-
#118 これからのリノベーションについて vol.2 ~キッチンと洗面化粧台を一緒にしちゃいました!
update:2022/03/22
-
#117 これからのリノベーションについて vol.1 ~クローゼットの使い方を考える
update:2021/09/02
-
A044「玄関収納の使い方・バルコニーでの過ごし方について」のアンケート報告
update:2023/04/03
-
update:2023/03/31
-
update:2016/03/02
-
M28 食器棚について 〜入居者アンケートと訪問調査の中から
update:2015/12/24
-
update:2019/02/06
-
RT015「夫婦二人暮らしのくつろぎ空間」(Plan 17)
update:2018/10/23
-
J006 リノベーションで自由度のあるクローゼットを作りました
update:2022/01/26
-
update:2016/04/27
シナリオ&設計コンペの審査員講評と受賞者コメント
<最優秀賞>
『暮しの手帖』編集長 松浦弥太郎氏 講評
みなさん、こんばんは。暮しの手帖の松浦です。今日は高村さんがいらっしゃらないので、受賞作『つくえのしま』に関することの前に、このコンペの審査をして感じたことをお話します。
今、あらゆるジャンルで言われているものに、第三の場所、もしくはサードプレイスというものがあります。人の暮らしを支えているのは、ひとつは生活する家族がいる場所であり、もう一つが仕事をする場所。さらにもうひとつがコミュニケーションを持つ場所です。3つめの「コミュニケーションを持つ場所」というのが、これからもっと必要とされていくようになるのではないかと思っています。たとえば、人気のスターバックスだったり、ネット上のSNSもひとつの「第三の場所」ではあるのでしょうけど、あえてそこではなく、さらに人と触れ合いが持てて安心安全なところ。マンションではそういうコミュニケーションができるのではないかと、今回の審査をしながら感じました。
最優秀賞を受賞した『つくえのしま』というのは、机はひとつのモノですけど、これは机がひとりひとりの個人でもあり、毎日のようにどんどん新しい景色が生まれていく。そこに人がいてもいなくても人の気配や温もりがうまれ、人が今後さらに求めていくだろうコミュニケーションの可能性を広げていくことになるんじゃないかなという可能性を感じたことが今回審査した側としての意見で、満場一致で最優秀賞に決まりました。
今回のコンペでは113件の応募をいただいたんですけど、僕はどれにもちょっと感動したんです。通常、暮らしについて考えますと、自分たちのことだけしか考えないことが多いと思うんです。でも今回のコンペに応募した方は、みんなそれぞれが自分ではなく他人のことを考えているんですね。思いやりだったり、他人が何に困っているんだろうということを。みなさん、そこに切り口を持っていただいたことをとても嬉しく思い、すごく感動しました。今回、受賞しなかったもののなかにもたくさん素晴らしいものがあったんですけど、他人のことを思う、他人と一緒に何かできることを楽しむ、深くコミュニケーションをとることを前提としたアイデアがこんなにたくさん出るのかと、そこに意味があると思いました。暮しの手帖の仕事をしていてよく自分たちで自問するのは、人は何を幸せだと思うかということ。豊かな暮らしは何かということなんですけど、よーく考えて、これかもしれないと思うのは、人が幸せだと本気で思うことは人と深くつながるということなんですよね。たとえば欲しいものがすべて手に入ったとしても、人とのつながりがなければ幸せにはなれない。逆に何も持ってなくても、人と深くつながることがあれば、それはそれで幸せだろうということだと考えました。ですから、今回のコンペで、人と深くつながるということを、みなさんひとりひとりが真剣に考えて具体的に見せてくれたことに心から感謝します。受賞されたみなさん、おめでとうございます。
<アイデア賞>
『カーサ・ブルータス』編集長 松原亨氏 講評
カーサ ブルータス編集長、松原と申します。審査をさせていただきまして、『アクリアウムマンション』をアイデア賞とさせていただきました。まず、アイデアとして僕が一番面白いと思ったのが、シナリオの最初にも書いてあったことなんですが、「マンションで集まって住む場合、住民たちが共通の趣味を持っていると自然とコミュニティが生まれる」というところに目をつけたこと、しかも現実的であるということがよかったと思います。趣味が共通だといろんなことを自然と共有できるというか、自然とコミュニケーションがうまれる。この作品は海が好きな人が集まるマンションですが、たとえば本が好きな人たちが集まるマンションなら大きな図書館のようなところになる。そこならお互いに本を共有して、本について話をしたり、貸し借りしたり。そうやって、趣味を共有していると、とても自然な形でコミュニティがうまれる。そういう発想がとてもよかったと思います。おめでとうございます。
→受賞者のコメント
3人が微力な力を結集して作りました。唐澤さんのドッキリじゃないかとずっと思っていたんですけど、本当に受賞できたこと心から嬉しく思います。これから一生懸命に頑張って、我々の実際の商品も頑張りたいと思います。
<審査員賞 暮らしの手帖選>
『暮しの手帖』編集長 松浦弥太郎氏 講評
こちらは個人的に僕が点を入れさせていただきました。僕もそうなんですが、仕事をしているとみんなそれぞれに忙しいんですよね。仕事だけでなくプライベートのこともとても忙しい。で、ふと思うのは、「一人になりたい」っていうことです。とくに東京に暮らしていると、なかなかひとりになる場所がないんです。仕事場にはいつも人がいるし、家に帰っても誰かがいる。家で一人になれる時間なんて、みんなが寝入ったときくらい。それもほんのわずかですよね。だから、こういう集合住宅の共有スペースに誰もが一人になれる場所というものがあることは、嬉しいなと個人的に思いました。そこでコミュニケーションがあるかどうかわからないんですけど、その場所に行くことで、“一人になりたいと思う人が自分以外にもいるんだ”という気持ちを共有できることがとてもいい。「いつも一人になりたいと思っている自分でもいいんだ」という安心感を持てることが、ちょっと嬉しい気がします。ありそうでない、一人になれる場所。それをみんなが大切にするという田代さんのアイデアを高く評価しました。いつも空があるという表現もよかったです。おめでとうございます。
→受賞者コメント
自分が普段考えていることをシナリオとパネルにしたので、それを評価してもらえたことがすごくうれしいです。あと、松浦さんの本をすごく読んでいたので、ちょっと夢みたいです。
<審査員賞 カーサ ブルータス選>
『カーサ・ブルータス』編集長 松原亨氏 講評
このコンテストの面白いところは、新しい住まい方を提案するだけでなく、それをシナリオの形にする、という点だと思います。今回の『subroom network』のシナリオでは、会員制で家の一部屋を共有し合い、「今日は新宿で飲んで夜遅くなったから新宿周辺の会員の部屋を借りよう」とSNSで家を探し、人が住んでいるところの一部屋を共有する世界が描かれていました。僕は最初にシナリオ読んだとき、申し訳ないんですがとってもイヤだったんです。なぜかというと、今シェアハウスやカーシェアが一般的になりつつありますが、僕自身は今46歳で、車も所有したいし、家をシェアするより自分の空間が欲しいというような世代だと思うんです。頭ではシェアがスマートで現代的なことだと思うんですが、自分の感覚としては少し隔たりがある。だから、人の家にいって知らない人同士で貸し借りするそのシナリオに関しては、ボクはいやだなと思ったんです、申し訳ないですけど。
ただ今回、なぜカーサ ブルータス賞にしたかというと、若い人たちの未来を考えると、これはあり得る話だと思ったからなんです。家という空間を所有しないで、「必要なものはPCやスマートホンに入っているから、他のものは共有でOK」というような、所有欲があまりない人たちというのが若い人に多くなっていることを思うと、この世界はありそうだと思っているし、SF映画なんかだとそういう設定の世界はいかにもありそう。私自身からは出てこない発想だけれども、未来はそうなるかも、というような、アイデアを持ってきていただけただけで僕はすごく刺激的だったんです。それを考えさせてくれただけで僕はとってもうれしいことでした。受賞者の相澤さんはいらっしゃいませんが、おめでとうございます。
<審査員賞 メックecoライフ選>
(株)メックecoライフ顧問 平生進一 講評
メックecoライフの顧問の平生と申します。このコンペティションをやるときに、シナリオ&設計アイデアという名のとおり、「シナリオ」を入れたのには私の強い思いがありました。通常、デベロッパーがやるコンペは設計コンペが多いんですけど、ハードの設計というよりも、そこで何が行われるのか、そのシーンを含めて知りたい、アイデアをいただきたいという思いがありまして、シーンを別に描いていただくことにしたのです。ただシーンといっても単に説明ではおもしろくないので、シナリオという言葉を使い、そこに思いを込めてコンペを企画しました。
応募作品を見てみると、実に思っていた以上に手ごたえがありました。子どもの立場になってシナリオを描いている方もいらっしゃいましたし、お母さん、おじいちゃん、さまざまな主人公がさまざまなシーンを描いていて、デベロッパーのこれからの商品企画に非常に役立つ感じがしました。みなさん、いい作品を応募していただいて、ここにいない方も含めて、ありがとうといいたいと思います。
<審査員賞 メックecoライフ選>
(株)メックecoライフ顧問 平生進一 講評
『家の顔』
マンションの最大の問題になっております、北側廊下と家自身の間にある大きな結界と申しますか、コミュニケーションの断絶のようなものがあるんですね。そこをどうにか解きほぐしたいというアイデアがさまざまあるなかで、この『家の顔』は自分の家の個性を表出するという意味合いにおいて、大胆に壁面全部をショーウィンドウ的に扱っているのが面白い。しかも若干奥行き感もあって、立体的なものも置ける。というあたりが非常に面白いと思いました。最近よくあるビルのなかのショップの顔というものとわりと近いものがあって、個人的な住まいというものが、だんだん「社会に何かを発信をしたい」というふうに、人々の感覚が向かっているなと感じました。商業施設に慣れ親しんでいるものあるのでしょうか。今日、受賞者の方にお会いして、やはり若い方ですね。絵もとっても素敵でした。おめでとうございます。
→受賞者コメント
今は一軒家に住んでいるんですけど、僕は小さいときにマンションに住んでいたので、そのときの記憶がこのアイデアに結びついたのではないかと考えています。このような賞をいただいて本当に嬉しく思います。本当にありがとうございました。
<審査員賞 メックecoライフ選>
(株)メックecoライフ顧問 平生進一 講評
『路地廊下のマンション』
これも『家の顔』と同じ問題点をお持ちになったんだと思います。こちらのほうは、人間がそこに生身で介在して家の前を通る隣近所の人とコミュニケーションをとっていくという方法で、非常に素直によくできているなと感じました。昔の路地では、玄関前の空間におじいちゃんおばあちゃん近所のおじさんがいたんですね。昔は将棋台って言ったんですけど、そこで花火をするとか、お月見をするとか、いろんなことがあったんですね。たぶん海津さんはご経験されてないでしょうけど、若い人はそういうものに魅力を感じるのかなと思いました。
集合住宅に宿命的に起きてしまう北側廊下、プライバシーの大きな壁があって、もっと詳しく言うとその北側廊下に一番プライバシーが高くあるべき寝室が隣接しているという、論理的にいうとかなり苦しい構成になっているんですよね、日本のマンションは。普通、パブリック性の高い通路からややパブリック性の高い居間・食堂に入り、一番プライベート感が高い寝室はいちばん通路から遠いところに配置されるのが当たり前なんですね、とくにアジアを中心とする諸外国の集合住宅はたいていそういう風にできている。日本だけまったく違うというその現実をなんとか解決していきたいというのが私どもの長年のテーマでありまして、このおふたりの提案はそういう意味でも大変膝を打つような提案でした。視点の捉え方がよく、解決の方法がお二人ともにアイデアがあっていいなと思いました。
→受賞者コメント
こんな賞をいただけてすごくうれしく思います。今は子育てをしているところなんですけど、母親の目線でも問題意識を持ちながら考えました。ありがとうございました。
<審査員賞 メックecoライフ選>
(株)メックecoライフ顧問 平生進一 講評
『すまいのまあい』
今回の応募作品のなかでは少なかったのですが、この作品は住戸のなかの話です。背の低いパーテーションと机と椅子がセットになって、空間のなかにそれらを平行に配置することによって視線が通りながら、逆に低いパーテーションで直角方向には視線が通りにくいという設計。高さの変化も交えて上手に計画されています。よくよくみると、先ほど申し上げたシーンやシナリオを実に素敵なシーンができるだろうなというのが見えてきて、ディテール、あるいは現実感も含めて、造り込み度が高いと思いメックecoライフ賞とさせていただきました。
以上で3作品の講評を終わりますが、とくにメックecoライフの3賞は我々が常々関心が高いところにピンポイントでみなさんが問題意識を持っていただいて、回答をいただきましたので、選ばせていただきました。みなさん、おめでとうございます。