂井さんが身を置く「観世流かんぜりゅう」は、5つある流派のひとつで、観阿弥・世阿弥を流祖とする筆頭流派。能楽師の数も一番多いそうです。田茂井さんが演じるシテ方とは、どのような役割を果たすのでしょう。「能にはシテ方、ワキ方、狂言方、囃子方という4つの専門職があります。シテ方は能の主役を演じることに加え、大勢で歌うコーラスのような地謡じうたいや舞台を影で支える後見、衣装や舞台装置を決める舞台監督のような役割も果たします。つまり能楽全体を俯瞰で見て補い高める役割なんですね」
「真謡会館」にて

「真謡会館」にて

親子三代 連吟『鞍馬天狗』

親子三代 連吟『鞍馬天狗』

撮影:金の星渡辺写真場

人として大切なことも
能の世界に

能楽師の2世として生まれた田茂井廣道さん。気が付けば、いつも能が側にあったと言います。父に教わるままに、仕舞しまいや謡なども繰り返し、いつしかその芸を身に付けていました。
「このまま能楽を続けてもいいのかと悩んだ時期もあります。能とは違う道を志したこともありましたが、どんな世界も経験は重要です。わずかな勉強で目指せるものではないと感じたとき、自分には長年続けてきた能があるではないかと。そう思い能の勉強をしなおすと、その世界観や劇としての面白さに改めて気づき、能の道に進もうと心が決まりました」
その後、観世流シテ方の名門、十三世林喜右衛門師の内弟子として5年間を過ごします。
「休みは盆と正月だけ。常に師匠の側にいて、見習う生活です。自分の時間はほとんどなく、辛いと思ったこともありました。けれど今思うと、この5年間が今の自分にとっての大きな財産になっています。付き人として師匠のお供をすることで、関係者の方々に顔を覚えてもらえ、独立後も“ああ、林先生のところの人なら安心やねえ”と今の人脈や仕事にも繋がっています。身ぎれいにされる師匠のご様子や立ち居振る舞いなども間近で見て、能楽のみならず、人として大切なことをたくさん学ばせていただきました」
田茂井さんが能楽師の父から言われ、また稽古をつけている息子にも伝えるのが「人の役に立つ存在、この人にいてほしいと思われる存在になる」こと。能は多くの人が協力して作り上げるものだからこそ、そこで必要とされることが求められます。息子や弟子に伝える度に、自分もそうあらねばと思うそうです。
黒骨妻紅牡丹模様扇と小面

黒骨妻紅牡丹模様扇と小面

西陣織の能装束

西陣織の能装束

歴史を継ぐため
多くの人に伝える役目

田茂井さんが舞台に立つことに加えて力を注ぐのが、後進の育成と、能のすそ野を広げる活動です。15年続ける京都大学能楽部観世会での指導のほか、京都、兵庫、東京でも社中の会「碧道会へきとうかい」を主宰。一般の人にも仕舞や謡を分かりやすく指南しています。
「650年もの間、継がれてきた能を次代に受け継ぐことも私たちの役目です。能の舞台を観ることは、能の歴史そのもの、日本の文化・芸能の洗練された世界観を観ることでもあります。ひとりでも多くの方にその魅力を知っていただくことが、この先もずっと能を残すことに繋がります。ご覧いただく皆様には、先人が苦労して継いできた能へのリスペクトを持っていただければありがたいですね」
平日の夜に人が集まりやすい京都の街中で開催する素謡すうたい(謡のみ)の会や、プチ能会「KYOTO de petit能」など、誰もが気軽に立ち寄れる会の企画にも積極的に参加しています。また、「能こんしぇるじゅ」と称し、各地でワークショップを開いたり能の解説をしたりと活動も多彩。YouTubeやSNSを使って若い世代にも能を知ってもらう試みも行っています。
「能を広める活動の一環として、海外で能楽会を開くこともあります。多くの方がお越しくださり、素晴らしいと喜んでくださいます。大変ありがたいと思うとともに、現地での評価に甘んじず、次回はより良いものをお見せできるように研鑽しなければと肝に銘じるのです」
能は自分にとって
一生勉強できる場

能を鑑賞することは、装束や面など室町時代から継がれてきた伝統工芸品なども、間近に観て楽しむということです。京都の食や名所などとともに能を体感できる幸せを感じていただければ幸いです。さらに京都には演目の舞台になっている場所や名所も多く、古典芸能を継ぐものにとってはありがたい場所です。東京の能楽師からは、そんな環境にいることを羨まれるほど。京都という場所は、われわれ伝統文化に関わるものも、暮らしている方、訪れる方にとっても文化的なことを受け入れる土壌や素地のある、寛容で成熟した街なんですね。
能は私にとっての一生もの。だからこそ、これからも芸はもちろん、見識を磨いていく必要があると思っています。観世流の能には215もの演目があります。それらを覚えていくのはなかなか大変なことなのですが、何度も演じることでおのずと体に入っていきます。前回の舞台より少しでもよい舞台にしたいとの想いから、さらに古典を学んだり、表現方法を試したりと試行錯誤を重ねます。そういう意味では、能楽師は一生勉強、これで良いと思うことはない。日々修業を怠れない職業なのです。

観世流 能楽師 田茂井廣道
観世流 能楽師 田茂井廣道
観世流 能楽師
田茂井廣道
(かんぜりゅう のうがくし
たもいひろみち)

能楽シテ方観世流能楽師。準職分。
重要無形文化財(能楽)保持者。
京都観世会、京都能楽会、能楽協会京都支部、
林定期能楽会、林同門会に所属。

観世流 能楽師 田茂井廣道
※記載の写真、内容は取材当時(2022年10月)のものです。
 取材協力:真謡会館
京都の暮らしを享受できる住まい京都の暮らしを享受できる住まい
三菱地所レジデンス
公式SNSアカウント
YouTubeInstagramTwitterLINEfacebookwechatpinterest
「ザ・パークハウス」京都エリア
販売中物件はこちら