#29 働くところと住むところ

今回は働くところと住むところについて考えてみたいと思います。

 

私たちの暮らしは、戦後の高度成長の中で、高度な分業化が行われてきました。多くの人は企業で働き、通勤する事を前提に家を持ってきました。郊外のニュータウンはベッドタウンと呼ばれるようになり、家は寝るために帰るところという考え方さえありました。しかし最近では、起業して家で仕事をするという人も増えているように思います。高齢化する日本では、退職しても健康で元気に働ける人や、若い頃から起業する人、働きながらも副業を持つ人、また週末は地域の中で仕事をしたいという人も増えつつあるようです。

 

とはいえ、起業するといっても、事務所を借りて、ビジネスをするのは大変です。だとすると家の中で仕事をするのが現実的です。
仕事をするスペースが自宅にないという人には、マンションの中に共有のオープンオフィスがあって、そこで仕事をするというのも便利です。もちろんデスクワークだけではないでしょう。アクセサリーをつくる、ケーキをつくる、料理教室をひらく、フラワーアレンジメントを教えるといった、さまざまなアクティビティの可能性があるはずです。

 

昔の日本はこうした小さなビジネスが暮らしの環境の中にあったように思います。タバコ屋さん、クリーニング屋さん、生活に必要な雑貨屋さんなど、そうした地域での営みがあることで街は活性化されていたのです。寝るためだけに家に帰っていたのでは、そこで暮らすことにはなりにくいものです。そして年に数回のイベントやサークル活動だけでは、住民同士の人間関係も希薄なように思います。

 

「コミュニティ」の議論ではつながりが必要だとよく言われますが、そもそもつながりとは、何か具体的な営みを伴った社会とのつながりが必要に思えるのです。このように、働く事が前提ならば、家やマンションの作り方は変わるでしょう。

 

例えば、家の半分をつかって小さなカフェを運営するというのもあるかもしれません。または工房があって洋服の繕いをするとか、その時には、廊下に対して少し開放的なしつらえにできるとお店などにはいいでしょう。
また、共同で使えるスペースも活用の方法はありそうです。住人同士で日替わりカフェを行うとか、共同の仕事場があるとか、会議室があるとか、そして、住人が講師になるようなカルチャースクールなどもあるかもしれません。
家の広さも限られているので、使わないものはマンション内のストックルームなどに置けるというのもいいですね。子どもが家を出て、そのまま物置部屋になっているような人も多いに違いありません。そうした部屋が仕事場にすぐに変更できたらいいですね。

 

住むところに働く環境をつくる。具体的な経済の営みがあるからこそお互いの関心が高まると言えるのではないでしょうか。そしてそのことによって、街の安心や安全もつくることができるのです。

 

いかがでしょうか?
働くところと住むところについて、みなさんのご意見をお寄せください。