専門家に聞く!住宅ローンのホントの損得がわかる「APR」とは?――住宅ローンアドバイザーが解説する有利な住宅ローンの選び方

専門家に聞く!住宅ローンのホントの損得がわかる「APR」とは?――住宅ローンアドバイザーが解説する有利な住宅ローンの選び方

[住まい選びの基礎知識]

2018年08月28日

住宅ローンを選ぶとき、当初の適用金利の違いだけに気をとらわれていませんか。意外に見落とされているのが、住宅ローンを借りるときにかかる「事務手数料」や「ローン保証料」などの諸費用です。さらに借り入れ後の金利の変化もおろそかにできません。今、これらを含めて比較できる「APR」(実質的な平均年利率)という指標が注目されています。どんな指標で、どう活用すればいいのでしょうか。そこで今回は住宅ローンの相談件数が5,000件を超える住宅ローンアドバイザー・ホームローンドクター株式会社代表取締役の淡河範明(おごうのりあき)さんに伺いました。

[Point 1] 住宅ローン選びで見落としがちな諸費用

「住宅ローンの返済にもっとも影響を与えるのは、借入金額、返済期間、金利の3つです。これらの融資条件については『当然調べている』という方が多いでしょう。ところが、融資を受けるには、金利以外の諸費用がかかることに気が付かなかったり、軽視している人が少なくありません。それによって、総支払い額に大きな差が出て来ますから、諸費用を含めた総コストを比較することが大切です」(淡河さん)

淡河さんの指摘する諸費用は図1のように多岐に渡ります。しかも、それぞれの支払い方式が金融機関によって違うため、諸費用だけでも数十万円から100万円を超える差が出るのです。

たとえば、事務手数料には、借入金額の大きさにかかわらず申し込み1件につき決まった金額の「定額制」と、借入金額に一定の割合をかける「定率制」があります。
・定額制:1件当り3万円、5万円、10~30万円(+消費税)など
・定率制:借入金額×1~2%(+消費税)など
借入金額が大きくなるほど定率制は高くなり、定額制が相対的に割安になります。

ローン保証料は、借入時に一時金として支払う「一括前払い方式」、金利に一定率を上乗せする「金利組み込み方式」、無料の場合があります。
・一括前払い方式(一時金型):借入金額と返済期間で異なる。例: 1,000万円当たり、35年返済で20万円前後
・金利組み込み方式:借入金利に0.2~0.3%上乗せ

「諸費用の中では、事務手数料とローン保証料の違いが、総支払い額を大きく左右しますので是非チェックしてみて下さい」(淡河さん)

そこで、総支払い額が事務手数料とローン保証料でどの程度変わるのか調べてみました。

[Point 2] 2大諸費用で返済額がこんなに違う!

融資の条件を借入金額が4,000万円で35年返済、金利は不変とした場合、次の3つの住宅ローンのうち、どれが一番お得だと思いますか。

A)金利:0.5%、事務手数料:借入金額の2.16%(86万4,000円)、ローン保証料:なし
B)金利:0.6%、事務手数料:5万4,000円、ローン保証料:82万4,480円(一括前払い方式)
C)金利:0.8%、事務手数料:5万4,000円、ローン保証料:金利組み込み方式(+0.2%)

当初の金利だけを見ると、Aの返済負担がもっとも少ないように思えます。しかし、事務手数料がもっとも高いので、本当にお得なのかどうか迷ってしまうかもしれません。

次に、金利と諸費用を合わせた総コスト(総支払い額から元金を差し引いた金額)を比べみましょう。35年で完済した場合の金額がもっとも少ないのは、金利0.5%で保証料なしのAです(図2のブルーの棒グラフ参照)。保証料がある場合は、Cの「金利組み込み方式」より、Bの「一括前払い方式」のほうが少なくなります。「やっぱり金利の低いほうがお得だ」と思うかもしれません。

※ [手]:事務手数料、[保]:ローン保証料
金利は返済終了まで変わらず、35年返済の場合は途中で繰り上げ返済しないものとする。

しかし、完済するまでの期間によって総コストは変わってくることに注目してください。たとえば、5~10年程度で住宅を買い換えたり、住宅ローンを借り換えたりするケースもよくあります。そこで、5年後に買い換えて、住宅ローンを一括繰り上げ返済した場合はどうなるでしょうか(図2のピンクの棒グラフ参照)。

5年間の総コストでは、金利0.6%で保証料が「一括前払い方式」のBが最低になりました。保証料を一括前払いした後に繰り上げ返済をすると、経過期間に応じた返戻金(※)があります。その分コストが安くなったのでしょう。2番目は、保証料が「金利組み込み方式」のCで、Aがもっとも割高になることがわかります。Aの事務手数料は、繰り上げ返済しても戻らないからです。

「ただし、常にこのグラフと同じ傾向になるとは限りません。借入金額、返済期間、金利の高さ、金利タイプ、繰り上げ返済の時期などによっても総支払い額は左右されます。諸費用によって、大きな差が出ることを理解するための試算の一つと考えてください」(淡河さん)

※返戻金:
ここではメガバンクのケースを基に試算しました。金融機関によっては返戻率が低い場合は、上記Cの総コストが一番低くなる可能性もあります。

[Point 3] 表面金利だけではわからない総コスト

「実は、諸費用以上に返済負担に響くのが金利ですが、ほとんどの人は“当初の適用金利”しか見ていません。本来は返済期間の全体で判断することが大切です」(淡河さん)

ひと口に住宅ローンの金利といっても、次のようにいくつもの顔を持っています。
a)店頭金利:金融機関が市場金利をベースに設定した「基準金利」
b)当初適用金利:店頭金利から金利を引き下げる優遇サービス適用後の金利。「表面金利」ともいう。

さらに、金利の引き下げ方式によって2つに分かれます。
c)「全期間一律優遇」:返済開始から完済まで同じ率で引き下げる方式。変動型、全期間固定型、固定期間選択型(固定金利特約型)のすべての金利タイプで利用可能。たとえば、店頭金利から▲1.8%を全期間に渡って引き下げる場合など。

d)「当初期間優遇」:借り始めの一定期間の引き下げ率を大きくし、その期間終了後は引き下げ率が縮小する方式。固定期間選択型のみ利用可能。たとえば、固定期間10年の場合、最初の10年間は▲2.2%引き下げ、固定期間が終わった後は▲1.4%引き下げとなる場合など。

「たとえば、借入金額3,000万円、35年返済、金利が変動型の場合、適用金利や金利の引き下げ方式の合わせ方の違いにより、金利の支払い額が最大で2,000万円近くも違ってくる場合もあります」(淡河さん)

「Point 2」では、金利が変わらないことを前提に諸費用を含めた総支払い額を比べました。これに加えて、上記の金利の違いを含めたトータルコストを簡単に比較できるようにしたのが「APR」と呼ばれる指標です。APRとは、「Annual Percentage Rate」の略で、直訳すると「年百分率」ですが、「実質的な平均年利率」という意味合いです。

「APRは、複数の住宅ローンのトータルコストを比較する際にとても有効です。総支払い額ではわからない、支払いのしやすさもAPRには現れてきます。消費者金融における“実質年率(※1)”と同様と考えていいでしょう。カードローン会社は実質年率の提示を貸金業法で義務付けられています。住宅ローンについては、実質年率(またはAPR)を提示する義務はありません」(淡河さん)

※1:
「実質金利」とは異なることに注意。実質金利は、貸出金利や預金金利からインフレ率を控除したもの。住宅ローン比較サイトの中には、店頭金利に保証料を0.2%上乗せしただけで「実質金利」と称して、APRと同じような扱いをしているケースがある。試算の中に具体的に何が含まれているかに注意してほしい。

APRが一般化しない理由の一つとして、返済開始後の金利変化を予測することの難しさがあるようです。専門家は、何年後に何%の金利上昇があるか、複数のパターンを仮定して試算します。ここでは、やや簡略化したAPRをご紹介しましょう(図3参照)。

※10年固定。店頭金利3.35%、金利引き下げは当初期間優遇で固定期間優遇▲2.5%、固定期間終了後に店頭金利4%へアップするものと想定し、引き下げ幅▲1.6%へ縮小(適用金利2.4%)

「金利を正確に予測することはできませんが、過去40年以上の金利推移を分析すると、平均では4%程度になります。そこで、当初適用金利は一定期間(※2)不変とし、それ以降から完済までは店頭金利が4%になるものと仮定して試算してみるといいでしょう」(淡河さん)

※2.
変動型の場合は当初5年間を不変とし、6年目以降に4%に。固定期間選択型の場合は、最初の固定期間は変化なしで固定期間終了後に4%に変わるものとする。

住宅金融支援機構の「返済プラン比較シミュレーション」というサイトではAPRを計算することができます。項目の入力がやや煩雑ですが、金利変化の設定も可能なので是非トライしてみてください。

「返済プラン比較シミュレーション」はこちら
(https://www.simulation.jhf.go.jp/type/simulation/hikaku/openPage.do)

[Point 4] ビックリ!APRランクで損得比較

「APRを活用すると、住宅ローンのコスト全体を“見える化”することができます。当初適用金利=表面金利とAPRのランキングを比較してみると衝撃的ですよ」(淡河さん)

図4は、2018年6月時点の住宅ローン約500種類に関する表面金利とAPRを淡河さんが試算し、比率が低い順にランキングを作成したものです。金利タイプは10年固定で、2大諸費用(事務手数料・ローン保証料)と固定期間終了後の金利変化も考慮したものです。表面金利とAPRではランキングがガラリと変わることがわかるでしょう。

たとえば、表面金利ランク(図4-1)では、0.63%のA銀行(ネット系)がトップに入っています。ところがAPRランク(図4-2)では、A銀行がランクに入っていません。一方、表面金利ランクでは、4位のD銀行(メガバンク)が、APRランクの1位に躍り出ています。ちなみにA銀行のAPRは1.21%となり、ワースト5に入る水準でした。一般に『ネット系が割安で、メガバンクが割高』と思われがちですが、そのイメージが崩れてくるのではないでしょうか。

「このランキングからわかるように、表面金利は、有利に見せかけるために設定されているケースもあります。イメージや人気度に捉われずに、APRなどの指標を使って合理的に判断してほしいですね」(淡河さん)

[まとめ] 住宅ローン選びはリスクとコストのバランスを取ることが大切

今回、諸費用については「事務手数料」と「ローン保証料」に絞って考察しました。それ以外の諸費用も金額的には少なくありません。ただ、金融機関による違いより、別の要素(※3)に左右されるため、ここでは除外して説明しました。すべての要素を組み込んでAPRを計算することもできますが、かなり複雑になります。正確に知りたい場合は専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

※3.
団体信用生命保険(団信)は補償内容、火災保険は住宅の所在地や建物の構造や補償内容によって保険料が変わる。登記費用は、借入金額と登記の時期などにより異なる。また、繰り上げ返済手数料についても、住宅ローンに係る諸費用に数えるケースもあるが、最近では、メガバンクでも「ネットバンキング」経由の手続きでは無料になっているケースが一般化してきた。「繰り上げ返済手数料は、住宅ローン選びではああり重視しなくてもよい」と淡河さんもアドバイスしている。

「今回は、住宅ローンのコストに焦点を当てて解説しました。この他にも、金利や返済額が変わるリスクに家計がどこまで耐えられるか、といった視点も欠かせません。リスクとコストのバランスを考えて慎重に住宅ローンを選んでください」(淡河さん)

三菱地所レジデンスでは契約者向けの住宅ローン相談や会員向けセミナーが開催されています。知りたいテーマや疑問点がある方は、積極的に参加してみてはいかがでしょうか。

テキスト:木村元紀
写真:村山雄一
撮影強力:イノバゼスト

淡河範明さんプロフィール

淡河さん

住宅ローンアドバイザー・ホームローンドクター㈱代表取締役
1990年早稲田大学政治経済学部卒業後、日本興業銀行に入行。2000年に米国系証券会社へ転職。貸し手優位の国内住宅ローン業界に危機感を覚え、06年に住宅ローン・コンサルティング業務専門のホームローンドクター㈱を設立。金融機関のデータを常時500社以上収集・分析し、一般ユーザーに家計プランを含めてアドバイス。10年間の相談件数は5,000件を超える。『住宅ローン借り換えマジック』(ダイヤモンド社)・『住宅ローンを賢く借りて無理なく返す32の方法』(エクスナレッジ)など著書多数

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