街の過去と未来をつなぎ、暮らしを紡ぐ神戸遺産。【ザ・パークハウス 神戸タワー】

プロジェクトリポート「ザ・パークハウス 神戸タワー」街の過去と未来をつなぎ、暮らしを紡ぐ神戸遺産。

[ザ・パークハウス ストーリー]

神戸の街において、一際目を引く歴史的建造物、旧ファミリアホール。その偉容を遺しながらタワーレジデンスとして再生を果たした。
100年以上の時を超え誕生した、新たな神戸のランドマーク。クラシカルな存在感と近代建築の美が、ここに交わる。

photos by Teruhisa Kobayashi
text by Norihiko Morita

六甲山に連なる山々と天然の良港。神戸はいまも昔も繁栄し続ける街として、国内外から多くの観光客を集める美しい街だ。街並みには、国際貿易港として発展し始めた明治・大正期の歴史的建造物が現在も多数見られる。
そのなかのひとつ、ファミリアホール(旧三菱合資会社神戸支店〈のちの三菱銀行神戸支店〉)が、その外郭の一部を遺し、タワーレジデンスとして生まれ変わった。明治33年に建設された歴史的建造物は、平成12年に神戸市の「景観形成重要建築物等」に指定され、令和の時代に『ザ・パークハウス 神戸タワー』となり、過去と未来をつないでいく。

『ザ・パークハウス 神戸タワー』の基壇部。旧ファミリアホールの外壁、意匠がそのまま遺されている。

『ザ・パークハウス 神戸タワー』の基壇部。旧ファミリアホールの外壁、意匠がそのまま遺されている。

遺すもの、生まれ変わるもの。保存・復元プロジェクトの使命。

一世紀以上にわたり神戸の異国情緒を醸してきた建造物は、三菱合資会社神戸支店として誕生した当時からルネサンス様式による切り石積みや半円の装飾による美しさが評価され、名建築と称された。その歴史ある建造物(とその土地)を、マンション開発用地として譲り受けたのが三菱地所レジデンス、JR西日本不動産開発、三菱倉庫、安田不動産の4社だった。
ただし、開発には条件がある。それはこの歴史的建造物を保存・復元すること。ここに神戸初となる景観形成重要建築物保存・復元プロジェクトがスタートすることとなる。

「リノベーションで建物を保存し商業施設などに活用するのでは、事業として成りたちにくい。事業化するためにもタワーレジデンスとして再生し、ファミリアホールの印象的な外壁を遺すプランを神戸市に提案しました。
これまでの美しく重厚な景観を維持しつつ、いかに新たな神戸のシンボルとなる存在に再生するか。未来に向けた”神戸遺産”の在り方を模索しました」

そう話すのは、三菱地所レジデンスの木下敦詞。商品企画担当として保存・復元プロジェクトに参加し、重要建築物を遺しながらも採算のとれる事業プランをプロジェクト参加企業の担当メンバーとともに考え抜いた。

左:植栽の影が落ちる、東面の風景。/ 右:円柱が印象的な基壇部東面。

左:植栽の影が落ちる、東面の風景。/ 右:円柱が印象的な基壇部東面。

外壁の一部とはいえ、それを保存・復元するには費用も時間もかかる。いっそこのプロジェクトに参加しないという選択肢もあったはずだ。しかしプロジェクトメンバーたちには「私たちだからこそ実現できるプランが必ずある」との思いがあった。

歴史的建造物と最新技術の融合

ファミリアホールは、かつての三菱合資会社神戸支店として建設された100年以上の歴史を持つ建造物。東京・丸の内の礎を築いた建築家、曽禰達蔵(そねたつぞう)の設計による壮麗な外観を遺しつつ、タワーレジデンスへと再生した。
外壁を保存・復元する技術はもちろん、超高層制震技術など、最新のテクノロジーを用いることで、このプロジェクトが実現された。

『ザ・パークハウス 神戸タワー』の全景。旧ファミリアホールとタワーレジデンスが違和感なく融合している。

『ザ・パークハウス 神戸タワー』の全景。旧ファミリアホールとタワーレジデンスが違和感なく融合している。

遺すものと、踏襲するデザイン

旧ファミリアホールの外壁を遺すとともに、エントランスホールにもシンボリックな半円アーチを保存・復元し、かつての雰囲気をいまに伝える。天井や窓の装飾は、元の意匠を再現。クラシックなデザインの調度を採用し、全体的に重厚感のある空間に仕上げている。子ども服ブランド、ファミリアの展示会などで利用されていた当時のイメージを大切に、新たな空間として設計された。

  • コンシェルジュカウンターの正面に構える半円アーチ。 コンシェルジュカウンターの正面に構える半円アーチ。
  • 旧ファミリアホールを彷彿とさせるエントランスホール。 旧ファミリアホールを彷彿とさせるエントランスホール。
  • コンシェルジュカウンター横の旧三菱銀行神戸支店時代の金庫扉。メールコーナーに続く扉として採用している。 コンシェルジュカウンター横の旧三菱銀行神戸支店時代の金庫扉。メールコーナーに続く扉として採用している。
  • エレベーターホールの奥に配置された金庫扉。こちらも旧三菱銀行神戸支店時代のもの。 エレベーターホールの奥に配置された金庫扉。こちらも旧三菱銀行神戸支店時代のもの。
  • 窓も当時のデザインをモチーフにしたクラシカルな雰囲気。 窓も当時のデザインをモチーフにしたクラシカルな雰囲気。

  • コンシェルジュカウンターの正面に構える半円アーチ。
  • 旧ファミリアホールを彷彿とさせるエントランスホール。
  • コンシェルジュカウンター横の旧三菱銀行神戸支店時代の金庫扉。メールコーナーに続く扉として採用している。
  • エレベーターホールの奥に配置された金庫扉。こちらも旧三菱銀行神戸支店時代のもの。
  • 窓も当時のデザインをモチーフにしたクラシカルな雰囲気。

外観の一部はエアリーパークのモニュメントとして保存

復元時に使用されなかった石材は『ザ・パークハウス 神戸タワー』の防災広場であるエアリーパークとメインエントランス前にモニュメントとして設置している。

外観の一部はエアリーパークのモニュメントとして保存

石組みを外し、組み立て直す「生け捕り」という手法。

100年以上経過した歴史的建造物をタワーレジデンスに再生する。その偉業をともに成し遂げる新たなプロジェクトメンバーとして協力を求めたのが大林組だった。さっそく歴史的建造物の保存・復元のプロフェッショナルたちを集めたチームが結成され、具体的な保存・復元方法が検討された。
「当初は、遺すべき外壁を耐震補強する手法や、外壁を浮かせて移設する曳家という手法も検討しました。しかし、100年という時間を経て損傷も多く、安全性が確保できませんでした」
木下とともにプロジェクトに携わった事業企画担当の雪田寛昭も、ファミリアホールからタワーレジデンスへと変貌を遂げるさまを見てきたメンバーのひとり。チームが難題を抱えているのも肌で感じてきた。
「結果として、より緻密な工程で保存・復元する方針に変更しました。それが『生け捕り』という手法です」

「生け捕り」とは、簡単に言うと外壁の石組みを「外して組み立て直す」手法。石材の一つひとつをナンバリングして、元の場所に戻すという。もちろん「外す」と言っても一筋縄ではいかない。風化した石材を壊さないよう、慎重で繊細な工程が続いた。そうして解体した石材は5千点以上。想像しただけでも途方に暮れてしまう復元方法だ。

「また、石材を取り外せばいいものでもありません。当時の設計資料はありませんので、レーザースキャナーを用いた3次元での設計図面制作や、超音波探査機を用いた石の厚み調査など、事前の調査が重要でした」
このようにプロジェクトメンバーが口をそろえるほど、この事業が苦難の連続だったことがわかる。

移設・保管された石材。膨大な数の石材一つひとつにナンバーが記されている。

移設・保管された石材。膨大な数の石材一つひとつにナンバーが記されている。

100年の歴史を継ぐ、「生け捕り」という手法

解体し、元に戻す「生け捕り」は、外壁の超音波検査や3次元での設計図面化など、緻密なシミュレーションを経たうえで行われる。大小合わせ5,327点におよぶ石材が外され、洗浄や表面加工などが行われた。

歴史的価値の高い半円アーチを生け捕る様子。解体された石材は別の場所に移設・保管される。

歴史的価値の高い半円アーチを生け捕る様子。解体された石材は別の場所に移設・保管される。

生け捕りされた金庫。サビなどを落としながらも、時代を重ねた風合いを残して保存・再生された。

生け捕りされた金庫。サビなどを落としながらも、時代を重ねた風合いを残して保存・再生された。

荘厳な雰囲気に満たされた空間、古くて新しいエントランスホール。

「生け捕り」により保存・再生されたのは、外壁部分だけではない。完成した『ザ・パークハウス 神戸タワー』のエントランスホールには、エレベーターホール入口とコンシェルジュカウンター前に石造りの半円アーチがあしらわれている。これも「生け捕り」により保存された、旧建物の一部。
「ほかにも三菱銀行神戸支店だった頃の『金庫扉』もコンシェルジュカウンター横とエレベーターホールに遺しています。クラシカルな印象を残しながら磨き直すのにも特別な技術が求められました」
石材もそうだが「きれいにし過ぎないことが大切」なのだ。100年以上の風雪に耐えたその表情、質感、色合いのリアルさを遺すことも、保存・復元の重要な要素と言えるだろう。

あらためてメインエントランスから風除室、コンシェルジュカウンターを抜け、石造りの半円アーチをくぐる。目の前に広がるエントランスホールは、吹き抜けの高い開放的な空間だ。折上げ天井や窓などは、建設当時の佇まいをモチーフにデザインされている。木調の温もりと石材の重厚感が融合したクラシックモダンなしつらえは、博物館を彷彿とさせる。つい、ここがタワーレジデンスであることを忘れてしまうほどの壮麗な雰囲気に包まれている。

コンシェルジュカウンターの正面に構える半円アーチ。

コンシェルジュカウンターの正面に構える半円アーチ。

スカイラウンジで過ごす贅沢、神戸の風景をほしいままに。

エントランスホールからエレベーターホールへ続く半円アーチをくぐり、3階のカフェラウンジへと向かう。広々とした空間にソファが並ぶ様子は、ホテルのラウンジを思わせる。来客を招いたり読書に耽ったりと、心おきなく過ごせる場だ。

3階のカフェラウンジ。テラスは保存・復元された外壁上部の裏側に位置し、旧建造物の窓部分から神戸の街並みを眺められる。

3階のカフェラウンジ。テラスは保存・復元された外壁上部の裏側に位置し、旧建造物の窓部分から神戸の街並みを眺められる。

カフェラウンジには大きなテーブル席も用意。

カフェラウンジには大きなテーブル席も用意。

そして、カフェラウンジ以外にも居住者が自由に利用できる共用スペースがある。それが26階のスカイラウンジだ。ここで特筆すべき点は、なんといっても眼下の神戸の風景。神戸港を背にすれば六甲山系の山々、港側を見やれば、青い空と海、街のにぎわい。そのどちらも格別だが、雪田のおすすめは陽が暮れる頃の港の風景。
「徐々に陽が落ちていき、ビルやホテルの窓が灯り始める時間が素晴らしい。神戸ポートタワーが赤く輝き出すと『ザ・パークハウス 神戸タワー』が完成したんだと実感します。ファミリアホールの存在感、記憶を遺しつつ、タワーレジデンスを実現できたからこそ、このような美しい光景を居住者の皆さんに楽しんでもらえます」
スカイラウンジを後にし、再び1階のメインエントランスへ降りる。ここは新・旧が交わる『ザ・パークハウス 神戸タワー』ならではの表情を感じられる場所だ。

「旧建造物と上層のレジデンス、黒を基調としたメインエントランスが融合するようなデザインを採用しています。かつての偉容を近代建築が引き立てつつ、新たな存在感を放つ。そんなタワーレジデンスを求めました」
木下は、竣工した『ザ・パークハウス 神戸タワー』を見上げながら「かかわったすべての人が、同じ想いだったから実現できた」と言う。
その想いとは、歴史を遺すこと、歴史に刻むこと。
「生け捕り」のプロフェッショナルたち、デザイナーや設計担当者たちの全員が”神戸遺産”に新たな価値を加え、再生することを目指した。
「建築物の保存は、博物館に保存される収蔵品と異なり、時間を止められません。今後も風雨にさらされ、表情を変えていく。つまり『ザ・パークハウス 神戸タワー』として、新たな歴史を神戸に刻んでいくのです」

神戸の「景観形成重要建築物」は、多くの人の手により、これまでの姿を遺しながら再生した。タワーレジデンスとして、新たな神戸のランドマークとなるように。かつての記憶を、未来に伝えるかのように。

夜のメインエントランス。保存・復元した外壁のイメージをファサードに取り入れ、新・旧が融合したデザインを実現している。

夜のメインエントランス。保存・復元した外壁のイメージをファサードに取り入れ、新・旧が融合したデザインを実現している。

神戸の暮らしを彩る充実の共用スペース

カフェラウンジとスカイラウンジのほか、ビューバスや和室風の小上がりをしつらえたゲストルーム、ゴルフシミュレーターなど、ライフスタイルを彩る共用施設も充実している。

26階のゲストルーム「SKY」。ビューバスでくつろぎながら神戸の夜景を堪能。

26階のゲストルーム「SKY」。ビューバスでくつろぎながら神戸の夜景を堪能。

3階のゲストルーム「KAEDE」。一段高い小上がりスペースで和室のようにリラックスできるのが特徴。

3階のゲストルーム「KAEDE」。一段高い小上がりスペースで和室のようにリラックスできるのが特徴。

ザ・パークハウス 神戸タワー(分譲済)

ザ・パークハウス 神戸タワー(分譲済)

JR神戸線神戸駅より徒歩5分、元町エリアの主要駅からも徒歩圏内の『ザ・パークハウス 神戸タワー』は、神戸市の「景観形成重要建築物等」の指定を受けた旧ファミリアホールの一部外壁を基壇部に復元したタワーレジデンス。スカイラウンジを含む高層階から一望する神戸の街並みが一際美しい。

● 所在地/兵庫県神戸市中央区相生町一丁目1番1(地番)
● 構造・規模/鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)・地上33階、地下1階、塔屋2階建1棟
● 総戸数/352戸
● 竣工/2019年11月
● 売主/三菱地所レジデンス(株)、JR西日本不動産開発(株)、三菱倉庫(株)、安田不動産(株)

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