一戸建て、建て売りの住宅購入を決め、お目当ての物件を探す際、立地や周辺環境など、考えるべきポイントはたくさんあります。そして、どんな間取りの住宅にすべきか、というのも、悩ましいポイントではないでしょうか。3LDKか、はたまた4LDKか……。物件の間取りは多々あれど、今回はこの2つの間取りに関して、どのように選べばいいのか、また、これまた悩ましい収納設備の選び方のポイントとともに、建築家の先生に伺います。これまで、数多くの住宅建築に関わってきた、専門家の言葉は、きっと皆さんの素敵な住宅選びのヒントになるはずです。
のせ一級建築士事務所 代表
野瀬 有紀子さん
大学卒業後、住宅メーカーへの入社とともに住宅設計の世界に入る。その後、地域ビルダーに入社し、数多くの住宅設計を手がける。2016年、自身の事務所「のせ一級建築士事務所」を開設。女性らしい視点を大事に、難しく思われがちな家づくりにまつわる、様々な悩みに答える。
野瀬:確かに、家族構成やライフステージなど、住む方の条件によって、間取り選びは変わってくると思います。これまでの私の住宅設計の経験をもとにアドバイスさせて頂きます。
野瀬:それでは、家族構成を軸に考えてみましょう。前提条件とするのは、小さいお子さんが2人いる場合、中学生のお子さんが2人いる場合の、2通りの4人家族を仮定します。
3LDKの場合、ひと部屋はご夫婦の寝室、他2室は将来お子さんの部屋になると思われます。まだお子さんが小さい場合、大きめのひと部屋に家族全員で川の字になって寝るということもあるでしょう。お子さんが小学校の中学年から高学年になってくると、ひとり部屋が必要になってくるかもしれませんが、各室を割りあて、家族の部屋はまかなえます。
小さいお子さんがいる場合、運動会や節句など、行事に祖父母の方が参加する機会も多いでしょう。祖父母の方が遠方にお住まいの場合、ご家族の住宅に宿泊する機会もあるでしょうから、部屋数にゆとりのある4LDKを視野に入れてもいいのではないでしょうか。また、比較的お若い方が住宅購入を検討している場合、さらにお子さんが増える、ということも想定されます。ご夫婦がお若いほど、どのように変わるか未知の部分も多いです。ご予算が許すならば、部屋数にもゆとりを考えておくとよいと思います。
大きいお子さんのいるご家族なら、お子さんが大学に進学する、また社会人になり、早くに家を出ることも想像されます。こうした状況を考慮し、お住まい選びをされる方がいいかもしれません。部屋数の多い住宅にご夫婦2人となると、お部屋を持て余してしまうことも考えられます。こうした点を考慮すると、3LDKが視野に入って来るのではないでしょうか。
では、お子さんが大きければ3LDKがベストか、と言われるとそうでもありません。お子さんが独立した後、ご夫婦のご両親との同居の可能性もあるからです。もちろん、ご両親が近隣にお住まいの場合や、その他の事情によって、必ずしも同居が発生するとは限りませんが、将来的に同居の可能性がある場合、やはり部屋数に余裕のある4LDKは使い勝手がいいのではないでしょうか。
これまでの経験で伺ったお話です。住宅購入以前、転勤が多かったご家族、海外赴任から帰ってこられたご家族の場合、ご夫婦やお子さんのお友達が遠方からいらっしゃることがあるそうです。そうしたお友達を泊めるために、空いているお部屋を活用する、ということがあるそうです。これまで、転勤などが多かったご家族の場合は、こんなケースも想定し4LDKを考えてみてもいいかもしれません。
野瀬:部屋数が多ければ、それだけ“できること”も増えていきます。もちろんお子さん2人は同じ部屋、という方針のご家庭もあるでしょう。そうした場合は3LDKでもゆとりは作れると思いますのでご参考に。これまでクライアント様から伺った、余ったお部屋の活用例をご紹介しましょう。
読書が趣味の場合、書斎などに活用する。あるいは絵画などスペースが必要な趣味の部屋として活用されることがあるそうです。
勉強熱心なご家庭では、ホワイトボードなどを置いて、ご家族揃っての学習活動に使用されていたりするそうです。
ご両親やご親戚、またお友達がいつでも泊まれるよう、折りたたみなどの簡易ベッドを準備し、活用する場合もあります。
贅沢に収納にひと部屋を使い、その他のお部屋は整頓し、スッキリした生活を送るために使う、という方法も考えられます。
高齢化社会の進行を想定し、ご両親の介護などが発生した場合に備え、部屋数にゆとりを確保しておく場合もあります。
野瀬:確かに、収納に関してご相談をいただくことは多いですね。建築関連の書物では、一般的に一戸建ての場合、全体の面積の10%程度の収納が望ましい、といった記述がありますが、最近では、住まう人によって生活スタイルも、持ち物もさまざまで一概には言えないでしょう。私が設計を手がける場合、クライアント様には事前に「現在お持ちのもので、新築後も使う家具や家電」をリストアップしてもらうようにしています。家具、家電のサイズなども合わせて記載してもらいます。こうすることで、新たに購入する住宅に、どの程度の収納が必要かのあたりをつけてもらうのです。もちろん、建て売りの一戸建ての収納スペースの必要量を考えるうえでも参考になるでしょう。
野瀬:それでは、ご要望の多い3つの収納スペースをご紹介しましょう。
やはりご要望が多いのは、ウォークインクローゼットです。2~4帖くらいのスペースに、上部に直接棚を設けて、その棚の下にステンレスパイプを通したタイプをご要望いただくことが多いですね。ザ・パークハウス ステージでも、ウォークインクローゼットを多く採用していますね。2ヵ所から出入りできるウォークスルータイプもあり、さらにフレキシブルに収納スペースを利用できる印象です。
靴を履いたまま収納スペースに入れる、シューズインクローゼットも人気の収納です。靴を収納することにかぎらず、小さなお子さんがいるご家庭では、外で遊ぶお子さんのおもちゃ、三輪車などを置いておくこともあると思います。ガーデニングの趣味のあるご夫婦であれば、その道具。その他、アウトドアグッズや、スキー板など幅広く収納できるのが魅力です。
小さなお子さんがいるご家庭では、おもちゃや衣服、その他季節ものの大物等を、収納するのに便利な3~5帖くらいのスペースを確保したロフトも人気です。最近ははしごで昇り降りするタイプ以外に階段で昇り降りするタイプもあります。
野瀬:間取り選びでは、今のライフスタイルがどのようなものかを考えるのも重要ですが、その先、家族構成がどのように変化していくか、ライフステージがどのように変化していくかを考えるのも重要です。住宅は長く使うものです。“先のこと”を考慮して、ライフスタイルに寄り添う家を選んでください。