#64 コンパクトな暮らしという考え

コンパクトという言葉からは様々なことが連想されます。すぐに思いつくのは、小さくする、たたむ、重ねる、組み合わせるなどの言葉です。しかしそこには単に小さくするだけでなく、もとの価値以上にそれを高めるという意味があるように思います。

 

そして日本人は昔から、こうした小さな物を高い価値に高めることが得意な民族とも言えます。また道具類なども、たくさんのものを持つよりは数少ない物をうまく使いこなすような文化もあるでしょう。西洋の包丁がたくさんあるのに対して日本の料理人は一本の包丁で魚をさばきます。ものだけでなく感性としても小さな盆栽に命のはかなさを見いだしたり、花器に落とした桜の花びらを眺めて満開に広がる野山の風景を表現したりもします。小さくしながら、そこに価値を生み出していくことが得意なのかも知れません。

 

最近では、世界中でコンパクトハウス、コンパクトカーなどという言葉もよく使われるようになりましたが、こうした傾向は日本が世界にリードできる能力をもっているかもしれません。大きな豪邸に住むより、大都会に小さな家をもち、大きな車より小さい車の方を選び、ものの持ち方にしても快適に整備して、必要な物を厳選して持つほうがかっこいいと。ものをたくさん持つより、少ない物で暮らすというのも成熟時代の暮らし方の1つなのかもしれません。
こうしたコンパクトな暮らしを実現するのには、高度な技術も助けになっています。電子機器などの発達で音楽や書籍なども電子化することでコンパクト化することも可能です。さらに日本ではコンパクトな暮らしを実現するために、シェアという概念も生まれています。ものをシェアするだけでなく、空間をシェアしたり、経済をシェアしたり、それらは、一人で何かを所有する事から利用する価値への変化が日本の土壌から生まれています。

 

成熟した日本の社会にあって、今あらためて日本人らしい、ものの持ち方や暮らし方を考える時期が来たのかもしれません。今までの暮らし方を見直し、コンパクトに暮らしてみるのはいかがでしょう。

 

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