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前編整理収納から考える、サステナブルな暮らし
整理収納アドバイザー 西口理恵子さんに聞く、モノとの付き合い方
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サステナブルな暮らしというと、環境に配慮した商品を選ぶことや、省エネを心がけることを思い浮かべる人も多いかもしれません。けれど、日々の住まいの中にも、無理なく始められるサステナブルな選択があります。
そのひとつが、整理収納を通じて「モノとの付き合い方を見直す」こと。
今回は、整理収納アドバイザーとして住まいと暮らしに向き合ってきた西口理恵子さんにお話を伺い、長く心地よく暮らすための住まい方を考えます。
PROFILE
西口 理恵子さん
整理収納アドバイザー1級、インテリアコーディネーター、宅地建物取引士。関西在住。前職で新築マンションの営業・企画に携わり、住まいの収納に関心を深める。2009年に「インテリアR」を設立。セミナーや講演、個人宅のサポートなどを通じて、理想の暮らしを実現するための整理収納を提案している。
公式サイト:Interior-R
サステナブルな暮らしは、モノとの付き合い方から
西口さんがセミナーなどでまず伝えているのは、「整理」「収納」「整頓」という言葉の違い。片付けに悩む人ほど、この違いを見落としていることが多いといいます。
「皆さん、『整理収納』よりも『整理整頓』という言葉の方がなじみがあると思います。でも、実はそれぞれ意味がまったく違うんです。収納グッズを買って片付けてもモノが減らない、すぐにリバウンドする、あまりきれいにならない。そうおっしゃる方は、おそらく『整理』ができていないことが多いんです」
きれいに並べたり、収納グッズを買い足したりする前に、まず自分にとって必要なモノを見極める。その順番を意識することが、住まいを整える第一歩になります。
では、整理収納とサステナブルな暮らしは、どのようにつながるのでしょうか。西口さんが大切にしているのは、モノを「使い切る」という意識です。
「モノの向こう側には、必ず作った人がいます。服でも時計でも食器でも、どんなモノでも誰かが作っていて、その人の想いが込められています。それを、私たちがちゃんと使っていれば、お互いにハッピーですよね。でも、もし5年も10年も使っていないモノがたくさんあったら、作った人はどう思うでしょうか」
西口さんが整理収納の学びに出会ったとき、特に心を動かされたのが「モノと人が仲よくなれる」という考え方でした。片付けは、モノを減らす作業ではなく、暮らしとモノとの関係を結び直すこと。その気づきは大きな感動となり、整理収納への向き合い方、そして日々の暮らし方まで変えていったといいます。
「好きなモノだけで家が満たされていると、本当に幸せなんです。それを実現するためにも、私は買い物を『買い足す』から『買い替える』にシフトすることを提案しています」
1つ買ったら、1つ手放す。いわゆる「1in 1out(ワンイン・ワンアウト)」の考え方です。
「モノを手放す痛みを知ると、安易に買わなくなります。買うときにも、“一生もの”と思えるくらい、長く大切に使いたいモノかどうかを考えるようになるんです。そうすることが、限りある資源を無駄にしない暮らしにもつながっていくと思います」
買う前に立ち止まり、手放すときにも向き合う。そんな小さな意識の積み重ねが、モノとの関係を見直すきっかけになります。
適正量を決めることは、暮らし方を決めること
整理収納の中でも、西口さんが特に大切にしているのが「適正量」です。
「よく『収納に入る量だけ持ちましょう』と言われますが、私はそれだけでは不十分だと考えます。自分の人生は1回しかないのに、家の収納に合わせて自分の人生を制限する必要はないと思うんです。たとえば、仕事や趣味でたくさん靴が必要な人に対して、玄関に入る量だけに絞りましょうと言ってしまうと、その人が本当に送りたい人生まで制限してしまうかもしれません。大切なのは、収納に入る量だけでなく、自分がどう暮らしたいかを含めて考えることです」
西口さん自身も、服は全部で132枚と全体の数を把握したうえで、「黒のトップスは14枚」というように、アイテムや色ごとの枚数まで細かく把握しています。数を知ることで、新しく欲しいモノがあったときにも、「今ある1枚を手放してまで欲しいか」と、いったん立ち止まれるといいます。
こうした適正量を考えるために、西口さんが勧めているのが「5つの数字」です。
この5つを比べることで、思っていたより多く持っていたモノや、本当に必要な量が見えやすくなります。心地よく暮らせる量を自分で決めることは、どんな暮らしをしたいのかを具体的にすることでもあるのです。
また、適正量を決めるうえで大切なのが「自分軸」です。
”使える””使えない”といったモノの状態を中心に選んでしまうと、”使える”けれど”使わない”モノであふれた“モノのための家”になってしまいます。人が中心の住まいになるためには、自分が使うか・使わないかで選ぶことが大切です」
西口さんは、新しいモノを迎えるときにも、産地や素材、つくられた背景を知ることを大切にしています。そのストーリーを知ることでモノへの愛着が深まり、長く大切に使い続けたいという気持ちにもつながっていくからです。
一方で、すでに持っているモノを見直すときには、「今の自分が使いたいか」という視点が大切になります。
高かったから。まだきれいだから。いつか使うかもしれないから。
そうした理由で残しているモノは、今の自分の暮らしに本当に必要なものでしょうか。
「モノへの気持ちはもちろん大事です。でも、モノを大事にしすぎて、自分自身を大事にできていない方もたくさん見てきました。そうではなく、やっぱり自分を大事にしてほしいと思っています」
収納に合わせるのではなく、自分の暮らしに合わせて持ち物を選ぶ。そこから、住まいは「モノのための場所」ではなく、「自分らしく暮らすための場所」へと変わっていきます。
食卓に並べるたび、子どもの頃の記憶が鮮やかに蘇ってくるそう。
100歳までを見据えた、住まいのロードマップ
西口さんは、自分や家族の年齢、ライフステージの変化を見据えながら、これからの暮らしを考えた「100歳までのロードマップ」を作っています。
「100歳までって意外にもあっという間。だからこそ、どこに住むか、どんなふうに暮らすかがすごく大事だと思っています」
結婚後の住まい、子育て期の住まい、そしてこれからの住まい。西口さんは10年ごとに暮らし方を見直してきたといいます。
「ライフステージに合わせて住まいを変えるためには、整理収納が絶対に必要です。家が片付いていなくて引っ越しができないという方を、前職のマンション営業時代にたくさん見てきました。引っ越したいけれどモノがたくさんある、家を売りたいけれど誰が片付けるのか、という状態です。モノが人の人生を左右してしまうのは、あまりにももったいないこと。本当に必要なモノだけで暮らしていれば、思い立ったときに動けるし、新しい住まいに移ることも、これからの暮らしを選び直すことも、軽やかになると思います」
理想の暮らしへ向かうための整理収納
そして西口さんは、整理収納のその先にある暮らしについて、こう話します。
「皆さん『すっきりした暮らしがしたい』とおっしゃいます。でも、すっきりした部屋はゴールではありません。すっきりした部屋で、仕事を頑張りたいのか、友達とお茶会をしたいのか、家族と過ごしたいのか。すっきりした部屋で何をするかというところまでをゴールにして、整理収納をすることがとても大切です。一生ものと思えるお気に入りを、自分の適正量に合わせて丁寧に選んでいく。そういうモノ選びや暮らし方を、ぜひ楽しんでいただきたいですね」
まずは、身のまわりにあるモノを見渡すことから。その小さな一歩が、自分らしく、長く心地よく暮らすための住まい方へとつながっていきます。
後編では、クローゼットやキッチン、リビングなど、西口さんが実践している場所ごとの整理収納の工夫を紹介します。どうぞお楽しみに。
※この記事の内容は2026年8月掲載時のものです。
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